私の婚約者差し上げます!どうぞ大事にして下さいね

きんのたまご

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私はナディア。私には幼い頃からの婚約者がいる。
彼はトマス。私と彼は同じ伯爵家で父親が仲良しな幼なじみ。
偶然にも子供同士が同じ歳で生まれたので調子に乗った両家の父は私達を婚約者にした、そう!生まれながらの婚約者なわけです。
でも私にも言い分が有るんですよ!
そんな自我もはっきりしないうちから婚約させるってどうなの?貴族だからしょうがない?いやいや。我慢しろ?無理無理!
誰にでも趣味趣向有るでしょ?
小さい頃は仲が良かったじゃないのとお母様はおっしゃいますけど、そりゃ小さい頃は近くに同じくらいの歳の子供がいれば遊ぶでしょうよ。
それは異性の好き嫌いとは別物ですよ。

トマスは顔がいい。世間で言うところのイケメン。
トマスは性格もいい。とても優しい。
トマスは運動も出来る。剣術も見事。
トマスは頭もいい。成績は常にトップクラス。
誰がどう見ても非の打ちどころのない彼。
勿論人間的に嫌いでは無い。むしろ友達としてなら最高の男だ。では何で私がこんな事を言っているのかと言うと……。




「あんな女にトマス様は勿体ないわ!絶対に綺麗な私の方がいいに決まっている!絶対にあの二人を別れさせるわ!」
ある日の昼休み学校の中庭でそんな事を大きな声で話すお馬鹿で可愛い女の子がいた。
トマスの事を言っていた…では別れさせる相手は…私か。
そりゃそうか、まぁ誰が見ても私達がつり合っているようには見えないもんな。
トマスは先程も言ったようにとてもイケメン。
明るい金髪は綺麗でふわふわ。海のように深いブルーの瞳。目元は切れ長で涼し気。
まぁ兎に角褒めだしたらキリがない。
比べて私は髪はブラウン、ゴワゴワで硬い。
瞳もブラウンのありきたりな色。敢えて褒めるとしたら二重の目と白い肌ぐらい……まあ誰でも持ってるもの。本当にその位しか褒める所が無いくらい特徴の無い地味な顔だ。
「それでも生まれた時はとても可愛かったのよ!」と「何故こんな婚約を結んだんだ!」と親に詰め寄る度に親の欲目全開な事を言われてその度そういう事じゃないんだよォと脱力している。
そんな家格以外つり合う所がまっっっっっったくと言って良いほど無い婚約者なのでさっきの女の子のようにトマスに近づこうとする女の子は今までからも沢山いて…だからあの女の子の事も今更珍しくも無い。
それでもあんな大声で外であんな事を言っている子は初めてだけど。
いつもならそんな子珍しくも無いので気にしないんだけどその子は何となく気になって暫く様子を見ていた。
私に見られているとも知らずその子はまた大きな独り言を話し出す。
「どうしたら近づけるかしら…私は顔が可愛いからちょっと仲良くなれれば私の事を好きになると思うんだけど。あんな地味女よりも私の方が絶対にいいに決まっているもの」
…まぁ、確かに顔は可愛い。トマスの色には劣るけど綺麗な金髪。サラサラで腰まで伸ばしていて触り心地がとっても良さそう。
瞳はグリーン。二重で大きい。
頬はほのかにピンクに色付き唇はうるつや。
うーん、こうして改めて観察しても文句の付けようも無い美少女だ。
トマスの隣に並ぶあの少女を想像するとまるで1枚の絵画のようにお似合いだった。
……よし!決めた!あの子にしよう。


私はずっと探していたのだ私の婚約者を安心して譲れる人を。
彼女ならきっと彼も好きになる。 
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