マネジメント!

Hiiho

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  ・・・お腹空いた。

  空腹に目を覚まし、時計を見ると午前2時。
  すぐ隣には仰向けで静かに目を閉じているマネージャーがいた。

  体が重い。お尻も痛いし・・・。動けない程じゃなさそうだけど、食べ物を探しにキッチンに行くのも何だか面倒くさい。

  ロケは5時からだから、もう少し寝ようかな。

  もう一度目を閉じるけど、自分の胃が出す音が気になって眠れない。

  あーもう・・・仕方ない。

  動きたくない俺は、隣で眠るマネージャーに声を掛ける。

「マネージャー。ねえ、お腹空いた」

  呼びかけだけでは反応が無くて、彼の頬を叩く。

「ねえ起きて。俺お腹空いて死にそう」

  それでも反応は無い。熟睡してるみたいだ。

  マネージャーの寝顔、かわいいな・・・。キスしたら起きてくれるかな?
  なんて考えながら、彼の下唇を指で摘んで引っ張る。

「ぷっ、モッセンギョッソ(ブサイク)~。・・・・・・ばんり・・・好き」

  マネージャーなんて、俺より全然カッコ良くないのに。なんでこの顔に、きゅん ってなっちゃうんだろ。

「意味は分かんねーけど、悪口だってのはニュアンスでわかるぞ」

  目を閉じたままでマネージャーが呟く。

「起きてるならラーメン作って、玉子入ってるやつ。夕飯食べれなかったんだから」

  『ブサイク』より、その後の『好き』に反応しろよな。もしかして聞こえなかった?

「ねえ、マネ。俺マネが好・・・」

「しょうがねぇな、待ってろ」

  ・・・きだよ。って俺が言い終える前に、マネージャーは勢いよく起き上がり寝室から出て行く。

  聞こえなかった、のかな・・・。
  何となく寂しい気持ちが胸に広がる。



「出来たぞ。こっちで食えよ」

  10分ほどして、マネージャーは寝室の入口から顔を覗かせる。

「うん」

  体を起こしてベッドから足を下ろし立とうとした瞬間、膝が折れて床に這い蹲ってしまった。

  え!?どうしよう、立てない!

「シウ大丈夫か?」

  傍に来たマネージャーに支えられて、何とかその場に立つけど、視界が回転して気分が悪くなる。

「おまえ、体熱い・・・」

「え・・・?」

  マジで?
  健康優良児の俺が熱を出すなんて、三徹した時くらいしかないのに。

「無理させたからだな。まさか発熱するとは・・・悪い」

「平気。どんなに高熱でもステージに立ってきた。だから心配いらない。ご飯食べれば治る」

  熱よりも、お尻の方が重症だよ。めちゃくちゃ痛いし、まだマネージャーのが入ってる感じがする。これはラーメン食べたくらいじゃ治らないな、きっと。




  マネージャーが作ってくれたラーメンを食べ解熱鎮痛薬を飲み、暫くソファで横になって少し体が楽になった俺は、シャワーを浴びにバスルームへ入る。

「シウ」

「ん?」

「一応、掻き出してはあるけど・・・自分で処理できるか?」

  ドア越しのマネージャーの言葉の意味がわからない。

「処理?」

「・・・入るぞ」

  と言って、服を着たまま袖とボトムの裾を捲り上げたマネージャーがバスルームへ入って来る。

「体ならちゃんと自分で洗えるけど?」

  シャワーヘッドを外し、水温を調節するマネージャー。

「そんな事わかってるよ。いいから後ろ向け」

  ??

  言われた通りに彼に背を向ける。
  グッと背中を押され上半身が倒れるのと共に、足を開けと言わんばかりにマネージャーの足で脹脛の内側を軽く蹴られ、俺はそれに従う。

  なんなの?

  訳がわからないままの俺の後ろに、ヘッドを外された硬く冷たいホースの先があてがわれて思わず息を飲んだ。

「え、え、ねえ嘘、だよね?」

「中に残ってたら腹下すんだぞ。撮影どころじゃなくなるだろ」

  まさか、まさかだけど・・・『処理』って中を洗うって事!?

  マネージャーが蛇口のハンドルを回し上げる。
  温水が少しずつ下腹部を逆流して来て、俺は全身が総毛立つほどの不快感に襲われ・・・

「あのっ、待ってくださ、あ、あ、あぁ────・・・」

  う、うそだぁ~~~!!






「ううう・・・お尻痛いー、俺のお尻割れちゃったぁ・・・」

「最初から真ん中で割れてんだろ」

「そうだけど、そうじゃないんだよ!」

  ロケ先へ向かう車の中、お尻の違和感が更に増した俺は、後部座席のシートの上で膝を抱えてバックミラー越しにマネージャーを睨む。

  薬のお陰で熱と痛みはかなり軽減されたけど、後ろの違和感だけはどうしようも出来なかった。

「やっぱり後悔してんじゃねーか」

「してない!だって俺マネージャーが好きだもん!」

  ミラー越しにマネージャーと目が合って、だけどあからさまに逸らされてしまう。


「熱は・・・平気か?」

  俺からの『好き』への返事は無く、話まで逸らすなんて。
  聞こえてない、わけないよな。これって・・・やっぱり迷惑って事?

「・・・平気。体だけは丈夫だから」

「そうか」

「うん」

  俺はそれ以上何も言えなくなって、マネージャーも同じように黙ったままだった。

  本当は聞きたい。俺のことが好きだからあんな事したんだよね、って。
  でも、違う、って言われそうな気がして言葉を飲み込んだ。






「シウおはよ!」

  ロケ現場に到着した俺の元に、すばるが真っ先に駆け寄って来て 笑顔で挨拶をしてくれる。

「おはよ、すばる。今日もよろしくお願いします」

「夜が待ち遠しいな~!シウが泊まりに来るの、めっちゃ楽しみ!シウに観せたい邦画いっぱいあるんだよな~」

  あ、そうだった。今夜、すばるのマンション泊まりに行く約束してたんだった。

「俺も楽しみだよ。向こうにいた時は仕事以外で外泊なんてしたこと無かったし」

  あー・・・でも、速攻下がったとはいえ熱出した後だし、マネージャーがダメって言うかも・・・

  すばると俺のやり取りを聞いているはずなのに、マネージャーは何も言わずに俺達から離れて行く。


  はあ!?なにあれ!!


  いくら俺の回復力が人並み以上だからって、少しくらい心配しても良くない!?
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