宇宙の家 ~Come and help me!~

鈴木 純一

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フォースコンタクト ~疑心暗鬼~

第26話 秘密のたくらみ

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「獣座衛門。昔俺のことを不思議な奴だって言ったよな? いつだか君が言ったように、俺も君の身になって考えたんだ。そしたら、ふと思った。君が俺を特別にしているのは日本人の風土なんじゃないかってさ。日本には和の文化っていうのがある。それは確かに君のいう、限られた狭い世界で助け合って生きてかなきゃならないっていう性格にも似通った部分がある。まさしくそれが日本人の国民性なんだよ」
「住んでいる地域によって性格形成に変化が生じる。面白いな」
「今はネット全盛時代で世界中が繋がりつつある。そうしたお国柄も段々と消滅していくかもしれない……でも要するにそう言う事なんだ。俺は君のことをおかしな奴だとは思ったけど不気味だとは思わなかった。それも国民性だよ。だからさ、獣座衛門……?」
「なんだ?」
「地球人を……皆がみんな悪い奴だと思って欲しくないんだ。君を受け入れられる奴だっているってこと。ま……まぁ、話が脱線したけれど。そうした異分子を受け入れられるのには、もっと倫理や人情を重んじるって性格も強いからなのかなって思ったり……」
「なるほど…………」
「――馬鹿にしてるだろ?」
「してない。君にとっては倫理に背くことは報酬以上に問題ってことだろ?」
「う……まあ、いざそうやって天秤にかけられると気持ちが揺らぐんだけどな……ははは」
「組織の違和感の話に戻るんだが。因果律に歪みが生じてる可能性がある。つまり、ここの宇宙ステーションと地球の米国との境界に大きな歪みが生じてるんだ」
「! ……人類は今まで何度も有人飛行に取り組んでるんだぞ?」
「忘れたかリュウタ。宇宙開発の多くは、それは国家機密のプロジェクトってこと」
「……!」
「ただ純粋に真実だけを追い求めるための研究ではなく、国益のために作為的な虚偽が入り混じる可能性がある。大勢の人間が原因不明の事故で亡くなっていてもおおやけにされない可能性もあるだろう? むしろ普通はされないのだ。君が今立っているのはほとんどの人にとってファンタジーの領域。一般人には真偽を確かめる術はないのだ。そこで起る真実は関係者にしか明かされない。日本人の大好きな異世界ファンタジーモノとたいして変わらないものだ。それはとても恐ろしいものだよ」
「意味わかんねぇよ!」
「そして、未解明の宇宙空間で、なぜ人間の領分でしか推し量れない原理原則しか起らないと断言できる? 数学は精霊崇拝と大差ないと言ったはずだが?」
「……!」
「パラレルワールドという概念が存在する。例えば君がいるのはAの世界。そして今、通信を受け取っているのはBの世界だから食い違う。君は自分がおかしくなってしまったと思っていても、実はそこに矛盾は生じてない。AもBも実在する。ただそれだけなのだ」


 * * *


 その時、俺は受話器でブライアンと連絡をとっていた。

「何かわかったのか?」
「ああ、色々とな。けれど、あんまり催促しないでくれ! 順序だてて説明していく!」

 そういうブライアンが一番鼻息荒く、落ち着いてないように思えたのは俺の気のせいか。彼は酷く息切れしてて、話し始めるまで随分と待たされた。

「い……いいか、まず君を助ける作戦だが……作戦変更だ。組織のことは諦めた。アイリーンにはまだ話していないが、私が上司と話し合って組織で決めたことなんだ」
「どういうことだよ?」
「三つの理由がある。アイリーンに話は聞いたろ? 組織が消えた。居所がわからない。二つ。新しいアプローチを見つけた。まずは君を見つけることだ。ディープスペースネットワークに協力を要請して君と君を乗せた宇宙ステーションを見つけることができた!」
「ロボットハウスを!? ディープスペースネットワークって?」
「要するにより精度の高い宇宙の監視網みたいなもんだ。秘密事項だからスルーしてくれ。それよりも座標を確認した。あとは物理的に助けに行くだけになってる」

 なんだよ、獣座衛門はゆがみだのパラレルワールドだのいってたけど……ロボットハウスはちゃんと見つかってるじゃないか。俺は思わず受話器に取りすがった。

「助けてくれ!」
「まあ待て……問題は宇宙船なんだ……」
「どういうことだよ……?」
「君は有人衛星一機にいくら費用がかかると思う? 安価なものでさえ、30万ドルだ。馬鹿げてる。これが宇宙の奴が寄越してきた君の身代金と言うわけさ!」
「ま……待てよ! なにも宇宙船を打ち上げろなんていってないだろ?」
「そうだな……地上から宇宙ステーションを乗っ取って操作すれば……いや、だめだ。いずれにせよ大気圏突入の摩擦熱に耐え切れる構造にはなってない!」
「宇宙船を使うしかないのか?」
「そうだ……しかし君が心配する必要はない。そこで三つ目だ……この作戦には宇宙人を獲得するチャンスがある」

 俺は、思わず言葉が詰まる。それって……。獣座衛門を利用するってことかよ。

「どうした?」
「いや……どうして金の話に宇宙人が関わってくるのかなって……」
「察してくれ! 君を助けるためには宇宙人を獲得する体裁が必要になるんだ!」
「獲得……したらどうするんだよ?」
「我々は今その調整に追われている。宇宙人がもたらすテクノロジー的な進歩には莫大な経済効果が期待できる! その具体的な事例を資料にまとめて国に提出する。こうして架空の期待値により捻出された金で宇宙船を買うということ。要するに給料の前借りだ」
「そんなのダメだ!」
「なぜだ!? どうしてダメなんだ!?」
「それは……」

 俺は獣座衛門をちらりと一瞥した。こっちには目も暮れず、一心不乱に冷めたお茶をごくごくと飲み干す獣座衛門がいた。痺れを切らしたようにブライアンはいう。

「この計画には宇宙人を得ることと交換に実現の目処が立っている。我々は火の車だ!」
「それでも……」
「リュウタ?」
「だ……だいいち宇宙船をイチから買うんじゃ時間がかかりすぎるんじゃないか? NSIAは計画から一週間後に俺を救出するための宇宙船を飛ばす。そうだ! そのタイミングを押さえればNSIAも一網打尽にできるだろ!?」
「…………宇宙船は完成品があるし、発射台も今すぐに工面できるが……確かに一理あるな。しかし危険な賭けでもある。君を回収するための宇宙船を見失えば一巻の終わり。君の救出も組織を見つける機会も永遠に失われてしまう。しかし、改めて考えてみる必要がありそうだ。私の独断ではなんとも。君も宇宙人にはよく話しておいてくれ」
「何を?」
「彼は我々を受け入れる準備できてるのかってことだ。当然だが我々はできてる」

 俺は一刻も早く話題を変えたくなった。会話が途切れると、俺は早々に口火を切る。

「あの……実はまた妙なことがあったんだ」
「君の宇宙ステーションではしょっちゅう変なことが起るな!? なんだ!?」
「変な通信があった。そいつは宇宙人と話せることが最後の希望だとかなんとか……気味が悪いモールス信号みたいな通信だったからどうしようと思ったけど……」
「落ち着け! 落ち着いて話せ! なんだ?」
「ゲムギリオっていう通信があったんだ。聞き覚えはないか?」
「うーん……ゲム、ギリオ……どこかで聞いたような……ああ、そのことも調べてみようか。調べるといえば、リュウタ、ジェイクマースティンの足取りがわかった」

 俺は驚きのあまりに体が固まってしまう。手がじっとりと汗ばむ。

「わかったんだよ。彼が地球に生還した後何をしていたのかね。ジェイクは、チャールズ・ロペスの家へと向かったんだ」
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