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第10話 生存ルートとバッドエンド

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ーー時期はまだ春。しかし、今年の春は例年より暑い。春といっても夏に近いというのもあるが、それだけじゃない。地球温暖化だから?普通の平民風情はそう思うだろう。だが、僕こと玻座間 陽(普通の平民風情ではないと本人は思っている)は断言する。間違いなく目の前の幼馴染の所為だと。なぜ?簡単さ、存在するだけで暑苦しいことこの上ないから。(なら、お前は存在するだけで、人類にとって害そのものだな等と言ってはいけない)」


 「さあ、陽君。選んで。」


 「(選べだぁ?選んで下さい、お願いします、だろーが。全く親の顔が見てみたいぜ。まぁ、何度も見たことあるけど。ていうか、今はそれどころじゃない。このクソみたいなギャルゲーをどうにかしないとな。・・・正直、どっちを選んでも碌なことになる気がしないが。まぁ、最悪デッドエンドさえ回避出来れば良いか。)」


 お前の親の顔の方が見たいよ。というか、ギャルゲーって・・・。コイツなんだかんだ楽しんでないか?楽しんでたら、楽しんでいたで気持ち悪いことこの上ないが。あと、バッドエンドのこと絶対忘れてるだろ。

 「(取り敢えず、成金金髪ドリルはないな。唯がヤンデレやストーカーだった場合、真っ先に刺される。かといって、唯を選べば直ぐに付き合えと言われるだろう。そうして、いつか浮気しただの何だのいって、コロッとヤられる可能性がある。あれ?これ詰んでね?)」


 はい、詰んでます。どうやら陽は遅まきながら気付いたようだ。普通にこの二択のどちらかを選べば、死あるのみ。だが、これはゲームの世界ではない。そのため、陽がとった手段といえば・・・


 「(第三の選択しかない!が、両方選ばないは論外だな。唯に直ぐコロッとヤられる。だから、ここは男らしくハーレムエンドだ!!)」


 ーーハーレムエンド。男なら誰もが一度は目指す極地。しかし、現代のニホンでそれを実行するのは滅茶苦茶難しい。なぜか?法律。財力。人間関係。などなど挙げたらキリがない程、問題が山住みだから。

しかし、ここにいるのは心が腐っており、悪臭放ちまくる上、全く自重する気配がないナルシスト屑、この男である。実行出来ないと露ほども思っていない。


 「唯ちゃん、僕決めたよ。高城さんも唯ちゃんも、どちらとも選ぶよ!!(フッ、決まったな)」


 何が決まったな、だよ。そもそも高城はお前に惚れてない。オマケに唯を見てみろよ。さっきまでビクビクしながら待ってたのに、いつの間にか頰がピクピク引き攣っているよ。しかし、感傷に浸っているナルシスト屑は気付かない。


 「陽君、何いってるの?ニホンは一人としか結婚しちゃメッ、なんだよ?」


 唯は物分かりが異常に悪い、幼い子供(陽ならワルガキ)に言い聞かせるようにたしなめた。しかし、このワルガキは当然・・・


 「(誰が頭悪いだぁぁぁぁ!?ば、馬鹿にしやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!)」


 事実なのだから仕方がない。が、コイツがそんなことを考える筈もなく、相変わらず短絡的である。そんなに怒っているいて、よく疲れないなぁと思う。だが、コイツは馬鹿は馬鹿でもただの馬鹿ではない。悪知恵だけは無駄に働く馬鹿だ。だからなのか、陽はここを切り抜ける第三の選択ではない、妙案を思いついた。


 「・・・・・・・・・ごめん、悪かったよ唯ちゃん。あと、さっきの質問に答えるよ。唯ちゃん、僕は君の方が高城さんより好きだよ。」


 「え、よ、陽君、ホント!?」


 陽は唯を選んだ。さっきまでとはまるで逆である。しかし、当然これだけではない。


 「ああ、ホントだよ。だけど、僕は君とは付き合えない。」


 「え!?な、なんで?陽君は私のことが一番好きなんでしょ?なのに、なんで・・・。」


 陽は高城より唯が好きとはいったが、一番とは一言も言ってない。が、それは一先ず置いておいて。陽がいきなり方向転換して唯を選んだのには理由がある。まぁ、唯は到底気付くと思えないが。


 「だって、僕はワガママなんだ。唯ちゃんと付き合ったら、きっと性格が悪いことを要求して、困らせるから・・・。僕は唯ちゃんが僕の所為で困るのは嫌なんだよ!!」


 「そんなこと気にしないよっ!!私は何があっても、陽君の味方だよ?寧ろ、陽君に困らせられるのなら本望だよ!!」


 「ホント?大金を要求するかもよ?浮気をするかもよ?半径10m以内に近付くなとかいうかもよ?それでもかい?」


 「もちろんだよっ!!私の陽君に対する愛に誓って!!」


 「そうか、ありがとう。ありがとう、唯ちゃん。・・・愛している。」


 「あ、愛してる?ごめん、陽君。もっかいいってもらっていい?」


 「愛してる、心の底から。この世界の誰よりも。」


 「/////////」


 陽のラブコールを受け取った唯は、顔をトマトよりも真っ赤に染めて、恥ずかしさのあまり俯いた。そして、陽はというと・・・


 「( け・い・か・く通り。馬鹿めッ、引っかかったな!!これで貴様は一生僕のATMだ!!おまけに、常に僕から離れさせとけば、僕がコロッとヤられる心配もない。なんだこれ、最高かよ。・・・ヒモ生活が僕を待ってるぜ。)」


 さ い て い だ よ 。そう。コイツが急に方向転換したのは、唯をていのいい下僕にするためだったのだ。


 「じゃあ、陽君。私と付き合って下さい。」


 「喜んで。(これからバンバン財布代わりにしてやるぜ!さぁ~て、何日で音を上げるかな?アヒャ、アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!)」


 こうして、ストーカーでヤンデレな少女と、将来の夢がヒモという最低最悪なナルシスト屑野郎のカップルが誕生した。

  


 



 


  
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