待ってました婚約破棄

きんのたまご

文字の大きさ
28 / 37

28

しおりを挟む
王子が「婚約破棄は卒業まで待って欲しい」なんてとんでもない事を言い出してから1週間。
表面上は以前と何ら変わらない婚約者を演じている。
女避けとして婚約者のままでいろと言われた時はそれはもう腹が立ったものだが後々冷静に考えると卒業までの自由は無いが卒業と同時に婚約破棄される事は確実になったのだ…!ものは考えようだ…兎に角これで婚約破棄は確実になったのだから卒業するまで王子の嫌いな物を食べさせまくろう、それこそ私の気が済むまで!それで王子の偏食がちょっとでも治れば将来王子と結婚する方の為にもなる!
ここまで婚約破棄婚約破棄としつこく言って来た私。今直ぐにでも婚約破棄して欲しいと言った気持ちは嘘では無いが王族との婚約がそう簡単に無かった事に出来ることでは無いと分かっている、その上で王子の嫌いな物をしつこく食べさせる事は王子が私との婚約を破棄するにあたって1つの理由になるのかもしれない…そんな魂胆もあり今まで以上に嫌いな物を食べさせようと思っているのだ。(恨みとかではないですよ……多分)
「よし!そうなれば…私のやる事は1つ!今まで以上に王子の嫌いな物で美味しいお弁当を作る!明日のお弁当何にしようかな~」
そう言って私は腕にピーマンを抱えて厨房へ向かった。
やっぱり初心を忘れたら駄目だと思う、いや原点回帰?



「本日のメニューはピーマンづくしですわ!」
相変わらずの照準搭載の無表情に弾む声でそう言った私に何がそんなに嬉しいんだと言わんばかりの王子。
「そんな顔をなさっていては王子の本性がバレてしまいますよ?」
私のその言葉に王子は
「大丈夫ですよ、こんな顔ロゼの前でしかしませんからね」
と嫌味のように似非王子スマイルを炸裂させる王子。
…ほんとに性格が悪いわ。
「で?今日も私の嫌いなピーマンですか」
うわぁ…すっごい笑ってる…言葉と顔がこんなに合わない人なかなかいないわよ。
しかしここで怯んでは居られない!
「ええ、なにせうちのピーマンは全て王子の為に栽培しているものですから。責任を持って王子に全て食べて頂きませんと」
「「…………………………………」」
無表情の私と嫌味な程の笑顔の王子…睨み合う事数分。
どちらからとも無くため息をつき椅子に腰掛ける。
いただきます。私は心の中でそう呟いてお弁当を食べ始める。
「…お前は…」
「はい?」
王子の方を見ずに一心不乱に食事を続ける私に王子がボソリと何かを呟いた。
「なんですか?」
「……………お前は本当に笑わないな」
はっ?笑わない?…………ああ、私か。
「それが何か?」
「仮にも婚約者同士が食事をしているのに笑顔のひとつも見せないとは…」
「………嫌いな私がどんな顔をしていた所で王子には気に入らないと思いますが…」
「それでも…仲良く見せようと思うのならば…笑顔のひとつも見せろ」
「………ご命令ですか?」
「!いや、命令とかでは…!」
王子が慌てたように何か言っていたがそんな事王子のあまりの言い草に頭に血が上っていた私には聞こえない。そして私は満面の笑みを王子に向けた。
「つまらない女のつまらない笑顔を見てこれでご満足ですか?」
そう言って私は椅子から立ち上がりその場を後にした。

「人の表情にまでケチをつけてくるなんて……しかも笑顔のひとつも見せろ?なんでもかんでも自分の思い通りになると思ったら大間違いよ………あのクソ王子が!」
しおりを挟む
感想 300

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

断罪前に“悪役"令嬢は、姿を消した。

パリパリかぷちーの
恋愛
高貴な公爵令嬢ティアラ。 将来の王妃候補とされてきたが、ある日、学園で「悪役令嬢」と呼ばれるようになり、理不尽な噂に追いつめられる。 平民出身のヒロインに嫉妬して、陥れようとしている。 根も葉もない悪評が広まる中、ティアラは学園から姿を消してしまう。 その突然の失踪に、大騒ぎ。

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

婚約破棄?ああ、どうぞお構いなく。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢アミュレットは、その完璧な美貌とは裏腹に、何事にも感情を揺らさず「はぁ、左様ですか」で済ませてしまう『塩対応』の令嬢。 ある夜会で、婚約者であるエリアス王子から一方的に婚約破棄を突きつけられるも、彼女は全く動じず、むしろ「面倒な義務からの解放」と清々していた。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...