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その日も彼女は私達の所にやって来た。
もうすぐ試験もあるので頭の良いトマスに私の試験勉強を見てもらっている。
「あらァトマス様偶然ですね!私も試験勉強をしに来たんですの!」
力一杯元気に挨拶をする彼女を見て眉を顰めるトマス。私に耳打ちして来る。
「誰?この煩い人…」
そう、ここは図書室なのです。いつもなら元気な挨拶は褒められますけど図書室では静かにした方がいいと思うんです。
…それにしても…誰って…ここの所結構な頻度で彼女に会ってると思うんだけど、まさか覚えてないの?
「最近良く会いますね」
私はアシストすべく彼女に話し掛ける。
「…………」
えー?まさかの無視ですか?私は協力者ですよ?あーでも直接そう言った訳じゃないし…無理も無いか。私が協力者だと知らなければ私はトマスの婚約者だもんな。邪魔者だよね。
「トマス…彼女も勉強教えて欲しいんじゃない?ね?」
トマスと彼女にそう言う。
「そうなんです!私も是非勉強を教えて頂きたいんです!」
「ほら!こう言ってるし教えてあげたら?」
「え、嫌だけど」
「「はっ?」」
あまりに即答するトマスに私と彼女の声が重なる。
「僕も自分の勉強とナディアに教えるので手一杯だもん」
「あ!じゃあ私は今回はいいよ!自分でやるから!」
そう言って私が立ち上がろうとするとその手を掴まれた。
「ナディアに教えないで知らない子に教えるとか有り得ないんだけど」
「うっ…」
ド正論来ましたよー!そりゃそうだ!どこに婚約者を蔑ろにして知らない子の方を優先するやつがいるっていうんだ!
「それに僕が教えなくてナディアが悪い点取ったら僕が母さんに怒られる」
「………」
私は思わず目を泳がせる。生まれた時から一緒にいた私達、勿論トマスの家族とも仲良し。本当は娘が欲しかったといつも言っているトマスのお母様は私をとても可愛がってくれている…なので私の成績も「トマス!貴方がしっかり見てあげるのよ!」とトマスに言ってくれているのだ。
あーどうしようかな。ごめんね名前も知らない彼女…私の成績が悪いばっかりに…。
あっそうだ!
「実は彼女と私は友達なの!」
いきなりそう言う私に今度はトマスと彼女の声が重なる。
「「はっ?」」
「だからね!私の友達だから彼女にも勉強を教えてあげて欲しいの!」
そう言って私は彼女の隣に異動する。
「ちょっと!いつから私があんたと友達になったの…モゴッ」
私は慌てて彼女の口を抑える。
「しー!トマスに勉強教えて欲しいんでしょ?だったら私と友達って事にしといた方がいいと思う!」
早口で彼女の耳に小声で囁く。
「そ、そうなんです!私達友達なんです!」
ようやく理解してくれたらしい彼女は私の話にのってくれた。
はぁ…。
トマスため息が聞こえた。
…まさかバレてる?恐る恐るトマスの様子を伺う。
「わかったよ、勉強教えたらいいんでしょ」
「!ありがとうトマス!」
そして私達は同じテーブルで勉強した。

後々トマスに聞くと彼女の理解力は私よりも無かったと酷く疲れた顔をしていたトマス。
「ナディア……友達選んだ方がいいよ 」
トマスそれは酷いんじゃ……。
こんな事を言われてたなんて可哀想で言えません……はぁ。
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