鳥籠の天翼と不屈の王子 ~初体験の相手をしたら本気になった教え子から結婚を迫られています~

須宮りんこ

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本気の嘘

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 抱き合いながらベッドに転がされ、あっという間にローブを剥ぎ取られる。今日は自分で解く余裕があるようだ。ローシュは指でエアルの腰紐を解き、下半身を隠していた下着をするりと抜き取った。

「は……エアルは綺麗だな」

 堪らないという表情で、裸になった自分をローシュが見下ろしてくる。思わずエアルはキョトンとしてから、じわじわとこみ上げてくる恥じらいに手で顔を隠した。

「……それはどうも」

「顔、見せて」

 手をやんわりと顔の上から退けられる。目を合わせると、

「やっぱり綺麗だ」

 ローシュは満足そうに微笑んだ。その笑顔に、ぎゅっと胸が苦しくなる。

 必要ないじゃないかと思った。こんなにも相手のことを思いやることができるのだ。相手が喜ぶ言葉を紡げるのだ。自分の手ほどきなんて、自分が教えられることなんて、ローシュにはない……。

 なぜか涙が出そうになり、エアルはローシュにたっぷりと愛でられたばかりの唇を噛んだ。

 罪悪感が募る。ああ、いろんな王族に開かれたこの体はローシュにはもったいない。エアルは初めて自分が汚いと思った。こんな自分を綺麗だと言ってくれる男に対し、申し訳ない気持ちになった。

 グズグズと腐っている間にも、ローシュからの愛撫は続く。男の指が後孔に入ってきたことで、エアルは一気に現実へと引き戻された。

「あっ、そこは……っ」

 身を清めた際に、その場所はとっくに自分でほぐしている。ローシュは欲望をあてがうだけでいいのに。

「もう……準備して、あります、から……っ」

 イヤイヤと首を横に振る。けれどローシュはエアルの蕾に侵入させた指を引き抜く気はないらしい。

「痛いか?」

 と訊かれ、思わず「気持ちいい、です」と馬鹿正直に答える。王子は「そうか」と嬉しそうにエアルの中に埋めた指を動かし始めた。

 ローシュが指を押し上げるたびに、弱点が刺激される。尿意にも似た快楽が、鞭で打つように下半身を襲う。

「あっ、ンっ、はあっ、だめっ……」

 ローシュの指によってリズミカルにそこを押されていると、あまりの気持ちよさで目の裏がチカチカした。このまま果てたい衝動に駆られたが、今日の目的はあくまでローシュへの手ほどきだ。併せて潤沢な若い欲求を解放させることが、自分の役割なのだ。

 エアルは力を振り絞って「待ってくださいっ」と訴える。

「す、すまない。つい夢中で」

 エアルの制止により、我に返ったようだ。ローシュはエアルの中から指を抜き、叱られた犬のように背中を丸めた。

「私だけが気持ちよくなってどうするんです」

「いいじゃないか。むしろ俺はエアルに気持ちよくなってほしい」

 これでは男の欲を発散させるために、ここへと来た意味がなくなってしまう。だが、そんなことを言えば、わざわざローシュに『早く結ばれたかった』なんて大袈裟に言った意味までもが薄れてしまう。もっと傷つけることになる。

 エアルは本音を腹の底に沈め、男の隆起した下半身に手を乗せた。

「先ほど申し上げたでしょう。私は早くあなたと結ばれたいのですよ」

 途端、男の目の色が変わった。再びベッドに背中を押し倒される。

「俺のことなんて……エアルにはなんでもお見通しなんだな」

 興奮気味の男が、切なく呟く。あれ、とエアルは相手の言い方が気になった。ローシュが純粋に喜んでいるわけじゃないのだと察する。

 もしかすると、気づいているのだろうか。自分がローシュの欲望を散らすために来たこと。端から自分に興味なんてないこと。そして、これを最後にするつもりで抱かれにきたことを――。

 ローシュは猪突猛進なところもあるが、決して馬鹿ではない。勘も鋭い。もしかすると、見通されているのは自分の方ではないのだろうか。

 疑念が沸いたものの、次の瞬間、後孔に男の熱があてがわれた。ローシュの熱杭による刺激を体が覚えているようだ。

 先端の侵入を許した瞬間から、エアルは何も考えられなくなった。

「く、ふぅ……っ、んぁ」

 ゆっくりと体内に入ってきたそれに、腹の奥まで支配される。圧迫感に息をするのもやっとだ。甘い苦しさに耐えつつ、エアルは少しずつ呼吸を整えた。
ローシュはこんなときでも、「痛くないか」とエアルの体を労わってくる。こっちは何百年生きていると思ってるんだ。何人の男の欲望を受け入れてきたと思っているんだ。

 強気な主張が沸いてくるが、熱を孕まされた体が言う事を聞かず、どれも言葉にすることができない。やっと出すことができた言葉は、

「はや、く……動ぃ、て、くださ……い」

 だった。

 なんて情けない。たった一回の侵入で、ここまですべてを持っていかれてしまうなんて。

 エアルの懇願に、男は腰を動かし始めることで答えた。

 ローシュが腰を抜いて差し込むたびに、ぷっくりと膨らんだ弱点を擦り潰していく。ため息が勝手に漏れ、たまらない感覚に生理的な涙が出る。

「もっ……こわ、い……っ」

 涙を流しながら訴えれば、ローシュは子どもをあやすように「怖かったら、俺にしがみついてくれ」と耳元で囁いた。

 その声にもだらしなく反応する下半身は、ローシュをさらに奥へ奥へと招く動きを加速させたらしい。「は、あ……っ」と声を殺しながら抱きしめてくる男の背中に、エアルは爪を立てた。

「少し激しくする。痛かったら俺の肩を噛めばいい」

 男がエアルを抱き起こす。自分の首にエアルの両腕を回す。対面で抱き合ったまま、ローシュはエアルの体を上下に揺さぶり始めた。

 男の機能を忘れたエアルの小ぶりの芯が、ローシュに突き上げられるたびに互いの腹の上で跳ねる。腕だけで支えた自分の体が、容赦なく男の杭を飲み込む刺激に眩暈がする。

「あんッ、ああっ、はっ、ぁン!」

 エアルは必死にローシュの首にしがみつきながら、下から突き上げてくる律動に耐えた。痛いどころか、優しさと激しさを一遍に与えられて死ぬほど気持ちがよかった。

 涙と汗が、自然に散ったエアルの羽根とともにシーツの上に散る。エアルが絶頂に身を震わせたのは、それから間もなくしてだ。

「ああっ、だめっ、イクッ、ああっ……!」

「イケよ……エアルのイってるところが見たい」

 ローシュも限界が近づいていたのだろう。律動がより激しくなり、エアルの中に収めていた屹立がより硬度を増した。

 自分ではどうしようもないほど高められた性感は、ローシュの漏らした「くっ!」という声と、体内で爆ぜる感覚に呼応して弾けた。

 喉仏を浮かせたオトガイを弓の背のように反らせたまま、天井を薄目で見上げる。涙でシャンデリアがきらきらと光っている。

 互いの荒い息に包まれながら、エアルは全身を駆け巡る絶頂の余韻に浸った。




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