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翌朝目覚めると俺はソファの上、肩からブランケットを掛けられた状態で寝転がっていた。
何もする事がなかった俺は、いつの間にか眠ってしまってたらしい。
リビングを見渡すと、万里が一緒にいた頃のように綺麗に片付けられていて、もしかしたら戻って来てくれたんじゃないかと錯覚してしまう。
だけど、部屋のどこを探しても彼の姿は無かった。
時計の針が10時5分を指した頃、部屋のドアが開く音がする。
玄関へ出ると、いつもと変わらない万里。
「今日は怒鳴らなくても出てきたな。やればできんじゃん」
「うん。おはよ」
・・・褒められた。久しぶりすぎてニヤける。
「・・・っ、変な顔してんじゃねぇ。行くぞ」
・・・けなされた。好き好きオーラが漏れちゃったから、呆れられたのかな。気を付けよう。これ以上万里に遠ざけられるのは嫌だから。
俺は大股で歩き出す万里の後ろについて行く。
エレベーターに乗ると、地下パーキングのボタンを押した万里が一日のスケジュールを教えてくれる。
今日はゴールデンタイムに放送される生歌番組だけみたいだ。とは言っても本番まで一日中リハーサルと待ちなんだけど。
「あーそういえば、公演で来日してるクアイルも急遽キャスティングされた。ブッキングしてあったバンドのボーカルが虫垂炎なんだと。その穴埋め」
「え?」
ヒョン達が、今 日本に?知らなかった。万里のことや自分の仕事に手一杯で、クアイルの事なんてすっかり忘れちゃってた。
「向こうはシウとの共演は問題無いと言ってるらしい。むしろ おまえが出るからこそ受けたようなもんだな。じゃなきゃ天下のクアイルが、こんな無茶なオファー受けねーだろ。こっちも問題無いって答えたからな」
正直、ミンホさんに会うのは少し気が重いけど、それでもやっぱり向こうにいた時は誰よりもヒョン達を信頼していたし、辛いことも一緒に乗り越えてきた大切な人達だから、みんなに会いたい。
「・・・嬉しそうだな。まあドラマの挿入歌もチャート2位獲った事だし、おまえの成長ぶり見せつけてやれよ」
「うん!」
弾むような気持ちで自分のリハーサルを終え、楽屋で通しリハまでの時間を潰す。
「ねえ、ば・・・マネージャー。もうヒョン達入ったかな?」
「・・・さあ。クアイルのリハは一番最後になってるからまだなんじゃないか?」
「そっかぁ」
つまんないな。もう他の出演者達には挨拶に行っちゃったし、クアイルの楽屋に遊びに行こうと思ってたのに。
そう思っていたところに、ドアをノックする音。
万里がドアを少し開けて、誰かと話し楽屋を出て行く。
僅かな時間を空け、ドアが開きなだれ込むように入ってきたよく知ったメンツに、俺は涙が出そうになる。
「シウ~!アンニョン~!」
「ウォヌヒョン!ユンヒョン!テヒョニヒョン!」
「会いたかったよシウ~!マネージャーとPDに無理言って帰るの1日延ばして貰ったんだ。帰ったら地獄が待ってる・・・。そんな事より!おまえ何にもできないから、ちゃんと生活してるか心配してたんだぞ!」
一番歳上のリーダー ウォヌさんが俺の頭を撫でる。
「嬉しいですヒョン~!俺は元気に生きてます。心配ないですよ!」
「シウが抜けた穴は大きいんだぞ!ビジュアル担当が抜けてクアイルはもう終わりだと思ったんだからな」
続けて二番目のユンさんが両手で頬を左右から挟んで潰してくる。
「終わりじゃないですよ!ヒョン達もイケメンじゃないですか、俺には負けるけど」
「こいつ~!相変わらず生意気だな!」
「シウの分まで頑張んなきゃって必死なんだからな、俺達は。なのに呑気に日本でも活躍しやがって!」
ユンさんと同い歳のテヒョンさんに鼻を摘まれグリグリと揺すられる。
「テヒョニヒョン痛いですよ!もーほんと乱暴なんだから・・・」
懐かしい。この人達と一緒に居るのは当たり前になってて、すごく温かくて息がしやすくて。いなかったら不安になる。俺にとっては空気と同じ存在だった。
日本へ来て万里を好きになるまで、俺の一番大切だった人達。
ふとミンホさんがいないことに気付く。
俺は別れ際の彼を思い出す。俺が宿舎を出て行く時、ホッとした顔をしてた。もしかしたら、俺がいなくなった方がいいとミンホさんは思ってたのかもしれない。
「なあシウ。ミンホがさ、おまえに会えないって言うんだよ。きっとシウは許してくれないって」
「え・・・」
ウォヌさんの言葉に、何も言えなくなる。
やっぱりミンホさんは俺を避けてる。
「二人に何があったか知らないけど、俺はシウがクアイルじゃなくなった今も、家族と同じくらい大事な存在だと思ってる。みんな同じ気持ちだ。きっとミンホもな」
「・・・はい」
「おまえら一番仲良かっただろ?だからミンホはきっと、シウを守ってやれなかった事を誰よりも後悔してる」
「ミンホと会ってやってくれるか?」
「もちろんですよ!・・・でも、ミンホさんは・・・」
「シウ」
名前を呼ばれて振り返ると、テヒョンさんに背中を押されたミンホさんが俺の方へ歩み寄って来る。
「ミノヒョン・・・」
気まずそうに俯くミンホさんに、俺は飛び付く。
「ミノヒョン!ごめんなさい!俺が、彼女を怒らせたから・・・だからヒョンは悪くないです、お願いだからそんな顔しないで」
「シウ・・・」
抱き合う俺達に気を使ってか、他のメンバー達は楽屋を出て行く。
「ごめん、シウ。俺がおまえを好きだったから・・・俺が悪いのに、シウに全ての責任を負わせる事になって・・・それでもクアイルを辞めるのが俺じゃなくてよかったってどっかで思ってた。本当にごめん」
ミンホさんの声が震えてる。
「謝らないでください。俺・・・日本に来てよかったって思ってるから」
だって、万里と出逢えたから。
「今、すごく好きな人がいるんです。こんな気持ちになったの初めてで・・・。韓国にいたら彼にも出逢えてないし、きっと知らなかった気持ちだから」
「・・・彼?・・・シウ、男を好きになったのか?」
「えっ?はい・・・」
ミンホさんに肩をグッと掴まれ、密着していた体が少し離れる。
「俺を拒んだおまえが、それを言うの?」
何もする事がなかった俺は、いつの間にか眠ってしまってたらしい。
リビングを見渡すと、万里が一緒にいた頃のように綺麗に片付けられていて、もしかしたら戻って来てくれたんじゃないかと錯覚してしまう。
だけど、部屋のどこを探しても彼の姿は無かった。
時計の針が10時5分を指した頃、部屋のドアが開く音がする。
玄関へ出ると、いつもと変わらない万里。
「今日は怒鳴らなくても出てきたな。やればできんじゃん」
「うん。おはよ」
・・・褒められた。久しぶりすぎてニヤける。
「・・・っ、変な顔してんじゃねぇ。行くぞ」
・・・けなされた。好き好きオーラが漏れちゃったから、呆れられたのかな。気を付けよう。これ以上万里に遠ざけられるのは嫌だから。
俺は大股で歩き出す万里の後ろについて行く。
エレベーターに乗ると、地下パーキングのボタンを押した万里が一日のスケジュールを教えてくれる。
今日はゴールデンタイムに放送される生歌番組だけみたいだ。とは言っても本番まで一日中リハーサルと待ちなんだけど。
「あーそういえば、公演で来日してるクアイルも急遽キャスティングされた。ブッキングしてあったバンドのボーカルが虫垂炎なんだと。その穴埋め」
「え?」
ヒョン達が、今 日本に?知らなかった。万里のことや自分の仕事に手一杯で、クアイルの事なんてすっかり忘れちゃってた。
「向こうはシウとの共演は問題無いと言ってるらしい。むしろ おまえが出るからこそ受けたようなもんだな。じゃなきゃ天下のクアイルが、こんな無茶なオファー受けねーだろ。こっちも問題無いって答えたからな」
正直、ミンホさんに会うのは少し気が重いけど、それでもやっぱり向こうにいた時は誰よりもヒョン達を信頼していたし、辛いことも一緒に乗り越えてきた大切な人達だから、みんなに会いたい。
「・・・嬉しそうだな。まあドラマの挿入歌もチャート2位獲った事だし、おまえの成長ぶり見せつけてやれよ」
「うん!」
弾むような気持ちで自分のリハーサルを終え、楽屋で通しリハまでの時間を潰す。
「ねえ、ば・・・マネージャー。もうヒョン達入ったかな?」
「・・・さあ。クアイルのリハは一番最後になってるからまだなんじゃないか?」
「そっかぁ」
つまんないな。もう他の出演者達には挨拶に行っちゃったし、クアイルの楽屋に遊びに行こうと思ってたのに。
そう思っていたところに、ドアをノックする音。
万里がドアを少し開けて、誰かと話し楽屋を出て行く。
僅かな時間を空け、ドアが開きなだれ込むように入ってきたよく知ったメンツに、俺は涙が出そうになる。
「シウ~!アンニョン~!」
「ウォヌヒョン!ユンヒョン!テヒョニヒョン!」
「会いたかったよシウ~!マネージャーとPDに無理言って帰るの1日延ばして貰ったんだ。帰ったら地獄が待ってる・・・。そんな事より!おまえ何にもできないから、ちゃんと生活してるか心配してたんだぞ!」
一番歳上のリーダー ウォヌさんが俺の頭を撫でる。
「嬉しいですヒョン~!俺は元気に生きてます。心配ないですよ!」
「シウが抜けた穴は大きいんだぞ!ビジュアル担当が抜けてクアイルはもう終わりだと思ったんだからな」
続けて二番目のユンさんが両手で頬を左右から挟んで潰してくる。
「終わりじゃないですよ!ヒョン達もイケメンじゃないですか、俺には負けるけど」
「こいつ~!相変わらず生意気だな!」
「シウの分まで頑張んなきゃって必死なんだからな、俺達は。なのに呑気に日本でも活躍しやがって!」
ユンさんと同い歳のテヒョンさんに鼻を摘まれグリグリと揺すられる。
「テヒョニヒョン痛いですよ!もーほんと乱暴なんだから・・・」
懐かしい。この人達と一緒に居るのは当たり前になってて、すごく温かくて息がしやすくて。いなかったら不安になる。俺にとっては空気と同じ存在だった。
日本へ来て万里を好きになるまで、俺の一番大切だった人達。
ふとミンホさんがいないことに気付く。
俺は別れ際の彼を思い出す。俺が宿舎を出て行く時、ホッとした顔をしてた。もしかしたら、俺がいなくなった方がいいとミンホさんは思ってたのかもしれない。
「なあシウ。ミンホがさ、おまえに会えないって言うんだよ。きっとシウは許してくれないって」
「え・・・」
ウォヌさんの言葉に、何も言えなくなる。
やっぱりミンホさんは俺を避けてる。
「二人に何があったか知らないけど、俺はシウがクアイルじゃなくなった今も、家族と同じくらい大事な存在だと思ってる。みんな同じ気持ちだ。きっとミンホもな」
「・・・はい」
「おまえら一番仲良かっただろ?だからミンホはきっと、シウを守ってやれなかった事を誰よりも後悔してる」
「ミンホと会ってやってくれるか?」
「もちろんですよ!・・・でも、ミンホさんは・・・」
「シウ」
名前を呼ばれて振り返ると、テヒョンさんに背中を押されたミンホさんが俺の方へ歩み寄って来る。
「ミノヒョン・・・」
気まずそうに俯くミンホさんに、俺は飛び付く。
「ミノヒョン!ごめんなさい!俺が、彼女を怒らせたから・・・だからヒョンは悪くないです、お願いだからそんな顔しないで」
「シウ・・・」
抱き合う俺達に気を使ってか、他のメンバー達は楽屋を出て行く。
「ごめん、シウ。俺がおまえを好きだったから・・・俺が悪いのに、シウに全ての責任を負わせる事になって・・・それでもクアイルを辞めるのが俺じゃなくてよかったってどっかで思ってた。本当にごめん」
ミンホさんの声が震えてる。
「謝らないでください。俺・・・日本に来てよかったって思ってるから」
だって、万里と出逢えたから。
「今、すごく好きな人がいるんです。こんな気持ちになったの初めてで・・・。韓国にいたら彼にも出逢えてないし、きっと知らなかった気持ちだから」
「・・・彼?・・・シウ、男を好きになったのか?」
「えっ?はい・・・」
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「俺を拒んだおまえが、それを言うの?」
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