待ってました婚約破棄

きんのたまご

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「婚約破棄」
それはロゼが心の底から思っている事だと私はやっと知った。
もしかしたら……そう側近と話をしていて、まさかそんなはずないと思ったあの時の私の愚かさに恥ずかしくなる。
でも、本当に思わなかった。私の妻の地位に価値を感じずにいる者がいるなんて。
側近の軽口に乗せられて迂闊に婚約破棄しようとロゼに向かって言わなかったあの時の私を褒めてやりたい。
いや、別に婚約破棄したくないとかロゼと結婚したいと思っている訳では無いが……ロゼの思う通りになるのは癪だ………なんか前にもこんな事言っていたような気がする。



「そんな事を言われたのですか?」
私は今までロゼに言われた事を側近に全て話した。
「それにしても…王子のあの最低発言を聞かれていたとは……。そりゃ王子と婚約破棄したいと言いますよ」
「………………」
「知らなければ平気だったでしょうが…本当の事を知ってしまってはねぇ…黙って結婚するなんてまっぴらごめんですよねぇ」
「………………」
「外面が良い分、裏でそんな事言われてると思うと…結婚生活にも不安しか無いですよねぇ」
「………………」
「しかも王子の方が選んだのに王妃の座をとか言われたら…何言ってんの?って感じになりますよねぇ」
私が返事をしないのをいい事に言いたいことを言って1人頷く側近。
「で?どうするんですか?ロゼ様の言う通り婚約破棄して差し上げるんですか?」
「………………」
「悩んでらっしゃる?では婚約破棄して差しあげた方がロゼ様の為ですね」
「…そんな事簡単に出来ることではないだろう…」
「まぁ、そうですねぇ。でも難しくても不可能ではないのならロゼ様へのせめてもの償いとしてその位頑張ったらいいと思いますよ?」
「………………」
「婚約破棄したくないなら素直になった方がいいと思いますよ。選んだきっかけはあの最低な理由だったとしても……今はそんな事思って無いですよね?」
「…別に絶対にロゼでないといけないと思っている訳では無い…」
目の前でニヤニヤと笑う側近には色んな事が見透かされているような気もするが悪足掻きのようにそう言う。
「ハイハイ、分かってますよ。で?どうするんですか?ロゼ様は今直ぐにでも婚約破棄して欲しいと仰っているんですよね?」
「…………ああ」
「……もう告白したらいいんじゃないですか?」
「は?」
「だからロゼの事が好きだから婚約破棄したくない!と言うんですよ」
「言えるかそんな事!そして私はロゼの事など何とも思っていない!」
「 まだそんな事言ってるんですか?まあいいですけど…」
「お前信じてないな」
「ハイハイ、信じてますって。そんな事よりどうやってロゼ様を繋ぎ止めるか考えないと」
「別に繋ぎ止めたいとか思って無い!」
「じゃあ婚約破棄してあげて下さいよ」
「…………………」
「ほらー!黙るじゃないですかぁ。いい加減認めましょうよ」
「…………おかしいだろう…何で嫌いな物ばかり食べさせてくるような無礼なやつを好きにならないといけないんだ…」
「そんなもんですよ」
「…………………」
あんな無礼なやつ…そう思う気持ちも嘘では無いのに……側近の言う「そんなもん」この言葉にしっくりくる気もして……。
確かに…ロゼの事を気に入っているのかもしれない…まあ、口が裂けても他の人に言うつもりは無いが。


そして私達はどうすれば今直ぐに婚約破棄しなくて済むかを相談するのだった。






側近が付いていてあの作戦…………。
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