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化け物バックパッカー、本の世界に引き込まれる。【2】
しおりを挟む「うーむ……知らないうちにややこしくなっているな……」
液晶パネルのついた機械を前にして、坂春は苦戦をしていた。
「あの……どうなさいました?」
そこへ通りかかった図書館員の女性に声をかけられる。
「ちょうどよかった。本の検索しようとこの機械を使っていたのですが、どうも使い方が理解できなくて…….」
「ああ、それなら……」
しばらくして、坂春は一冊の本を手に館内を歩いていた。
「あの女性のおかげで探していた本が見つかってよかった。作者名しか覚えていなかったからな……」
そこまでつぶやいて歩みを止める。
目の前に、5さいぐらいの女の子が涙を流してしゃがんでいる。
「ぐすっ……ぐすっ……」
「……迷子か?」
坂春が女の子の対処を考えていると、後ろから先ほどの図書館員の女性が女の子に近づいていった。
「ねえ、どうしたの?」
図書館員は女の子に目線を合わせるためにしゃがんだ。
「ぐすっ……ぐすっ……」
「パパやママと迷子になったのかな?」
「……」
涙を流したまま首を横に振る女の子。
「わかった、読みたい本が見つからない……でしょ?」
「……」
黙ったまま女の子がうなずくと、図書館員は女の子に安心させるように笑みをうかべた。
「だいじょうぶ、お姉ちゃんが探してあげるよ。その本、どんな本なのか分かる?」
「ピンクの……リボンのついた……くまさんの…….えほん……」
その光景を見届けた坂春は、安心したようにうなずいた後、再び歩き始めた。
「タビアゲハは……まだ本を探しているのか」
元の席に戻ってきた坂春は、タビアゲハの姿が見えないことからそう判断した。
「……しかし、いつの間にか誰かがこの席に座っていたみたいだな」
そのように判断した原因は、テーブルに置かれている一冊の本である。
「表紙が新聞紙で隠されているということは…….恐らく、持ち込んできた本なんだろうな」
興味があるのか、坂春はひとりでブツブツと考察し続けている。いくら小さい声とはいえ、長時間も話し続けていては周りに迷惑である。
「……人のものをかってに見るのはいけないが……そもそもなぜこんなところに……」
坂春はその本に手を伸ばそうとしていた……
「……!?」
そして、思わず引っ込めた。
「……ア、戻ッテキタ」
いきなり目の前の席に、タビアゲハが現れていたからだ。
「……」
いきなりの出来事に、絶句する坂春。
「坂春サン、ドウシタノ?」
「……あ……ああ、いきなり現れたもんだから、つい」
坂春は出そうとしていた手を引っ込めた。
「ところで、その本はタビアゲハが取ってきたのか?」
「ウン、本棚ノ隙間ニ落チテイタカラ、気ニナッチャッテ……」
「どんな本なんだ?」
坂春がたずねると、タビアゲハは説明が難しいのか、「ウーン……」とうなってしまった。
「……ちょっと、読んでみてもいいか?」
「ウン、ソッチノ方ガワカリヤスイネ。デモチョット待ッテテ、コノ子ニ聞イテミルカラ」
そう言って、タビアゲハは本を開き、数ページめくると姿を消した。
消える瞬間は、瞬きの瞬間ほどの時間で消えるため、見ることはできなかった。
しばらくすると、タビアゲハは再び姿を現した。
「ダイジョウブダッテ」
「だいじょうぶって……さっきからどこへ行っているんだ?」
坂春の質問を無視して、タビアゲハは新聞紙に表紙を包まれた本を坂春に渡した。
「ソノ本ノページヲ、パラパラメクッテミテ」
「何ページぐらいだ?」
「周リノ人タチガ消エルマデ」
「……」
半信半疑ながらも、坂春は本を開き、ページをめくった。
真っ白な中身を見開き5ページぐらいめくったときだった。
周りの景色の動きが、不自然になった。
まるで、パラパラ漫画のように。
やがて、周りにいた人たち、
そして、本棚に置かれた本が、
点滅し始めた。
別の景色が書かれた、
ページが挟み込まれたように。
「……ここは」
坂春が気がつくと、周りの人々、そして本棚に置かれた数々の本が消滅していた。
それ以外は、先ほどと同じ図書館だった。
「ココハ、本ノ中ナンダッテ」
突然現れたタビアゲハの声に背筋が伸びるものの、坂春は落ち着いてタビアゲハを見た。
「本の中って、この本は魔法の本かなにかか?」
「ウウン、私ト同ジ、変異体ダッテ。」
タビアゲハの説明に、納得するようにうなずく坂春。
「よくそんなことがわかったな」
「アノ子ガ教エテクレタノ」
坂春が「あの子?」と眉をひそめると、タビアゲハは「コッチ」と言いながら席を立ち、歩き始めた。
その道中、坂春は本を見かけた。
本棚の中に、5冊だけ。
本棚の大きな隙間が、本来は埋まっているであろう本たちを思い浮かべてしまいそうに見えた。
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