向かいの蓮くんは甘く見える

Hiiho

文字の大きさ
4 / 55

開発日誌 : 前立腺について 1

しおりを挟む
――――――――――

蓮くんに見た目をプロデュースされた僕は、週明け登校した途端 見事に世界が変わってしまった。

今まで見向きもしなかった女子たちが突然話しかけて来るし、僕なんか相手にもしてなかった男子たちが親しく接してくる。いい事ばかりではなくて、何にもしてないのに睨まれたり舌打ちされたりもあるけど。


一番大きな事件が起きてるのは、今まさにこの瞬間だ。

中谷なかたにって、彼女いる? いないならさぁ、あたしと付き合って♡」

昼休みに廊下に呼び出されたと思ったら、突然の告白。しかも相手は学年カースト上位のユカちゃん。

「え・・・、なんかの罰ゲームさせられてるとか・・・?」

じゃなきゃカースト最下層の僕なんかに「付き合って」なんて言うはずない。

「なわけないじゃん。今まで中谷のカッコ良さに気づかなかっただけ~。みんなそうだよ。だから誰かに盗られちゃう前に、告っちゃおっかなって」

カワイイし、可愛いしかないユカちゃんの笑顔。この顔に言われて断る男なんているわけが無い。

「あ・・・、じゃあ、ヨロシクオネガイシマス」

「やった♡ 今日から一緒に帰ろうね♡」

放課後、と言ってユカちゃんは自分のクラスへと帰って行く。

・・・は? ・・・えっ? 僕、ユカちゃんの彼氏?
信じられない。ただ髪を切ってコンタクトに変えただけで?
蓮くん、あなたは魔法使いか何かですか!?








ふわふわと足が浮いたように舞い上がって、興奮状態のままであっという間に放課後に。
僕の教室まで迎えに来たユカちゃんと共に、羨望なのか嫉妬なのかわからないクラスメイトの視線に見送られながら学校を後にする。

「デートしよ♡」

ユカちゃんに誘われるままに直行したのはラブホテルで、制服のままでヤバイんじゃ!? とビビる僕を完全無視で、あれよあれよという間にユカちゃんのリードでそういう流れに。

あっ、あっ、・・・ああ~~~~・・・










駅までユカちゃんを送ると

「また明日ね、バイバイ♡」

可愛い笑顔で手を振って改札を通過して見えなくなる後ろ姿。

僕はついに、今日、大人の階段をひとつ登ってしまった。キス、しかも軽くないやつ、からまあその色々とあって、からの まぐわり・・・

ってか今日一日で人生の運を全て使ってしまったのではないだろうか!?

はっ、まさか夢!?
髪を切ってコンタクトに変えただけで、可愛い彼女ができて速攻で童貞を卒業してしまうなんて、こんなに都合のいい現実があるはずないんだ。

自分で自分の頬を思いっきり打ってみる。

バチンッ と大きな音がして、周囲の知らない人達がおかしなヤツを見るような目で僕を見てるし、めちゃくちゃ痛い。

「夢、じゃない・・・たぶん」

ああ~!なんって事だ。蓮くんの尻を少しほじっただけで、僕の人生が一気にマイナスからプラスに・・・!振り幅が大き過ぎて、童貞を捨てた実感がまだ湧かない!

叩いた頬は確実に痛いけど、やっぱりまだ信じられなくて。さっきまで見てたはずのユカちゃんの裸やきっと可愛かったであろうキス待ち顔すらボヤけて思い出せない。

なんだかよくわからない高揚感で歩き出せなくて駅前のベンチに腰を下ろし、行き交う人達をぼーっと眺める。

その中で一際目を引く美人顔が目に入り はっと息を飲むと、偶然にもそれが蓮くんだということに気付いて、僕は咄嗟に彼に駆け寄る。


「蓮くん!」

驚くわけでもなく視線をこちらに向ける蓮くんと目が合って、改めてすごく僕好みの顔の造形に若干胸が高まってしまう。

「おー、奏汰。今帰り?」

「うん。蓮くんは?」

「今からバイト。お前早く帰んなくていいの?もう18時まわってんぞ」

蓮くんは僕を子供扱いして「ふっ」と口元を緩ませる。
フッフッフッ・・・もう僕は子供じゃないんだよ、蓮くん。あなたのおかげで立派な大人になったんだよ。

「あのさ僕、彼女できたんだ。しかもめっちゃ可愛い子」

「良かったな。じゃあ童貞卒業も近いじゃん」

「うん。実はさっき卒業したんだよ」

だから、蓮くんの尻の開発にも大いに貢献できると思う。

「そっか。おめでと。卒業証書やんなきゃな。じゃあ俺行くわ。気をつけて帰れよ」

「あ、うん。またね」

駅の前を通過して飲み屋街の方へと消えて行く蓮くんの背中。とその横に蓮くんより少し背の高い男の背中。
蓮くんしか目に入らなくて誰かと一緒だったなんて気付かなかった。
バイト、ってことはあれが例の先輩?


なんだろ。さっきまで童貞卒業とか舞い上がってたのに。今僕の心は信じられないくらい冷静だ。

ユカちゃんはカースト上位ですごく可愛いのに。
蓮くんを見れば、やっぱり彼の方が綺麗で可愛いと思ってしまう。幼い頃から刷り込まれた蓮くんのハイスペックビジュアルが邪魔をして、僕は相当な面食いになってしまったに違いない。

家までの帰り道は何故か気が重くて、今日一日を振り返って思うことは「財布にホテル代が払えるくらいのお金が入ってて良かった」だった。

早く蓮くんに童貞じゃなくなった僕を見せたい。今度は痛いだけじゃなくて、気持ちいいって思ってもらいたい。そんな風に思っていた。



それから蓮くんの家に行く約束をしている日曜日まで、僕は毎日ユカちゃんとセックスをした。さすがにホテルに行くお金が無くてどちらかの家でだったけど。
夜寝る前にはネットで男の性感帯を調べたり、どうすれば快感を得られるのかをとことん勉強した。

どうしてだろう。
僕はユカちゃんとの毎日のセックスよりも、蓮くんの尻開発をする日曜の方が楽しみで仕方がなくなっていた。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

処理中です...