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1氷の騎士シュッツ
しおりを挟む「団長!任務も終わったし、遊びに行きましょうか!」
「お姉ちゃんのいる酒場で飲みましょうよ~」
街の平和を守る騎士団。
今日のミッションは森に出たという魔物を討伐すること。無事全ての魔物を倒すことができ団員たちも一安心。
「お、いいな。慰労も兼ねてみんなで行くか!」
団長はにこやかに団員たちの提案を受けいれようとしたが、副団長のシュッツはそれを許さなかった。
「ダメです。被害状況や怪我人の情報など、王様に報告に行かなければなりませんよ」
「…………だよなぁ」
きらりと鋭い目が光るシュッツに、はははと苦笑いを浮かべるしかできない団長。
シュッツの言っていることが正しく、報告しに行かなければならないことは団長も重々承知だ。
しかし、魔物討伐で疲れた団員たちの希望も聞いてあげたいという団長なりの優しさもあり……
提案を却下され、周りの団員たちは当然、面白くないという顔をしている。
それもそのはず。
こう言ったご褒美系の提案は、ことごとく副団長に却下されているからだ。
「相変わらずお堅いですこと」
「氷の騎士、だっけ?」
「ホント周りを凍らすのがお上手だよな~」
「それな!あはははは」
シュッツをバカにしたように笑いながら団員たちが話している。陰口を隠す気はないようだ。
一般的に街の人々には、氷を操る騎士だから氷の騎士様と言われている。
しかし、騎士団内ではそうではない。あまり表情が変わらずいつも無表情、仏頂面。受け答えも素っ気なく、必要最低限の会話しかしない。そのため、皮肉を込めてそう言われているのだ。
とは言え、階級の高い副団長。
何故そこまで陰口を叩かれるのか。
(なんとでも言え)
それはシュッツの性格も関係していた。
陰口や悪口にはピクリとも反応せず、咎めることもしない。周りの人間には一切の興味が無いからだ。
「すまんな。俺とシュッツは王様へ報告に行ってくる。みんなはこれで楽しんできてくれ」
団長は団員たちにお金を渡した。
これが精一杯のフォローとして。
その行動に団員たちはありがとうございますと、足早に酒場へとむかっていった。
その背中を見送る団長とシュッツ。
横を見ると相変わらずの無表情に団長は苦笑いを浮かべ、シュッツの肩を叩いた。
「シュッツ、たまにはお前も気を抜いたらどうだ?いつも気張っていて見ているこっちが疲れちまうよ」
「別に気張ってません」
団長にさえ塩対応。
他の騎士団の団長と副団長の掛け合いを見ていると、もう少し団長に気を使っても良いのではないかと皆が思う。
貴族出身が多い騎士団員の中で、シュッツは農家の出身だった。コネがないながらも実力だけで副団長にまで登りつめたすごい人物ではある(本人は副団長になりたくなかったようだが)。
確かに実力は間違いないのだが、如何せん人間関係が良くない。
団長は周りの士気にも関わると、何とかしたいと思っているのだが、当の本人は何かを変える気はないらしい。
周りの団員も、シュッツのクールな見た目や振る舞いに初めは怯えていた。
しかし、農家の出であることや、副団長としては若く、言い返してこない寡黙な性格に、他の団員たちの陰口が減ることはなかった。
自分を曲げないシュッツに、一定数、憧れを抱くものもいるようだが、それはほとんどシュッツより年下の団員たちで。
大多数の団員たちとシュッツの溝は深まるばかりだった。
そんな構造に団長も頭を抱えている。
「私にはウルフだけいればいい」
ポツリと呟くシュッツ。
首から下げている牙を手に取り見つめると、何を思っているのかグッと握りしめた。
「そう言えば、それは何の牙なんだ?魔よけか何かか?」
「狼の牙です。私の唯一の宝物です」
関係ないと言われるかと思ったが、素直に回答され団長は驚いた。
飾り気のない彼が唯一、騎士団からの支給ではなく自身のモノとして身につけているものが、その狼の牙だと言う首飾りだ。
シュッツの振る舞いに、団長は余程大切なものだと察する。
「しかし狼か。珍しいな。絶滅したと聞いていたが」
「昔……子どもといた狼が実は魔物だったっていう騒動があったの覚えてますか?その場で狼は騎士団に駆除されましたが」
「あ、あぁ……覚えている。俺が何歳の時だったかな……」
「その時、狼が殺されたところで落ちてたものです」
(そんな物騒な所で拾ったのか……やっぱり変わってるな。それに狼と言うより魔物の牙ってことだよな?捨てさせるべきかうーん……)
どう反応していいか分からず黙ってしまった団長を無視し、シュッツは王宮へと歩き出した。
「あ、おい!待ってくれ」
団長が知る限り、シュッツが私用でどこかに出掛けたり、休みの日に羽目を外したりと、遊んでいる所を見た事がない。
ただ気がつくと、ひたすら鍛錬をしているようだ。
何かに取り憑かれたように鍛錬する姿は恐怖さえ覚える。
(騎士団として強くなりたい!って感じじゃないんだよなぁ。なぜそこまで強くなりたいんだ?)
これ以上自分より強くなってもらっては困ってしまうなと苦笑いを浮かべる団長だった。
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