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第二章
食に影響を与えることは大罪
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空腹、という程ではないけれど。少しばかりお腹が寂しい感じがしたので、僕達は街に出てちょっと食べられるもの・・・出来れば肉とかを食べようと思っていた、んだけど・・・
「なんか全体的に値段が高い気がするなぁ。」
僕は並んだ屋台を見てぼやく。昨日の時点では気づかなかったけど、シャクシャラの物価を考えると肉料理の値段が割高だ。ついでに乳製品の値段も。
・・・まあ、理由は分かりきっているけど。
僕は串焼き肉を売っている女性に声をかける。
「こんにちはー、串焼き肉を二本お願いします。」
「はい、まいど!」
「どうです、最近の商売は?」
「そうさねぇ・・・やっぱり色んな材料の仕入れ値が上がっちまって厳しい、ってのが本音だよ。」
手際よく串焼き肉を用意しながら答えてくれる。
それにしても、やはり少し高いのは確かなようだ。その上、肉や乳製品以外の食材は普通に供給されているようで、それもまた逆風になっているんだろう。
「例の被害はそんなに大きいんですか?」
「そりゃあもう。駐留軍の人達が昼夜を問わず哨戒してくれてるんだけど・・・それでも、被害は増える一方、下手人の尻尾すら掴めて無いらしくてねえ。」
ふむ、思ってた以上に深刻な状態みたいだ。被害そのものもそうだけど、精霊種がわざわざ生物を集めているところがきな臭すぎる。
絶対ろくな事にならない。
「うーん、大変なんですね・・・少しでも早く解決するといいですね。」
「まったくだよ。はい、串焼き肉二本お待ち!」
「あ、どうも。じゃあまた来ますね」
簡単に挨拶してその場を去る。
そのまま串焼き肉を頬張りながら街を散策する。
「ほれにひても・・・へんほうなほほになりほうはね。」
「シルヴァ・・・行儀が悪いですよ。ちゃんと飲み込んでから喋ってください。」
おっと失礼。
僕は口の中の肉を飲み込んでから改めて口を開く。
「っんん・・・。ごめんごめん。いやー、それにしても、面倒な事になりそうだね。」
「精霊種、ですか・・・。実際に会ったことはありませんが、そこまで危険な存在なのですか?」
「危険といえば危険だね。『誓約』によって他種族に直接危害を与えることは出来ないけど、だからこそその縛りを抜けられるような方法を常に探してるような種族だし。」
「つまり、今起きている事件もそのような目的のもとに行われている、と?」
そのとおり。だけど真に厄介なのはそこじゃない。
「精霊種がそういう行動すること自体はよくあることなんだけど・・・。今回の問題は、被害があまりに大きいことと、これだけやっておいて全く捕まえられてないことだね。」
精霊種が街にちょっかい出したり、召喚の禁術を使おうとすることはよくある。それは当然予期しうる事なので、『誓約』による縛りで制限されている。
標的を設定しない召喚術とかなら縛りの外だけど・・・まあ、それはつまり精霊種も標的になる訳だから流石の彼らもしない。
「精霊種の一番の強さはその上位種にも迫る魔力適性でね。それ以外は肉体性能も含めて大して高くない。だから彼らの隠密行動は隠蔽魔法の使用を前提してるものなんだけど・・・」
「隠蔽魔法、ですか。・・・私の記憶では、かなりの欠陥魔法だったと思いますが。」
「その通り。」
隠密行動に適しているのは呪力だ。魔法は事象改変を行うので、発生した音や匂い、光などを改変するのが隠蔽魔法、なんだけど。
「まず隠蔽そのものの質が低い。起こった事象を無理やり書き換えるわけだからね。そしてその上、魔力を大量に消費するから上位元素を視認できる相手の場合はむしろ目立つ。その上、痕跡も残るから、まあ使えたもんじゃないね。」
これが呪力だったら、周囲から自分を認識させなくすることで隠密行動ができる。使用する呪力の量も少ないし、実力の劣る相手の探知魔法もスルーできる。
でも精霊種は魔力以外に適性を持たない。
「だから、精霊種の悪巧みは基本すぐに露見するものなんだけど・・・」
「今回は、長引いているようだと?」
「少なくとも、市場の価格に影響が出るくらいにはね。」
こんな事は滅多にない。異常と言っていい。
いっそ、精霊種の仕業に見せかけた他の誰かによる犯行と言われた方がしっくり来るくらいだ。
「このままだと、まず間違いなく大きめの問題が発生する。できればその事態が発生する前にシャクシャラを出たいけど・・・」
「協力はしないのですか?」
難しいところだけど、一応基準は決めてある。
「・・・そりゃあ、ヒルダがいれば大抵の問題には対処できるだろうけど。その場合、ヒルダに責任を背負わせる事になるからね。」
「責任、ですか。」
「旅をする上では、重たい荷物は持たないのが鉄則だ。それが簡単に捨てられないものなら尚のことね。」
「・・・そう、ですね。」
微妙な表情のヒルダ。まあ彼女は好戦的だけど、それ以上に思いやりが深い。
僕に絡んできた獣人に怒ったのもそうだし、例の封印されてた鬼神に脅されても民を見捨てることは一考もしなかった。
彼女は博愛主義者、という訳でもないと思うけど・・・それでも、被害を無視することを容認できるわけでもないんだろう。
「・・・ま、まあ、もちろん目の前に助けを必要としてる人がいるなら別だけどね。そこはまあ、臨機応変に行こう。少なくとも、ヒルダがやりたいことを邪魔することは絶対にしないし、求めてくれれば全力で力を貸す。」
取り繕う感じになってしまったけど、これに関しては本心だ。僕は今まで、そうやって生きてきた。助け合いは、知的生命体の基本だ。
そんな感じの思いを伝えようとしてみる。
「ふふっ、わかりました。シルヴァがそう言うなら。」
僕の慌てた様子がおかしかったのか、ヒルダは笑みを零しながら頷いてくれた。
ふう、なんか安心した。
でも、方針は変えない。自分から首を突っ込む気も口を出す気もない。
僕は己の領分、なんてものをわきまえる気は全く無いけど。
自分が自由に動けなくなるような状況は絶対にごめんだから、ね。
「さて、もう少し食べていこうか。何か希望はある?」
「そうですね・・・では次は、甘いものを食べたいです。」
「よしきた。」
そんな感じで、僕達はそのまま満足するまで食べ歩きを続けていった。
・・・少しばかり楽しみすぎて、仲介所についたのが受付終了直前だったのはご愛嬌、ってことで。
はい。ごめんなさい。
「なんか全体的に値段が高い気がするなぁ。」
僕は並んだ屋台を見てぼやく。昨日の時点では気づかなかったけど、シャクシャラの物価を考えると肉料理の値段が割高だ。ついでに乳製品の値段も。
・・・まあ、理由は分かりきっているけど。
僕は串焼き肉を売っている女性に声をかける。
「こんにちはー、串焼き肉を二本お願いします。」
「はい、まいど!」
「どうです、最近の商売は?」
「そうさねぇ・・・やっぱり色んな材料の仕入れ値が上がっちまって厳しい、ってのが本音だよ。」
手際よく串焼き肉を用意しながら答えてくれる。
それにしても、やはり少し高いのは確かなようだ。その上、肉や乳製品以外の食材は普通に供給されているようで、それもまた逆風になっているんだろう。
「例の被害はそんなに大きいんですか?」
「そりゃあもう。駐留軍の人達が昼夜を問わず哨戒してくれてるんだけど・・・それでも、被害は増える一方、下手人の尻尾すら掴めて無いらしくてねえ。」
ふむ、思ってた以上に深刻な状態みたいだ。被害そのものもそうだけど、精霊種がわざわざ生物を集めているところがきな臭すぎる。
絶対ろくな事にならない。
「うーん、大変なんですね・・・少しでも早く解決するといいですね。」
「まったくだよ。はい、串焼き肉二本お待ち!」
「あ、どうも。じゃあまた来ますね」
簡単に挨拶してその場を去る。
そのまま串焼き肉を頬張りながら街を散策する。
「ほれにひても・・・へんほうなほほになりほうはね。」
「シルヴァ・・・行儀が悪いですよ。ちゃんと飲み込んでから喋ってください。」
おっと失礼。
僕は口の中の肉を飲み込んでから改めて口を開く。
「っんん・・・。ごめんごめん。いやー、それにしても、面倒な事になりそうだね。」
「精霊種、ですか・・・。実際に会ったことはありませんが、そこまで危険な存在なのですか?」
「危険といえば危険だね。『誓約』によって他種族に直接危害を与えることは出来ないけど、だからこそその縛りを抜けられるような方法を常に探してるような種族だし。」
「つまり、今起きている事件もそのような目的のもとに行われている、と?」
そのとおり。だけど真に厄介なのはそこじゃない。
「精霊種がそういう行動すること自体はよくあることなんだけど・・・。今回の問題は、被害があまりに大きいことと、これだけやっておいて全く捕まえられてないことだね。」
精霊種が街にちょっかい出したり、召喚の禁術を使おうとすることはよくある。それは当然予期しうる事なので、『誓約』による縛りで制限されている。
標的を設定しない召喚術とかなら縛りの外だけど・・・まあ、それはつまり精霊種も標的になる訳だから流石の彼らもしない。
「精霊種の一番の強さはその上位種にも迫る魔力適性でね。それ以外は肉体性能も含めて大して高くない。だから彼らの隠密行動は隠蔽魔法の使用を前提してるものなんだけど・・・」
「隠蔽魔法、ですか。・・・私の記憶では、かなりの欠陥魔法だったと思いますが。」
「その通り。」
隠密行動に適しているのは呪力だ。魔法は事象改変を行うので、発生した音や匂い、光などを改変するのが隠蔽魔法、なんだけど。
「まず隠蔽そのものの質が低い。起こった事象を無理やり書き換えるわけだからね。そしてその上、魔力を大量に消費するから上位元素を視認できる相手の場合はむしろ目立つ。その上、痕跡も残るから、まあ使えたもんじゃないね。」
これが呪力だったら、周囲から自分を認識させなくすることで隠密行動ができる。使用する呪力の量も少ないし、実力の劣る相手の探知魔法もスルーできる。
でも精霊種は魔力以外に適性を持たない。
「だから、精霊種の悪巧みは基本すぐに露見するものなんだけど・・・」
「今回は、長引いているようだと?」
「少なくとも、市場の価格に影響が出るくらいにはね。」
こんな事は滅多にない。異常と言っていい。
いっそ、精霊種の仕業に見せかけた他の誰かによる犯行と言われた方がしっくり来るくらいだ。
「このままだと、まず間違いなく大きめの問題が発生する。できればその事態が発生する前にシャクシャラを出たいけど・・・」
「協力はしないのですか?」
難しいところだけど、一応基準は決めてある。
「・・・そりゃあ、ヒルダがいれば大抵の問題には対処できるだろうけど。その場合、ヒルダに責任を背負わせる事になるからね。」
「責任、ですか。」
「旅をする上では、重たい荷物は持たないのが鉄則だ。それが簡単に捨てられないものなら尚のことね。」
「・・・そう、ですね。」
微妙な表情のヒルダ。まあ彼女は好戦的だけど、それ以上に思いやりが深い。
僕に絡んできた獣人に怒ったのもそうだし、例の封印されてた鬼神に脅されても民を見捨てることは一考もしなかった。
彼女は博愛主義者、という訳でもないと思うけど・・・それでも、被害を無視することを容認できるわけでもないんだろう。
「・・・ま、まあ、もちろん目の前に助けを必要としてる人がいるなら別だけどね。そこはまあ、臨機応変に行こう。少なくとも、ヒルダがやりたいことを邪魔することは絶対にしないし、求めてくれれば全力で力を貸す。」
取り繕う感じになってしまったけど、これに関しては本心だ。僕は今まで、そうやって生きてきた。助け合いは、知的生命体の基本だ。
そんな感じの思いを伝えようとしてみる。
「ふふっ、わかりました。シルヴァがそう言うなら。」
僕の慌てた様子がおかしかったのか、ヒルダは笑みを零しながら頷いてくれた。
ふう、なんか安心した。
でも、方針は変えない。自分から首を突っ込む気も口を出す気もない。
僕は己の領分、なんてものをわきまえる気は全く無いけど。
自分が自由に動けなくなるような状況は絶対にごめんだから、ね。
「さて、もう少し食べていこうか。何か希望はある?」
「そうですね・・・では次は、甘いものを食べたいです。」
「よしきた。」
そんな感じで、僕達はそのまま満足するまで食べ歩きを続けていった。
・・・少しばかり楽しみすぎて、仲介所についたのが受付終了直前だったのはご愛嬌、ってことで。
はい。ごめんなさい。
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