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너를 관리! 4
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俺は泣き続けるシウの母親に声を掛けることも出来ず、ただその姿を見つめ立ち尽くしていた。
「初めまして。万里さん」
座り込んだままのシウの母親の傍らに寄ってきて背中を摩る中年男性。シウの父親であろうその人は、目鼻立ちがハッキリしていてハンサムで、シウによく似ていた。
「初めまして・・・。ご挨拶もせずに申し訳ありません。シウさんとお付き合いを・・・」
「堅苦しいのは苦手なんだ。時々、息子から電話で話を聞いていてね。早く会いたいと思ってたんだよ」
頭を下げる俺の肩をポンポン、と叩いて微笑む。
「今日は招待してくれてありがとう」
そうだ。予想外の展開に狼狽していたが、ふと考えると、シウの誕生日を祝うだけにしては大袈裟すぎる装飾に思いもよらないゲスト・・・なんだ、何が起こっているんだ、これは。
「ねー万里ー。遊園地行くのにこのカッコおかしくない?」
シャワーを終えたシウが白のタキシード姿でリビングから庭へと出てくる。
「シウ!」
シウの声を聞いて、勢い良く立ち上がり抱きつく母親。
「へ・・・? あれ、オンマ?アボジ? なんでここに?」
「もういい歳なんだ。オンマはやめろ、シウ」
「つい癖で・・・てゆーかなんでいんの?」
「ああ、河森さんにお招き頂いてね・・・」
緊張感の無い父子の会話の間で泣きじゃくる母。
「万里もシャワーして来たら?髭生えてるし、なんか汚いよ?」
「あ・・・ああ。すみません、失礼します」
場の気まずさに、俺はシウ達を置いて別荘の中へと入り、バスルームへ向かう。
冷たいシャワーを頭から浴び、冷静に状況を整理してみる。
飾り付けられた花々にバルーン、わざわざシェフまで用意して、庭には会食の準備・・・シウの両親を韓国から呼び付け、シウは白のタキシード・・・。
は!まさか、まさか親父は俺達の交際を公にするつもりなのか!?
猛スピードで全身を洗い、歯を磨き髭を剃ってバスルームを出て、父の秘書に用意された着替えを見ると、シウが着ていたのとはデザインが違う白のタキシード。
やっぱりそうか。シウの恋愛解禁。親父は俺達の関係を公表するつもりだ。
他に着るものもないし、とりあえず用意された服を着る。
まずい・・・。親父の思惑がわかった途端に妙な緊張感でいっぱいになる。世間に公表するつもりはないだろうとは思うけれど・・・。
そんなことよりまずあの母親をどう説得したものか。あの様子じゃシウを溺愛してるようだし、かなり手強そうだ。
「万里さん、お着替えになりましたか?」
脱衣所のドア越しに秘書から声が掛かる。
俺は思い切って聞いてみる。
「今日は、シウの誕生祝いがメインではないんですか?」
「それもありますが・・・お二人の式だと伺っております」
「式?」
「はい。結婚式なんですよね?」
けっこん・・・
「はあっ!? けっ!」
婚式!?
耳を疑うような唐突な秘書の言葉に吃驚し過ぎて、壊れてしまいそうなくらいの勢いでドアを開ける。
「ちょっと・・・ちょっと、待ってください。なんでそんな急に」
話を完全に無視されて、父の秘書にヘアワックスを馴染ませた手で前髪をセットされる俺。
「こちらへ」
促されるままに再び庭へ出ると、さっきまでシウとその両親しかいなかったはずなのに
「万里、どうなってんの、これ」
戸惑いながら立つシウまでの数メートルに、道を作るようにお互いの家族が両サイドに並んでいた。
どうなってるか、なんて聞きたいのは俺も同じだ。
「どうぞ、お進み下さい」
秘書にそう言われて、わけがわからないままで俺はシウへと向かって歩き出す。
右側には、俺の両親と妹。左側にはシウの両親と祖父母が並んでいて、皆柔らかい表情を浮かべている。ただ一人、シウの母親を除いて。
泣き腫らし不機嫌なその表情をどうしても見過ごすことが出来ずに、俺はシウの母親の前で立ち止まる。
「シウを、俺に任せて貰えませんか。マネージャーとして、生涯のパートナーとしても・・・俺と一緒に居ることを、シウに絶対に後悔させないと誓います」
「オンマ・・・ううん、オモニ。電話で何度も言ったかもしれないけど、俺、万里が好き。これからも一緒にいるのは万里がいい、万里じゃないと嫌なんだ」
隣に来たシウが、俺の手に指を絡めてぎゅっと握る。その手を握り返し、俺は深く頭を下げる。
「親不孝よ、あなたは。・・・だけどね、私はシウが大切なの。・・・これを」
俺と繋がれていない方のシウの手を取り、小さな箱を握らせるシウの母。
「それはね、シウのお嫁さんになる可愛い女の子に渡すはずだった物よ。私達が結婚する時に、あなたのハルモニから渡された大切なもの」
はぁ と溜息を吐いて、シウの手を撫でる。
シウがその箱を開けると、中に入っていたのはダイヤモンドが埋め込まれたシンプルな指輪。
「オモニ、これ」
「サイズが小さいから、可愛くない婿には入らないだろうけど!・・・儀式だと思って、渡してあげなさい」
シウの母親のぶっきらぼうな物言いが、諦めを含んだものだとわかっている。それでも俺はこの人の母親としての優しさに、目の奥が熱くなって零れそうになる涙を必死に堪えた。
「オモニ、ごめんね。ありがとう」
母親と抱き合ったシウが、俺の方へ振り返る。
「万里、手だして」
それに従い俺は左手を差し出す。
・・・が、どう見ても男の指に嵌められるようなサイズじゃない。
俺の小指の先になんとか嵌められた小さな指輪を見て、シウの母親が笑う。
「ふふふっ、やっぱり可愛くないね」
ようやく笑ってくれた事で、俺は堪えていた涙が勝手に溢れ出してくる。
「あり・・・がとう、ございます」
「許したわけじゃないのよ! うちの大事な息子をたぶらかした責任を取ってもらうだけよ! 泣き虫な男にシウの事を任せるのは不安だから、もう泣かないの!」
「すみません」
俺は泣き虫なんかじゃない。
だけど、シウの事になると自分では止められない感情が幾つもあって、そのどれもが俺に教えてくれる。
理屈じゃなく、理由もなく、シウが俺の全てなんだと。
「初めまして。万里さん」
座り込んだままのシウの母親の傍らに寄ってきて背中を摩る中年男性。シウの父親であろうその人は、目鼻立ちがハッキリしていてハンサムで、シウによく似ていた。
「初めまして・・・。ご挨拶もせずに申し訳ありません。シウさんとお付き合いを・・・」
「堅苦しいのは苦手なんだ。時々、息子から電話で話を聞いていてね。早く会いたいと思ってたんだよ」
頭を下げる俺の肩をポンポン、と叩いて微笑む。
「今日は招待してくれてありがとう」
そうだ。予想外の展開に狼狽していたが、ふと考えると、シウの誕生日を祝うだけにしては大袈裟すぎる装飾に思いもよらないゲスト・・・なんだ、何が起こっているんだ、これは。
「ねー万里ー。遊園地行くのにこのカッコおかしくない?」
シャワーを終えたシウが白のタキシード姿でリビングから庭へと出てくる。
「シウ!」
シウの声を聞いて、勢い良く立ち上がり抱きつく母親。
「へ・・・? あれ、オンマ?アボジ? なんでここに?」
「もういい歳なんだ。オンマはやめろ、シウ」
「つい癖で・・・てゆーかなんでいんの?」
「ああ、河森さんにお招き頂いてね・・・」
緊張感の無い父子の会話の間で泣きじゃくる母。
「万里もシャワーして来たら?髭生えてるし、なんか汚いよ?」
「あ・・・ああ。すみません、失礼します」
場の気まずさに、俺はシウ達を置いて別荘の中へと入り、バスルームへ向かう。
冷たいシャワーを頭から浴び、冷静に状況を整理してみる。
飾り付けられた花々にバルーン、わざわざシェフまで用意して、庭には会食の準備・・・シウの両親を韓国から呼び付け、シウは白のタキシード・・・。
は!まさか、まさか親父は俺達の交際を公にするつもりなのか!?
猛スピードで全身を洗い、歯を磨き髭を剃ってバスルームを出て、父の秘書に用意された着替えを見ると、シウが着ていたのとはデザインが違う白のタキシード。
やっぱりそうか。シウの恋愛解禁。親父は俺達の関係を公表するつもりだ。
他に着るものもないし、とりあえず用意された服を着る。
まずい・・・。親父の思惑がわかった途端に妙な緊張感でいっぱいになる。世間に公表するつもりはないだろうとは思うけれど・・・。
そんなことよりまずあの母親をどう説得したものか。あの様子じゃシウを溺愛してるようだし、かなり手強そうだ。
「万里さん、お着替えになりましたか?」
脱衣所のドア越しに秘書から声が掛かる。
俺は思い切って聞いてみる。
「今日は、シウの誕生祝いがメインではないんですか?」
「それもありますが・・・お二人の式だと伺っております」
「式?」
「はい。結婚式なんですよね?」
けっこん・・・
「はあっ!? けっ!」
婚式!?
耳を疑うような唐突な秘書の言葉に吃驚し過ぎて、壊れてしまいそうなくらいの勢いでドアを開ける。
「ちょっと・・・ちょっと、待ってください。なんでそんな急に」
話を完全に無視されて、父の秘書にヘアワックスを馴染ませた手で前髪をセットされる俺。
「こちらへ」
促されるままに再び庭へ出ると、さっきまでシウとその両親しかいなかったはずなのに
「万里、どうなってんの、これ」
戸惑いながら立つシウまでの数メートルに、道を作るようにお互いの家族が両サイドに並んでいた。
どうなってるか、なんて聞きたいのは俺も同じだ。
「どうぞ、お進み下さい」
秘書にそう言われて、わけがわからないままで俺はシウへと向かって歩き出す。
右側には、俺の両親と妹。左側にはシウの両親と祖父母が並んでいて、皆柔らかい表情を浮かべている。ただ一人、シウの母親を除いて。
泣き腫らし不機嫌なその表情をどうしても見過ごすことが出来ずに、俺はシウの母親の前で立ち止まる。
「シウを、俺に任せて貰えませんか。マネージャーとして、生涯のパートナーとしても・・・俺と一緒に居ることを、シウに絶対に後悔させないと誓います」
「オンマ・・・ううん、オモニ。電話で何度も言ったかもしれないけど、俺、万里が好き。これからも一緒にいるのは万里がいい、万里じゃないと嫌なんだ」
隣に来たシウが、俺の手に指を絡めてぎゅっと握る。その手を握り返し、俺は深く頭を下げる。
「親不孝よ、あなたは。・・・だけどね、私はシウが大切なの。・・・これを」
俺と繋がれていない方のシウの手を取り、小さな箱を握らせるシウの母。
「それはね、シウのお嫁さんになる可愛い女の子に渡すはずだった物よ。私達が結婚する時に、あなたのハルモニから渡された大切なもの」
はぁ と溜息を吐いて、シウの手を撫でる。
シウがその箱を開けると、中に入っていたのはダイヤモンドが埋め込まれたシンプルな指輪。
「オモニ、これ」
「サイズが小さいから、可愛くない婿には入らないだろうけど!・・・儀式だと思って、渡してあげなさい」
シウの母親のぶっきらぼうな物言いが、諦めを含んだものだとわかっている。それでも俺はこの人の母親としての優しさに、目の奥が熱くなって零れそうになる涙を必死に堪えた。
「オモニ、ごめんね。ありがとう」
母親と抱き合ったシウが、俺の方へ振り返る。
「万里、手だして」
それに従い俺は左手を差し出す。
・・・が、どう見ても男の指に嵌められるようなサイズじゃない。
俺の小指の先になんとか嵌められた小さな指輪を見て、シウの母親が笑う。
「ふふふっ、やっぱり可愛くないね」
ようやく笑ってくれた事で、俺は堪えていた涙が勝手に溢れ出してくる。
「あり・・・がとう、ございます」
「許したわけじゃないのよ! うちの大事な息子をたぶらかした責任を取ってもらうだけよ! 泣き虫な男にシウの事を任せるのは不安だから、もう泣かないの!」
「すみません」
俺は泣き虫なんかじゃない。
だけど、シウの事になると自分では止められない感情が幾つもあって、そのどれもが俺に教えてくれる。
理屈じゃなく、理由もなく、シウが俺の全てなんだと。
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