26 / 37
26
しおりを挟む
王子について行って辿り着いた先は学園に在学中の王族の為に用意されている部屋だった。
普段は使われる事は無いが…まぁ、王族だし色々知られちゃいけない事がある時とか有事の際とかそんな時に使われる。
王子が鍵を開ける後ろ姿を見ながら思う………。
ここ、今使うとこ?
え?入って大丈夫?
てかなんか話大事になりそう。
確かにここなら誰も邪魔は入らないだろう。
でも!正直恐れ多いわ!
いや、1回ぐらい中を見たいと思った事もあった…あったけど!違うの見学位で良かったの!扉の外から中を覗く位で良かったんだよ!
……入りたくないなぁ~。
「……さっさとしろ」
私が扉の前でうだうだ考えている間に王子はさっさと中に入っていた。
「…私が入っても大丈夫なんですか?」
その言葉に王子はちょっと上を見て考える素振りを見せた。
お願い!ダメだと言って!
「大丈夫だろ」
……祈りは虚しくも届かなかった。
いつまでもここに居てもしょうがない…ていうかいつまでもここにいた方が目立つ。
渋々部屋の中へ足を進める。
「お邪魔します」
ほぉ~こうなってるのか……。うん、意外と地味だな。
「おい、今意外と地味だとか思っただろう」
「……そんな事ありませんよ」
「「………………………」」
しばし流れる沈黙………………。
「ゴホン、でこんな所に連れて来てなんのお話ですか?婚約破棄やっとする気になりましたか?そうでしょうそうでしょう!私でなくても他にもっと王子にふさわしいご令嬢は沢山いると思いますわ。分かりました!では謹んで婚約破棄を承りますわ。今までお世話になりました、いえ、今までお世話させて頂きました。では新しい婚約者の方とお幸せに!ではこれで失礼致します」
私は一気にそう言うと扉に向かって歩き出す。
やったわ!これで晴れて自由の身よ!
「待て」
何だか待てとか言われたような気がするけれどきっと絶対聞き間違いでしょう。
ドアノブに手を掛けた所で王子に手を掴まれる。
「待て」
………聞き間違いじゃ無かったようだ。
「何でしょうか?」
「私は婚約破棄をする気は無い」
「…………この期に及んでまだそんな事を仰っているのですか?」
「少しでいいから話をさせてくれ」
いつになく真摯な態度の王子にいやいやながらも少し話を聞く事にした。
「分かりました…ただし手短にお願いします」
「…分かった」
私達はテーブルを挟んで向かい合って座る。
「で?どういう事でしょうか…婚約破棄しないとは」
「…お前が本当に婚約破棄したいと思っていることは分かっている…」
「やっと分かって頂けたのですね」
「理解は出来ないがな」
おい、一言余計ですよ。
「別に理解して頂かなくても大丈夫です。で本気で婚約破棄したいと分かって頂けたのに婚約破棄しないとは……やはり嫌がらせですか?」
「私はそんなに暇では無い」
「そうですか?」
「…………………兎に角、私は嫌がらせなどはしない」
「……………………そういう事にしておきましょう。で?嫌がらせでなければ何なのですか?」
「婚約破棄は学園を卒業する日まで待って欲しい」
「…………………………は?」
「在学中にお前と婚約破棄をしてしまってはこれからの学園生活が全て鬱陶しい令嬢達に囲まれて終わってしまう、しかしお前が婚約者だと思われている間は鬱陶しい奴らも寄って来ないだろう」
「私に王子の女避けになれ……そう仰るのですね」
「ああ、まあ言い方は悪いが平たく言うとそう言う事だ」
「…………それ私に何かメリットあります?正直私と婚約破棄した後の王子の学園生活なんて私にはこれっぽっちも興味も関係もないんですけど」
「………このまま婚約破棄せず結婚してもいいんだぞ…」
「!」
王子め…結婚で脅しをかけてきた…なんて卑怯な。
「私はいいんだぞこのまま婚約破棄せずにいても。他の鬱陶しい令嬢達の相手をするぐらいならまだお前の相手をしている方がマシだからな。……このまま学園にいる間だけ婚約者を続ければ…卒業の日には婚約破棄される…。さぁ、どっちを選ぶ?」
「………………分かったわ。ただしちゃんと卒業と同時に婚約破棄すると文章で残して貰うわ」
「いいだろう」
そうして私達は学園を卒業する日まで婚約者として過ごす事になった。
普段は使われる事は無いが…まぁ、王族だし色々知られちゃいけない事がある時とか有事の際とかそんな時に使われる。
王子が鍵を開ける後ろ姿を見ながら思う………。
ここ、今使うとこ?
え?入って大丈夫?
てかなんか話大事になりそう。
確かにここなら誰も邪魔は入らないだろう。
でも!正直恐れ多いわ!
いや、1回ぐらい中を見たいと思った事もあった…あったけど!違うの見学位で良かったの!扉の外から中を覗く位で良かったんだよ!
……入りたくないなぁ~。
「……さっさとしろ」
私が扉の前でうだうだ考えている間に王子はさっさと中に入っていた。
「…私が入っても大丈夫なんですか?」
その言葉に王子はちょっと上を見て考える素振りを見せた。
お願い!ダメだと言って!
「大丈夫だろ」
……祈りは虚しくも届かなかった。
いつまでもここに居てもしょうがない…ていうかいつまでもここにいた方が目立つ。
渋々部屋の中へ足を進める。
「お邪魔します」
ほぉ~こうなってるのか……。うん、意外と地味だな。
「おい、今意外と地味だとか思っただろう」
「……そんな事ありませんよ」
「「………………………」」
しばし流れる沈黙………………。
「ゴホン、でこんな所に連れて来てなんのお話ですか?婚約破棄やっとする気になりましたか?そうでしょうそうでしょう!私でなくても他にもっと王子にふさわしいご令嬢は沢山いると思いますわ。分かりました!では謹んで婚約破棄を承りますわ。今までお世話になりました、いえ、今までお世話させて頂きました。では新しい婚約者の方とお幸せに!ではこれで失礼致します」
私は一気にそう言うと扉に向かって歩き出す。
やったわ!これで晴れて自由の身よ!
「待て」
何だか待てとか言われたような気がするけれどきっと絶対聞き間違いでしょう。
ドアノブに手を掛けた所で王子に手を掴まれる。
「待て」
………聞き間違いじゃ無かったようだ。
「何でしょうか?」
「私は婚約破棄をする気は無い」
「…………この期に及んでまだそんな事を仰っているのですか?」
「少しでいいから話をさせてくれ」
いつになく真摯な態度の王子にいやいやながらも少し話を聞く事にした。
「分かりました…ただし手短にお願いします」
「…分かった」
私達はテーブルを挟んで向かい合って座る。
「で?どういう事でしょうか…婚約破棄しないとは」
「…お前が本当に婚約破棄したいと思っていることは分かっている…」
「やっと分かって頂けたのですね」
「理解は出来ないがな」
おい、一言余計ですよ。
「別に理解して頂かなくても大丈夫です。で本気で婚約破棄したいと分かって頂けたのに婚約破棄しないとは……やはり嫌がらせですか?」
「私はそんなに暇では無い」
「そうですか?」
「…………………兎に角、私は嫌がらせなどはしない」
「……………………そういう事にしておきましょう。で?嫌がらせでなければ何なのですか?」
「婚約破棄は学園を卒業する日まで待って欲しい」
「…………………………は?」
「在学中にお前と婚約破棄をしてしまってはこれからの学園生活が全て鬱陶しい令嬢達に囲まれて終わってしまう、しかしお前が婚約者だと思われている間は鬱陶しい奴らも寄って来ないだろう」
「私に王子の女避けになれ……そう仰るのですね」
「ああ、まあ言い方は悪いが平たく言うとそう言う事だ」
「…………それ私に何かメリットあります?正直私と婚約破棄した後の王子の学園生活なんて私にはこれっぽっちも興味も関係もないんですけど」
「………このまま婚約破棄せず結婚してもいいんだぞ…」
「!」
王子め…結婚で脅しをかけてきた…なんて卑怯な。
「私はいいんだぞこのまま婚約破棄せずにいても。他の鬱陶しい令嬢達の相手をするぐらいならまだお前の相手をしている方がマシだからな。……このまま学園にいる間だけ婚約者を続ければ…卒業の日には婚約破棄される…。さぁ、どっちを選ぶ?」
「………………分かったわ。ただしちゃんと卒業と同時に婚約破棄すると文章で残して貰うわ」
「いいだろう」
そうして私達は学園を卒業する日まで婚約者として過ごす事になった。
69
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。
パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。
将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。
平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。
根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。
その突然の失踪に、大騒ぎ。
「では、ごきげんよう」と去った悪役令嬢は破滅すら置き去りにして
東雲れいな
恋愛
「悪役令嬢」と噂される伯爵令嬢・ローズ。王太子殿下の婚約者候補だというのに、ヒロインから王子を奪おうなんて野心はまるでありません。むしろ彼女は、“わたくしはわたくしらしく”と胸を張り、周囲の冷たい視線にも毅然と立ち向かいます。
破滅を甘受する覚悟すらあった彼女が、誇り高く戦い抜くとき、運命は大きく動きだす。
婚約破棄?ああ、どうぞお構いなく。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢アミュレットは、その完璧な美貌とは裏腹に、何事にも感情を揺らさず「はぁ、左様ですか」で済ませてしまう『塩対応』の令嬢。
ある夜会で、婚約者であるエリアス王子から一方的に婚約破棄を突きつけられるも、彼女は全く動じず、むしろ「面倒な義務からの解放」と清々していた。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる