罪と罰

桜羽

文字の大きさ
2 / 2

>>2

しおりを挟む
ルビィ。それは、彼女が買っていた犬の名前らしかった。微笑みながらスマートフォンを取り出し、画面を見せる。
…似ているだろうか。そんな気はしないし、当たり前だが、俺は彼女の犬のように耳にリボンなど付けていない。
「私、B組なんだけど。君は?」
「…俺も、だけど」
彼女は知らないのだ。自分が噂になっている事を。
驚いて、朝はいなかったよね?と問い詰める。そりゃあそうだ。いたら会っていただろう。
「もしかして、隣の席空いてたんだけど君だったりするかな?」
どれくらい席の空きがあるかは知らないが、まあそう考えるのが妥当だ。
それに、今日の欠席はいなかったはずだし。俺は、小さく頷いた。
彼女は嬉しそうに笑った。
「えーっと、名前は?」
「立花…要」
かなめ、彼女は繰り返し名前を読んだ。
いい名前だね、と。
彼女は俺を要君、と呼んだが、俺は彼女の名前を知らなかった。
あんた、とかお前、とか適当に呼んでいた気がする。最後まで。……あの日まで。




チャイムがなってようやく高瀬の事を思い出したが、彼もきっと教室に戻っているだろう、と思い俺は自分のクラスに戻った。後ろにはちょこちょこと彼女が追いかけてくる。
教室に入った途端、ざわめいた。
そうなっても仕方ないだろう。
特になんの特徴もない俺が空前絶後の美少女を連れている。
被害妄想ではなく、身の程知らずとかどうとか罵詈雑言が聞こえてくる。
俺はその声に気付かない振りをした。


彼女は一条 小姫と言った。
小姫と書いてさき、と読むらしい。
当て字だろうか。
いつの間にか彼女の周りにはファンクラブが出来はじめ、その活動内容として彼女に近づく男の排除、というものがあった。一条 小姫は誰のものになってもいけない。よくわからないが熱狂的なファンはそうやって彼女を拝んだ。その排除すべき対象は、即ち俺だ。原因は確実に彼女にある。彼女は明らかに俺と他の男子を区別した。何が気に入ったのか、それは最初に言われたように彼女の飼っていたペットに似ていたからだろうが、俺の事を要君、と名前に君付けで呼ぶのに他のクラスメイトの男子には名字に君付けで呼ぶのだ。それ以外にも彼女は自分から話しかける男子は自分以外にいなかった。
そりゃあ俺だって可愛い女の子と話せて嬉しいことは嬉しかった。
そうー…最初までは。
彼女に友達であろうと好かれているという事が原因で、俺はこれでもかという程に僻まれた。
ファンクラブではない男子にも露骨に敵意を向けられる。
それこそ体育の授業中にわざとボールをぶつけられたり小さな暴力をされる。
女子は、クラスのリーダー格の男子が彼氏だという子がいるらしくあまり話しかけることは出来ないし、男子は全く話しかけることが出来ない状態になっている。無視されるわけではないかもしれないが、なにより威圧感があるのだ。
彼女はそれに気づいているのかいないのか俺に話しかけてくる。
迷惑だった。
やめてほしかった。
彼女のせいであったかもしれない青春が壊れたのだ。
言ったって無駄だ。
泣くかもしれない。
そしたら誰のせいになる?
…今の状態が悪化することは明白だった。
そんな時だった。
嶺に呼び出されたのは。
大事な話があるの、と言われたので少し緊張した面持ちで屋上へ来た。
嶺は先に来ていた。
当たりを見回して誰もいないことを確認する。
呼び出されたから告白か、というのは安直な考えだが、彼女の面持ちからそんな風には思えない。相談事だろうか。
「ねえ、要。最近不満なこと、ある?」
不満なこと…
ただ一つだ。
だが、そんなこと嶺に言っても変わらない。俺は別にないよ、と言った。
「私はね、あるよ。しかもそれの原因ってね、要の不満の原因となってる人と一緒だと思うの。」
見抜かれていた。幼馴染みだから、嶺に隠し事をしていても気づかれることは知っていたが。


「それでね、提案があるの。」

嶺の黒髪が風で揺れる。
俺は息を呑んだ。





「一条 小姫を殺さない?」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

どう見ても貴方はもう一人の幼馴染が好きなので別れてください

ルイス
恋愛
レレイとアルカは伯爵令嬢であり幼馴染だった。同じく伯爵令息のクローヴィスも幼馴染だ。 やがてレレイとクローヴィスが婚約し幸せを手に入れるはずだったが…… クローヴィスは理想の婚約者に憧れを抱いており、何かともう一人の幼馴染のアルカと、婚約者になったはずのレレイを比べるのだった。 さらにはアルカの方を優先していくなど、明らかにおかしな事態になっていく。 どう見てもクローヴィスはアルカの方が好きになっている……そう感じたレレイは、彼との婚約解消を申し出た。 婚約解消は無事に果たされ悲しみを持ちながらもレレイは前へ進んでいくことを決心した。 その後、国一番の美男子で性格、剣術も最高とされる公爵令息に求婚されることになり……彼女は別の幸せの一歩を刻んでいく。 しかし、クローヴィスが急にレレイを溺愛してくるのだった。アルカとの仲も上手く行かなかったようで、真実の愛とか言っているけれど……怪しさ満点だ。ひたすらに女々しいクローヴィス……レレイは冷たい視線を送るのだった。 「あなたとはもう終わったんですよ? いつまでも、キスが出来ると思っていませんか?」

処理中です...