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1 雪山から
にかいめ 幸先が良いイケメン
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外には雪が積もっていて、今も強い風に煽られながら降り続けている。その影響をあまり受けないこの部屋は見るからに木造で、大体六畳ぐらいの広さだ。
さっきまで寝ていたベッド、起きて右を向くと大きな鏡がついたドレッサーがある。他にはベッドの横の間接照明、足を下ろした位置に茶色のブーツ。自分の物は一つもない。
外の様子から、予想内な寒さを感じつつ床に靴下で覆われた足を下ろした。鏡に近づく。同時に相手も近づいてくる。そいつはやはり自分の物ではない服を着ている。白めのタートルネックに焦茶色のノースリーブセーター。シンプルな灰色のスキニー。
服装こそあの立ち絵と違うものの、容姿はどう見てもカッコいいあのキャラクターだ。
この部屋には他に何もない。慎重に部屋を出ようと思う。
自分以外がいた気配がないのでブーツは自分の物だと考え身に付けていくことにした。
ドアノブに手をかけた時、ふと思った。
(もし本当に異世界だとしたら…)
自分の容姿やこの状況が全く変わっているのはこの目で見たが、自分が生きていたあの世界ではなかったから…。
(…)
せっかくならこの人生を、自分の生き方を全て自分好みにしよう。どっちにしろ好きに生きようと思っていたんだから。この先同じような人生を歩むかもしれないし、それよりも厳しい人生になるかもしれない。でもイケメンだし、何か身長高いし、何でも出来そうな気がしてきた。
誰か人に会ったらどうしよう。何か変えなきゃ、今までの自分と変わらない。
例えば…一人称。ずっと憧れていて何度か変えようと思ったことはあるけど、周りの反応が怖くてやめた。同級生、後輩、上司…。慣れるか分からないけどとにかく自信をつけたい。
「俺…は」
例えば、名前。こうなったら前の自分の名前を名乗っていられない。この人生は楽しく、ゲーム感覚で生きる。自分を自分だと思わないようにしよう。
「ビリー…この人生は、絶対」
例えばスタンス。自分に被害が及ばないことが第一だったが、今自分には持ち物も過去もない。自分の嫌なことは嫌と言いたい。時間がちゃんと取れなくて出来なかった自分の趣味も極めたい。
「友達をつくる…!」
なんかとてもダサい。
そういえばここが異世界なら魔法とか特殊能力とか使えるんだろうか。…実際あのキャラクターも使えたし、もしかしてほしい。イケメンだし。
…よし、イケメンな事によって自信がついてきた。毎度、突拍子もなく長時間考え始めるのは良くない癖だと思う。
****
古そうなドアを不本意ながら軋ませて開ける。目の前にはドア、左右に廊下が伸びている。こちらの壁とあちらの壁、合わせて10部屋あるようだ。廊下の右端に行くと下に続く階段。左端も、見ると同じく下に続く階段。
人がいる体で心構えしながら静かに降りていく。暖房があるのか寒さが薄れていく。
…誰もいない。
形跡はあるが、気配がない。外にいるだろうか。
出入り口の扉近くの窓から見るに、ここが一階だろう。
この空間はある程度の人数が飲み食いできそうな数のテーブルと椅子。壁際にも重ねていくつかの椅子がある。左右の階段に挟まれてある仕切り程度のカウンター。その奥には部屋に通じている扉、少し開いている。
部屋数やこの空間を見るに、ここは宿のようだ。
カウンターの奥の扉に近づくが、自分が発する音以外には何も聞こえない。
自然と目に入った、カウンターにおいてあるノートの文字を見た。
「…あ、どうしよう」
文字が違った。想定していなかった。人にあっても言語が違ったらどうしようか。
(いや、でももしかしたら…)
ここがどんな世界かは知らないが、都合のいいことがあってもおかしくない。世界には色々な言語がある。ある程度人が集いそうなこの場所だ。まず始めに人が来るであろうここに、何か…そう。
きらっと光った石があった。カウンターの下の小さい机の紙の下に。
(これだ…これであってくれ!)
手に取ったこれは、ペンダントとして軽く装飾が施されていた。
「…あれ!あんた大丈夫だった?」
さっきまで寝ていたベッド、起きて右を向くと大きな鏡がついたドレッサーがある。他にはベッドの横の間接照明、足を下ろした位置に茶色のブーツ。自分の物は一つもない。
外の様子から、予想内な寒さを感じつつ床に靴下で覆われた足を下ろした。鏡に近づく。同時に相手も近づいてくる。そいつはやはり自分の物ではない服を着ている。白めのタートルネックに焦茶色のノースリーブセーター。シンプルな灰色のスキニー。
服装こそあの立ち絵と違うものの、容姿はどう見てもカッコいいあのキャラクターだ。
この部屋には他に何もない。慎重に部屋を出ようと思う。
自分以外がいた気配がないのでブーツは自分の物だと考え身に付けていくことにした。
ドアノブに手をかけた時、ふと思った。
(もし本当に異世界だとしたら…)
自分の容姿やこの状況が全く変わっているのはこの目で見たが、自分が生きていたあの世界ではなかったから…。
(…)
せっかくならこの人生を、自分の生き方を全て自分好みにしよう。どっちにしろ好きに生きようと思っていたんだから。この先同じような人生を歩むかもしれないし、それよりも厳しい人生になるかもしれない。でもイケメンだし、何か身長高いし、何でも出来そうな気がしてきた。
誰か人に会ったらどうしよう。何か変えなきゃ、今までの自分と変わらない。
例えば…一人称。ずっと憧れていて何度か変えようと思ったことはあるけど、周りの反応が怖くてやめた。同級生、後輩、上司…。慣れるか分からないけどとにかく自信をつけたい。
「俺…は」
例えば、名前。こうなったら前の自分の名前を名乗っていられない。この人生は楽しく、ゲーム感覚で生きる。自分を自分だと思わないようにしよう。
「ビリー…この人生は、絶対」
例えばスタンス。自分に被害が及ばないことが第一だったが、今自分には持ち物も過去もない。自分の嫌なことは嫌と言いたい。時間がちゃんと取れなくて出来なかった自分の趣味も極めたい。
「友達をつくる…!」
なんかとてもダサい。
そういえばここが異世界なら魔法とか特殊能力とか使えるんだろうか。…実際あのキャラクターも使えたし、もしかしてほしい。イケメンだし。
…よし、イケメンな事によって自信がついてきた。毎度、突拍子もなく長時間考え始めるのは良くない癖だと思う。
****
古そうなドアを不本意ながら軋ませて開ける。目の前にはドア、左右に廊下が伸びている。こちらの壁とあちらの壁、合わせて10部屋あるようだ。廊下の右端に行くと下に続く階段。左端も、見ると同じく下に続く階段。
人がいる体で心構えしながら静かに降りていく。暖房があるのか寒さが薄れていく。
…誰もいない。
形跡はあるが、気配がない。外にいるだろうか。
出入り口の扉近くの窓から見るに、ここが一階だろう。
この空間はある程度の人数が飲み食いできそうな数のテーブルと椅子。壁際にも重ねていくつかの椅子がある。左右の階段に挟まれてある仕切り程度のカウンター。その奥には部屋に通じている扉、少し開いている。
部屋数やこの空間を見るに、ここは宿のようだ。
カウンターの奥の扉に近づくが、自分が発する音以外には何も聞こえない。
自然と目に入った、カウンターにおいてあるノートの文字を見た。
「…あ、どうしよう」
文字が違った。想定していなかった。人にあっても言語が違ったらどうしようか。
(いや、でももしかしたら…)
ここがどんな世界かは知らないが、都合のいいことがあってもおかしくない。世界には色々な言語がある。ある程度人が集いそうなこの場所だ。まず始めに人が来るであろうここに、何か…そう。
きらっと光った石があった。カウンターの下の小さい机の紙の下に。
(これだ…これであってくれ!)
手に取ったこれは、ペンダントとして軽く装飾が施されていた。
「…あれ!あんた大丈夫だった?」
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