私の中から貴方だけが姿を消した

きんのたまご

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「お嬢様それも誤解ですわ」
そう言ったメアリーの顔は怖い程の無表情で目は若干据わっていた。
私は昨日の夜考えていた事をメアリーに話した。そうするとさっきのような反応が帰ってきたのだ。
「何だ…違うの」
ガッカリしたようなほっとしたような…。
だって今までメアリーのそんな話を聞いたこと無かったから!もしかしたらそうなのかなぁって思ったらやっぱり嬉しかったんだもの。
でも本当はあんな人がメアリーの想い人じゃなくて良かった。
でもそうなるとますますヘクターが私に会いに来た理由が分からないな。
メアリーの友達?だったならまだまあ、メアリーから話を聞いてとかも分かるんだけど…。
私がそんな風に悩んでいるのが分かったのかメアリーは楽しそうに言う。
「明日にはお嬢様とヘクター様のご関係が分かりますわ」



翌日ヘクターはまた我が家に来ていた。
「1日振りですわね……」
正直会いたくも無い。そんな気持ちが外に出ていたのか以前と違いヘクターの態度は何処か気まずそうだった。
「ああ」
それだけ言うとヘクターは私から目を逸らした。
……一体何だと言うのだろうか。
暫くお互い無言で待っていると部屋の中にお父様、お母様、お姉様が入って来る。
「ご無沙汰しております」
3人の姿を見たヘクターは今までと打って変わった真面目な態度で挨拶をした。
えー?凄い豹変振り…。
「今日は突然呼び出して済まなかったね」
何と!今日はお父様が呼んだのですか?じゃあお父様関係で私のお見舞いに来ていたのね!
納得納得。
「で、本日はどのようなご要件で」
「まあ、掛けなさい」
お父様がヘクターに座るよう促す。
「実はね君たちの婚約者の事について話をしようと思ってね」
……………。
君たちって誰?まあ、1人は言わずもがなヘクターの事だろう…すると残りの1人は…。
「ヘクター様ってお姉様の婚約者でしたの?」
だって私とヘクターは婚約者では無い。私にそんな記憶は無い。となればこの場にいる相手となると…お姉様しか居ない。そう思い言った私の発言で皆こちらを向いて何を言ってるんだと言う顔をしていた。
「やはり覚えていないようだ」
お父様がため息混じりにそう言う。
ん?なんの事?
「いいかい?ヘクターはお前の婚約者だよ」
お父様は私に向かってそう言った。



暫く様子を見ようと仰っていたご主人と奥様に昼間のお嬢様の発言を報告した。昨夜マリアンヌ様にご報告した後。
ヘクターという男は裏で女の子と遊んでいながらお嬢様には君だけだよと言いご主人様達の前では真面目で誠実な婚約者を演じていた。
姉であるマリアンヌ様だけはヘクターの裏の顔に気付かれてはいたがお嬢様がヘクターの事をとても慕っておいでだったので本当の事を言えずにいたのだ。
しかし今回お嬢様がヘクターとの婚約の事を忘れ、決定的な瞬間を見た事を思い出した事でこれを機に2人の婚約を無かった事にしようと思われたのだ。
そしてその事をご主人様にご報告したところ、ヘクターを呼び出すように言われ今このようになっている。


さてこれからどうなるかしら。
ソファーに座り冷や汗を流しているヘクターを見ながら私は密かにほくそ笑んだ。
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