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婚約者であるヘクターが色んな女の子を相手にしているのは薄々気付いていた。
でも私の前ではそんな事をおくびにも出さず笑顔で挨拶してくれるから…見て見ぬふりをした。それだけの事でも嬉しかった。
幼い頃から嫌われていたのだろう、よく虐められた。私に見せつけるように他の女の子に声をかけたりもしていた
勿論嫌だったけどうるさく言って今以上に嫌われたく無かったから何も言わなかった。
そのうち彼の姿を見るのが怖くなった。彼にどう思われているか嫌という程知らしめられる、あの責めるような目が嫌だった。
溢れ出てくる婚約者への気持ち。
ああ、そうなの。貴女は本当にヘクターの事が好きだったのね。
「ナディア」
自分で自分の名を呟くと同時に涙が溢れてくる。
「こんな風にヘクター様から名前を呼んで頂くのは何時ぶりかしら」
私がそう言うとそこにいる全員がとても驚いた顔でこちらを見ていた。
「思い出したのか?」
「ええ…全て思い出しました」
お父様とお母様に向かい微笑む。
「ご心配ばかりおかけしてすみません」
私がそう言うと涙するお母様の肩をお父様が抱いた。
「では、お父様お母様。ヘクター様との事、私が自分できっちりと始末を付けます」
そして私はヘクターの方へ向き直る。
「ナディア…」
「ヘクター様色々とお騒がせして申し訳ありません」
「いや、いいんだ…それよりも!本当に思い出したのか?」
「ええ、全て…思い出しました」
私はそっと目を伏せる。
「!ならば俺への気持ちも」
「ええ、勿論」
するとヘクターは明らかに嬉しそうな顔をした。
…何故こんなにも楽観的に喜べるのかしら。
「君の気持ちはご両親から聞いた。俺の事を慕っていてくれたんだな!俺も君の事が好きなんだ!だから…」
「お待ち下さい」
私は熱心に私への愛を囁くヘクターの言葉を遮った。
「どうしたんだ?」
「私は貴方との婚約は破棄します」
そうキッパリと言い放った私にその場にいる私以外の全ての人が驚いていた。
何故驚かれているのか…私の方がびっくりなんだけど。
そこにお姉様の豪快な笑い声が聞こえて来る。
「お姉様!」
「ああ、私の可愛いナディア!私が留守の間にこんな話し合いがなされていて以前のように婚約解消出来ないままだったらどうしようと心配で!屋敷に帰って来た時は怒りで我を忘れてしまいそうになってしまったけれど…貴女がはっきりと婚約破棄すると言っているのを聞いて…私は嬉しいわ!」
お姉様が私を思い切り抱きしめる。
「お姉様、まだお話終わってませんから」
「あらそうだったわね、じゃあ早くこんな話は終わらせて私と楽しくお茶しましょう?」
「分かりました」
私とお姉様のやり取りに呆気に取られるヘクターを見る。
さて、早くこんな楽しく無い話を終わらせてお姉様と楽しいお茶にしなくちゃ。
でも私の前ではそんな事をおくびにも出さず笑顔で挨拶してくれるから…見て見ぬふりをした。それだけの事でも嬉しかった。
幼い頃から嫌われていたのだろう、よく虐められた。私に見せつけるように他の女の子に声をかけたりもしていた
勿論嫌だったけどうるさく言って今以上に嫌われたく無かったから何も言わなかった。
そのうち彼の姿を見るのが怖くなった。彼にどう思われているか嫌という程知らしめられる、あの責めるような目が嫌だった。
溢れ出てくる婚約者への気持ち。
ああ、そうなの。貴女は本当にヘクターの事が好きだったのね。
「ナディア」
自分で自分の名を呟くと同時に涙が溢れてくる。
「こんな風にヘクター様から名前を呼んで頂くのは何時ぶりかしら」
私がそう言うとそこにいる全員がとても驚いた顔でこちらを見ていた。
「思い出したのか?」
「ええ…全て思い出しました」
お父様とお母様に向かい微笑む。
「ご心配ばかりおかけしてすみません」
私がそう言うと涙するお母様の肩をお父様が抱いた。
「では、お父様お母様。ヘクター様との事、私が自分できっちりと始末を付けます」
そして私はヘクターの方へ向き直る。
「ナディア…」
「ヘクター様色々とお騒がせして申し訳ありません」
「いや、いいんだ…それよりも!本当に思い出したのか?」
「ええ、全て…思い出しました」
私はそっと目を伏せる。
「!ならば俺への気持ちも」
「ええ、勿論」
するとヘクターは明らかに嬉しそうな顔をした。
…何故こんなにも楽観的に喜べるのかしら。
「君の気持ちはご両親から聞いた。俺の事を慕っていてくれたんだな!俺も君の事が好きなんだ!だから…」
「お待ち下さい」
私は熱心に私への愛を囁くヘクターの言葉を遮った。
「どうしたんだ?」
「私は貴方との婚約は破棄します」
そうキッパリと言い放った私にその場にいる私以外の全ての人が驚いていた。
何故驚かれているのか…私の方がびっくりなんだけど。
そこにお姉様の豪快な笑い声が聞こえて来る。
「お姉様!」
「ああ、私の可愛いナディア!私が留守の間にこんな話し合いがなされていて以前のように婚約解消出来ないままだったらどうしようと心配で!屋敷に帰って来た時は怒りで我を忘れてしまいそうになってしまったけれど…貴女がはっきりと婚約破棄すると言っているのを聞いて…私は嬉しいわ!」
お姉様が私を思い切り抱きしめる。
「お姉様、まだお話終わってませんから」
「あらそうだったわね、じゃあ早くこんな話は終わらせて私と楽しくお茶しましょう?」
「分かりました」
私とお姉様のやり取りに呆気に取られるヘクターを見る。
さて、早くこんな楽しく無い話を終わらせてお姉様と楽しいお茶にしなくちゃ。
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