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two aspects 1
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プロデュースするコスメ商品の発表後、シウが囲み会見で精一杯自分の想いを語ったのは大正解だったようで、ストップしていたオファーがまた入るようになった。
シウが原料とデザインに拘ったコスメの売れ行きも好調で品切れが相次ぎ、再販を望む声も多く上がっている。
「再販? まだしないよ。3ヶ月後に新商品のリリースがあるし、それと同時に既存の商品も投入して販売促進させるつもりだから」
タレント業と同時進行しているコスメプロデュースが思った以上に楽しいらしく、軽く気取って経営者ぶった発言をするシウ。
でもエッヘン顔で幼さを隠しきれていないのが、なんだか可愛くて笑える。
金子ヒロムとのスキャンダル以来、契約を解消されてしまった企業もあるが、有り難い事に 新たにシウを起用したいという所が増えた。
更には タレントの熱愛報道が地雷であるファンの心も鷲掴みにしてしまったシウの会見は「神対応」としてSNSで拡散された。
オマケにジェンダーレス発言も多くの指示を受け、ビジュアルの美しさも手伝って「男でも女でもない、性別シウ」という言葉がトレンドワード入りする結果に。
俺が必死こいて書き上げた原稿なんて、シウが心のままに発した言葉の前では ゴミクズ同然だった。
語彙力が・・・とか語った自分が恥ずかしいわ!
やっぱりコイツは凄い。改めて、自分が担当しているタレントがどれだけの影響力を持っているか、という事を思い知らされた気がする。
ヒロムのとばっちりを受けたシウだったが・・・もしヒロムの相手がシウではなかったら、きっとあんなに大袈裟な事態にはなっていなかっただろう。
マンションに帰るなり、シウはソファにダイブし、寝転がったまま すぐにスマホゲームに夢中になる。
「ねーばんりぃ、今日のゴハンなに? 俺ラーメン食べたい。玉子入ってるやつ。あ!キムチもね」
「おまえなあ、マジで仕事中とギャップあり過ぎだぞ。待ってろ、今作るから」
俺は上着を脱いで座る暇もなくキッチンへ入る。
ったく、腹が減ったと口を開けばラーメンか肉しかねぇのかコイツは。作るのが楽だから助かるけど。
「ああっ!経験値2倍のイベントが終わってる!嘘だぁ・・・気付かなかった・・・ショック」
たかがスマホのゲームに、シウはいきなり叫んだかと思うと落胆し、スマホを床に落としてクッションに顔を埋めピクリとも動かなくなる。
・・・俺が担当してるタレントは、凄いヤツ、・・・のはず。
『プロになる』と言ってからのシウは徹底していた。
マンションの部屋を一歩出れば、俺を名前で呼ぶこともしなくなった。甘えた言葉も一切言わない。誰が見ていなくても、俺との距離を一定に保ち触れ合うことも無い。
その反動なのか、マンションへ帰ればこの通り。
「ねーばんりってばぁ、まだぁ? 俺お腹空きすぎて死んじゃう。早くー」
クッションに顔を埋めたまま、くぐもった声で甘える。まるで小学生男児のようだ。
「できたぞ。ほら食え」
「やったぁ!めっちゃ美味そー、いただきます」
勢いよくソファから飛び起き、両手を上げて喜びを表現したシウは、啜れない麺を箸で器用に口の中へ運んで幸せそうな顔。
ただのインスタントラーメンに玉子とキムチをのせただけなのに・・・
大勢の人々の心を動かすシウが、俺の作ったインスタントラーメンで今日イチの可愛い顔を見せてくれる。
この手に負えないほどの優越感と幸福感を、俺はどうしたらいいんだ。
「おかわりください!」
あっという間にラーメン一杯を平らげたシウが丼を突き出してくる。
「もう無い」
俺がそう言うと、たちまち しょぼん、と項垂れたシウの綺麗な渦を巻く旋毛がテーブルの向こうに見える。
あー可愛い。
「嘘だよ。ちょっと待ってて」
シウの頭を撫で、キッチンに向かおうとする俺の腕まくりしたシャツの袖を、きゅ とシウが掴む。
「・・・意地悪したから、お詫びしてよ」
それが「キスしろ」という意味だとわかる俺は、このクソ可愛い生き物にもう少しだけ意地悪をしたくなる。
「どこに詫びればいい?」
「く・・・」
言いかけて、瞳を逸らしたままのシウ。目元が赤くなっているのは少しの照れがあるから。
「・・・おでこ」
「じゃあこっち向いて目瞑って」
「・・・うん」
椅子に座っているシウが素直に目を瞼を閉じて顔を上げる。
シウの前髪を上げて抑えると、赤ん坊のように滑らかな肌で覆われた額が露になり、それだけで胸の中を擽られたように こそばゆくなる。
俺は額に近付けた唇を思い留まり、油断しているシウの唇に重ねる。
触れた瞬間、ピクッと身構える唇の動き。
数秒触れて離れると、耳朶まで赤くしたシウは、ふいっと顔を逸らし何でもないようなフリをする。
「おおおおかわり、って言ったじゃん!早くしろよな!」
フリ、なんてできてないけど。
「ハイハイ」
お詫びしろ、って言ったじゃん。
と思いながら鍋に沸かしてある湯の中に、自分とシウが食べる分の麺を入れる。
カウンターキッチン越しに見えるシウが、俺が触れた唇をそっと自分の指で摘んでいて、ニヤけそうになるのを堪えている。
はあ・・・今すぐひん剥いて、滅茶苦茶に泣かせ捲りたい。
可愛い生き物の見た目に騙された俺は、そいつが持つ毒で脳まで溶かされている。
シウが原料とデザインに拘ったコスメの売れ行きも好調で品切れが相次ぎ、再販を望む声も多く上がっている。
「再販? まだしないよ。3ヶ月後に新商品のリリースがあるし、それと同時に既存の商品も投入して販売促進させるつもりだから」
タレント業と同時進行しているコスメプロデュースが思った以上に楽しいらしく、軽く気取って経営者ぶった発言をするシウ。
でもエッヘン顔で幼さを隠しきれていないのが、なんだか可愛くて笑える。
金子ヒロムとのスキャンダル以来、契約を解消されてしまった企業もあるが、有り難い事に 新たにシウを起用したいという所が増えた。
更には タレントの熱愛報道が地雷であるファンの心も鷲掴みにしてしまったシウの会見は「神対応」としてSNSで拡散された。
オマケにジェンダーレス発言も多くの指示を受け、ビジュアルの美しさも手伝って「男でも女でもない、性別シウ」という言葉がトレンドワード入りする結果に。
俺が必死こいて書き上げた原稿なんて、シウが心のままに発した言葉の前では ゴミクズ同然だった。
語彙力が・・・とか語った自分が恥ずかしいわ!
やっぱりコイツは凄い。改めて、自分が担当しているタレントがどれだけの影響力を持っているか、という事を思い知らされた気がする。
ヒロムのとばっちりを受けたシウだったが・・・もしヒロムの相手がシウではなかったら、きっとあんなに大袈裟な事態にはなっていなかっただろう。
マンションに帰るなり、シウはソファにダイブし、寝転がったまま すぐにスマホゲームに夢中になる。
「ねーばんりぃ、今日のゴハンなに? 俺ラーメン食べたい。玉子入ってるやつ。あ!キムチもね」
「おまえなあ、マジで仕事中とギャップあり過ぎだぞ。待ってろ、今作るから」
俺は上着を脱いで座る暇もなくキッチンへ入る。
ったく、腹が減ったと口を開けばラーメンか肉しかねぇのかコイツは。作るのが楽だから助かるけど。
「ああっ!経験値2倍のイベントが終わってる!嘘だぁ・・・気付かなかった・・・ショック」
たかがスマホのゲームに、シウはいきなり叫んだかと思うと落胆し、スマホを床に落としてクッションに顔を埋めピクリとも動かなくなる。
・・・俺が担当してるタレントは、凄いヤツ、・・・のはず。
『プロになる』と言ってからのシウは徹底していた。
マンションの部屋を一歩出れば、俺を名前で呼ぶこともしなくなった。甘えた言葉も一切言わない。誰が見ていなくても、俺との距離を一定に保ち触れ合うことも無い。
その反動なのか、マンションへ帰ればこの通り。
「ねーばんりってばぁ、まだぁ? 俺お腹空きすぎて死んじゃう。早くー」
クッションに顔を埋めたまま、くぐもった声で甘える。まるで小学生男児のようだ。
「できたぞ。ほら食え」
「やったぁ!めっちゃ美味そー、いただきます」
勢いよくソファから飛び起き、両手を上げて喜びを表現したシウは、啜れない麺を箸で器用に口の中へ運んで幸せそうな顔。
ただのインスタントラーメンに玉子とキムチをのせただけなのに・・・
大勢の人々の心を動かすシウが、俺の作ったインスタントラーメンで今日イチの可愛い顔を見せてくれる。
この手に負えないほどの優越感と幸福感を、俺はどうしたらいいんだ。
「おかわりください!」
あっという間にラーメン一杯を平らげたシウが丼を突き出してくる。
「もう無い」
俺がそう言うと、たちまち しょぼん、と項垂れたシウの綺麗な渦を巻く旋毛がテーブルの向こうに見える。
あー可愛い。
「嘘だよ。ちょっと待ってて」
シウの頭を撫で、キッチンに向かおうとする俺の腕まくりしたシャツの袖を、きゅ とシウが掴む。
「・・・意地悪したから、お詫びしてよ」
それが「キスしろ」という意味だとわかる俺は、このクソ可愛い生き物にもう少しだけ意地悪をしたくなる。
「どこに詫びればいい?」
「く・・・」
言いかけて、瞳を逸らしたままのシウ。目元が赤くなっているのは少しの照れがあるから。
「・・・おでこ」
「じゃあこっち向いて目瞑って」
「・・・うん」
椅子に座っているシウが素直に目を瞼を閉じて顔を上げる。
シウの前髪を上げて抑えると、赤ん坊のように滑らかな肌で覆われた額が露になり、それだけで胸の中を擽られたように こそばゆくなる。
俺は額に近付けた唇を思い留まり、油断しているシウの唇に重ねる。
触れた瞬間、ピクッと身構える唇の動き。
数秒触れて離れると、耳朶まで赤くしたシウは、ふいっと顔を逸らし何でもないようなフリをする。
「おおおおかわり、って言ったじゃん!早くしろよな!」
フリ、なんてできてないけど。
「ハイハイ」
お詫びしろ、って言ったじゃん。
と思いながら鍋に沸かしてある湯の中に、自分とシウが食べる分の麺を入れる。
カウンターキッチン越しに見えるシウが、俺が触れた唇をそっと自分の指で摘んでいて、ニヤけそうになるのを堪えている。
はあ・・・今すぐひん剥いて、滅茶苦茶に泣かせ捲りたい。
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