bias わたしが、カレを殺すまで。

帆足 じれ

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第15章

126 喪失 ② ☆ ⚠【挿絵あり】

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 あーあ、やっぱり、耐えられなかったかぁ。ま、大好きな人に目の前で自殺されたら、しょうがないけどね……。

 僕が嘆息を漏らした時、携帯端末に本部の人間から着信が入る。

「──はい、ベリト。バエル代表のことね。うん、知ってるよ。すぐ近くで見てたから」

 僕はレストハウスに背を向け、歩き出す。
 先方は慌てふためいている。多分、あの場にいたんだろうな。ずっと大人しくしていた“虎”が猛り狂うのを目の当たりにすれば、そりゃビビるに違いない。
 気の毒なので、アトラクションの間を縫うようにして進みながら指示を出す。

「早めに戻るよ。手分けして他の責任者にも連絡しといて。あと、副代表のこと、独りにしないでね。ショックで死んじゃうかも知れないから、優しくしてあげて。はい、はーい……」

 通話を終えた僕は、錆びが浮かんだ遊具の森の中で立ち止まり、しばしうつむく。

「あー……ベルフェゴールさん、絶世のハイスペックイケメンだったのに、涙と鼻血垂れ流しながらあんな盛大にぶっ壊れちゃって……」

 考えれば考えるほど、面白過ぎる……っ。

「っくっくっくっ……」

 やがて、僕の口から笑声が漏れた。

「いい気味だわぁぁ! これで二度と僕に偉そうな口叩けないねーっ!! ざまぁあああぁっ! あっはっはっはっはっは!!」



 僕は周りに人がいないのをいいことに、腹の中身をぶちまける。

「てか、オッサン一人死んだくらいで何やってんだよ。バエル代表には特別な才能とかなかったんだから、いなくなったって大した問題にならねえんだよ! むしろ、思い付きでムチャブリかましてくるサイコパス上司から解放されて良かったじゃん!」

 バエル代表は、彼を都合の良い道具としか思ってなかった。ベルフェゴールは、ご主人様のために身を削るのを生き甲斐にしていた。
 “ご主人様”の優しい言葉で“道具”が喜び、実力以上の成果を出すのは、一見、Win-Winの関係に見える。当人達が幸せなら、それで良い気もする。

 だけどな……それにしたって、やり過ぎなんだよ。

 資金調達のために身体売らせたり、“XRクロスリアリティ使って、観客が実在の人物を好みの方法で殺せるようにしろ、それも本人と見紛うばかりの超リアルなクォリティで”とか言ったりして、個人になに頼んでんだよ、ウチの代表は。しかもそれに応えようと、クソ忙しい中、独力で4割もカタチにしてたとか、頭おかし過ぎるわ! 

「自分の方がよっぽど能力高いのに、あんなオッサンに利用されて無理してさぁ……そんで壊れてたら世話ねえわ! あー、もう本当に……馬っ鹿じゃねえの? 馬っ鹿じゃねえのぉぉっ? ぎゃーはははは!!!」

 数分後、僕は嗤うのをやめた。

「……はあ、疲れた……なんか、もういいやぁ……」

 あの人のこと、“いつか絶対泣かせてやる”って思ってた。ムカつくヤツの泣き顔見られて最高のはずなのに、実際に見てみたら、カワイソーなだけだったわ……。

 建物を振り返ると、凌遅とバーデン・バーデンの処女は、バエル代表の遺体を見ながら何か話しているようだった。
 本当は最後まで見届けたいけど、これ以上、野暮はするまい。

「凌遅さん、バーデン・バーデンの処女さん、最高のショーを見せてくれて、ありがとうございました」
 
 そう言って、僕はその場を離れる。

 これからしなければならないことが山積みなんだろうな……幹部なんて形だけなのに、あちこちに頭下げたり、柄じゃないことさせられそうで、ほんとダルい。
 でも、ベルフェゴールは苦手な領域の仕事も含めて、業務のほとんどを一人で捌いていたんだ。彼には少し休養が必要みたいだから、一肌脱いでやるよ。

 で、元気になってきたら、恩に着せる形でまたいじめてやろう。いつになるかわからないけど、それまでは頑張るしかないよねー。
 あーあ、いい人過ぎるでしょ、僕……w
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