私の中から貴方だけが姿を消した

きんのたまご

文字の大きさ
13 / 17

13

しおりを挟む
俺はずっと婚約者の事が好きだった。一目惚れだったんだろう、今思えば。
馬鹿だから自分でも気付いてなかった…いや、認めたく無かったのか。政略結婚の相手に惚れたなんて…しかも好きだと言ってくる割に俺に近付かない婚約者、そんな婚約者を見て本当は好きじゃないのにそう言っているだけなのでは?と疑念が沸いた。そこから狂い出した。
最初は子供が好きな子を虐めるくらいのものだった困る顔を見て胸がすいた。しかし何をしてもあまりに反応を返して来てくれない彼女に対して俺は流石にこれは何か言って来るだろうと…他の女の子に手を出した。
手を出したと言っても最初は婚約者の前で他の女の子を可愛いと褒めたりそんな程度。
俺の事を好きなら流石に怒ったりするだろう?とチラリ婚約者の方を見ても無表情でこちらをただ見ていただけの彼女。
そこからはもう誰もこの状況を止められなかった。変な対抗意識から向こうがその気ならとこちらも必要以上に近付かないようにした。
そのまま学園に通うようになり久しぶりに見た婚約者はますます綺麗でそこでまた彼女に恋をしたけどこちらを見る彼女の目があまりにも無機質で…俺は彼女なんて好きではないと言い聞かせた。

可愛いと言ってやると頬を赤く染めて潤んだ瞳で俺の顔を見上げてくるご令嬢達。そんな彼女達と過ごすのはとても心地よい。お互いに婚約者がいるもの同士、この関係は1度きりそう割り切って会っていた。キスはしたがそれ以上の行為は無い流石に婚約者がいる相手を傷物には出来ない、まあ元々そこまでするつもりも無かったのだがもう無かった事にも出来ず婚約者から与えられない自分への好意を彼女達から与えられて自分が傷つかないようにしていたのだろう。本当に愚かだった。
こちらを見てくれない彼女に俺は無意識にいつも目を向けていたらしい。その頃には自分の気持ちを拗らせ過ぎて周りの友達にまで嫉妬するようになっていたようで彼女の友達のカトリーヌからは「いい加減にして」と怒られたこともある。余程彼女の事をじっと見ていたのだろう。指摘されてかっと顔が熱くなった。
それを見てカトリーヌには散々からかわれた。
俺の気持ちは婚約者以外には筒抜けらしい。


彼女が事故にあったと聞かされて頭の中が真っ白になった。
その日遊んでいた子が何か言っていたみたいたけど、そんなどうでもいい子の声は聞こえなかった。急いで彼女の屋敷に駆けつける。ここに着くまでがまるで永遠のように長く感じた。
「ご心配おかけしてすみません」と彼女が笑ってくれる事を期待して俺は屋敷に足を踏み入れた。

そこからまさか半年も会えなくなるとは思わずに。


しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢の薔薇

ここ
恋愛
公爵令嬢レオナン・シュタインはいわゆる悪役令嬢だ。だが、とんでもなく優秀だ。その上、王太子に溺愛されている。ヒロインが霞んでしまうほどに‥。

【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ
恋愛
アリサの婚約者ミゲルは、婚約のときから、平凡なアリサが気に入らなかった。 アリサはそれに気づいていたが、政略結婚に逆らえない。 15歳と16歳になった2人。ミゲルには恋人ができていた。マーシャという綺麗な令嬢だ。邪魔なアリサにこわい思いをさせて、婚約解消をねらうが、事態は思わぬ方向に。

記憶がないなら私は……

しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。  *全4話

【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです

山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。 それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。 私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。

婚約破棄と言われても、どうせ好き合っていないからどうでもいいですね

うさこ
恋愛
男爵令嬢の私には婚約者がいた。 伯爵子息の彼は帝都一の美麗と言われていた。そんな彼と私は平穏な学園生活を送るために、「契約婚約」を結んだ。 お互い好きにならない。三年間の契約。 それなのに、彼は私の前からいなくなった。婚約破棄を言い渡されて……。 でも私たちは好きあっていない。だから、別にどうでもいいはずなのに……。

やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。

あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。 そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。 貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。 設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

【完結】ハーレム構成員とその婚約者

里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。 彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。 そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。 異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。 わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。 婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。 なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。 周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。 コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。

処理中です...