16 / 18
FILE3 脅迫状
第十四話「......あ、そういうことね。了解」
しおりを挟む
山の広場から見える僧侶の背中。それは一島町名物"一島"以外ないであろう。そして、空を通らない道の入り口......空以外の道は、陸と海。つまり、海に囲まれた一島に向かう道は海しかない。その入り口......海岸に今、私は一人で来ている。時計は持ってきていないけどまもなく6時だろう。
「......場所ハワカッタヨウダナ」
いきなり後ろから声がかかる。
「君って姿が消えるの? そうじゃないとすれば瞬間移動?」
振り替えると、後ろにはすでに亀の化け物と女の子が立っている。
「前者ダ。ソンナコトヨリモ、例ノ物ハ持ッテキタカ?」
「もちろん。ちゃんと例の物と着ている衣服以外は持ってきていないよ」
そう言いながら、私はポケットの中に手を入れる。
シロナちゃんの忘れ物......それは、"ビニール"だ。
「......」
女の子がスマホを取り出して、カメラをビニールに写し始めた......
「......なにやってるの?」
「シロナお姉ちゃんに見せるの。お姉ちゃんがいいって言ったらおじさんは合格」
「へえー、活用しているねえ」
私は時代遅れのガラケーだからスマホのことは詳しくないけど、合格なら電話してくれるのかな?
「......上宮、オ前ハドウシテコレダト思ッタ?」
「うーん、あの脅迫状にもヒントを書いてくれたおかげかな?」
あのビニール袋に書かれていたのは"卵カツドック"、つまり、私が初めてシロナちゃんと会った時に食べていた卵カツドックの袋だ。今日見つけるまで気づかなかったが、あの時食べ終わった後に袋を閉まった記憶がない。うっかりその場に捨ててしまったのであろう。
シロナちゃんはかつては人間だった実感を感じるために、落とし物を拾っている。久しぶりに人間である私と会話した時に拾った物......それが彼女の大切な忘れ物だ。
......でも実を言うと、消去法でこの答えを導き出したような気がするけどねえ。まず、マンホールオープナーは私に譲らないほどこだわりがあるみたいだけど、ビニールと違ってその理由が解らない。次に写真。初めて見た時は、もしかして人間だったころのシロナちゃん? と思ったけど、そう感じるなら隠さずにとっくに私に見せるもんだと思う。恐らく気になったものの記憶に結び付く手がかりにならずに廃墟に放置したんだろう。そして廃墟に放置されたタオル......ある意味大事な物だけど、私の化け物に対する考え方を試すテストの答えではない気がする。オープナーと同じく理由も見つからないし。他の要素も考えてみたけど、それらは可能性が低すぎるから省略だ。早い話、ビニールを選んだ理由は、シロナちゃんが大事な物に選ぶ根拠があるだけだ。
消去法以外の根拠を亀の化け物に話していると、女の子のスマホの着信音が聞こえてきた。女の子が電話に出ている間。私の口の中には言葉がない。まるで選考結果を待ちわびる学生の気分だね。
「......おじさん、ゴーカクだって」
やりましたっ!! これはガッツポーズものだあっ!!
「ソレデハ、案内スルトシヨウ」
そう言いながら亀の化け物は海の方向を向いた。
「......サア、乗レ」
「どこに?」
「ここに」
女の子は亀の化け物の甲羅に手を入れた。なんと、亀の化け物の甲羅はゴムのように伸び縮みしており、甲羅の内側に空間がある。
その甲羅の中に入った感想......うん、大人の私でも十分に入れる大きさだ。ゴムのように伸び縮みする甲羅の中からは外の様子がよく見える。
「先ニ上宮ヲ連レテイク。加奈、スマナイガ少シ待ッテクレ」
へえー、その子は加奈って言うのか......どっかで聞いたことのある名前だな。
そう考えていると、急に亀の化け物の姿が消えた。甲羅の中の私は中を浮いている錯覚に陥る。どうやら、この亀の化け物が突然消えたり現れたりするのはこの能力のおかげみたいだ。
「上宮、甲羅ノ中ハ空気ガアル。パニックニナルナヨ」
空気......パニック......
「......あ、そういうことね。了解」
私を乗せた亀の化け物は、海へ向かって歩き始め......
海の中を亀の化け物はかぎ分けて行く。甲羅の中の私は見ているだけ。呼吸を止める必要もなし。このまま浦島太郎気分を堪能しながら、一島という名の竜宮城で起きる出来事を心待ちしよう。
「......あっという間だねえ」
一島の陸に足を着けながら呟いてみる。暗闇の中の向こう側の光が、建物があることを伝えてくれる。
「アノ建物ノ中デ、"博士"ガ待ッテイル」
「もしかして、その博士ってのが脅迫状を?」
「ソウダ。博士ハ実験デ忙シイカラスグニハ姿ヲ現サナイ。中デ待ッテイルトイイ」
そう言って亀の化け物は海の中へと消えて行った。
建物の入り口まで来た時、その横に奇妙な壁があることに気づいた。四角い模様が並んでいる。その様子はまるで......
「......歯みたいだね」
一島に纏わる都市伝説を思い出す。もしも本当に僧侶がこの島に変わったとしたら......ここから島の内部に行けたらいいなあ......
「上宮サン......?」
建物の入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。その方向を見て私は思わず息を止めた。
大きく雰囲気を変えたシロナちゃんが建物の前に立っている。タオル一枚だったころと違い、水色のワンピースを来ており、おでこには包帯、そして肩まで伸びていた髪はミディアムウルフで整えられている。
その衣装と彼女の白い爬虫類の皮膚、そして眼球代わりの触覚が、異形ながらも不思議な美しさを出している......
「......場所ハワカッタヨウダナ」
いきなり後ろから声がかかる。
「君って姿が消えるの? そうじゃないとすれば瞬間移動?」
振り替えると、後ろにはすでに亀の化け物と女の子が立っている。
「前者ダ。ソンナコトヨリモ、例ノ物ハ持ッテキタカ?」
「もちろん。ちゃんと例の物と着ている衣服以外は持ってきていないよ」
そう言いながら、私はポケットの中に手を入れる。
シロナちゃんの忘れ物......それは、"ビニール"だ。
「......」
女の子がスマホを取り出して、カメラをビニールに写し始めた......
「......なにやってるの?」
「シロナお姉ちゃんに見せるの。お姉ちゃんがいいって言ったらおじさんは合格」
「へえー、活用しているねえ」
私は時代遅れのガラケーだからスマホのことは詳しくないけど、合格なら電話してくれるのかな?
「......上宮、オ前ハドウシテコレダト思ッタ?」
「うーん、あの脅迫状にもヒントを書いてくれたおかげかな?」
あのビニール袋に書かれていたのは"卵カツドック"、つまり、私が初めてシロナちゃんと会った時に食べていた卵カツドックの袋だ。今日見つけるまで気づかなかったが、あの時食べ終わった後に袋を閉まった記憶がない。うっかりその場に捨ててしまったのであろう。
シロナちゃんはかつては人間だった実感を感じるために、落とし物を拾っている。久しぶりに人間である私と会話した時に拾った物......それが彼女の大切な忘れ物だ。
......でも実を言うと、消去法でこの答えを導き出したような気がするけどねえ。まず、マンホールオープナーは私に譲らないほどこだわりがあるみたいだけど、ビニールと違ってその理由が解らない。次に写真。初めて見た時は、もしかして人間だったころのシロナちゃん? と思ったけど、そう感じるなら隠さずにとっくに私に見せるもんだと思う。恐らく気になったものの記憶に結び付く手がかりにならずに廃墟に放置したんだろう。そして廃墟に放置されたタオル......ある意味大事な物だけど、私の化け物に対する考え方を試すテストの答えではない気がする。オープナーと同じく理由も見つからないし。他の要素も考えてみたけど、それらは可能性が低すぎるから省略だ。早い話、ビニールを選んだ理由は、シロナちゃんが大事な物に選ぶ根拠があるだけだ。
消去法以外の根拠を亀の化け物に話していると、女の子のスマホの着信音が聞こえてきた。女の子が電話に出ている間。私の口の中には言葉がない。まるで選考結果を待ちわびる学生の気分だね。
「......おじさん、ゴーカクだって」
やりましたっ!! これはガッツポーズものだあっ!!
「ソレデハ、案内スルトシヨウ」
そう言いながら亀の化け物は海の方向を向いた。
「......サア、乗レ」
「どこに?」
「ここに」
女の子は亀の化け物の甲羅に手を入れた。なんと、亀の化け物の甲羅はゴムのように伸び縮みしており、甲羅の内側に空間がある。
その甲羅の中に入った感想......うん、大人の私でも十分に入れる大きさだ。ゴムのように伸び縮みする甲羅の中からは外の様子がよく見える。
「先ニ上宮ヲ連レテイク。加奈、スマナイガ少シ待ッテクレ」
へえー、その子は加奈って言うのか......どっかで聞いたことのある名前だな。
そう考えていると、急に亀の化け物の姿が消えた。甲羅の中の私は中を浮いている錯覚に陥る。どうやら、この亀の化け物が突然消えたり現れたりするのはこの能力のおかげみたいだ。
「上宮、甲羅ノ中ハ空気ガアル。パニックニナルナヨ」
空気......パニック......
「......あ、そういうことね。了解」
私を乗せた亀の化け物は、海へ向かって歩き始め......
海の中を亀の化け物はかぎ分けて行く。甲羅の中の私は見ているだけ。呼吸を止める必要もなし。このまま浦島太郎気分を堪能しながら、一島という名の竜宮城で起きる出来事を心待ちしよう。
「......あっという間だねえ」
一島の陸に足を着けながら呟いてみる。暗闇の中の向こう側の光が、建物があることを伝えてくれる。
「アノ建物ノ中デ、"博士"ガ待ッテイル」
「もしかして、その博士ってのが脅迫状を?」
「ソウダ。博士ハ実験デ忙シイカラスグニハ姿ヲ現サナイ。中デ待ッテイルトイイ」
そう言って亀の化け物は海の中へと消えて行った。
建物の入り口まで来た時、その横に奇妙な壁があることに気づいた。四角い模様が並んでいる。その様子はまるで......
「......歯みたいだね」
一島に纏わる都市伝説を思い出す。もしも本当に僧侶がこの島に変わったとしたら......ここから島の内部に行けたらいいなあ......
「上宮サン......?」
建物の入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。その方向を見て私は思わず息を止めた。
大きく雰囲気を変えたシロナちゃんが建物の前に立っている。タオル一枚だったころと違い、水色のワンピースを来ており、おでこには包帯、そして肩まで伸びていた髪はミディアムウルフで整えられている。
その衣装と彼女の白い爬虫類の皮膚、そして眼球代わりの触覚が、異形ながらも不思議な美しさを出している......
0
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる