せっかく異世界転生したのに俺だけ魔法が使えない!!

SiGMa

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-1  執着はないけど未練はある現実

-2/2- 懐古、どこかに帰りたい

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当たり前な事だけど、それすら出来る力が無かった。大人になれば自然と出来るようになると思っていたのも甘かった。

「人生を良くするのは大変だけど、人生を悪くするのは本当に案外簡単だ。」


年に一度の節目。今までを軽く振り返って自分の感情が分かったところで、そういえば今更どうしようもないと悟った。
改めて自分の気持ちに整理がついた。

「だが決して「=イコール諦める」ではない。」

(まずは目の前の面倒事から、消していこう)


****


退職届を書いた。
まず、会社を辞めようと思った。自分が辞めたら会社の何がどう変わるかなんて一丁前に色々考えたがこんなので何か事が起こるほど弱い訳がないので止めた。
まだ他に確定した収入源を見つけた訳ではないが死にはしないと思っている。

目を細めても変わらずぼやける視界で、窓の上の時計を見る。
あと二時間弱で明日になる。その日は自分の誕生日だ。
久々にこんなに軽い気持ちで年を重ねる。


自分で決めた。なんとしてでも会社をやめて、なんとしてでも生きていこう。せめてしばらくは自分の好きなように生きよう。

一段落ついてすぐ眠れないほど目が覚めたことに気付いた。自分の環境を変えることには毎度緊張しているから、軽く興奮状態になっている。

(掃除でもしよう。その後風呂にでも入ったらリラックス出来るはずだ。先に着替えを用意しよう)


しばらく理由もなく何かに追われている感覚に襲われていたから掃除する気力がなかった。
長く開けていなかった、物置と化したクローゼットから一度物を全て出してみた。
改めて要るもの要らないものを分けていると、一人暮らしにまで持ってきた気に入っているゲームソフトが出てきた。
自分が唯一プレイしたことのあるRPGで、苦手なのかクリアは出来そうにないが、雰囲気が和やかで思い出したらまた無性にあの画面を見たいと思う良い作品だ。

「…ゲーム機、持ってきてないな」

何を思ったか引っ越し当時の自分はこのソフトをプレイできるゲーム機どころか、携帯一つで暇を潰せると確信していた。
その時の事は覚えていないが、今こうして職を手放すことを考えてなかったのは容易に想像出来る。

ゲーム機がないのでそのソフトの説明書を読む。あるキャラクターの立ち絵が目に入る。
黒髪で長いうねった前髪を流し、右目を隠している。切れ長の目で左のテキストを見ているように配置されている。
懐かしい。よく使ってた役職のキャラクターだ。確か名前は…。

ビリーVIRII

自由に名前を付けられるようになっていて、たくさん名前をつけて遊んでいた時があった。
自分が、当時から今でも色んなゲームの名前に使っているからこのキャラクターに付けた名前は特によく覚えていた。
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