44 / 131
answer 4
しおりを挟む
繁華街のすぐ近く、パーキングに車を停める万里。
「おまえは絶対に車から降りるな。どこで見られてるかわかんねぇから、隠れてろ。こんな場所にいるのをスッパ抜かれたら終わりだ」
「どんな場所?」
「・・・シウは知らなくていい」
知らなくていい、って・・・。ミンホさんも同じ事言ってた。
世の中って知らなくていい事だらけなのかな?
3列シートの一番後ろに移動して、とりあえず身を潜める。
「すぐ戻るから、いい子にしてろよ」
万里は車を降り、繁華街へと消えて行く。
5分・・・10分・・・。
・・・すぐ戻って来ないじゃん。『こんな場所』で湊さんと何してるんだよ。
湊さんには夏がいる。そう頭ではわかっているのに、水の中で押さえ付けられてるかのように息苦しくて不安になる。
戻って来る万里を早くこの目で捉えたくて黒いスモーク越しに外を見渡す。
だけど万里の姿は一向に見えなくて、視界に入ってくるのは出入りする車や知らない人だけ。
パーキングに入ってきた黒の小さめの車から降りた眼鏡をかけた男性二人を何気無く見る。
周りの高級車や大きな車の中で、やけにこじんまりとしてて可愛い車。
スーツやチャラそうに着飾った人達しかいないような場所かと思ってたけど、この人達みたいに いかにも普通って感じの人も来るような場所なんだな。
二人が車の前を通り過ぎる。
あれ?今の人どこかで・・・
見覚えのある顔に、俺は記憶の箱をひっくり返す。
「あっ!・・・夏?」
まだ新しい記憶だったからすぐに思い出せた。眼鏡を掛けてたけど、あれは絶対に夏だ。
「なんで夏まで?しかも一緒にいたポロシャツ眼鏡の人、誰?」
万里と湊さんと眼鏡の夏とポロシャツ眼鏡。
なに?眼鏡パーティでもしてるの?
・・・気になる。マスクしてるし、外に出ても俺だって気付かれないかも・・・。
・・・いやダメだ。俺の軽率な行動で、また大切な人を失うかもしれない。万里だけは失いたくない。
思い直して、シートに体を倒し目を閉じる。
「すぐ戻るすぐ戻る・・・・・・早く戻って来てよ万里・・・」
また俺だけ何も知らない。俺が芸能人じゃなかったら、万里たちと同じ場所にいれたのかな。
寂しさと不安、嫉妬と闘うこと20分。ようやくドアロックを解除する電子音が鳴る。
体を起こすと、スライドドアを開けて車に乗り込んで来る湊さんと夏。
ええ~・・・、なんで乗ってくるの~・・・。さっきのポロシャツ眼鏡と一緒に帰れよ~!
窓の外を見ると、ポロシャツ眼鏡と夏が乗って来た車が無い。
あいつ、いつの間にいなくなっちゃったんだよ!
ああ~万里をマンションに連れ込む計画が丸潰れじゃん。
「おっそい。くそマネ待たせ過ぎ」
「ごめんな、シウ」
運転席に座る万里に突っかかる俺に謝ってくるのは湊さん。
万里に言ったのに、なんで湊さんが謝るんだよ・・・。
「別に・・・」
別に良くないだろ、俺!あーあ、また仲良しなところ見せつけられちゃったな。面白くない。
見るからにぐったりした様子の湊さんの肩を抱き、自分に寄りかからせている夏。
夏は心配そうに湊さんを覗き込んで、応えるように湊さんは夏に寄り添う。
後ろから見てても、お互い愛し合ってるのがわかる。万里が入り込む隙間なんか無さそうだ。
湊さんに何かがあって、迎えに来ただけなのかな?それならそうだって言ってくれればいいのに。万里はいつも俺に何も言わない。俺が言わせない時もある。
万里と俺は、こうやってずっと噛み合わないのかな・・・。
夏と湊さんはどうなんだろう。斜め後ろから見える夏の横顔は、怒と哀を混ぜた様。それでも湊さんを抱く腕は優しく見える。
愛し合ってるだけならこんな顔しないはず。何があったのか知りたい気持ちより、知っちゃいけない気持ちの方が大きくなる。
俺は、話し掛けられない雰囲気の二人を見て
「男同士でモメるのって大変そうだね」
呟いてマスクで半分顔を隠し寝るフリをした。
もし俺の望みが叶って万里と愛し合えたなら、その先の未来には夏みたいな顔をした俺がいるのかな。
もしかしたら今より辛い思いをするのかもしれない。
弱気な自分に、また少しずつ侵食されそうになる。
湊さんと夏を降ろし、車は俺のマンションへと向かう。
すっかり遅くなっちゃったな。こんな時間じゃゴハンなんて作って貰えない・・・。湊さんと夏のせいだ、くっそぉ・・・。
「何が食いたいんだ?」
諦めかけていた俺に、神様のような万里の一言。
「え?いいの?今から?」
「作るのは無理。けど俺も腹減ったし、なんか食ってくかテイクアウトして・・・」
「テイクアウトで!」
やったぁ~!ついでに万里もお持ち帰りだ!
夏と湊さんのおかげだな。さっきはクソとか思ってごめんなさい。
ゴハンを食べたら、次は万里を帰らせないようにしなきゃ。どうやって?えーと・・・
弱気な自分はいつの間にかどこかへ行ってしまう。頭の中は、万里を引き止めるための口実を考えるのにいっぱいいっぱいだ。
「シウ、何が食べたいんだよ。言わないなら俺が勝手に決めるぞ」
「んー?んー・・・」
「人の話聞けよ!」
万里がまた怒っている。だけどそんなのどうでもいい。
俺は決めた。今夜が勝負。
自分の全てを使って万里を落とす。
落とせなかったらその時は・・・万里が落ちるまで諦めない、それだけだ。
「おまえは絶対に車から降りるな。どこで見られてるかわかんねぇから、隠れてろ。こんな場所にいるのをスッパ抜かれたら終わりだ」
「どんな場所?」
「・・・シウは知らなくていい」
知らなくていい、って・・・。ミンホさんも同じ事言ってた。
世の中って知らなくていい事だらけなのかな?
3列シートの一番後ろに移動して、とりあえず身を潜める。
「すぐ戻るから、いい子にしてろよ」
万里は車を降り、繁華街へと消えて行く。
5分・・・10分・・・。
・・・すぐ戻って来ないじゃん。『こんな場所』で湊さんと何してるんだよ。
湊さんには夏がいる。そう頭ではわかっているのに、水の中で押さえ付けられてるかのように息苦しくて不安になる。
戻って来る万里を早くこの目で捉えたくて黒いスモーク越しに外を見渡す。
だけど万里の姿は一向に見えなくて、視界に入ってくるのは出入りする車や知らない人だけ。
パーキングに入ってきた黒の小さめの車から降りた眼鏡をかけた男性二人を何気無く見る。
周りの高級車や大きな車の中で、やけにこじんまりとしてて可愛い車。
スーツやチャラそうに着飾った人達しかいないような場所かと思ってたけど、この人達みたいに いかにも普通って感じの人も来るような場所なんだな。
二人が車の前を通り過ぎる。
あれ?今の人どこかで・・・
見覚えのある顔に、俺は記憶の箱をひっくり返す。
「あっ!・・・夏?」
まだ新しい記憶だったからすぐに思い出せた。眼鏡を掛けてたけど、あれは絶対に夏だ。
「なんで夏まで?しかも一緒にいたポロシャツ眼鏡の人、誰?」
万里と湊さんと眼鏡の夏とポロシャツ眼鏡。
なに?眼鏡パーティでもしてるの?
・・・気になる。マスクしてるし、外に出ても俺だって気付かれないかも・・・。
・・・いやダメだ。俺の軽率な行動で、また大切な人を失うかもしれない。万里だけは失いたくない。
思い直して、シートに体を倒し目を閉じる。
「すぐ戻るすぐ戻る・・・・・・早く戻って来てよ万里・・・」
また俺だけ何も知らない。俺が芸能人じゃなかったら、万里たちと同じ場所にいれたのかな。
寂しさと不安、嫉妬と闘うこと20分。ようやくドアロックを解除する電子音が鳴る。
体を起こすと、スライドドアを開けて車に乗り込んで来る湊さんと夏。
ええ~・・・、なんで乗ってくるの~・・・。さっきのポロシャツ眼鏡と一緒に帰れよ~!
窓の外を見ると、ポロシャツ眼鏡と夏が乗って来た車が無い。
あいつ、いつの間にいなくなっちゃったんだよ!
ああ~万里をマンションに連れ込む計画が丸潰れじゃん。
「おっそい。くそマネ待たせ過ぎ」
「ごめんな、シウ」
運転席に座る万里に突っかかる俺に謝ってくるのは湊さん。
万里に言ったのに、なんで湊さんが謝るんだよ・・・。
「別に・・・」
別に良くないだろ、俺!あーあ、また仲良しなところ見せつけられちゃったな。面白くない。
見るからにぐったりした様子の湊さんの肩を抱き、自分に寄りかからせている夏。
夏は心配そうに湊さんを覗き込んで、応えるように湊さんは夏に寄り添う。
後ろから見てても、お互い愛し合ってるのがわかる。万里が入り込む隙間なんか無さそうだ。
湊さんに何かがあって、迎えに来ただけなのかな?それならそうだって言ってくれればいいのに。万里はいつも俺に何も言わない。俺が言わせない時もある。
万里と俺は、こうやってずっと噛み合わないのかな・・・。
夏と湊さんはどうなんだろう。斜め後ろから見える夏の横顔は、怒と哀を混ぜた様。それでも湊さんを抱く腕は優しく見える。
愛し合ってるだけならこんな顔しないはず。何があったのか知りたい気持ちより、知っちゃいけない気持ちの方が大きくなる。
俺は、話し掛けられない雰囲気の二人を見て
「男同士でモメるのって大変そうだね」
呟いてマスクで半分顔を隠し寝るフリをした。
もし俺の望みが叶って万里と愛し合えたなら、その先の未来には夏みたいな顔をした俺がいるのかな。
もしかしたら今より辛い思いをするのかもしれない。
弱気な自分に、また少しずつ侵食されそうになる。
湊さんと夏を降ろし、車は俺のマンションへと向かう。
すっかり遅くなっちゃったな。こんな時間じゃゴハンなんて作って貰えない・・・。湊さんと夏のせいだ、くっそぉ・・・。
「何が食いたいんだ?」
諦めかけていた俺に、神様のような万里の一言。
「え?いいの?今から?」
「作るのは無理。けど俺も腹減ったし、なんか食ってくかテイクアウトして・・・」
「テイクアウトで!」
やったぁ~!ついでに万里もお持ち帰りだ!
夏と湊さんのおかげだな。さっきはクソとか思ってごめんなさい。
ゴハンを食べたら、次は万里を帰らせないようにしなきゃ。どうやって?えーと・・・
弱気な自分はいつの間にかどこかへ行ってしまう。頭の中は、万里を引き止めるための口実を考えるのにいっぱいいっぱいだ。
「シウ、何が食べたいんだよ。言わないなら俺が勝手に決めるぞ」
「んー?んー・・・」
「人の話聞けよ!」
万里がまた怒っている。だけどそんなのどうでもいい。
俺は決めた。今夜が勝負。
自分の全てを使って万里を落とす。
落とせなかったらその時は・・・万里が落ちるまで諦めない、それだけだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
55
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる