せっかく異世界転生したのに俺だけ魔法が使えない!!

SiGMa

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-1  執着はないけど未練はある現実

-1/2- 現実、散らばった感情

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ーーーー…。

「わはは」
「じゃあ今回こんな感じで」

ーーその表情は、

「楽しかったねー」

ーーその感情は、

「最後までみてくださってありがとうございましたー!」

ーーこの人の本当だろうか。


笑顔ってやっぱいいな。
自分にはもう笑顔を向ける相手も、向けられる相手もいない。
この人達みたいにネットの海に自分の思想を垂れ流したり、顔面を晒せるほどのメンタルを持ち合わせたりしていない。

プラスな事を目にして、少しでもマイナスな自分を良くしようと悪あがきしている。暗い部屋で、いつものように同じことを考える。明日が来るのを少しでも引き延ばそうとしている。

(…一定期間死にたい)

日が越えれば自分が生きて29年目になる日。人並みに良いこともあれば嫌なこともあった。
今は就職して食べていけてるし、暇つぶしのゲームにちょっと課金できるし。…多分、それなりに幸せな人生だと思う。
別に命を絶ってまで思い出したくない記憶があったり、犯罪に手を染めてまで暴れたい衝動があったりはしない。ただ…何と言うか。
…そうだ。

(…とてつもなくつまらない)


****


こうなる事は高校生の頃から分かっていたはずだった。学校に通うのと一緒で、起きて、向かって、何かして、暗くなった道を戻って、寝て、起きて…。ずっとこの繰り返しは怖かったけど、なんだか大丈夫だと思っていた。周りのみんなは既に受け入れてるようだったから。自分もみんなと同じように。

ーーそれでもやっぱり、

「これから何十年働き続けることになる。だから学生の時間って大事なんだよ」
学ぶと稼ぐの違いの話?学生の方がこの先の何十年よりは自由だって話?いつかの何かの講師の話。同じことを繰り返してるのは変わらないじゃん。
ずっと、生まれて数年しかぐっすり眠れなかった印象がある。小学校に通い始めて毎夜毎夜「まだまだ起きてられるのに」、中学校に通い始めて毎朝毎朝「まだまだ眠っていたいのに」。お天道様なんて偉大な惑星があるお陰で、なんだか人間は地上で生きるのが良さそうで。

ーーこの人生は順調に、

一番大変だったのは実家、人間関係も含めて。特に中高生の頃。祖父、父、母、姉。気配すら感じたくなかった。ずうっと気持ちが悪かった。思い出すことすらしたくなかった。「なぜ自分がもう一人いないのか」と、一人ではこの苦痛にあまりにも耐え難かった。

ーー生き辛くなった。

自分のしたいことしたいのに。
  したくないことはしたくない
自分の居たいところに居たいのに。
  居たくないところには居たくない

当たり前な事だけど、それすら出来る力が無かった。大人になれば自然と出来るようになると思っていたのも甘かった。


年に一度の節目。今までを軽く振り返って自分の感情が分かったところで、そういえば今更どうしようもないと悟った。
改めて自分の気持ちに整理がついた。

(まずは目の前の面倒事から、消していこう)
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