職場が宇宙の国際都市で、私があいつに恋をして。

甘えても。

「僕も、幼い頃に両親を交通事故で亡くしてから、

アメリカに住む祖父に育てられて、

僕が大学に卒業前に彼の心臓病が悪化して。

結局行く当てもなかったし、

うまい話だなってだけでここに来た。

正直、将来について深く考えてなくて大学院に進学するにせよ、お金が必要だし、一人だと借りにくいし」

到着したばかりの時のあどけない表情はもう消え失せていた。

お互い深刻度は違うが、それぞれ抱えたものがある。

比べることでもないけれど、亜美にとって仲間を見つけられた瞬間だった。


「水上建築扱ったことある？」

圭が呟く。声色が急に真面目になった。
ゆっくりと日が沈んでゆく。

キラキラと光を反射する水面に、圭は未来を見通した。

亜美もつられて仕事モードに入る。

「水上建築、ひとつだけサポートで入ったことがある。

湖畔と水上にまたがる美術館だったんだけど、もしかしてゴールドパールに？」

圭が瞳を輝かせる。

「そのまさか！いいインスピレーションが湧いてる。

この煌めきを閉じ込めたい、壁全面に。

素材はチタン、高価すぎる？」


「うーん、ステンレスじゃ無理だよね。

書くだけ書きおこそうよ。

すこし一人で考えたいから夜7時に図書館集合。

夕飯は配達を頼む。

過去のポートフォリオ持ち寄ろう。解散！」

前を向く。今やるべきことは、デザインすること。

この街がみんなに愛されますように。

亜美はこの街を一番に愛すると決めた。