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「まだあの男と夫婦をやっているの?」
「まだって…」
「だってそうじゃないの!好きな人がいるなんて婚約者に向かってぬけぬけと言うような男!」
「しーっ!抑えて抑えて」
皇女様には結婚前から相談に乗って貰っていた。
「実は離縁状を旦那様にお渡ししたんです」
周りに聞こえないように小さい声で皇女様の耳元に囁く。驚いた顔の皇女様と目が合う。
「本当に渡したの?」
「ええ」
「で?どうだったの?ここに2人で来ていると言う事はまだ離縁はしていないのでしょう?」
皇女様のその言葉に私は頷く。
「破られました」
「破られた?…それは怒って?お前から離縁状を突きつけられるなんてバカにするな!みたいな…」
「いいえ。離縁はしないと」
「はっ?離縁しない?」
私の言葉に信じられないと言う顔をする皇女様。
「何を考えているの?あの男」
きっと私の夫にあの男と言えるのは皇女様だけだろう。
「お相手の方が身分の低い方であっても、もう私がこうして跡継ぎである息子を産んだ以上私に利用価値は無いと思っていたんですが…」
私がそう言うと皇女様はそっと抱きしめてくれた。
「何故貴女がこんな思いをしないといけないの?貴女ももっと自分の幸せの事を考えていいのよ…」
「…ありがとうございます。でも、私は幼い頃からの想い人である旦那様と結婚出来て、あの人の子供が産めて…本当に幸せです。だから…旦那様にも絶対に幸せになって頂きたいのです。政略結婚である私から解放されて本当に旦那様が愛しておられる彼女と…」
そして私と皇女様はしばらく無言で寄り添っていた。

「また何かあればすぐに相談して!城にもいつ来てくれてもいいから」
「ありがとうございます。でも私のちっぽけな悩みなど身重の皇女様にお聞かせするようなものではございませんわ。皇女様は今はご自分のお体を大切になさって下さい」
皇女様は既に隣国の王族に嫁いでおられる。今はちょうどこの夜会が行われるのとご自分の懐妊の報告に旦那様であられる隣国の王太子と共に王宮に訪れている。
懐かしさについ私の事を話してしまったけれど…本当ならこんな風にお話させて頂けるような立場では無い。
「今更ながらご懐妊おめでとうございます。元気なお子様が無事お産まれになられる事を祈っております」
「ありがとう」
私はまだ目立たない皇女様のお腹をそっと撫でて元気な子が産まれますようにと祈るのだった。
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