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プロローグ:異形の王

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彼の眼下には、異形が群れを成していた。

人に近い外見の者から、獣のような者達もいる。形容しがたい外見の怪物達もいた。

その全てが、彼に頭を垂れる。

異形の視線を一身に受ける彼は、まだ若い少年の姿をしている。
そこに、王の風格は無い。
あるのはただ、強き意志のみ。

己に従う者すら顧みず、護るものなど一顧だにせず、目指す未来に向けて全てを賭す。
王としてあまりに不適格なその姿勢に、しかし異形達は忠誠を尽くす。

 否、正確に言えば、異形が彼に従うのは忠誠心からではない。
ただ、彼の目指す世界に。
ただ、彼の抱く意志に。

確かに、いつか願った未来を見たからだ。
故に、そこに集った異形は彼と共に歩むことを決めたのだ。



彼は、一歩を踏み出し全ての異形にその姿を見せる。

そして、一切気負った様子を見せずに口を開いた。

「よう、親愛なる弱者ども。気分はどうだ?」

開いたその口から、鋭い牙が覗く。

「状況は絶望的を通り越して手遅れですらある。力も、策も、何もかもが、ここには足りていない。」

彼の言葉を、誰もが無言で聞いている。

「だが!俺たちには可能性がある。否、俺が与えてやる。理不尽を食い破る牙を、不条理に抗う刃を。少しマシなだけの絶望を希望と呼ぶのはもうやめだ。奪われたもの、失ったものを思い出せ。求めるのなら、全てを求めろ。
大義も正義も必要ない。その醜い欲望を晒して、不遜に、不敵に神を嗤え。いつだって、己の支配者は己だけだ。」

彼は異形に向かって堂々と言い放つ。

「さあ、今こそ覚悟を示せ。
俺たちに必要なものは魔力でも兵器でもない。焔よりも苛烈で、氷よりも冷徹な・・・」

そして、彼は獰猛に笑う。

「ただ純粋な、叛逆の意志だ。」

彼の言葉に、異形達は地を震わせるような叫びで答える。
彼らの瞳には、一片の恐れも浮かんでいない。

「はっ、上等だ。今この瞬間から、お前らは真の意味で俺の眷属だ。」

愉快そうにそう言うと、彼は己の牙を見せつけるように宣誓する。

「我が名はレイジアス・ブロデゴート。闇より産まれし原初の吸血鬼・・・【叛逆の始祖】なり!俺に傅く全ての者共よ、貴様らには不死の呪いが刻まれた。苦痛は終わらず、安寧は無い。それでもなお、屍を積み上げる覚悟があるのなら共に来い。」

更に大きくなる異形達の咆哮。

「くくっ、度し難いほどに愚かだな。だが、それでこそ俺の眷属だ。・・・さて、じゃあ始めるとするか。俺たちの未来を取り戻す為の、最後の戦争をな。さあ、驕り高ぶる強者共よ・・・決して、死を忘れるなよ。」




これは、反骨精神に溢れた一人の少年が、不死身の肉体と狂気に等しい叛逆の意志で『最強』を降す物語だ。

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