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本気の嘘
④
しおりを挟む抱き合いながらベッドに転がされ、あっという間にローブを剥ぎ取られる。今日は自分で解く余裕があるようだ。ローシュは指でエアルの腰紐を解き、下半身を隠していた下着をするりと抜き取った。
「は……エアルは綺麗だな」
堪らないという表情で、裸になった自分をローシュが見下ろしてくる。思わずエアルはキョトンとしてから、じわじわとこみ上げてくる恥じらいに手で顔を隠した。
「……それはどうも」
「顔、見せて」
手をやんわりと顔の上から退けられる。目を合わせると、
「やっぱり綺麗だ」
ローシュは満足そうに微笑んだ。その笑顔に、ぎゅっと胸が苦しくなる。
必要ないじゃないかと思った。こんなにも相手のことを思いやることができるのだ。相手が喜ぶ言葉を紡げるのだ。自分の手ほどきなんて、自分が教えられることなんて、ローシュにはない……。
なぜか涙が出そうになり、エアルはローシュにたっぷりと愛でられたばかりの唇を噛んだ。
罪悪感が募る。ああ、いろんな王族に開かれたこの体はローシュにはもったいない。エアルは初めて自分が汚いと思った。こんな自分を綺麗だと言ってくれる男に対し、申し訳ない気持ちになった。
グズグズと腐っている間にも、ローシュからの愛撫は続く。男の指が後孔に入ってきたことで、エアルは一気に現実へと引き戻された。
「あっ、そこは……っ」
身を清めた際に、その場所はとっくに自分でほぐしている。ローシュは欲望をあてがうだけでいいのに。
「もう……準備して、あります、から……っ」
イヤイヤと首を横に振る。けれどローシュはエアルの蕾に侵入させた指を引き抜く気はないらしい。
「痛いか?」
と訊かれ、思わず「気持ちいい、です」と馬鹿正直に答える。王子は「そうか」と嬉しそうにエアルの中に埋めた指を動かし始めた。
ローシュが指を押し上げるたびに、弱点が刺激される。尿意にも似た快楽が、鞭で打つように下半身を襲う。
「あっ、ンっ、はあっ、だめっ……」
ローシュの指によってリズミカルにそこを押されていると、あまりの気持ちよさで目の裏がチカチカした。このまま果てたい衝動に駆られたが、今日の目的はあくまでローシュへの手ほどきだ。併せて潤沢な若い欲求を解放させることが、自分の役割なのだ。
エアルは力を振り絞って「待ってくださいっ」と訴える。
「す、すまない。つい夢中で」
エアルの制止により、我に返ったようだ。ローシュはエアルの中から指を抜き、叱られた犬のように背中を丸めた。
「私だけが気持ちよくなってどうするんです」
「いいじゃないか。むしろ俺はエアルに気持ちよくなってほしい」
これでは男の欲を発散させるために、ここへと来た意味がなくなってしまう。だが、そんなことを言えば、わざわざローシュに『早く結ばれたかった』なんて大袈裟に言った意味までもが薄れてしまう。もっと傷つけることになる。
エアルは本音を腹の底に沈め、男の隆起した下半身に手を乗せた。
「先ほど申し上げたでしょう。私は早くあなたと結ばれたいのですよ」
途端、男の目の色が変わった。再びベッドに背中を押し倒される。
「俺のことなんて……エアルにはなんでもお見通しなんだな」
興奮気味の男が、切なく呟く。あれ、とエアルは相手の言い方が気になった。ローシュが純粋に喜んでいるわけじゃないのだと察する。
もしかすると、気づいているのだろうか。自分がローシュの欲望を散らすために来たこと。端から自分に興味なんてないこと。そして、これを最後にするつもりで抱かれにきたことを――。
ローシュは猪突猛進なところもあるが、決して馬鹿ではない。勘も鋭い。もしかすると、見通されているのは自分の方ではないのだろうか。
疑念が沸いたものの、次の瞬間、後孔に男の熱があてがわれた。ローシュの熱杭による刺激を体が覚えているようだ。
先端の侵入を許した瞬間から、エアルは何も考えられなくなった。
「く、ふぅ……っ、んぁ」
ゆっくりと体内に入ってきたそれに、腹の奥まで支配される。圧迫感に息をするのもやっとだ。甘い苦しさに耐えつつ、エアルは少しずつ呼吸を整えた。
ローシュはこんなときでも、「痛くないか」とエアルの体を労わってくる。こっちは何百年生きていると思ってるんだ。何人の男の欲望を受け入れてきたと思っているんだ。
強気な主張が沸いてくるが、熱を孕まされた体が言う事を聞かず、どれも言葉にすることができない。やっと出すことができた言葉は、
「はや、く……動ぃ、て、くださ……い」
だった。
なんて情けない。たった一回の侵入で、ここまですべてを持っていかれてしまうなんて。
エアルの懇願に、男は腰を動かし始めることで答えた。
ローシュが腰を抜いて差し込むたびに、ぷっくりと膨らんだ弱点を擦り潰していく。ため息が勝手に漏れ、たまらない感覚に生理的な涙が出る。
「もっ……こわ、い……っ」
涙を流しながら訴えれば、ローシュは子どもをあやすように「怖かったら、俺にしがみついてくれ」と耳元で囁いた。
その声にもだらしなく反応する下半身は、ローシュをさらに奥へ奥へと招く動きを加速させたらしい。「は、あ……っ」と声を殺しながら抱きしめてくる男の背中に、エアルは爪を立てた。
「少し激しくする。痛かったら俺の肩を噛めばいい」
男がエアルを抱き起こす。自分の首にエアルの両腕を回す。対面で抱き合ったまま、ローシュはエアルの体を上下に揺さぶり始めた。
男の機能を忘れたエアルの小ぶりの芯が、ローシュに突き上げられるたびに互いの腹の上で跳ねる。腕だけで支えた自分の体が、容赦なく男の杭を飲み込む刺激に眩暈がする。
「あんッ、ああっ、はっ、ぁン!」
エアルは必死にローシュの首にしがみつきながら、下から突き上げてくる律動に耐えた。痛いどころか、優しさと激しさを一遍に与えられて死ぬほど気持ちがよかった。
涙と汗が、自然に散ったエアルの羽根とともにシーツの上に散る。エアルが絶頂に身を震わせたのは、それから間もなくしてだ。
「ああっ、だめっ、イクッ、ああっ……!」
「イケよ……エアルのイってるところが見たい」
ローシュも限界が近づいていたのだろう。律動がより激しくなり、エアルの中に収めていた屹立がより硬度を増した。
自分ではどうしようもないほど高められた性感は、ローシュの漏らした「くっ!」という声と、体内で爆ぜる感覚に呼応して弾けた。
喉仏を浮かせたオトガイを弓の背のように反らせたまま、天井を薄目で見上げる。涙でシャンデリアがきらきらと光っている。
互いの荒い息に包まれながら、エアルは全身を駆け巡る絶頂の余韻に浸った。
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