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FILE3 脅迫状
第十五話「人と同じことは嫌いなんだ」
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建物の正体は館だった。私は今、シロナちゃんに連れられて応接間へと向かっているところだ。廊下の内装は、今にもお化けが出そうだった。
「シロナちゃん、雰囲気変わったね」
「ウン......"博士"ノオカゲナノ」
「博士って......どんな人なの?」
「ウ......ウン......」
......? なぜかシロナちゃんはうつむいた。
「まさか、マッドサイエンティスト?」
「......ナノカナア......デモ、ソコマデ悪イ人ジャナイ......ハズ」
「......そういえば、頭に包帯巻いているみたいだけど、怪我でもしたの?」
「......コレ?」
そのおでこの包帯は、一週間前に私と別れた後にできた傷だった。出会いは私を待っていた廃墟の中。
「ねえ、あの時のお姉ちゃん?」
後ろを振り替えると、3ヶ月前に助けたあの子......加奈ちゃんが立っていた。壁の向こう側を見ることができ、起きていれば廃墟に人が入ってくるの見ることができるシロナちゃんにとって、加奈ちゃんの突然の出現は心臓が飛び上がったのだろう。慌てて逃げ出そうとして足を滑らせ......
「転んだにしては重症じゃない? 血の量とか」
応接間のソファーに座って、博士を待つ間の雑談。
「気ガツイタ時ニハコノ館ニイテ......加奈チャンガ出血ガ酷カッタッテ言ッテタ」
「......本当に危なかったんだね。でも、なんで博士は私に脅迫状という名のテストを課せたんだろう?」
「ヨク解ラナイケド......コウイウシュチュエーションニハ脅迫状ダッテ言ッタ」
......さっきシロナちゃんが俯いたのもわかる気がする。
コツコツ......
「......」
「......ハア」
足音が聞こえてきた。シロナちゃんの謎のため息と共に私はドアに注目する。一体博士は何者であろうか? その期待は、ノブの音が聞こえるまで時間の流れを遅くする......
ガチャ
ジージージー
「......ん?」
音がしたのに扉のノブは下がらない。いや疑問に思うのはそこじゃない。なんだか目線が高い気がする。それに、足が床から離れているような......
「上宮サン、下」
「え?」
......ソファーのクッション部分が浮いており、その間から人が出てきた。
「よくぞテストに合格してくれた。僕の名前は坂崎 健。研究者兼牧場主だ。上宮、これから我々は仲間だ。歓迎するぞ」
「......は、はい」
「......ハア」
元の高さに戻ったソファーに腰かけたまま、向かいあって座っている博士こと坂崎さんの話を聞いている。年齢は見たところ私よりも少し年上、顔はまさに二枚目であろう。
「さて、君は聞いたところネットで記事を書いているじゃないか。いろいろ聞きたいことがあるのではないか?」
「まあ大量にありますけど、これは個人的な取材でいいですよね?」
「個人的......う~ん、実に個性的な解答だ。ところで、どういう意味かね」
「......ネットには乗せない取材ということです」
「ちゃんと相手の立場を考えている。我々は以外と気が合うかもしれないな」
気が合いたくありません。そんな言葉を飲み込みつつ、さっそく取材を始めよう。
まず、テストの内容が書かれた手紙を"脅迫状"と書いた理由について。
「可愛いレディを拉致した以上は、脅迫状と書いた方が美しいユーモアだろう?」
......次に、気難しい老人という噂を広めて人を近づかせないようにした理由。
「僕の美しいアイデアを誰かに盗まれるわけにはいかないからだ」
......先ほどの登場の仕方の意味は?
「人と同じことは嫌いなんだ。僕は人とは違うからな」
確信。これはシロナちゃんもため息をつくわけだ。私だって人のことは言える。
ガチャ
今度こそ扉が開いた。この応接間に入ってきたのは、亀の化け物と一緒だった女の子......加奈ちゃんだ。
「お父さん、カフェオレ入れてきたよ」
......この子のお父さんは坂崎さんだったのか......その両手にはコップ二個を乗せたお盆がある。氷が入っているからアイスカフェオレかな。
「ああ、テーブルに起きたまえ」
加奈ちゃんは丁寧にコップをテーブルに置いた後、深くお辞儀し応接間から去っていった。父親の性格的にもしっかりした子なんだろう。
「遠慮なく飲みたまえ。今この一島町で話題になっている......」
「......もしかして、"一島町の美味しいカフェオレ"ですか?」
一島町の美味しいカフェオレは、この島の牧場で取れた牛乳を使っているはずだ。
「いや、残念だがそれは業者がつけた名前だ。正式名称は"一島という名の僧侶によって生まれた牛の乳入り最高に美味な一島町のカフェオレ"。正式名称を使った方が絶対に売れただろうに......」
「長すぎて文字が小さくなるのでは......」
「そうか? しかし、気軽に話せる長さにはしたぞ」
「......普通ニ一島町ノ美味シイカフェオレノ方ガ言イヤスイケド」
「......」
さすがにシロナちゃんの正論には言い返せないようだ。悟られないように笑みを浮かべながら一島町の美味しいカフェオレをいただく。
「さて、次の質問ですが......加奈ちゃんと行動を共にし、私をここまで連れてきた"彼"とはどういう関係なんですか?」
「......!!」
急に坂崎さんの目付きが変わった。
「一旦場所を変えよう。冗談のない解答を真面目な応接間でするのはありがちだろう」
「シロナちゃん、雰囲気変わったね」
「ウン......"博士"ノオカゲナノ」
「博士って......どんな人なの?」
「ウ......ウン......」
......? なぜかシロナちゃんはうつむいた。
「まさか、マッドサイエンティスト?」
「......ナノカナア......デモ、ソコマデ悪イ人ジャナイ......ハズ」
「......そういえば、頭に包帯巻いているみたいだけど、怪我でもしたの?」
「......コレ?」
そのおでこの包帯は、一週間前に私と別れた後にできた傷だった。出会いは私を待っていた廃墟の中。
「ねえ、あの時のお姉ちゃん?」
後ろを振り替えると、3ヶ月前に助けたあの子......加奈ちゃんが立っていた。壁の向こう側を見ることができ、起きていれば廃墟に人が入ってくるの見ることができるシロナちゃんにとって、加奈ちゃんの突然の出現は心臓が飛び上がったのだろう。慌てて逃げ出そうとして足を滑らせ......
「転んだにしては重症じゃない? 血の量とか」
応接間のソファーに座って、博士を待つ間の雑談。
「気ガツイタ時ニハコノ館ニイテ......加奈チャンガ出血ガ酷カッタッテ言ッテタ」
「......本当に危なかったんだね。でも、なんで博士は私に脅迫状という名のテストを課せたんだろう?」
「ヨク解ラナイケド......コウイウシュチュエーションニハ脅迫状ダッテ言ッタ」
......さっきシロナちゃんが俯いたのもわかる気がする。
コツコツ......
「......」
「......ハア」
足音が聞こえてきた。シロナちゃんの謎のため息と共に私はドアに注目する。一体博士は何者であろうか? その期待は、ノブの音が聞こえるまで時間の流れを遅くする......
ガチャ
ジージージー
「......ん?」
音がしたのに扉のノブは下がらない。いや疑問に思うのはそこじゃない。なんだか目線が高い気がする。それに、足が床から離れているような......
「上宮サン、下」
「え?」
......ソファーのクッション部分が浮いており、その間から人が出てきた。
「よくぞテストに合格してくれた。僕の名前は坂崎 健。研究者兼牧場主だ。上宮、これから我々は仲間だ。歓迎するぞ」
「......は、はい」
「......ハア」
元の高さに戻ったソファーに腰かけたまま、向かいあって座っている博士こと坂崎さんの話を聞いている。年齢は見たところ私よりも少し年上、顔はまさに二枚目であろう。
「さて、君は聞いたところネットで記事を書いているじゃないか。いろいろ聞きたいことがあるのではないか?」
「まあ大量にありますけど、これは個人的な取材でいいですよね?」
「個人的......う~ん、実に個性的な解答だ。ところで、どういう意味かね」
「......ネットには乗せない取材ということです」
「ちゃんと相手の立場を考えている。我々は以外と気が合うかもしれないな」
気が合いたくありません。そんな言葉を飲み込みつつ、さっそく取材を始めよう。
まず、テストの内容が書かれた手紙を"脅迫状"と書いた理由について。
「可愛いレディを拉致した以上は、脅迫状と書いた方が美しいユーモアだろう?」
......次に、気難しい老人という噂を広めて人を近づかせないようにした理由。
「僕の美しいアイデアを誰かに盗まれるわけにはいかないからだ」
......先ほどの登場の仕方の意味は?
「人と同じことは嫌いなんだ。僕は人とは違うからな」
確信。これはシロナちゃんもため息をつくわけだ。私だって人のことは言える。
ガチャ
今度こそ扉が開いた。この応接間に入ってきたのは、亀の化け物と一緒だった女の子......加奈ちゃんだ。
「お父さん、カフェオレ入れてきたよ」
......この子のお父さんは坂崎さんだったのか......その両手にはコップ二個を乗せたお盆がある。氷が入っているからアイスカフェオレかな。
「ああ、テーブルに起きたまえ」
加奈ちゃんは丁寧にコップをテーブルに置いた後、深くお辞儀し応接間から去っていった。父親の性格的にもしっかりした子なんだろう。
「遠慮なく飲みたまえ。今この一島町で話題になっている......」
「......もしかして、"一島町の美味しいカフェオレ"ですか?」
一島町の美味しいカフェオレは、この島の牧場で取れた牛乳を使っているはずだ。
「いや、残念だがそれは業者がつけた名前だ。正式名称は"一島という名の僧侶によって生まれた牛の乳入り最高に美味な一島町のカフェオレ"。正式名称を使った方が絶対に売れただろうに......」
「長すぎて文字が小さくなるのでは......」
「そうか? しかし、気軽に話せる長さにはしたぞ」
「......普通ニ一島町ノ美味シイカフェオレノ方ガ言イヤスイケド」
「......」
さすがにシロナちゃんの正論には言い返せないようだ。悟られないように笑みを浮かべながら一島町の美味しいカフェオレをいただく。
「さて、次の質問ですが......加奈ちゃんと行動を共にし、私をここまで連れてきた"彼"とはどういう関係なんですか?」
「......!!」
急に坂崎さんの目付きが変わった。
「一旦場所を変えよう。冗談のない解答を真面目な応接間でするのはありがちだろう」
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