私の中から貴方だけが姿を消した

きんのたまご

文字の大きさ
2 / 17

2

しおりを挟む
翌日、普通に目を覚ますとまたまた家族が私の寝顔を眺めているという光景を見た。
「…おはようございます」
私が挨拶すると皆が目を輝かせて喜びあっていた。どうやらまた目を覚まさなかったらどうしようと不安になったらしい。本当に凄く心配させたらしい。
…でも私の寝顔を家族全員で拝むのはやめて頂きたい。…あと2日ぐらい続いたらはっきり言おう。うん。


朝食は皆で私の部屋で採っている。
それは私がまだ上手く歩けないから。
半年歩いていないと筋肉が少し弱くなって足に上手く力が入らない。それでも全く歩けないと言う訳ではないので今日からリハビリがてら屋敷の中を散歩しようかなと思っている。
手すりを掴みながらゆっくりなら大丈夫だし。
「本当にご心配をお掛けしまして申し訳ありません」
朝食が落ち着いた頃合で私は心配を掛けたであろう家族に改めて感謝した。
半年も目を覚まさないなんて本当なら諦められたとしても文句は言えない、それを半年も寝ているしか出来なかった私の世話してくれて…本当に家族には感謝しかない。
「何を言っているの!そんな事当たり前でしょう!」
少し怒ったように姉は言った。いつもとても優しい姉が大好きだ。
「そうよ、家族なんだもの当たり前よ。それよりも貴女が目覚めて神様に感謝したいのはこちらですよ」
そう言って涙を浮かべるお母様。優しくて美人。
「2人の言う通りだ、こうして再びお前の可愛い声を聞けるなんて…」
そう言うお父様は凄く格好良い。
私はそんな3人の顔をもう一度見て、再び感謝を述べた。
こんな優しい人達を忘れていなくて本当に良かった。


お父様はお仕事に行った。お城の宰相をしている。お母様とお姉様は私が眠っている間セーブしていたお茶会に行った。私が目覚めた事を心配して下さった方達に報告するらしい。
私はと言うとメアリーに付き添ってもらい絶賛リハビリ中!この調子だとあと2、3日で以前と同じように歩けるんじゃないかな。
「お嬢様、そろそろ休憩致しましょう」
「そうね」
…ここから部屋に戻るのもリハビリだわ…(苦笑)
部屋に戻るとすっかりお茶の用意が終わっていた。戻るの遅くてすいません。
用意されたお茶で一息吐く。
「本当ならお嬢様のお好きな茶葉でもっと美味しくいれて差し上げたいのですが…」
「ふふっ、大丈夫。今の私にはこれで十分よ」
私が今飲んでいるのはお湯にうっすら色がついた位のとても紅茶とは言えない代物。なんせ半年振りの食事なので胃がびっくりしないように薄い物から。だから朝食もほぼ水みたいなスープ…。正直私の目の前で美味しそうな朝食を食べる家族を見るのは辛かった。早く美味しい物食べたい。
私が食べたいものリストを心の中で作っているとメアリーがテーブルに手紙を置く。
手紙を手に取り差出人を見ると幼馴染みで同じ学園に通う親友のカトリーヌからの物だった。
私が昨日目覚めた事が知らされていたらしく近々私の体調の良い日に会いたいとの事、私はいつでもいいと書いて返事を送った。
しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の薔薇

ここ
恋愛
公爵令嬢レオナン・シュタインはいわゆる悪役令嬢だ。だが、とんでもなく優秀だ。その上、王太子に溺愛されている。ヒロインが霞んでしまうほどに‥。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです

山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。 それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。 私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。

婚約破棄と言われても、どうせ好き合っていないからどうでもいいですね

うさこ
恋愛
男爵令嬢の私には婚約者がいた。 伯爵子息の彼は帝都一の美麗と言われていた。そんな彼と私は平穏な学園生活を送るために、「契約婚約」を結んだ。 お互い好きにならない。三年間の契約。 それなのに、彼は私の前からいなくなった。婚約破棄を言い渡されて……。 でも私たちは好きあっていない。だから、別にどうでもいいはずなのに……。

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

【完結】ハーレム構成員とその婚約者

里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。 彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。 そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。 異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。 わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。 婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。 なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。 周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。 コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。

処理中です...