弱小種族による、危険な世界の歩き方。

ハイイロカラス

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第二章

趣味を大切にすることが楽しく生きる秘訣

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権能持ちの精霊種による先の一件から一夜明けて。僕たちは3人揃って部屋に居た。

希少素材の探索は、とりあえず見送りだ。
流石に、街の外に出てのんびりお金稼ぎという状況でもない。

「~♪」

ということで。僕は今、部屋で調薬の真っ最中だ。
もともと趣味なので、自然と鼻歌も混じる。

ちなみに、すり鉢だけでは限界があるので、いくつかの器具を借りてきた。
というのも、一部の魔法使いや錬金術師のために、公的機関が器材を貸し出すことは割とよくあるのだ。正式に登録しないとかなり高いから使う予定はなかったんだけど・・・
そうも言っていられないからね。

まあ、直接的に薬を作る器材は借りられなかったけど、そこは知識と経験だ。
少なくとも、遠心分離と蒸留が出来るだけでもかなり違う。

「~~♪」
「ずいぶん楽しそうですね、シルヴァ。」
「ん?ああ、うん。ごめんごめん、夢中になってたよ。」

いかんいかん、ヒルダとミレイユを完全に放っておいてしまった。

「ふふっ、気にしないで下さい。私からしたらとても難しそうな事をしているのに、心から楽しそうで・・・なんだか、見とれてしまいました。」
「お、おぉ・・・あ、ありがとう?」

ちょ、突然そういうのやめて!どう反応していいかわかんないから!
いやすごい嬉しいんだけども!

「ところで、今作っているのはなんなのですか?透明な、液体のように見えますが・・・」
「対精霊種用の薬だよ。まだ試作段階だけどね。」

危険性が(あまり)ないことは過去に作った時に確認したけど、いかんせんデータが足りない。
安全なだけで効果のない薬では意味が無い。

「あ、一応言っておくけど・・・僕の薬を間違えて飲んだりしないよう気をつけてね?今はそんなに危ないものは無いけど・・・」
「もちろん、心得ていますよ。・・・例の、ふーるぐーるとやらを飲んでしまったりしてはとても危険ですものね。」
「そういうこと。基本的に数とかも管理してるからその辺に置いておいたりはしないけどね。」

その辺は、危険物を扱うものとして当然の心構えだ。

「もし何か必要な物があったら言ってね?怪我・・・は、うん、ヒルダもミレイユもしないとは思うけど。」

ヒルダは体が頑丈っていうレベルじゃないし、ミレイユはそもそも怪我という概念が無い。

「体調が悪い時とかなら、僕でもある程度は対処できるはずだし。あ、ミレイユもだよ?精神干渉を目的とした薬もけっこうあるし。」

・・・いや、なんかこう言うと怪しい感じするなぁ。他に言いようもないんだけど。

「う、うん・・・わ、わたしのことは、気に、しないで・・・」
「あはは、まあ何かおかしいと思ったらこっちが勝手にどうにかするよ。」

ミレイユが自己主張が苦手なことくらい既に分かっている。

それにしても・・・なんか、いつにも増して元気がない。
僕はヒルダに近付いて小声でたずねる。

「ミレイユ、どうしたのかわかる?なんか、だいぶ元気が無いみたいだけど・・・」
「それがですね・・・シルヴァから貰ったあの帽子を無くしてしまったことを気にしているようで・・・」
「ああ、なるほど・・・大したものじゃないから気にしなくても良いのに。」

素材も安物だし、作ったのは素人だし。
かかったお金も手間も微々たるものだ。

「・・・そういうことでは無いと思いますよ?」
「え、そうなの?」
「そもそも、ミレイユは罪悪感を感じやすいタイプのようです。それに・・・あの帽子は、ミレイユにとっては『大したもの』だったのだと思います。」

ふむ・・・。確かに、ミレイユにあの帽子をあげた時の喜びようを考えると、そうなのかもしれない。

「そっか・・・今度、少し探してみるよ。もしかしたら、落し物としてどこかに届いているかもしれないし。」

まあ治安がいいとはいえ、シャクシャラがそこまで優しい世界かはわからないけど。
でも、同じものをもう一度作って渡せばいい、ってことでもないだろう。

「さて・・・僕はこのまましばらく薬を作っているつもりだけど。2人はどうする?あまり外に出ることはおすすめできないけど、少しなら大丈夫だと思うし。」

ヒルダの魔法ありきになるとは思うけど。
僕の問いに、ヒルダは首を振る。

「いえ、せっかくなのでミレイユと魔法の練習をしようかと。いい杖もある事ですし。」
「あ、なるほど。どうミレイユ?その杖・・・杖?いや剣?」

一応名前は宝剣らしいけど、完全に杖として使う予定だしなぁ。

「す、少し大きくて持ちにくいけど・・・だ、だいじょうぶ。・・・えいっ」

そう言ってデュランダル・レプリカを構えるミレイユ。思ったより様になっている。

「おお、いいね!似合ってる・・・って言うのが正しいのかわかんないけど、とにかくかっこいいよ。」
「え、えへへ・・・あり、がとう。」

お、ちょっと元気になったかな?

「ではミレイユ。今日はゆっくり練習して行きましょう。」
「う、うん。よ、よろしく、お願いします」

二人はそのまま、魔法の練習を始める。昨日と同じように、光を出す魔法をやるみたいだ。

僕が協力できることはないので、そちらはヒルダに任せて薬の作成に戻る。

さて、先程から作っていた液体薬剤については今できる工程は終わった。

次は・・・そうだな、効果の保証されている物も作っておこうかな。

作るのは、第二式簡易拡張薬『追跡鋭化ナイトチェイサー』だ。

かなり初期の番号だけど、効果は悪くない。
当然だけど、ナンバーズだって完成後にも改良はする。
例えば擬似悪魔化デミ・デモナイザーは今でこそ粉末だけど元々は苦くてドロドロした液体だったし、効果も今ほど高くなかった。

この追跡鋭化も、元は戦意高揚バトルドラムとかと似たようなただ植物素材を混ぜただけのものだったけど、ある程度改良して服用しやすくした。

肝心の効果は、嗅覚及び聴覚の強化。正確に言えば、情報処理、感度の向上だ。
感度の向上に関しては、そのまま単純に機能の強化。ただ、僕は素の機能については通常時でも限界近くまで鍛えているのでそこまで必要じゃない。

この薬の最大の効果は情報処理精度の向上だ。拾った音や匂いが、どこから発されているのか。それらをより感知することができる。

例えば、ミレイユの声を聞いた時。あの時も音自体は拾えたけど、それがどこから来ているのかまでは分からなかった。
でも、追跡鋭化が効果を発揮していれば最低限音の方向は掴めたはずだ。

「~~~♪」

嗅覚に関してもそうだ。嗅ぐことと、嗅ぎ分けることは違う。
通常時ではひとつにしか感じない匂いを細分化出来れば、追跡の面でも非常に有利になる。

・・・まあ、それを今回使うかは、わかんないけども。

「よし、あとはしばらく置いておいて・・・」

この間に次の薬を作ろう。
あー、楽しくなってきた。こういう忙しさは好きだ。

ちらりとヒルダとミレイユを見る。
まだ魔法が発動してはいないみたいだけど、二人とも楽しそうにやっている。

街は未だ騒がしく、誰も彼もが忙しそうにしている。僕としても早いところ行動を開始したいけど、霊視水晶は一般には売ってない。というか、かなり厳しく管理されている。

かといって、直接仲介所に行ってミレイユを見てもらうわけにも行かない。

どうにかして秘密裏に使わせて貰う必要がある訳なんだけど・・・
ま、やっぱりレオニールさんに頼るのが1番かな。
とりあえず今日のところは薬を作ることに集中かな。

・・・色々考えても、結局この結論に至るなぁ。
まあ、僕にとっては事前の準備が全てだ。言うなれば、直接戦闘になった時には既に僕の戦いは終わっている。

出来ることは全てやっておかないと、僕なんて簡単に死ぬ。
いくらヒルダという心強い仲間がいるからって、それを忘れる訳にはいかないからね。
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