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終章
02
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マリアーナとアストリッドが初対面を終えたあと、あれほど子爵邸を出て行くのを拒んでいた継母とティーナが「帰る」と急に言い出した。
どういう心境の変化か不審に思わないではなかったが、家族がこれ以上子爵家に迷惑をかけるのは避けたかったため、マリアーナは何も言わず見送ることにした。
マリアーナとソフィアとフランが見送る中、同じように玄関先に現れた子爵が護衛をつけると申し出る。
ところが、なぜか継母がそれを断った。
「先ほどお会いしたアストリッド様が、女性お二人での旅は辛いだろうと仰って、ご自身の護衛をわたくしたちに貸し与えてくださったの。――とてもお優しい方だわ。どこかの誰かと違って」
見れば門前に着けていた馬車の周囲に数人の兵士が見える。
最後に付け加えられた言葉はマリアーナを当て擦ったものだろうが、マリアーナ自身も子爵邸の客人に過ぎず何かをしてやれる権限などない。
しかしそれよりもマリアーナはアストリッドの配慮に違和感を覚えた。
(先ほどはティペリッシュの人間を蔑んで憚らなかったのに……)
それでもアストリッドの厚意を断る理由が浮かばない。
不信感を胸に抱えたまま継母らを見送った。
そして、その不安は的中する。
翌朝、継母らの護衛についていた兵士が慌てた様子で戻って来た。
ソフィアとともに朝の身支度をしていたマリアーナは、様子を見に行っていたルイースから報告を聞き思わず立ち上がっていた。
「お継母さまとティーナが、行方不明……!」
道中、賊と思しき集団に襲われ護衛としてついていた兵士がそれに応戦していたが、継母もティーナも恐怖に錯乱して馬車を飛び出し森の中に逃げ込んだのだと言う。
驚きに固まるマリアーナに、ルイースがおずおずと報告を付け加える。
「その……アストリッド様から伝言が――」
『わたくしの兵士はちゃんと護衛の仕事を果たしたわ。あとはマリアーナ様がどうにかするべきよね? マリアーナ様のご家族のことなんだから』
護衛対象の姿を見失った時点で仕事を果たしたと言えないのではと思うが、本来であればアストリッドに護衛を頼むべきではなかったのだ。
やはり断るべきだったのだと考えれば、アストリッドを責めたところでどうしようもないと思えた。
それよりも継母らをどうするか考えなくては――。
「俺は行くべきではないと思います」
そう助言するのはルイースとともに部屋に現れたフランだった。
表情は硬く警戒心を顕わにしている。
その隣で同じく厳しい顔をしてソフィアが頷く。
「わたしもそう思います。これは罠の可能性が高いです」
ソフィアが『罠だ』と断じる理由はマリアーナにも分かる。
兵士に『どこで襲われたのか』と子爵が周囲の地図をもとに聞けば、彼らが指した場所はここよりそれほど離れていない。
では一晩どうしていたのかと聞けば、行方不明の彼女らを必死に探していたのだと言う。
彼女らはどの方角へ向かったかとまた子爵が問えば、彼らが指した方向にはあの湖があった。
『塔が怪しいと思ったが、立ち入り禁止なので入って探すことができなかった。声をかけたが応答もなかったので……』
兵士の報告に子爵も難しい表情をしていたらしい。
だが森の管理を任されているのは子爵だ。傍で話を聞いていたルイースに子爵は『私と兵士で探しに行く』と伝えてきたのだという。
「わたしも、これは罠だと思います。子爵に任せるべきかと……」
やはり遠慮がちにルイースがそう付け加える。
報告とそれぞれの助言を聞き終えて、マリアーナはしばし黙考する。
(義理とはいえ母だし、ティーナとは半分血の繋がりがある家族よ――アストリッド様の仰る通り、わたしがどうにかしなくてはいけないことだわ)
しかしアルベルトとの婚約の契約上、マリアーナは必ず護衛とともに行動しないといけない。
現在、マリアーナの護衛としてつけられているのはフランだ。
アルベルトの信頼が厚いことを考えれば、彼の腕は確かなのだと思える。
(だけど、複数人で襲われてはたとえどんなに強くても、護衛対象を抱えて戦うのは厳しいはず……)
フランを必要以上に危険な目に遭わせるわけにはいかない。彼はソフィアの恋人なのだから、彼女を悲しませるようなことはしたくない。
ではやはり兵士が必要だ。子爵に自分が行くので兵士を借りれないかと相談しようと、マリアーナは立ち上がった。
「みんなの懸念はもっともだと思うわ。でも、アストリッド様の仰る通りもしお継母さまやティーナが何か企んでいるのなら、わたしがどうにかしなければならない問題だと思うの。フラン様、申し訳ないのだけど……」
そう言ってフランを見上げれば、彼はしばし沈黙したのち大きく息を吐き出した。
「あなたに何かあれば俺の首が文字通り飛ぶんですが……決して俺から離れずご自分の安全を第一に行動するとお約束ください」
「ええ、約束するわ。危険なことは何もしない」
きっぱりと断言すればフランは諦めたようにまた息を吐いて、「では子爵とご相談しましょう」と出口に向かう。
マリアーナもそちらへ向かいかけて、侍女たちを振り返った。
「ソフィア、ルイース、心配かけるけど――」
「マリアーナ様、わたしも同行します」
「ソフィア……」
「わっ、わたしも――!」
「ルイース……」
心配からだろう、そう言ってくれる二人の思いに胸を打たれる。
だが護衛対象が増えればそれだけ危険は増す。どう断ろうかと考えていたらソフィアが厳しい口調でルイースを窘める。
「ルイース、これはピクニックではないのよ。わたしは護身術を身につけているけど、あなたは自分の身を自分で守ることもできないでしょう? マリアーナ様の危険が増すだけよ。今回は諦めなさい」
珍しくマリアーナの前で叱責しているが、それほど切迫した状況だと思ったからだろう。
ルイースは諦めたように肩を落とし、ソフィアは頑としてついてくる姿勢を崩さない。
こうなったら梃子でも動かないと知っているマリアーナは、説得を諦めるとソフィアを伴って部屋をあとにした。
玄関前のエントランスに向かえば、準備を終えた子爵が夫人に何やら言葉をかけている。
子爵に歩み寄ってマリアーナは、単刀直入に自分が行くことを伝えた。
「ユーリーン子爵様、これ以上わたしの家族のことでご迷惑をおかけすることはできません。わたしが探しに向かいます。ですが、できれば兵士をお借りしたく思っております。お願いできませんでしょうか」
「それはもちろん……ですが、くれぐれもマリアーナ様をよろしくとルーベンソン公爵閣下から言い遣っております。あなたに何かあれば私がお叱りを受けます」
「もちろん重々気を付けますし、お叱りはわたしがお引き受けいたします。これ以上子爵様にご迷惑はおかけいたしません」
心配そうにしながらも、きっぱりと断言するマリアーナを説得するのは難しいと思ったのか、子爵が「それでしたら……」と頷きかけた――その時。
「あら、今でも十分に子爵へ迷惑をかけているのではなくて?」
そう間に割って入ってきたのは、いつからそこに居たのかアストリッドだった。
こちらを侮る笑みを隠そうともせず言い募る。
「子爵邸に滞在し、家族も無作法に滞在を要求し、そればかりか管理している森で行方を晦ますなんて――おまけに兵士を借りたいなどと厚顔無恥が過ぎるのではない?」
これまでのマリアーナであれば顔を赤くするか、あるいは青くして身を竦めたかもしれない。
しかし、賊に襲われた家族が行方不明になる状況に加えて、アストリッドの指摘があまりにも的外れのため至極冷静にマリアーナは彼女へ向き直った。
姿勢を正しまっすぐにアストリッドを見つめる。
「わたしはアルベルト様と婚約した際、契約を交わしています。そこには『護衛を断ることはできない』とありました。わたしは護衛なく単独での行動はできません」
「そんなこと……」
知ったことではない、と言いたかったのだろうが契約した相手がアルベルトだと考えれば、突き放すような物言いなどできなかったのだろう。
「今わたしの護衛をしてくださってるのはフラン様です。アルベルト様の信頼厚い方ですが、いくら腕が立つ方であっても多勢であれば危険は増します」
「……」
「街歩きであればフラン様一人にお願いするところではありますが、これから向かうのは森の中です。しかも賊が出たというご報告をされたのは、アストリッド様が貸し与えた護衛の方々です」
淡々と事実を並べればアストリッドの口が尖っていく。
叱られて反発する子供のような反応だ。
「何かあるか分かりませんし、お継母さまもティーナも何かに巻き込まれた可能性があります。この状況で護衛を複数連れて行くのは当然のことと思われますが――アストリッド様はわたしに単身で行けと仰るのでしょうか」
「そ、そんなこと――言ってないわ」
先ほどの発言はそう言っているようなものだったが、事実を突きつけられてそれを認めることができなかったらしい。
あるいはマリアーナがここまで言い返すとは思っていなかったのかも知れない。
少し強めに牽制すれば、自分から『一人で行きます』と言い出すと思ったのだろうか。
苛立ちを顕わにした表情で黙ってしまったアストリッドに、マリアーナはさらに言葉を重ねた。
「わたしの家族がご迷惑をおかけしたことに関しては子爵様に申し訳なく思いますが、それ以外に関してたとえアルベルト様の従妹様であろうとも、苦言を頂く理由はないかと思います。ここにわたしが滞在するのはアルベルト様のご意思であると重々ご承知くださいませ」
どういう心境の変化か不審に思わないではなかったが、家族がこれ以上子爵家に迷惑をかけるのは避けたかったため、マリアーナは何も言わず見送ることにした。
マリアーナとソフィアとフランが見送る中、同じように玄関先に現れた子爵が護衛をつけると申し出る。
ところが、なぜか継母がそれを断った。
「先ほどお会いしたアストリッド様が、女性お二人での旅は辛いだろうと仰って、ご自身の護衛をわたくしたちに貸し与えてくださったの。――とてもお優しい方だわ。どこかの誰かと違って」
見れば門前に着けていた馬車の周囲に数人の兵士が見える。
最後に付け加えられた言葉はマリアーナを当て擦ったものだろうが、マリアーナ自身も子爵邸の客人に過ぎず何かをしてやれる権限などない。
しかしそれよりもマリアーナはアストリッドの配慮に違和感を覚えた。
(先ほどはティペリッシュの人間を蔑んで憚らなかったのに……)
それでもアストリッドの厚意を断る理由が浮かばない。
不信感を胸に抱えたまま継母らを見送った。
そして、その不安は的中する。
翌朝、継母らの護衛についていた兵士が慌てた様子で戻って来た。
ソフィアとともに朝の身支度をしていたマリアーナは、様子を見に行っていたルイースから報告を聞き思わず立ち上がっていた。
「お継母さまとティーナが、行方不明……!」
道中、賊と思しき集団に襲われ護衛としてついていた兵士がそれに応戦していたが、継母もティーナも恐怖に錯乱して馬車を飛び出し森の中に逃げ込んだのだと言う。
驚きに固まるマリアーナに、ルイースがおずおずと報告を付け加える。
「その……アストリッド様から伝言が――」
『わたくしの兵士はちゃんと護衛の仕事を果たしたわ。あとはマリアーナ様がどうにかするべきよね? マリアーナ様のご家族のことなんだから』
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やはり断るべきだったのだと考えれば、アストリッドを責めたところでどうしようもないと思えた。
それよりも継母らをどうするか考えなくては――。
「俺は行くべきではないと思います」
そう助言するのはルイースとともに部屋に現れたフランだった。
表情は硬く警戒心を顕わにしている。
その隣で同じく厳しい顔をしてソフィアが頷く。
「わたしもそう思います。これは罠の可能性が高いです」
ソフィアが『罠だ』と断じる理由はマリアーナにも分かる。
兵士に『どこで襲われたのか』と子爵が周囲の地図をもとに聞けば、彼らが指した場所はここよりそれほど離れていない。
では一晩どうしていたのかと聞けば、行方不明の彼女らを必死に探していたのだと言う。
彼女らはどの方角へ向かったかとまた子爵が問えば、彼らが指した方向にはあの湖があった。
『塔が怪しいと思ったが、立ち入り禁止なので入って探すことができなかった。声をかけたが応答もなかったので……』
兵士の報告に子爵も難しい表情をしていたらしい。
だが森の管理を任されているのは子爵だ。傍で話を聞いていたルイースに子爵は『私と兵士で探しに行く』と伝えてきたのだという。
「わたしも、これは罠だと思います。子爵に任せるべきかと……」
やはり遠慮がちにルイースがそう付け加える。
報告とそれぞれの助言を聞き終えて、マリアーナはしばし黙考する。
(義理とはいえ母だし、ティーナとは半分血の繋がりがある家族よ――アストリッド様の仰る通り、わたしがどうにかしなくてはいけないことだわ)
しかしアルベルトとの婚約の契約上、マリアーナは必ず護衛とともに行動しないといけない。
現在、マリアーナの護衛としてつけられているのはフランだ。
アルベルトの信頼が厚いことを考えれば、彼の腕は確かなのだと思える。
(だけど、複数人で襲われてはたとえどんなに強くても、護衛対象を抱えて戦うのは厳しいはず……)
フランを必要以上に危険な目に遭わせるわけにはいかない。彼はソフィアの恋人なのだから、彼女を悲しませるようなことはしたくない。
ではやはり兵士が必要だ。子爵に自分が行くので兵士を借りれないかと相談しようと、マリアーナは立ち上がった。
「みんなの懸念はもっともだと思うわ。でも、アストリッド様の仰る通りもしお継母さまやティーナが何か企んでいるのなら、わたしがどうにかしなければならない問題だと思うの。フラン様、申し訳ないのだけど……」
そう言ってフランを見上げれば、彼はしばし沈黙したのち大きく息を吐き出した。
「あなたに何かあれば俺の首が文字通り飛ぶんですが……決して俺から離れずご自分の安全を第一に行動するとお約束ください」
「ええ、約束するわ。危険なことは何もしない」
きっぱりと断言すればフランは諦めたようにまた息を吐いて、「では子爵とご相談しましょう」と出口に向かう。
マリアーナもそちらへ向かいかけて、侍女たちを振り返った。
「ソフィア、ルイース、心配かけるけど――」
「マリアーナ様、わたしも同行します」
「ソフィア……」
「わっ、わたしも――!」
「ルイース……」
心配からだろう、そう言ってくれる二人の思いに胸を打たれる。
だが護衛対象が増えればそれだけ危険は増す。どう断ろうかと考えていたらソフィアが厳しい口調でルイースを窘める。
「ルイース、これはピクニックではないのよ。わたしは護身術を身につけているけど、あなたは自分の身を自分で守ることもできないでしょう? マリアーナ様の危険が増すだけよ。今回は諦めなさい」
珍しくマリアーナの前で叱責しているが、それほど切迫した状況だと思ったからだろう。
ルイースは諦めたように肩を落とし、ソフィアは頑としてついてくる姿勢を崩さない。
こうなったら梃子でも動かないと知っているマリアーナは、説得を諦めるとソフィアを伴って部屋をあとにした。
玄関前のエントランスに向かえば、準備を終えた子爵が夫人に何やら言葉をかけている。
子爵に歩み寄ってマリアーナは、単刀直入に自分が行くことを伝えた。
「ユーリーン子爵様、これ以上わたしの家族のことでご迷惑をおかけすることはできません。わたしが探しに向かいます。ですが、できれば兵士をお借りしたく思っております。お願いできませんでしょうか」
「それはもちろん……ですが、くれぐれもマリアーナ様をよろしくとルーベンソン公爵閣下から言い遣っております。あなたに何かあれば私がお叱りを受けます」
「もちろん重々気を付けますし、お叱りはわたしがお引き受けいたします。これ以上子爵様にご迷惑はおかけいたしません」
心配そうにしながらも、きっぱりと断言するマリアーナを説得するのは難しいと思ったのか、子爵が「それでしたら……」と頷きかけた――その時。
「あら、今でも十分に子爵へ迷惑をかけているのではなくて?」
そう間に割って入ってきたのは、いつからそこに居たのかアストリッドだった。
こちらを侮る笑みを隠そうともせず言い募る。
「子爵邸に滞在し、家族も無作法に滞在を要求し、そればかりか管理している森で行方を晦ますなんて――おまけに兵士を借りたいなどと厚顔無恥が過ぎるのではない?」
これまでのマリアーナであれば顔を赤くするか、あるいは青くして身を竦めたかもしれない。
しかし、賊に襲われた家族が行方不明になる状況に加えて、アストリッドの指摘があまりにも的外れのため至極冷静にマリアーナは彼女へ向き直った。
姿勢を正しまっすぐにアストリッドを見つめる。
「わたしはアルベルト様と婚約した際、契約を交わしています。そこには『護衛を断ることはできない』とありました。わたしは護衛なく単独での行動はできません」
「そんなこと……」
知ったことではない、と言いたかったのだろうが契約した相手がアルベルトだと考えれば、突き放すような物言いなどできなかったのだろう。
「今わたしの護衛をしてくださってるのはフラン様です。アルベルト様の信頼厚い方ですが、いくら腕が立つ方であっても多勢であれば危険は増します」
「……」
「街歩きであればフラン様一人にお願いするところではありますが、これから向かうのは森の中です。しかも賊が出たというご報告をされたのは、アストリッド様が貸し与えた護衛の方々です」
淡々と事実を並べればアストリッドの口が尖っていく。
叱られて反発する子供のような反応だ。
「何かあるか分かりませんし、お継母さまもティーナも何かに巻き込まれた可能性があります。この状況で護衛を複数連れて行くのは当然のことと思われますが――アストリッド様はわたしに単身で行けと仰るのでしょうか」
「そ、そんなこと――言ってないわ」
先ほどの発言はそう言っているようなものだったが、事実を突きつけられてそれを認めることができなかったらしい。
あるいはマリアーナがここまで言い返すとは思っていなかったのかも知れない。
少し強めに牽制すれば、自分から『一人で行きます』と言い出すと思ったのだろうか。
苛立ちを顕わにした表情で黙ってしまったアストリッドに、マリアーナはさらに言葉を重ねた。
「わたしの家族がご迷惑をおかけしたことに関しては子爵様に申し訳なく思いますが、それ以外に関してたとえアルベルト様の従妹様であろうとも、苦言を頂く理由はないかと思います。ここにわたしが滞在するのはアルベルト様のご意思であると重々ご承知くださいませ」
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