宇宙の家 ~Come and help me!~

鈴木 純一

文字の大きさ
32 / 39
ブレイクタイム ~地球の仲間たち~

第32話 地球での出来事(前半)

しおりを挟む
 NSIA管制室。オペレーター計画1日目。

 松本隆太を宇宙に送り届けた帰り、その日の午後にはダニエルを含む宇宙飛行士数名を乗せた宇宙船は無事地球に帰還した。管制室はいたるところからホッとため息が漏れる。彼らはようやくロボットハウス内の映像だけに集中できると思っていた。

「作戦は成功だ!」
「あの日本人の少年がうまくやってくれればいいんだが……」
「大丈夫だ。だって彼は……」
「はっは! 最初はどうなることかと思ったが、うまくやったんじゃないか!」

 管制室にくたびれた男がひとりやってくる。ダニエルだった。

「少年はどうだった?」
「大丈夫。はじめての宇宙に少し緊張してたみたいだけど、ご覧のとおりさ」
「ハハ! さすがの君も少し疲れたようだね! 昔のまだひよっこだった頃が懐かしいよ!」
「その頃はまだ、ジェイコブが俺の上司だった頃だ」
「ああ、笑えてくるね! 今じゃすっかりこのだらしないカラダだよ! もうパイロットには戻れそうにない!」
「そうだ、リュウタには宇宙人のことを伝えてたのか!?」
「なにを?」
「オノダが日本語を使うことだ」
「オウ……忘れてたよ。けど大丈夫。日本語で心底安心してるんじゃないかな。ハハハ!」
「……リュウタは驚いてたよ。日本の名前だって」
「ソーリー! 大丈夫だよダニエル。やるべきことは全てやったさ。あとは彼が何を知り何を望んで何を伝えるのか、それを信じるしかないのさ!」
「リュウタは正当な報酬を望んでる」
「そうさ! だからこそ我々はリュウタを選んだ!」


「リュウタは破壊された通信機を見つけたな……あれを見たら尻込みするのも無理ない」
「ファーストコンタクトはあまり良い印象じゃないみたいだな。オノダがやけに大人しい、何かがあったんだ」
「何かってなに?」
「もう何人もオペレーターを送り込んできた。何かを学習したんだ」
「オペレーターと関わるとろくなことにならないってこと? まさか……人間との交流は彼も望んでいることでしょう?」
「……そうだな」


「なんだって?」
「オノダが重力装置を修理したとか」
「そんな馬鹿な。見よう見まねでやったというのか?」
「我々はレクチャーどころか、オノダに近づくことさえできていないんだからな」
「……」
「彼がロボットハウスを占領するとでも?」
「我々は彼の本当の目的を知らない。ロボットハウスには彼を繋ぎとめる何かがある」
「それが操縦権だとでもいうのか?」
「もしくは、それが獲得できないと知った時、ロボットハウスもろともさらうつもりなのかも……」
「うぅん。まあ何はともあれ、なんとかうまくいったみたいだ……ほっ……最初の壁は乗り越えたか」
「リュウタが持ち込んだゲームが功を奏した。やっぱり我々の目に狂いはなかった!」
「だが……まだ初期段階だ。オノダは豹変する。リュウタが最悪の事態を招かなければ良いが」
「大丈夫! あの日本の少年を信頼しろよ!」
「君は暢気すぎるぞ。ダニエル。君はあの少年に毒されている」
「きっと神の思し召しだ。こうなる運命にあったんだよ」
「ん……!」
「どうした?」
「またリュウタからの発信だ……どうやら何かを知りたがってる」
「どうだった?」
「ジェイクのことを聞いてきた……彼は警戒してる」
「全ては真実だ。そう受け取っても仕方がない」
「いや、彼が警戒しているのはもっと先だ……厄介なことになった」
「自分がジェイクの二の舞になることを恐れてる?」
「リュウタは……私のことを”信用ならない奴”だと評価したかもしれない」
「考えすぎだ、ジェイコブ大丈夫さ」


「またゲームか……」
「このところずっとビデオゲームだな。というかビデオゲームばっかりだ……」
「どうなんだ?」
「今までのオペレーターは室内スポーツや、ゲームといえどもマネジメントゲーム、心理テスト、シミュレーション、デザインゲームなどといった宇宙人の思考の傾向を試すものが用いられてきた。いずれもオノダから情報を引き出す目的の延長線上にあるものだ。あの子供はそういったことにはまるで無頓着のようだ。ただ無邪気に友達と遊んでいる感覚なんだよ」
「……」
「まさか小野田があれほどビデオゲームに熱っぽいとは思わなかったが、それだけだ。今回のオペレーションで得られた情報はそれだけ。なぁ、ジェイコブ?」
「少年は遊んでばかりの役立たずだ」
「それは言いすぎだろう。リュウタも何か考えがあってのことだよ。きっとそうだ」


 * * *


 NSIA本部。オペレーター計画の開始から三日目の夜になった。
 サラ・ミラー医師は施設の廊下を歩く、たまたまある人物に出くわした。彼女はハッとして彼に話しかける。

「マックス! こんな夜中にどうしたの?」
「色々と忙しくてね。もう散々だよ。私も歩き回らなくてはならなかった」
「そう。計画は順調ね」
「そうだといいんだが……」
「どうしたの?」
「ジェイコブはヘマをうった。これからはペスが代わってオペレーションを行ってもらう」
「どういうこと? でもペスじゃあジェイコブの代わりには……」
「良いんだよ。ジェイコブの仕事は"オペレーターの話の聞き役"ただそれだけだ。あのジェイコブには無駄なオプションが付きすぎてたんだ」
「オペレーターは混乱するのでは?」
「たいしたことは無い。そのためにサラがいる。気づかれなければ尚良し、気づかれたら、その時はそのときだ」


 * * *


 NSIA本部。オペレーター計画の開始から四日目になった。
 マクシミリアンのオフィスに内線電話がかかってくる。彼は嫌々受話器を取った。忙しく攻め立てるような声が彼の耳をつんざく。相手はサラだった。

「マックス。松本少年の精神は疲弊しきっているわ。作戦を中断させて!」
「何を馬鹿なことを言ってるんだサラ! そのために君がいるんだろう? 職務放棄をするというのかい?」
「オペレーターの安否を考えるのが仕事よ! 貴方の方こそ勘違いしないでよマックス!」
「困った子猫ちゃんだ。むぅ。もう一日だけだ。もう一日だけで、彼は人類史上類をみな い英雄になれるんだぞ?」
「そんなこと松本少年は望んでないわ。地位も名誉もいらない、彼が欲しいのは少しばかりのお金だけよ!」
「今、サードデイズボーイを失うのはあまりにも惜しいんだよ。わかってくれサラ」
「ペスのことをリュウタに話すべきだわ。それに貴方のことも……」
「ハーイ、リュウタ。NSIAの最高司令官のマックスだ。みんなの人気者のマックスだ。ってか? はは……疑り深い彼のことだ、私の姿を見ないことには納得しないよ」
「それでも……」
「それに、リュウタは私のことを見つけても人間とは思わないだろう」
「……!」
「私がなぜ彼の前に姿を現さなかったのか、その理由を知らないとは言わせないぞ。ペスのこともだ。いいから君は黙って仕事をまっとうすればいいんだ」


 * * *


 NSIA本部。休憩中のサラはパイロットのダニエルと会う。お互いに近況を報告する。

「やあサラ。ずいぶんと疲れてる様子だね」
「貴方にはわからないでしょうね。もう大仕事はとっくにやり遂げたんだから」
「思うところがあるようだね。相談に乗ろう」
「けっこうよ」
「リュウタのことだろう?」
「……」
「サラ。君は、だって、今までだって何人というオペレーターを担当してきたじゃないか。どうして今になって思いつめる必要がある?」
「……」
「君は仕事に私情を持ち込まない主義だったろ?」
「甥っ子に似てるの」
「……!」
「そうよ。全部私が悪いんだわ。どうしても彼を見てると他人事には思えないの」
「そういうことだったのか」
「ただ。それだけじゃない。組織のやり方にも納得できないところがあるのよ」
「同感だ」
「ええ。ステイマンも…………あんなことになるなんて」
「ジェイコブのことをリュウタには?」
「そんな。教えられるわけないでしょ!? 今だって不安定な状態なのよ?」
「わかったよ。そう怒るなって……」

 ダニエルはやつれた顔で弱弱しく苦笑する。

「実は……死んだはずのジェイコブがさ……見えるんだよね」
「あなた正気?」
「あはは、気でも違ったかも」
「とにかく、次にリュウタが通話してきたときにはあのことを話そうと思うの」
「あのことって?」
「もういい? 仕事に戻るわ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】限界離婚

仲 奈華 (nakanaka)
ミステリー
もう限界だ。 「離婚してください」 丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。 丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。 丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。 広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。 出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。 平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。 信じていた家族の形が崩れていく。 倒されたのは誰のせい? 倒れた達磨は再び起き上がる。 丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。 丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。 丸田 京香…66歳。半年前に退職した。 丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。 丸田 鈴奈…33歳。 丸田 勇太…3歳。 丸田 文…82歳。専業主婦。 麗奈…広一が定期的に会っている女。 ※7月13日初回完結 ※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。 ※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。 2026年1月ジャンルを大衆文学→ミステリーに変更しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...