マネジメント!

Hiiho

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Inferiority 4

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  どうしていいかわからず、俺はシウの頬にそっと触れる。
  ・・・熱い。触らなくともシウの肌が赤く上気しているから、この温度は予想できた。
  バスルームの湯気のせいだけではなさそうだ。

  シウは上げていた踵を下ろし、俺を見上げてくる。

  見詰めるのが癖なのか?
  だとしたら相当タチが悪い。


「ばんりは、知ってた?男が男とセックスできるって」

  は?また唐突に、何だその質問は。知ってるに決まってるだろ。バリタチのゲイだぞ、俺は。

「知ってた」

「・・・そっか。そうなんだ。じゃあ、誰かとしたことあったんだ」

  ある、と答えるのが正解か?

  例えばシウの過去のセックス相手を知ったら俺は、嫉妬せずにはいられないだろう。

「それを知って何になるんだ。シウが望む答えをやれるとは限らない」

  冷たいかもしれない。だけど過去の俺を知られたくないし、その事でシウを傷付けたくない。

「・・・そうだね。やっぱり知らなくていい」

  きゅ、と唇を噛むシウ。

「おわびに、これからは男は俺だけにして」

  だから、お詫び、の使い方間違ってるっての。
  まあ今までの俺の愚行を詫びるって意味では、あながち間違いでもないか。

「男は、ってなんだよ。妻の事を言ってるなら気にしなくていい」

「どうして?奥さんなんでしょ、気にしないなんて無理。俺、男の中で1番ならそれでいい」

  普段はわがままが過ぎるくらいなのに、なんでそこは遠慮するんだ。もっと欲張っていいのに。今朝みたいに『俺だけのもの』と主張しろよ。

「妻とは形だけの夫婦だから触れた事すらない。向こうも俺に愛なんて無い。社長命令で籍を入れただけだ」

  妻の事でシウが不安を感じているなら、すぐにでも安心させてやりたい。
  すばるのようなキラキラを持たない俺が出来るのはそれくらいしかない。

「なんで社長は ばんりを無理矢理結婚させたの?好きじゃないなら奥さんだってかわいそう」

  ・・・そう言われると、深く考えた事が無かった。
  俺を強引に結婚させた親父。けれど2ヶ月もしないうちにシウと同居しろと言ってきた。

  本当に形だけの結婚だ。
  親父はなぜ・・・

「なんでもいっか。ばんりと一緒にいられるなら俺はそれでいい。・・・ねえ、俺が ばんりとちゃんとセックスできるように教えて」

「え?」

「お尻でも気持ち良くなれるって聞いた。ふーぞくって所に行けばやってくれるらしい、ってすばるが言ってた。連れてってくれる?」

  すばるの奴、シウに何教えてんだ。アイドルがする話じゃねーぞ!

「連れて行くワケねぇだろ。おまえは気持ち良くなれれば相手は誰でもいいのかよ」

「別に・・・それでばんりともセックスできるなら俺は何でもいい」

  シウ、おまえの『好き』はその程度。結局『気持ち良い』の中でしか生まれない感情なんだろ。

  急に虚しくなってくる。

「だったら風俗に行くよりも気持ち良くしてやるよ」

  俺はバスタブの湯の中に半身を沈め、自分を跨がせシウを後ろ向きに立たせる。

  目の前にある引き締まった白く滑らかな双丘を両手で左右に広げると、縁が赤く腫れた窄まりが顔を出す。
  指でその縁をなぞると、痛みからなのか窄まりはヒクヒクと小さく収縮する。

  可愛い。こんなに小さいのに必死で俺を飲み込んで腫れてしまったのかと思うと、愛おしさと申し訳無さで複雑な気分になる。シウの『好き』が気持ち良い中でしか生まれない、なんて思った俺は馬鹿だ。


  前屈みになるように、シウにバスタブの縁に両手を着かせる。

「ば・・・んり、これ、さすがに・・・恥ずかしい」

「風俗行こうとしてたんだろ。こんな姿を他人に見られるつもりだったんだよな?」

「そんなぁ・・・絶対ムリ!ふーぞく行きたくない!」

「だろ?」

  だから俺が全部教えてやる。

  円を描くように窄まりを舌でなぞる。

「ふぁあ!あっ、い・・・ったぁ・・・あっ、痛いっ、うぅ・・・」

「・・・・・・」

「ぅ・・・んんっ、痛・・・っ、あ、痛い!・・・ぅ」

  つーか痛がり過ぎ。こんな状態で何を教わろうと思ってんだ。はあ・・・。

「・・・シウ、腫れが引いてからにしねぇ?」

「ううっ、・・・はい」

  ったく。こいつのシウくんはすっかり萎えちゃってるし。どうしてくれるんだ、ガン勃ちフルパワーの万里くんがひとり寂しそうじゃねーか。

「・・・セックスできなくても、・・・俺のこと嫌いにならない?」

  振り返り、不安そうに俯くシウに、ぎゅん、と心臓が絞られる。

  こいつはテロリストだ・・・、一瞬でも油断したら魂ごと心を持っていかれてしまう・・・!

「ならない。だから俺を殺しにかかってくんな」

「好きなのに殺すわけないでしょ。変なばんりだな」

  好きで、可愛すぎて死にそうなんだよ。

「とにかく、シウは風呂上がれ。今日はもう寝ろ」

  俺は寂しがってる万里くんを慰めねーと。

「わかった。じゃあ、ベッドで待ってる。俺、ばんりと一緒に寝たい」

  ・・・それって、俺にとっちゃ拷問じゃん。

  けれど、シウの純粋な笑顔に「わかった」以外の答えを返せなかった。




  風呂から上がり寝室へ入ると、いつもはダブルサイズのベッドの真ん中で寝ているシウが片側に寄って、俺が寝るスペースを開けて待っていた。

  空いているシウの隣に横たわると、体を寄せてぴったりとくっついてくる。

「おやすみ、ばんり」

「ああ、おやすみ」

  いつぶりだろう、誰かにこんな風におやすみを言ったのは。
  もしかしたら、こうやって他人と寄り添って寝るなんて初めてかもしれない。

  セックス以外で満たされるなんて気持ち、シウと出逢うまで知らなかった。



  この時まだ、シウとこうなるように仕組まれていたということを知らない俺は、腕の中にある愛しい温もりに ただただ幸せを感じていた。
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