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第一章
言葉が通じない相手との話が通じない相手だったら前者の方がまだ会話は成り立つ
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まず、問題点を整理しよう。
いや問題がないところがほとんど無いんだけど。
「えっとですね・・・まずその方式だと僕は最後まで勝たないと死ぬ気がするんですが」
刃潰しゃ良いってもんじゃない。鬼人の膂力で振るわれれば木の枝も立派な鈍器だ。そんなもんで殴られた日には僕なんて風船のように弾けるわ。
「?勝てば良いではないですか」
「死ぬことは否定しないんですね・・・」
心底不思議そうな目で見てきた・・・。別に僕を殺そうとしてるんじゃなくてほんとにただ力を見たいだけなんだなぁ・・・
「いや、でも降参は認めて欲しいんですけど。ある程度戦えば僕の力もわかるでしょう?」
「ふふっ何を言うのですか。命を賭けてこそ、最大の力は発揮出来るというものではないですか。」
いま命を賭けるって言った?
「それに最後は族長って・・・それ世襲制ならともかく、この感じだとここで一番強い人ですよね?」
「当然です。私たちの頂点に立つものは、最も強き者でなければなりません。」
そんなの勝っても面倒事間違いなしじゃん。
「ルールの変更は認められません。あなたに選べるのは戦うか、この場から去るかだけです。」
「いやいや、えーっと、僕の攻撃力だと鬼人を戦闘不能にするのは厳しいんじゃないかなーって」
「くどいです」
会話する気が無さすぎる・・・
「選びなさい、シルヴァ・フォーリス。戦うか、去るか」
なんでこの人は僕のことをこんなに買ってるの?いやこれから薬の効果を見せる気ではいたけど僕自身はまだ何もしてないんだけど。
女性はもう何も言う気はないみたいだし、いつの間にか、周囲の鬼人達も無言で僕の返答を待っている。
やめてよその空気・・・
「・・・あーもう!わかりましたよ!一度戦うと言いましたし、こうなったらとことんやってやろうじゃないですか!」
あれほど対話は大事だと言っておいてなんだけど、交渉って互いに相手の話を聞く気が無いと成立しないもんだからね!
「言っときますけど僕は一撃でも貰ったら普通に死ぬので殴り合いとかは期待しないでくださいね?」
「そこまでこちらの流儀に従えとは言いません。」
「やっぱりそういう美学みたいなのあったんですね・・・」
確認しといて良かった、のかなぁ。
僕は腹を括って武器を取り出す。今回使用するのは、とにかくべらぼうに硬い素材でできた旋棍、つまりトンファーだ。
リーチは非常に短いけど、どうせ刃物を使ったとしても相手を戦闘不能にするのは僕には厳しいし。この近距離で飛び道具とか現実的じゃないし。
だったら懐に入って打撃武器で脳を揺らして動けなくするのが多分一番手っ取り早い。それにトンファーは、回転の力を使いやすい。
「あ、そういえばそちらは霊力による身体強化とかします?」
武器はこれでいいけど、使用する薬は強化の有る無しで変えるつもりだ。むやみに一番良いやつ使うとコストが馬鹿にならないからね・・・
「ふむ・・・基本的には強化法は使用しないこととなっていますが・・・。戦闘が盛り上がってきたら使う者もいるでしょうし、その者をあえて止めるようなこともしません。」
「つまり使うも使わないも本人次第ということ、ですか」
じゃあ使うじゃん。事実上何も制限されてないんだから君たちみたいな戦闘狂は絶対使うじゃん。
・・・仕方ない、今僕の持つナンバーズのなかで最も汎用性が高く、なおかつ効果も申し分ない『最高傑作』を使っちゃおう。
懐は痛むけど、まあきっと近いうちにリターンは得られるでしょ。
僕は懐から取り出したカプセル剤――今度の中身は粉末だ――を水もなしに口に含み、そのまま嚥下する。さて、これは少しづつ効果が出るタイプの薬だけど・・・
うん、まあ既に五感は十分に冴えてるかな。これならその気になれば、相手の鼓動さえ聞き取れる。
「さて、再度問いましょう。シルヴァ・フォーリス。準備はよろしいですか?」
顔は見えないが、布の下で笑っている気がする。決して嫌な感じはしないが、むしろだからこそおかしいよなぁ。
まあ、もう仕方ない。結局戦う理由もいまいち納得してないけど、異文化交流は時に思いっきりぶつかることも大事だしね。
頭も身体も良い感じだ。全身がこれ以上なく噛み合っている。
付け焼き刃の全能感。精神が少し高揚している。でも、今更こんなものに流されるほど未熟では無い。
だから僕は、静かに頷く。
「はい。いつでも、構いませんよ?」
「では、始めましょう。1人目、前へ。」
彼女がそう言うと、周囲の鬼人達の中から槍を持った1人の男性が闘技場に跳び乗ってくる。
さっきの彼・・・ヴェルフラムさんに比べると体躯も小さく立ち居振る舞いもどこかぎこちない。
先程の言葉通り新兵なのだろう。
・・・ていうかどっかと戦争してる訳でもないのに「新兵」とか、ここの人達戦闘に積極的すぎるなぁ。
鬼人種は力を尊ぶとはいえ、ここは随分それが顕著だ。
それに槍も確かに刃は付いてないみたいだけど、普通に尖ってるし鉄製だから刺さると思うんだけど。
まあいいや、体が当たっただけでもアウトなんだしもうその辺気にしててもどうしようもない。
明らかに緊張している彼に、僕は笑って声をかける。流石にそのままだとこっちもやりにくいし。
「riburean?(あなたの名前は?)」
「gigi!?」
そんなに驚かなくてもいいのに。むしろこの状況で問答無用で襲いかかるとでも思ってたのかな。
明らかに戸惑っている彼にもう一度声をかける
「burean?(名は?)」
「・・・jedo」
ジェド、か。いい名だ。
さて、礼は尽くした。もはや語る言葉もない。僕は右手で旋棍を構えたまま左手で手招きする。
「vandirenda.jedo(ジェド、いつでもいいですよ。)」
「ghaaaa!」
緊張が解けたのか、ジェドが叫びながら思い切り向かってくる。
その肌が震えるような雄叫びに、僕は・・・
自分でも気付かない間に、小さく口角をあげていた。
さあ、力を示そうか。
いや問題がないところがほとんど無いんだけど。
「えっとですね・・・まずその方式だと僕は最後まで勝たないと死ぬ気がするんですが」
刃潰しゃ良いってもんじゃない。鬼人の膂力で振るわれれば木の枝も立派な鈍器だ。そんなもんで殴られた日には僕なんて風船のように弾けるわ。
「?勝てば良いではないですか」
「死ぬことは否定しないんですね・・・」
心底不思議そうな目で見てきた・・・。別に僕を殺そうとしてるんじゃなくてほんとにただ力を見たいだけなんだなぁ・・・
「いや、でも降参は認めて欲しいんですけど。ある程度戦えば僕の力もわかるでしょう?」
「ふふっ何を言うのですか。命を賭けてこそ、最大の力は発揮出来るというものではないですか。」
いま命を賭けるって言った?
「それに最後は族長って・・・それ世襲制ならともかく、この感じだとここで一番強い人ですよね?」
「当然です。私たちの頂点に立つものは、最も強き者でなければなりません。」
そんなの勝っても面倒事間違いなしじゃん。
「ルールの変更は認められません。あなたに選べるのは戦うか、この場から去るかだけです。」
「いやいや、えーっと、僕の攻撃力だと鬼人を戦闘不能にするのは厳しいんじゃないかなーって」
「くどいです」
会話する気が無さすぎる・・・
「選びなさい、シルヴァ・フォーリス。戦うか、去るか」
なんでこの人は僕のことをこんなに買ってるの?いやこれから薬の効果を見せる気ではいたけど僕自身はまだ何もしてないんだけど。
女性はもう何も言う気はないみたいだし、いつの間にか、周囲の鬼人達も無言で僕の返答を待っている。
やめてよその空気・・・
「・・・あーもう!わかりましたよ!一度戦うと言いましたし、こうなったらとことんやってやろうじゃないですか!」
あれほど対話は大事だと言っておいてなんだけど、交渉って互いに相手の話を聞く気が無いと成立しないもんだからね!
「言っときますけど僕は一撃でも貰ったら普通に死ぬので殴り合いとかは期待しないでくださいね?」
「そこまでこちらの流儀に従えとは言いません。」
「やっぱりそういう美学みたいなのあったんですね・・・」
確認しといて良かった、のかなぁ。
僕は腹を括って武器を取り出す。今回使用するのは、とにかくべらぼうに硬い素材でできた旋棍、つまりトンファーだ。
リーチは非常に短いけど、どうせ刃物を使ったとしても相手を戦闘不能にするのは僕には厳しいし。この近距離で飛び道具とか現実的じゃないし。
だったら懐に入って打撃武器で脳を揺らして動けなくするのが多分一番手っ取り早い。それにトンファーは、回転の力を使いやすい。
「あ、そういえばそちらは霊力による身体強化とかします?」
武器はこれでいいけど、使用する薬は強化の有る無しで変えるつもりだ。むやみに一番良いやつ使うとコストが馬鹿にならないからね・・・
「ふむ・・・基本的には強化法は使用しないこととなっていますが・・・。戦闘が盛り上がってきたら使う者もいるでしょうし、その者をあえて止めるようなこともしません。」
「つまり使うも使わないも本人次第ということ、ですか」
じゃあ使うじゃん。事実上何も制限されてないんだから君たちみたいな戦闘狂は絶対使うじゃん。
・・・仕方ない、今僕の持つナンバーズのなかで最も汎用性が高く、なおかつ効果も申し分ない『最高傑作』を使っちゃおう。
懐は痛むけど、まあきっと近いうちにリターンは得られるでしょ。
僕は懐から取り出したカプセル剤――今度の中身は粉末だ――を水もなしに口に含み、そのまま嚥下する。さて、これは少しづつ効果が出るタイプの薬だけど・・・
うん、まあ既に五感は十分に冴えてるかな。これならその気になれば、相手の鼓動さえ聞き取れる。
「さて、再度問いましょう。シルヴァ・フォーリス。準備はよろしいですか?」
顔は見えないが、布の下で笑っている気がする。決して嫌な感じはしないが、むしろだからこそおかしいよなぁ。
まあ、もう仕方ない。結局戦う理由もいまいち納得してないけど、異文化交流は時に思いっきりぶつかることも大事だしね。
頭も身体も良い感じだ。全身がこれ以上なく噛み合っている。
付け焼き刃の全能感。精神が少し高揚している。でも、今更こんなものに流されるほど未熟では無い。
だから僕は、静かに頷く。
「はい。いつでも、構いませんよ?」
「では、始めましょう。1人目、前へ。」
彼女がそう言うと、周囲の鬼人達の中から槍を持った1人の男性が闘技場に跳び乗ってくる。
さっきの彼・・・ヴェルフラムさんに比べると体躯も小さく立ち居振る舞いもどこかぎこちない。
先程の言葉通り新兵なのだろう。
・・・ていうかどっかと戦争してる訳でもないのに「新兵」とか、ここの人達戦闘に積極的すぎるなぁ。
鬼人種は力を尊ぶとはいえ、ここは随分それが顕著だ。
それに槍も確かに刃は付いてないみたいだけど、普通に尖ってるし鉄製だから刺さると思うんだけど。
まあいいや、体が当たっただけでもアウトなんだしもうその辺気にしててもどうしようもない。
明らかに緊張している彼に、僕は笑って声をかける。流石にそのままだとこっちもやりにくいし。
「riburean?(あなたの名前は?)」
「gigi!?」
そんなに驚かなくてもいいのに。むしろこの状況で問答無用で襲いかかるとでも思ってたのかな。
明らかに戸惑っている彼にもう一度声をかける
「burean?(名は?)」
「・・・jedo」
ジェド、か。いい名だ。
さて、礼は尽くした。もはや語る言葉もない。僕は右手で旋棍を構えたまま左手で手招きする。
「vandirenda.jedo(ジェド、いつでもいいですよ。)」
「ghaaaa!」
緊張が解けたのか、ジェドが叫びながら思い切り向かってくる。
その肌が震えるような雄叫びに、僕は・・・
自分でも気付かない間に、小さく口角をあげていた。
さあ、力を示そうか。
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