向かいの蓮くんは甘く見える

Hiiho

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開発日誌 : 前立腺について 2

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僕はなんて最低なんだろうか。

『中谷、ユカとのえっち、気持ち良くない?』

駅まで送る途中、そう呟いた彼女はうるうると涙を流していた。僕は生まれて初めて、女の子を泣かせてしまった。

気持ち良くないわけない。巨乳が好きな僕は正直ユカちゃんのおっぱいでは少々物足りないけど、それを差し引いたって文句のつけようのないくらいに可愛いし、エッチだって積極的で少し触っただけでも濡れてくれるし高い声で喘いでくれる。

積極的過ぎるユカちゃんに ただ少し、ほんの少しだけ僕がついていけてないだけだ。


フォローの言葉も掛けれず彼女と別れ、今来た自宅までの道をトボトボと歩く。
彼女ができて僕は浮かれていた。イチャイチャしたり、学校帰りにいろんな所へ寄ってみたり・・・そんな事を想像して。
だけど実際やる事といったら『ヤること』しかなくて。不満、がある訳じゃない。性欲しかないと言ってもおかしくない歳だし。

ユカちゃんは僕のどこが好きなんだろう。
今まで隠していた顔・・・かな、やっぱ。なーんて自惚れすぎだよな。僕なんて蓮くんの足元にも及ばない平凡顔だし。

顔を晒した根暗が思っていたよりブサイクじゃなかった。それはつまりギャップというやつで、決して僕の元々のポテンシャルが高いわけではない。
蓮くんがかけてくれた魔法のおかげなんだ。


立ち止まり、自分の顔を両手で ベチベチ と叩いて溜息を吐く。
外見だけでなく中身も少しは変われたらな。もっと男らしくユカちゃんをリードできるように、不安にさせないように・・・

「道端で何やってんだ? つか不気味なんだけど」

聞き覚えのある呆れ声に振り返ると

「蓮くん・・・」

声を裏切らない呆れた表情で蓮くんがいて、足を止める事無く僕を追い越して歩いて行く。
僕は早足で彼に追いつき並んで歩く。

「カワイイ彼女とケンカでもした?」

「可愛いって知ってるの?」

「自分で言ってただろ。まあ、毎日一緒にいるみてーだし嫌でも見かけるっつーの」

「声かけてくれればいいのに」

「お前バカなの? 付き合いたての若者のデート中に声掛けるヤツがどこにいんだよ」

「いいじゃん。蓮くん綺麗だし、自慢のお向かいさんだよって紹介したい」

「そーゆーのいらねぇ」

ふん、と僕を馬鹿にして蓮くんは鼻を鳴らす。
本当に自慢の向かいの兄ちゃんなのに。

ああでも蓮くんをユカちゃんに紹介しちゃったら、きっと彼女は蓮くんを好きになる。いくらバイト先の先輩(男)を好きな蓮くんだって、可愛いJKから好かれたら悪い気はしないはず。

そう考えるとモヤモヤしてくる。
できれば蓮くんを誰にも会わせたくない。ただでさえモッテモテの蓮くんを好きになる人が増えるのは なんか嫌だ。
これは僻み、なんだろうな、きっと・・・。

「そうだ。日曜は何時にそっち行けばいい?」

「あー、どうせ親いねぇしいつでも。奏汰の都合のいい時間で」

「おばさんたち、まだ帰って来ないの?」

「たまに帰ってくるけど。あっちの方が通勤時間ゼロで都合がいいんだと。防犯にもなるしな」

「そっか」

蓮くんのご両親は会計事務所をやっていて今の時期は忙しくて殆ど自宅に帰って来ないらしい。
一度事務所に空き巣に入られて以来、おじさんが泊まり込みで警備していたのだが、それを放っておけなくなったおばさんが同じビルの上階の住居スペースを借りて、今ではそっちメインで生活するようになってしまったらしい。

「幸い盗られたもんも無かったし金庫は開けられてなかったし、事務所荒らされただけで済んだから良かったけど。信用問題に関わるから警察沙汰にもできなかったしな」

「そっか・・・。おばさんたち大変だね」

「自分たちの事務所なんだ。自分たちでどうにか守ってかなきゃなんねーからな」

「蓮くん、寂しくない?」

「ぷっ、お前なあ!俺をいくつだと思ってんだよ!生意気~」

蓮くんが大きく口を開けて笑う。

あ・・・八重歯見える・・・。はあ、めちゃくちゃ可愛い。これで男だっていうんだから詐欺もいいとこだ。蓮くんが女だったら、確実に僕は恋をしていただろう。

蓮くんが女の子だったら、姉の幼なじみの綺麗なお姉さんで、ガタイのいい姉とは違って華奢だしおっぱいも大きくて(これは僕の希望)髪も長くてきっと優しくて、笑うとこんな風に八重歯が見えて・・・

なーんて妄想してみたところで、この人が男なのは変わらない事実。華奢に見えても骨格はしっかりしてるし、ムダ毛は無いけど男性器はついてる。

まあ蓮くんが女の子だったとしても、僕なんか相手にしてもらえないか。



あっという間に家の前に着いてしまって、余韻も残さず蓮くんはあっさりと玄関のドアを閉める。

もう少し話していたかったな、と思うのは僕だけなんだろう。まあいっか、明後日また会えるし。
僕も自宅の玄関に入りドアを閉めた。










翌日、土曜日で学校は休み。ユカちゃんとのデートだったけど、結局その日も日中親が不在なのをいい事に一日じゅう僕の部屋でセックスをして過ごした。ユカちゃんはご機嫌だった。

途中何度か蓮くんの顔がチラついて、ヨがる彼女の顔が蓮くんに見えてしまう始末だった。いや違う、蓮くんが女だったらもっと巨乳で・・・とか考えてしまった僕は、本当に最低な彼氏です。ごめんなさいユカちゃん。












そしてその翌日、日曜日。

僕は朝起きてすぐシャワーを浴びデオドラントスプレーを体中に吹きかけ、部屋着の中でもいちばん新しそうな服を選び念入りに歯磨きをして手を洗って家を出る。

ほんの数秒で着いてしまう塩田しおた家のインターフォンを鳴らすけど反応が無くて、何度か連続で鳴らし続けるとたっぷりと時間をかけたのち ようやく玄関のドアが開いて

「お前な・・・早すぎ。まだ8時過ぎだぞ」

「何時でもいいって言ったじゃん」

「・・・言ったけども」

寝ぼけ眼でロンTの裾から手を入れてお腹の辺りをさする蓮くんが欠伸をする。
チラリと見えた薄い腹筋が妙にセクシーでドキッとした。

「あのさ」

無防備過ぎ。と言いかけてやっぱりやめた。
だって蓮くんは女の子じゃないから。

「なんだよ?」

「なんでもない。準備してきてよ」

「はあ!? 俺寝起きだぞ!? 低血圧なんだぞ!? もう少し歳上を労われよ!」

そんなの知らないし。僕はこの一週間で下調べした『前立腺』とやらを早く開発してあげたくてうずうずしてるんだ。

僕より前で階段を登る蓮くんの尻に視線が釘付けになって、スウェット越しに見てるだけじゃわからない弾力に触れたくて堪らなくなる。


自分の部屋に入ると蓮くんはすぐにベッドに横になって布団を被って目を閉じる。

「ちょっとー、何やってんの?準備は?」

「うるせー。あと30分寝かせろ。じゃねぇと出るもんも出ねーし準備もできねー」

「もぉ~」

すぐに静かになった彼の顔を覗き込んでみる。
規則正しい呼吸、閉じた瞼の下で動く眼球。・・・マジで寝てるし。

それにしても綺麗な寝顔だ。髭とかあんまり伸びないのかな、すべすべ。元々そんなに毛深くないとは言ってたけど。
あ、でも唇がカサついてる。こうやって隙があるとこが可愛いよなぁ。思わずまたキスしたくなる・・・


って、なんだよ!!!
蓮くんは男だっつーの!

イヤイヤ、男じゃなかったとしても僕にはユカちゃんっていう超絶カワイイ彼女がいるじゃん!彼女以外の人とキスしたいなんて立派な浮気だろ!

あれ、でもそうなったら、蓮くんのお尻を触る事は浮気になるんだろーか・・・?
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