思い出

山田 廉

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一章

第1話 始業

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 桜の花ももう残っていない四月の半ば、新学期を迎えてもう一週間以上経っている。
  ここは数年前に出来たばかりの新設校だ。傷ひとつない壁、綺麗な廊下に、新しいを連想させる学校である。もちろん教室ひとつひとつも綺麗である。その中の2-4という札のついた教室からガヤガヤと喋り声が聞こえてくる。

 「萩原先生って、怒るとすごく怖いらしいよ」
 「えー?本当に?」
 「高1の時にすごく怒られて一週間休んだ人もいるくらいだよ。」
 「えー!」
  萩原先生とはこのクラス2年4組の担任の先生である。黒縁の眼鏡をかけており、身体は大柄で学生時代はサッカーをしていたらしい。でも根は優しくて、なかなか生徒のことをわかる先生だ。だから人気があり、2年4組は始業式の日、当たりクラスとも言われた。
  
  クラスの人たちは新しい先生、新しい教室、新しいクラスメイトに新鮮味を感じているのか、みんなどこか緊張しながら、新しい友達を作ろうと頑張っている。
  そんな中、1人ぽつんと教室の机で本を読んでいる人がいる。そう、それが僕だ。
  正直人と話すのは得意ではない。どちらかというと苦手な方だ。というより、人と話すのに興味がない、という表現の方が合っているだろう。
  だからクラスメイトたちはこんな僕に話しかけようとしない。もしかしたらそういう人を寄せ付けないオーラを発しているのかもしれない。
  かといって、話しかけてくる人が1人もいないわけでもない。こんな僕にも話しかけに来てくれる人もいる。しかし二、三言で大体話は終わってしまう。
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