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あれから夫は忙しくなりこの1週間私達が起きる前に仕事に行き私達が寝てから帰ってくる生活になった。それに伴い私達は離縁について話し合う?いや、離縁状にサインをして貰う時間も無くなった。
夫の机に置いておいてもいいのだけれど…誰かに見られたらいけないから駄目か…。
一刻も早く離縁したいのだけれど、世の中上手くいかないものだ。
婚約者に好きな人がいると知った日私は一晩中悩みに悩んだ。翌日婚約者を呼び出す。
「昨日も会ったのに…どうしたの?」
「ごめんなさい、突然呼び出して」
「いや、僕達は婚約者なのだからいいんだけど……何か大事な用事かな?」
婚約者はそう言って優しく笑ってくれた。
他に好きな人がいるのに私にまで優しくしてくれるなんて…。
「婚約を無かった事にしましょう」
本当はこんな事言いたく無い、だけど私と結婚してこの優しい婚約者が不幸になるくらいなら私は潔く身を引きたい。
「…僕が何か気に触る事をしてしまったかな?」
私は無言で首を振った。今は一言でも話をすると泣いてしまいそう。
「じゃあ他に好きな人が出来た?」
私はまた首を振る。
「僕が嫌な訳では無い?」
私はコクリと頷いた。すると優しい婚約者は私の頭をなでなでしてくれた。
「僕が嫌いで言ったのではなければ婚約解消はしないよ」
そう言って優しい優しい婚約者は帰って行った。
「また懐かしい夢…」
そう呟いて隣で眠る愛しい息子の顔を見る。
「あの時婚約を解消していたらこの子とも会えなかったのね」
私は息子が起きないようにそっとべっとを降りる。
バルコニーに出る。今は5月寒くもないのでこのまま少し外を見ていようかしら。手すりにもたれて空を見上げる。そこには綺麗な星空が広がっていた。
すると下から馬の蹄の音…。
「旦那様…」
こんな夜中に何処へ…って分かっているでしょう?彼女の所へ行くのだ。今までも私達が寝静まった後に家を出ていたのかしら…私達に気付かれないように。
「ふふっ変な気遣い…」
そう言って笑った私の頬に一筋涙が落ちた。
この間の離縁状を綺麗にたたみ封筒に入れる。
その封筒を持ち私は部屋を出た。向かう先は先程外へ出た夫の部屋。
すると部屋の前には執事がいた。
ああ、旦那様がお出掛けになる準備を手伝っていたのね。
こちらを向いた執事がびっくりした顔をした。
「奥様、このような時間にどうされました?」
「少し夫の部屋に用事があって」
「旦那様は今ー」
「分かっているわ、いらっしゃらないのは。この手紙を置いてくるだけ」
そう言って私は夫の部屋の扉を開ける。
そして机の1番上の引き出しにそっと離縁状を入れた。
「旦那様から奥様にお伝えするようにと言われていた事をお伝えしても宜しいでしょうか?」
「…なに?」
「明日起きたらでいいと仰っておられたのですが、暫く屋敷には戻れないかもしれないと」
「………そう、分かりました」
ついに屋敷にお帰りになるのも辛くなられたのね。
「先程の手紙は必ず旦那様に見て頂いて。いつになっても構いません。もしあまりにもお帰りにならなくて、貴方が旦那様の居場所を知っているならば、いつになっても構いません。旦那様に届けて返事を頂いて来て下さい」
「……畏まりました」
執事は何か言いたそうな顔をしていたがそれだけ言って深々と頭を下げた。
「旦那様の執事である貴方が私にまで頭を下げなくていいわ」
そう言うと私はその場を離れた。
夫の机に置いておいてもいいのだけれど…誰かに見られたらいけないから駄目か…。
一刻も早く離縁したいのだけれど、世の中上手くいかないものだ。
婚約者に好きな人がいると知った日私は一晩中悩みに悩んだ。翌日婚約者を呼び出す。
「昨日も会ったのに…どうしたの?」
「ごめんなさい、突然呼び出して」
「いや、僕達は婚約者なのだからいいんだけど……何か大事な用事かな?」
婚約者はそう言って優しく笑ってくれた。
他に好きな人がいるのに私にまで優しくしてくれるなんて…。
「婚約を無かった事にしましょう」
本当はこんな事言いたく無い、だけど私と結婚してこの優しい婚約者が不幸になるくらいなら私は潔く身を引きたい。
「…僕が何か気に触る事をしてしまったかな?」
私は無言で首を振った。今は一言でも話をすると泣いてしまいそう。
「じゃあ他に好きな人が出来た?」
私はまた首を振る。
「僕が嫌な訳では無い?」
私はコクリと頷いた。すると優しい婚約者は私の頭をなでなでしてくれた。
「僕が嫌いで言ったのではなければ婚約解消はしないよ」
そう言って優しい優しい婚約者は帰って行った。
「また懐かしい夢…」
そう呟いて隣で眠る愛しい息子の顔を見る。
「あの時婚約を解消していたらこの子とも会えなかったのね」
私は息子が起きないようにそっとべっとを降りる。
バルコニーに出る。今は5月寒くもないのでこのまま少し外を見ていようかしら。手すりにもたれて空を見上げる。そこには綺麗な星空が広がっていた。
すると下から馬の蹄の音…。
「旦那様…」
こんな夜中に何処へ…って分かっているでしょう?彼女の所へ行くのだ。今までも私達が寝静まった後に家を出ていたのかしら…私達に気付かれないように。
「ふふっ変な気遣い…」
そう言って笑った私の頬に一筋涙が落ちた。
この間の離縁状を綺麗にたたみ封筒に入れる。
その封筒を持ち私は部屋を出た。向かう先は先程外へ出た夫の部屋。
すると部屋の前には執事がいた。
ああ、旦那様がお出掛けになる準備を手伝っていたのね。
こちらを向いた執事がびっくりした顔をした。
「奥様、このような時間にどうされました?」
「少し夫の部屋に用事があって」
「旦那様は今ー」
「分かっているわ、いらっしゃらないのは。この手紙を置いてくるだけ」
そう言って私は夫の部屋の扉を開ける。
そして机の1番上の引き出しにそっと離縁状を入れた。
「旦那様から奥様にお伝えするようにと言われていた事をお伝えしても宜しいでしょうか?」
「…なに?」
「明日起きたらでいいと仰っておられたのですが、暫く屋敷には戻れないかもしれないと」
「………そう、分かりました」
ついに屋敷にお帰りになるのも辛くなられたのね。
「先程の手紙は必ず旦那様に見て頂いて。いつになっても構いません。もしあまりにもお帰りにならなくて、貴方が旦那様の居場所を知っているならば、いつになっても構いません。旦那様に届けて返事を頂いて来て下さい」
「……畏まりました」
執事は何か言いたそうな顔をしていたがそれだけ言って深々と頭を下げた。
「旦那様の執事である貴方が私にまで頭を下げなくていいわ」
そう言うと私はその場を離れた。
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