せっかく異世界転生したのに俺だけ魔法が使えない!!

SiGMa

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1  雪山から

いっかいめ  まだ混乱

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ーーーー。

強い風がすり抜けていく音が聞こえる。

ーーー。

屋根の軋む短い音が何度か聞こえる。

ーー。

その間隔が短くなっていく。

ー。

長い一つの音になるとフッと消えて…地面に落ちる。

「…」

目が開く。知らない天井だ。

(雪…?)

引っ越してから久々に聞いた屋根から雪が落ちる音。

(…そうだ、そうだそれより)

それより会社に行かないと。辞めるんだ。数年、数か月でも好きなように生きて…。

(生き、て…)

気持ちと共に軽くなったであろう体を自分でも驚くほど若々しく起こすと、また知らない壁。そういえば近眼なのに眼鏡をかけずにきちんとピントが合う。
後ろの壁を見るとまた知らない壁、知らない窓…知らない景色。

「…え」

知らない声。

「あ、あ…え」

誰だ?自分は…今どうなっている?

知らないベッドの右にある知らない鏡が目に入ると、見覚えのあるやつがいる。

(あ、あのRPGの…キャラクター…)

知らないだらけの中に、唯一自分の記憶にあるやつを認識できただけでとても安堵した。


しかしそれにしてもこの状況が理解出来ない。鏡の中のあのキャラクターは自分の動きを完璧に真似しているが、自分は一体どうなったのだろうか。物理的に考えれば自分の容姿は今このキャラクターだ。しかし…しかし、こんなに鏡を信用できない日が来るとは思わなかった。

自分も伊達に現実逃避してきていない。


「異世界転生」。今考えられるのはそれしかない。
今まで現実で生きてきてこの考えは、傍から見れば本気で寝ぼけているがそう考えれば少しは落ち着ける。


…そうだ、今に至るまでの、最後の記憶は何だ?

…昨日は、日が変わるぐらいまでクローゼットを掃除しようと思って…ゲームソフトを見つけて…片付け終わって「懐かしいなー」と思いながら風呂に…それで、それで…。
それで?

あれ、これ、風呂で寝てないか。

風呂で寝て、そこから記憶が無いってことは…それは…。


いや…いや!違う!
良かった。そんなドジな事してなかった。
寝てはいなかったがその時、何故かすごく眩しかった。光が強くて目が痛むような眩しさではなくて、それで目を閉じて…。いや寝てない、よな。

それにしても不思議な光だった。すごく心地いい光だったけど、なんだかすごく不安で…目を閉じたくも開けたくもなくなって、明るいのに夜みたいな感覚になった。



…これ以上は考えてもそれが正確かどうかは分からない。とにかく行動だ。まずこの建物と近辺を調べよう。
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