知りたかった人

有野優樹(ありのひろき)

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知りたかった人

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僕は中学2年生。名前は神庭 晋也(かんば しんや)
いじめられている変わったいじめではなく普通の。
殴られ水をかけられ靴隠し
濡れ衣を着させられ謝罪要求
やられている時には顔をうつむかせ時間を過ごしていた
廊下ですれ違う時には無意味に
名前を叫ばれ、変なあだ名をつけられて。

だが楽しいこともあった
僕はアニメ好きでいわゆる「オタク」
仲間と秋葉原によく行きグッズを買い集めたり
友達の家で泊まり会をして
テレビゲームをやって騒いだりして
いたので変な考えをせずに済んだ

いじめ集団「奴ら」
「奴ら」はいつも数人で行動している
移動教室の時も遊びの時もいじめの時も。
よく
「いじめられる方にも原因がある!」
とか聞くけどもしそれでいじめられている人が
取り返しのつかない選択を取ってしまったら
「原因がある!」と発言した人や
問題視しなかった学校側、見て見ぬ振りをしていた友達
「共犯」になってしまうのではないかと考えている
テレビでは事後報告のニュースを
やっているが「最中」を取り上げるべき
後に問題にしても戻ってこない
わかったふりをしている
責任逃れをする大人は嫌いだ
大人なんてRPGでいうレベルが高い割に
スキルがなくレベル(歳)が高いだけ
だけど、学年主任の澤田先生だけは違う

オタク仲間でよく話すのは
小平(こだいら)と大木(おおき)
そしてオタク仲間と「奴ら」どちらにも
属していない小田 和(おだ かず)という友達が居る

和もアニメ好きではあるが「奴ら」とも仲はいい
成績は一桁であっけらかんとして
持ち前の愛嬌で先生からも好かれている
人の懐に入り込みなんでも話せてしまう

体育の授業、僕は「奴ら」と受けたくないので
わざと体育着を忘れる。校庭を走っていると
後ろから砂をかけられたり笑われたりするから。

和は授業が始まる前毎回
「俺も休む」と言う
体育着もあるし運動もできるのに

見学中はいつもこんな話をする
「あの子足、えっるぉいよな」

「やばい」

「お前も思い出しながらすんだろ?」

「ん?なに‥あ、え(笑)しないよ
和はやってんだろ?」

「当たり前じゃん」

「きんもっ」

「神庭どう言うのが好み?」

「僕は‥このクラスには居ないかなぁ」

「えっ!?狙ってんのいるの!?」

「狙うって言うなよ」

「誰々!?」

「今度いう」

和には言ってもいいかな

ある日の学校

いつも通り靴はなかった
慣れというのは怖いもので
「嫌だ」という気持ちも回数を重ねると
「普通」になってしまう
いつも通り裸足のまま教室に入ろうと
下駄箱を通り過ぎた時澤田先生に呼び止められた

「靴、どうしたの?」

「なかったのでそのまま教室に行こうかと」

「先生の靴を貸してあげる。おいで」

コーヒーの匂いのする先生たちの部屋に入る
行き慣れない空間のためムズムズする
素行の悪い奴らがよく出入りをしているが
僕には無縁な部屋。
つま先に隙間が空くほどの靴
歩くたびにパカパカいうが裸足よりはマシだろう

「ありがとうございます」

オタク仲間は僕が皆んなと違う靴を
履いていても何も言わずにいてくれる
聞かれたところで理由は毎回同じなのだが。
授業では何の問題もなく学校が終わる。
澤田先生に靴を返し、下駄箱に向かった
今度は外履きも無くなっていた
校内ならまだしも外を靴下で歩くのは
いくら靴無しライフが慣れている僕でも
こればっかりはきつい
この時、見送りに来てくれた
澤田先生も一緒だった

「サイズ、合わないかもしれないけど体育の時用の外履きで使っている靴を貸してあげる」

「すみません」

「洗ったりしなくて大丈夫だからね。明日この袋に入れて持ってきてくれれば」

「はい」

いかにも運動ができる人が履くような
シュッとした靴。風を切っているような
模様が描かれ有名なスポーツメーカーの
ロゴが入っているいくら勧められてもこんな靴は買えない

影が伸びてくる時間
一人で見慣れた道を帰っていった
家に着いてから
「あ、今日は欲しい漫画の発売日だ」
という事を思い出し
学校指定のジャージを着て近所の本屋さんに向かった
観音開きの扉を開けるとシャラーンと鈴が鳴る
嵐の前の静けさとはこの事だろうか
バーコードを読み取る「ぴっ」という
音が騒音にきこるくらい店内は無音
目当ての漫画本にたどり着くまで
色んな物に目移りしながら進んだ

「二階はゲーム売り場か。ついでに」

目当ての漫画を手に取る前に階段を登って行く
漫画コーナーに
同じジャージを着ている女の子が立っていた

「同じクラスかな?どんな人なんだろ」

顔を見ようとしたがうまく見えない
あまり覗き込もうとして変に思われたら
嫌なので帰り際に何気なく横目で見る事にした
ゲームを見ている間もさっきの人が
どんな人なんだろうと気になってばかりで
目の前の情報が全然入ってこない
性格的に、気になった事を解決しないと
スッキリしないもので‥。
目的が「顔を見る」に変わった所で
一階に降り本を探すふりをして
その人物の近くに行った
いつの間にか本来の目当てが
ふりに変わっていた
同じ棚に入り離れていてもギリギリ
顔が認識できる範囲に入り
カンニングするかのように横目でチラッと見た。

一瞬にして覚えるような顔

何故気づかなかったのか

身長は160センチの僕より小さく

肩までの短い髪

麦わら帽子と白いワンピースが似合うような清楚感

柔らかい風が吹き、景色の色がなくなり
『彼女』だけに色がついていた

ジャージのズボンには刺繍で名前が入っている
視線を落とし、名前を確認しようとしたが
さすがに下半身凝視は場合により法的な問題になりかねない
明日、学校に行って探すことにしよう
でも手掛かりが‥。

漫画を買い忘れた。


次の日の学校
珍しく靴は居たがそんな事はどうでもいい
苦痛と快楽の繰り返し、時間の束縛をされる施設学校という鳥籠に僕は目的ができた
『彼女』の名前を知る事
知ろうにも、と、いうより
探すには学校に人が多すぎる
同じ学年という情報が得られただけでもだいぶ
絞られるがそれでもまだ300人弱はいる学年。
友達に知っている人がいないかと思い
中学校に入ってから仲良くなった
竹村さんという女の子に聞く事にした
この人には本田くんという好きな子がいると
話をされていて。本田くんは僕の小学校の同級生で
僕が解る範囲の情報提供をしていたのだ。
竹村さんはその代わりに僕にも必要な時がくれば
協力をしてくれるといってくれていたので
ダメ元といってはあれだが聞かないよりかは
良いと思い外見などの特徴
そしてギリギリ見えた刺繍の一文字
『田』
これしか僕が持っている情報はなかった
これだけの手がかりでは難しい所が話にならない
「田」も何文字目なのか。
身長や髪型でも似たような人は沢山いる
情報ゼロよりかは伝えられたが‥と
色々考えていた時
「あ、多分あの子かもしんない」

‥え、今なんて言った?
「同じ部活にそれっぽい子がいるんだよね 目当ての人かまだわからないけど見ないよりかはマシだと思うし」

「どこのクラス!?」

「こっちこっち」

僕のクラスは4組。向かったのは隣のクラス5組。
奴らのクラスだ。
覗くのを若干躊躇ったが名前を知る為ならば。

「あの子?」

竹村さんが指した先には本を読み座る『彼女』
放課後、本屋さんに行って見かけた『彼女』

本が似合う また柔らかい風が吹いた

「‥そう」

「やっぱり!」

見つけた感動よりもまずあれだけの情報で
よく見つけたなという驚き
その時代を生きていたわけではないが
コロンブスは大陸を見つけた時このような感情だったのではなかろうか
これからは竹村探偵事務所に依頼すると誓った
名前は「和田」さんというらしい

目的「名前を知る」というのは達成した
「知り合いになりたい」という目標に変わった

「話しかけてみる?」

「いやいやいやいやっ竹村さんは知り合いだけど僕は繋がりがないし。ほら、同じ部活とかね?あまりにも不自然すぎるでしょいきなり紹介されても」

「でも友達になりたいんでしょ?」

「うん」

よく人の話を聞くほうだと思っていたが
食い気味に返事をしたのは初めてかもしれない

「じゃあ紹介してあげるよ。確かにいきなりだと不自然だから何人かで話してさ
せっかく知り合ったしみんなでメアド交換しよー
みたいな感じでさ!」

「みんなって?」

「神庭君は本田君に声かけてよ、あたしは和田さんに声かけるから!そしたらお互いにいいじゃん?」

「そ、そうだね じゃあ廊下で話しておくから竹村さん話しかけに来てよ。それでそのまま四人で話せば」

「おっけー!」

「じゃあ後で!」

提案に乗ったが呼び止めるほど
本田君と仲が良いわけでもない
いやでも和田さんと知り合いになる為だ
申し訳ない。本田君。協力してくれ。
君には何もメリットがないし
話しかけるのも君と話したいからではなく
和田さんと知り合いになる為なんだ。
友達を利用している罪悪感が否めないが
本来の目的をバラさなくてはいけない訳ではないし
密かに力になってもらおう

ギブ&テイク

与えてもらう為には自分も与える
何もしないくせにただくれくれだけでは
それこそバチが当たりそうだ

あれ?だけど何か忘れている気が。

ある日の学校
今日も靴は居た。どうでもいいと思っておきながら
裸足で歩いていると声をかけられてしまうし
その面倒を省く為にはささっと借りてくる方が
いいなどと考えてしまうあたりやっぱり
どうでもよくないらしい
自分とはめんどくさいものだ

朝の校内は自分の足音がよく響く
廊下から校庭を見ていると朝練をしている運動部
陸上、サッカー、野球にハンドボール
この時期はボールがあったら痛いだろう
それにしてもよくあれだけ動き回れる
ご苦労なこった
それに比べ僕とくれば走りは遅いわ
成績は悪いわ。おじいちゃんのうつ
ゲートボールの球が当たっても骨が
折れるのではないかというくらい鈍っている
同じクラスのオタク仲間が登校しだし
昨日見たアニメの話などをする
他のクラスからもオタク仲間が来て
Twitterのハンドルネームで呼んでくる
嫌な奴では無いがこれだけはやめてほしい
和(かず)も登校してきた
和はいつも携帯を持ってきている
勿論、違反だ。
だけど、携帯のアプリゲームを昼休みに
みんなでやるのが楽しみで僕らも共犯になっていた
この件は結論を言ってしまうと
卒業するまでバレる事はなかった。
オタク仲間の一人小平(こだいら)が
「おはよー昨日の「しんぼく」(アニメの題名)見た?」
と話しかけてきた
「見た見た!最終話やばかったわ、きわどいシーン今まで多かったけどついに全部見えたな」
「なっ!最終回、神庭の為に録画しといたよ」
「いやお前が見たいからだろ?人を口実に使うなよ(笑)」
「ほんとだって!泊まり会の時見せてやるよ」
「一人で家で見てて親にバレたらまずいんだろ(笑)」
「いいじゃん、とりあえず来いよ」

おはよー!

「おは‥この声はっ!?」

「おはよ」

竹村さんだ。

「小平、ごめん。用事できた」

「あ、え?」

アニメの感想なんていつでも出来る
こっちの件はタイミングが大切

「おはよ」

「今日、お昼休みにお願いね」

「わかった!」

学校に通って一年経つがまだまだ知らない人は多い。なんせ300人弱いるのだから。

学校で味わう初めてのドキドキ
これは不快なドキドキではない

約束をしてから昼休みになるまで
休日の診察待ちのように長く感じた
嫌いな授業は寝ているか違う事は気を紛らわせて
時間を過ごしているが今回はどの授業も
目はばっちりさえている。心臓がかゆい
足もういているような感覚。浮いた事はないけど。
休み時間に話しかけれくる友達
しかし、意識は『彼女』集中していて
耳に入ってこない。聞こえているだけ。
電車に乗っている時に周りの人の話が
入ってこないのと同じ。

だんだん近づいてくる昼休み
何を話そうか悩む
初めましての挨拶、連絡先は交換する?
いやしたとしても後はどうする?
連絡するのか?
こんなに考えているの自分だけでは?
さらっと言葉を交わして終わってしまったり。
いや、でも可能ならば少し話したかったり。

給食の時間
何を食べても味がしない
給食の後、この時間の為に学校に来た
授業はついで。

僕は一方的に見たことはあるが
相手は僕の顔を知らない
まず目印は竹村さんだ
「ごちそうさまでした!」
急いで食器を戻し廊下へ向かう

「神庭くん」

「はい!」

この声は望んでいない声
正体は悪の大将軍 担任 伏島 正(ふせじま ただし)

「給食委員だったよね?」

「そうですけど」

「言い忘れてたんだけど昼休みに集まりがあるらしくて、視聴覚室に集合だって。最近、容器を戻しに来るのが遅く、配達の人が困ってるみたいでその話し合いをするら‥」

「それ、二人行かなくちゃいけないんですか?」

説明しておくと各委員会、クラスから男女1名づつ
選ばれている。

「一人でいいみたいだよ、だから話し合って決めてな」

「わかりました」

こんなくだらない事柄に時間をさけるほど暇ではない

「松川さん、昼休みの給食委員の話聞いた?」

同じ給食委員の松川遥(まつかわはるか)

「聞いた聞いた」

用事があるから‥いや、あ。そうだ

「ごめん!次の時には僕が行くからさ今日代わりに行ってくれない?」

「え、何かやることあるの?」

「今日までに出さなくちゃいけない課題があってまだやってなかったんだ」

「課題?何の?」

あ、同じクラスだからみんなに出ていないとおかしい

「あ、えーっと数学なんだけどさ。僕成績悪くて課題出されちゃったんだよ。僕にしか出てないやつだから」

「やんなかったのがわるいんじゃん」

「いや、あの、そうなんだけどとにかくお願い!」

じゃ次の集まりは絶対出てよ?」

「もちろん!長くても何でも一人で出るから!」

「言ったね?」

「うん!約束する!」

「わかった。それが交換条件ということね」

「大丈夫!」

話がわかってくれる人で良かった
何の根拠もなく「常識だから」と
押し付けてくる大人とは違う
昼休み僕はいつもオタク仲間と校内で話している
本田君はサッカー部なのでモタモタしていると
あっ、こんな事を考えるよりも呼び止めておかないと。

ひんやりとした廊下に出ると
本田君が外に行こうとしていたので

「本田君っ!」

「お?」

「あ、えーっと、が、学校慣れた?」

「流石に慣れたわ(笑)一年経つぞ?」

「そうだよね。あー外行くの?」

「うん」

「サッカー?」

「うん」

「サッカーいまいち楽しさがわからないんだけど」

「やってみればいいじゃん」

「足の速い人に取られるから楽しくない」

「それはどんまい」

「どうしたら勝てるようになるんかな」

「練習しかないんじゃね?」

「どんな練習してんの?」

スポーツになんかさらさら興味はない

「うまくなりたいの?」

「いや、まぁ、なんかうんそう!そうなの!!」

「あぁ?あーまー初心者なら壁当てから?」

「壁当て?」

「うん、一人で壁に向かってボール蹴ってかえってきたやつをまた蹴る」

「そのまんまだね(笑)」

「それなら1人でも練習できるし」

「なるほどね。部活での練習は何やってるの?」

「ウォーミングアップしてからリフティングとか走り込みして体あっためて練習試合かな」

「へーどうチームわけされんの?」

「先生がその時いるメンバーで適当に決める」

「へぇ~‥」

「外行っ‥」

「あぁ!今サッカーの試合テレビでやってるよね!」

「あぁ?あ、やってるけど」

「どこのチーム応援してるの?」

「お前、そんな興味あったっけ?」

「これから知っていこうかなーって思って!」

「そうなんだ?んーやっぱレッズかな」

「あぁっ!あの赤いチームか!」

「そうそう」

「大宮行くのに浦和前電車通ったら駅前真っ赤だったよ」

「そりゃ宣伝とかするでしょ」

「だよね(笑)レッズのどうい‥」

「神庭君!」

こ、これはっ‥!?

「元気?」

来た。

「竹村さん!おはよ!」

「もうお昼だけどね(笑)」

「そうだね(笑)」

「俺、邪魔?」

「いやいや!そんな事ないよ!」

「神庭君のお友達?」

「うん 同じ小学校で本田君っていうんだ」

「初めまして、竹村です」

「どーも本田です 後ろの人は?」

「和田さん、同じ部活なんだ」

「初めまして 和田 舞香(わだまいか)と言います」

「どーも お前は知り合い?」

「えっ!?ああ、僕も初めましてだよ。初めまして、神庭晋也です 4組です」

「私は隣の5組です よろしくお願いします」

「神庭君、何か話してた途中だった?」

「本田君からサッカーについて聞いてたんだよ」

「へぇー!本田君サッカー部なんだ!私よくサッカー観戦行くんだ!

竹村さんの体はもう本田君の方へ向いている

「サッカー好きなの?」

「うん!詳しくはわからないけど盛り上がってる感じが好きで!」

「俺もそれが好きでサッカーやってんだ」

「将来はサッカー選手になりたいとか?」

「そう思ってるけどまっ無理だろうから多分就職かな」

「現実的に考えてそうなっちゃうよね。神庭君は夢とかあるの?」

「あ、うん声優になりたいって思ってるかな」

「え!そうなんだ!アニメ好きなの?」

「うん」

「和田さんも好きなんだよ」

「え?そうなんですか?」

「はい」

「ど、どんなの見るんですか?」

「てか、同級生なんだから2人ともタメ口でいいじゃん」

「え、あぁ。そう?だね。和田さん、平気?」

「はぃ‥あっうん大丈夫だよ」

「話の続き今度でいい?サッカー行かなきゃ、友達待たせてて」

「ああ!ごめん!ごめん!大丈夫!」

「本田君!よかったらさ、私、舞香ちゃんとみんなでメアド交換しない?せっかく知り合えたしさ。今度遊びに行くとか」

「あぁ。すぐ行かなくちゃいけないから神庭、教えといてくれる?」

「うん わかった」

「じゃ」

「美樹ちゃん、私先生に呼ばれてて行かなきゃ」

「そっか なら私から2人に教えていい?」

「うん お願い」

「いいよ!」

「じゃあね」

「じゃ、頑張ってね 和田さん」

「ありがとう」



「神庭君、どうだった?」

「なに話していいのかわかんなくて」

「緊張してたもんね(笑)」

走り去る時柔らかい風が吹いた

「よくグイグイいけるよね」

「そうしないと仲良くなれないじゃない?」

「そうだけど‥あ、竹村さん サッカー観戦行くの?」

「行ったことないよ?」

「え!?さっきのは」

「嘘、神庭君 正直すぎるのは損するよ」

「‥え?」

「舞香ちゃんのメアド帰ったら送るね!」

「ありがと」

「じゃまた!」

「じゃ、じゃあ‥ね」

正直すぎると損。ひっかかる言葉を残し
竹村さんは去って行ってしまった
嘘をついて生きていけって事?僕は‥

「神庭!」

「うわっ」

オタク仲間の大木と小平

小「お前裏切り者か?」

「え?」

大「裏切り者か?」

「どういう事?」

小「リア充だったのかぁ~!!」

三角定規で頭を刺される

「いってぇっ!なにすんだよ!」

小「しんぼくのゆきちゃんは俺の嫁って言ってたじゃないか!日本は一夫多妻制じゃないぞ!」

改めて説明しておくと
しんぼくは流行りのアニメでゆきちゃんとは
ヒロインの事である
確かに僕はゆきちゃんが好きで ゆきちゃんは
俺の嫁と豪語していた

「ただ友達と喋ってただけだよ!ちょっとした約束があって」

小「デートか!?どこまでいった!?」

「まだしてないし」

大「まだっ!?てことわっ‥!?」

「アァー違うって、間違い間違い。まだっていうかしてないしする予定もないって」

小「じゃあどういう関係だっ!」

大「どうなんだっ!」

「単なる友達だってば なんもないって」

小「ほんとうだな?」

大「ほんとうか?」

「あぁほんとだよ」

なんだお前ら リア充に親でも殺されたのか?
訳を説明して落ち着かせた後
いつも通り アニメの話に花を咲かせる
これが一番楽しいし幸せだ
時計の針が休み時間が終わる数字をさそうとしている
楽しみにしていた分、終わるのが早く感じた
休み時間が終わる‥?
て、事は「奴ら」も帰ってくる
急いで教室に戻らなければ。

教室に戻り次の授業の準備をする

「課題終わった?」

「ん?あ、おわ、終わったよ ありがと松川さん」

「絶対次の集まりの時は行ってね?」

「うん 約束するよ どんな内容だった?」

「えーっとね」

和、松川さん、学年主任の澤田先生、竹村さん
色んな人に助けられてる
1人じゃ生きていけない 感謝しないとね

ついでにオタク仲間も(笑)
いつも笑わせてくれて楽しませてくれて
嫌なことを忘れられる
これがなかったら学校がただ嫌な施設だけで
終わっていたかもしれない
自分は何か仲間に返せているものはあるだろうか?
楽しい時間をもらってばかりかもしれない。

前まではこんな事ばかり考えていたが
家に帰ったら『彼女』にどんなメールをしようか
仲良くなってデートの約束しちゃったり
そこから良い雰囲気になってだはだはな
展開とかになっちゃったりとか
あ、でも中学生なのにまだ早くない?
とか言っちゃったりして
クラス公認の中になって学校でも堂々と
話せる中になっちゃっ‥
友達のことも大切しないと。
今まで仲良くしてもらっていたのに
いきなり粗末にしてはバチが当たりそう

オレンジ色に照らされた道を帰る

あぁ、学校近くのラーメン屋さんが潰れた

あぁ、新しい家が建ったんだ

あぁ、公園の木が裸になってる

景色を見る余裕ができた


家に帰り携帯を見ると二件のメールが。
一件は竹村さん
もう一件は‥

ある日の学校
靴はあった なんであるんだろう?
隠すことに飽きたのかな
犯人探しをするつもりはないが検討はついている
「奴ら」の中には恐らくいない
4組、同じクラスの「奴ら」の友達
だけどわざわざ面倒ごとに首を突っ込まない

自分の足音が響く朝の廊下
大きく息を吸うと臓器がグッとなる

教室にはまだ誰もいない
僕は大体一番乗り
普段は騒がしい教室 皆んなの教室
そして嫌な教室
だけど朝だけは好き 自分だけの物っていう
不思議な空間になっている
このまま誰も来ないでほしいな
願い虚しく数人の声が近づいてくる

「おはよー!なぁなぁ昨日のあれ見たー?」
「お前部活サボっただろー?」
「せんせー!おはよーございまーす!」

今日は水曜日、週の折り返し
このままダラダラ卒業へ向かっていくのかな
何か目的を見つけないとなー

そんな時心地よい柔らかい風が吹いた

「おはよっ!」

「お、おはよっ。あ、昨日メールくれてありがと そういえば和田さんアニメ好きなんだよね」

「うん」

「今何みてる?」

「んー、あっしんぼくかな」

「嘘っ!?女の子が見てるなんて意外かも」

「そう?キャラクター可愛い子多いから」

「そうだよね 僕はゆきちゃんってキャラ‥」

「ゆきちゃん好きなの!?!?」

「う、うん」

本を読んでいる姿が似合う綺麗な彼女
実際やっているかは知らないが
学級委員をやっていそうなザ・優等生
目を開いていつもより声が上ずっていた

ー意外だったー

話していると和田さんも声優に興味が
あるらしく将来の視野に入れているらしい
登校してくる人が増えてきたので
話しを終わらすとお互い自分の教室へ。
正確には終わらすというより「終わらせた」
僕の気持ちが持たなかったから。

教室へ入ろうとした時に竹村さんに
声をかけられた 竹村さんは隣の3組

「さっき、舞香ちゃんと話してなかった?」

「うん、話したけど‥」

「どんな話ししてたのっ?」

「アニメが好きだって言ってたから何が好きなのー?とか」

「話せることがあってよかったね!」

「紹介してくれた時、竹村さんが言ってくれたからね。ありがと」

「いえいえ~っ!どう?」

「ど、どう‥とは?」

「うまくいきそ?」

「うまくも何もないよ ただ話してーってだけだし」

「そこから遊びに誘ったりメールしたりするんだってば!」

「えぇ~‥迷惑じゃないかな。話しはじめたばかりの人からそんなこ‥」

「初めが肝心なんだよ!じゃないとずっとできなくなっちゃうよ?いいの?」

「それは嫌だけど‥」

「アニメ好きって共通点があるんだからオススメ教えてーとかどの声優さん好きなのー?とか色々あんじゃん!」

「わ、わかったよ その辺のメールしてみる。
‥だけどなんでここまでしてくれるの?」

「んー神庭くん悪い人そうじゃなさそうだし」

「悪い人?ではないと思うけど」

「それと奥手すぎるから。それじゃにげられちゃうぞ?」

「あぁっ!」

小走りで教室に入ってしまった


奥手すぎるか。確かにそうかもしれない。
だけ
こんな僕に話しかけられても
こんな僕に時間を使わせてしまっても
こんな僕に‥

今日の学校は来ている感じがしなかった
ただ時間を過ごしていただけ。
昼休み 廊下ですれ違いざまにちょこっと和田さんと話したくらい。
ずーっと和田さんへ送るメールの内容を考えていた
考えすぎて「メールってなんだっけ?」と思ってしまったほど

家に帰り携帯を確認する 二件
竹村さんと和田さんだ

ーー
送信者 竹村さん

舞香ちゃんにメールした??
せっかく知り合いたんだしどんどんせめなきゃ!
私も頑張るけどね!
ーー


もう一件


ーー
送信者 和田さん

今日元気なさそうだったけど具合悪かった?
もし悩み事があったら相談のるからね!
わたしでよかったらだけど!
ーー


‥‥



竹村さんの応援も嬉しいし
和田さんからのメールはもっと嬉しい

だけど自分のなんにもできなさが嫌になった

運動はできない 成績も悪い 好きな子に連絡もできない
和田さんの事を考えてばかりでオタク仲間とも最近は話していない
1つの事に集中すると他の事が出来なくなる


はぁ


久しぶりにオタク仲間と秋葉にでも行こうかな
相手は適当に小平や大木あたりにでも。

ーー
「今週の日曜日暇?場所はどこでもいいけど
特になければ秋葉で。返事待ってまーす」
ーー
っと。


あっ、2人にも返事しないと。

えぇ~っと



‥?

アアァァアアア!!!



和田さんに送ってしまった!
しかもめちゃくちゃ馴れ馴れしく!!

授業で間違って半田ごての熱い方を
触ってしまった事があるが
今、自分の顔がその半田ごての様に熱い
触らなくてもわかる
熱を発している半田ごて自身なんだから。

送信キャ‥手遅れだ。ばっちり送信されている

「送る相手間違えちゃったー!気にしないで!」

‥と、言うのもバカにしてると思われそうだ


うわ。えっ、どうしよう
送ってしまった、まずい。
いやいけない事ではないからまずくはないが
まずい。竹村さん助けて。

ーー
宛先 竹村さん

和田さんにメールしたよ
だけど友達に送るはずのメールを間違えて
和田さんに送っちゃった
ちなみに返事はまだ来てません
ーー


するとすぐにメール受信を知らせる着メロが鳴った


ーー
送信者 竹村さん

別にいいんじゃない?
なんて送ったの?
ーー



ーー
宛先 竹村さん
今週の日曜日暇なら遊び行かない?って
ーー

送信者 竹村さん

大胆だね!間違いでもデート誘えたじゃん!
ーー


ーー
宛先 竹村さん

デートって!付き合ってもないんだから単なる遊びだってば!
でも、どうしよう。断られたらというか断られる気しかしない
ーー


ーー
送信者 竹村さん

とりあえず待ってみなよ!送っちゃったんだし
ごめん!私塾あるから返信遅れるね!
終わったらまたメールする!
ーー


ーー
宛先 竹村さん

わかった!塾頑張ってね!
ーー


そうだよな。待つしかない。





晩御飯の時間になった
食べても味がしない
和田さんに初めて会う前の時と同じだ

なんで返信をくれないんだろう

やはりいきなりすぎただろうか

悩んでくれているのか?
いやいや、竹村さんに相談をしているのか?
神庭から遊びの誘いのメールが来て
どう断ろうか悩んでるんだけどとか言われてたらどうしよう
いや、でも和田さんはそんな事を言うような人ではない
じゃあなんで‥


待っていてもしょうがない
ゲームでもしていよう







漫画を読もう







あぁ!!集中できない!

今は8時半
学校からはとうに帰っている
塾とか習い事をしてなければ。


そうか、塾に行っているのか?

竹村さんにメールしようかと悩んだが
塾に行っていて返信なんて来るはずがない

‥でも、メールだけしておこう



9時



お風呂に入っていて暫く携帯を見ていなかった
メール受信の緑色のランプが付いている
あぁ、塾が終わったのかな
携帯を開くとメールの相手は和田さんだった


ーー
送信者 和田さん

返事遅れてごめんなさい!
親が厳しくて親の前じゃ携帯触れなくて?
うん!いいよ!秋葉原でもいいけど
他に神庭君が行きたい所があるなら!
ーー



‥えぇ?いいの?

ええっ!!いいのっ!?!?



秋葉なんて行ってしまったら
趣味全開でキモチ悪がられたら
どんな手当をされても治らない傷を負ってしまう
秋葉なんて行けない


ーー
宛先 和田さん

秋葉じゃなくてお台場に行こう!
そこなら遊ぶ所もたくさんあるし!
ーー

送信。


返信を待たせては行けないと思って
急いで送ったが、これは冷静に考えたら
デートになってしまうのではないか?


おい、神庭。お前、お台場って。

‥大丈夫なのか?

ーー
送信者 和田さん

大丈夫!時間はどうする?
ーー
宛先 和田さん

12時に駅の時計台の下で待ち合わせでどう?
ーー
送信者 和田さん

わかった!じゃあ日曜日楽しみにしてるね!
おやすみなさい!
ーー


順調に約束をしてしまった、驚くほどスムーズに。
このまま日曜日に会えればよかったんだけど
明日は金曜日 まだ学校が残っている
どうしよう 休みの日に会う約束をしてから
学校で会うのは初めてだ


竹村さんからのメールが来た


ーー
送信者 竹村さん

今塾終わったよー!
わかんないとこ先生に聞いてたら
長くなっちゃった!
まだ舞香ちゃんから返事こない?
ーー

返事が来たどころか‥
やりとりを説明した

ーー
送信者 竹村さん

よかったじゃん!デートだ!
意外と手つけるの早いんだね(笑)
明日学校で詳しく聞かせてね!
ーー

10時布団に入る 徒競走の後みたいにドキドキしていた


カーテンからもれる朝日、そしてお母さんの
「朝だよー起きろー」という目覚まし時計

なんだろう

学校に行くはずなのに

いつもの朝と違う

通学路を歩いていても学校につける気がしなかった


が、着く先は行き慣れた学校

今日は上履きがいないが
ひんやりとした廊下が気持ちいい
自分の体温で半田付けができると思う

「うぃす」

和だ

「おはよー昨日のゆきちゃん可愛かったよな。むふぅ」

小平だ

「はい おはようございまーす」

学年主任の澤田先生

みんなはいつも通りの朝だ

「神庭君、上履き‥」

「先生、今日は大丈夫です」

「え?今日はって?」

「とにかく大丈夫です!」

「うー‥ まぁ君がそういうなら」

「はい いつもありがとうございます」

廊下はこんなにスベスベするんだ
歩かなくても滑って移動ができる
スケート選手になった気分だ

「おはよー!」
同じクラスで一緒に給食委員を担当してる松川さん。和田さんと初めて話す時の昼休み
代わりに給食委員の集まりに行ってもらった
次の集まりには僕がいかないと。

「おはよっ!」
竹村さんだ

「竹村さん、おはよう」

「日曜日、よかったじゃんー!頑張ってね!」

「頑張る?ま、まあ頑張るよ。でもなんか変な感じ」

「ん?なにが?」

「いきなり2人ででかけるなんて」

「自分で誘ったんじゃん(笑)」

「でもあれば事故みたいなもんだし」

「いいの!気にしない!」

「そうだね。女の子と出かけたことなんてないし小学校の時も全然モテなかったから」

「え?そうなの?」

「うん」

「優しいから内面でモテそうだけどなー」

ははっ。内面でね。

「あっ、でも神庭くんの事気になるって子知ってるよ」

「えっ!?」

「クラスの友達なんだけどあの人かっこいいーって」

「そ、そうなんだ。でももしかしたらそれって言わない方がいい事じゃないの?」

「大丈夫だよ ゆりちゃんの名前は出してないし」

「ゆりちゃん?」

「あっ‥(笑)とにかく日曜頑張れ!」

「あぁ‥」

僕のことを気になってくれている人がいる?
ゆりちゃん‥誰なんだろう


昼休みオタク仲間達と話して
秋葉原に行く約束をした
本当はこいつらと行くはずだったから。
和の持ってきた携帯でゲームをして遊んだり
脇腹を突きあってちょっかい出したり
オススメのアニメを教えあったり‥。
あぁ、楽しい。こうしてふざけあって
いろんな話をして。

この日の学校では和田さんに会う事はなかった
一日中フワフワしていて僕が気づいていなかっただけかもしれない
でも、気づかなくてよかったかも。

放課後、竹村さんと本田くんが
下駄箱で話していた

「あっ、神庭君じゃん」

「よっ神庭」

「あぁどうしたの2人とも」

「私達付き合う事になったんだ」

「えぇ!?」

「そういう事だから」

「あっ、あぁ‥おめでとう」

「ありがと!神庭君も頑張れ!」

「そ、それはっ!」

「ごめん、美樹から聞いた。そっちが付き合う事になったら一緒にどこか行こうか」

「知ってるの!?」

「ごめん、言っちゃった(笑)じゃまたね!」

「うん、じゃ‥あ‥」

2人は同じ塾に通っていたらしく
一緒に帰ったり、勉強を教えてもらったりして
仲良くなって竹村さんからの告白したらしい
て、いう事は僕が和田さんから返信が
来ないとか悩んでいる時には‥?
なんだよ!それ!
いや、別に僕がどうこうという訳ではないけど
そうなんだ‥。
しかも「美樹」とか名前呼びになってるし‥

「舞香おはよっ」

「晋也、ごめん。待った?」

「今来たところだよ さっ、行こうか」

とか言っちゃって!!

帰り道、傘にボトボト雨が当たる
あ。日曜日は晴れるかなぁ

待ちに待った日曜日 洗濯物がよく乾きそうな天気
家を出る時息を大きく吸った 臓器が冷える
財布持った、ハンカチ持った、ティッシュ持った
携帯持った、薬持った‥。

自転車に乗って 駅まで行く

11時45分 少し早めに着いた

時計台の下。まだ和田さんらしき人は居ない

はぁ



夢みたいだ 間違えとはいえ2人で出かけられる
男だからしっかりリードした方がいいのかな
いやリードって。デートじゃないんだから。
でもここまで意識しているのは僕だけ?
そりゃそうか、僕は和田さんが好きで
向こうは何も思ってないんだから。
普通の友達と接している感覚でしょ?
僕だって普通の友達と接する時には
緊張なんてしないさ、だって嫌われたって
どうでもいいんだもの
この人に嫌われたらショックを受ける
だからすっごくすっごく考えてしまう
あっ、強張ってたら怖いよな
笑顔笑顔。にーっ‥不自然じゃない?
意識して笑うってこんな大変なのか

「神庭君」

話すにもわかっている事はアニメが好き
と、いうのと声優という職業を視野に入れているくらい
逆にいえばそれ以外は何も知らない
聞くべきだよな。でも、何から聞けばいいのかな?
聞きすぎて「私に気があるの?」と
思われても恥ずかしいし。
だけど間が持たなくなってしまうのは気まずい
唯一、僕にできる事は喋り続ける事
内容が無くても話すことくらいはできる
面白い事は言えないけど

「‥神庭君?」

よし、頑張ってたくさん聞こうっと
僕は人の話もよく聞けるし喋れる
僕が声優を目指すきっかけは喋りが好きだから。
何も特技がなく頭もいい訳でもない
話すことが好きで話す仕事をしたいと思った
きっかけは勿論アニメが好きだからだけど。
それにしても竹村さんは僕の事を
気にかけつつ自分の方は順調に進めていて凄い
同時にって事だもんな
なんて言って告白したんだろう?
ドラマみたいに夕日に照らされる港とかで
貴方が居ないと生きていけない!
とか言ったのかな(笑)想像がつかない
てか、本田君は意識していたのかな?
僕が告白するとしたら‥
イメージトレーニングはあるけど実際には言えないだろうな
大丈夫、会う時のイメージは出来て

「神庭君っ!」

うわあっ!?!?
「和田さんっ!おはよう!」

「何回も呼んだのに!」

「嘘っ!?ごめん」

「もぉー早く行こっ!」

Suicaで改札を通ろうとした時
「ブー」となってしまった
隣駅に行くお金すらチャージされていなかった

「ごめん!チャージしてくるね!」

「うん 待ってるね」

スタートダッシュからこけた
情けないであろう後ろ姿を向けて
発券機へ行きチャージをする
いや!大丈夫!これからだ!
なんだい!チャージすればいいだけの事じゃないか!

改札に向かうと、和田さんは
改札を通らず手前で待っていてくれた

「先に通ってもらっててよかったのに」

「一緒に行こうと思って」

「あ、ありがと」

逆の立場だったら通ってしまっていたかも

「じゃ!行こっ!神庭君はお昼食べた?」

「まだだよ和田さんは?」

「ううん。じゃあ着いたらすぐお昼ご飯食べに行こう?」

「うん、いいよ」

馬鹿野郎 これじゃダメだろう
こういう事は僕から聞ないといけないんだ
電車に乗る
何か話しを‥

「何を食べようか?」

「どんなお店があるかわからないから行ってからでいい?」

「あぁ、うん。そうだね」

そりゃそうだ 僕だってわからない

「わ、和田さんは普段休みの日は何してるの?」

「勉強ばっかりかな 親が勉強しなさいーって」

「そうなんだ 遊んだりしないの?」

「あんまりね」

「今日は平気だったの?」

「普段勉強してるからね」

「へー」

‥会話が終わってしまった

次は新橋ー新橋ーお出口は右側です

「お出口は右側って何を基準に右側なんだろう」

「進行方向じゃない?」

そりゃそうだ 訳わからない質問をし始めている
せめて遊びのスケジュールくらいは立てないと。

新橋で乗り換えをしてゆりかもめに乗る

「ゆりかもめって電車とは違うからちょっとしたアトラクションに乗ってるみたいで楽しいんだよね」

「わかる!景色も全然違うし」

「よ、よかった‥」

「え?」

「あぁあ!なんでもない!あ!観覧車見えてきた!」

これでゆりかもめ内では気まずくなる事はない
球体の建物がだんだん大きくなってくる
太陽の光に反射して凝視はできない
滑らかな運転、先程まで何かしなくちゃと
焦っていたが緩やかな気持ちになってきた

焦ってもしょうがない
今自分にできることをして
伝えられる事を伝えよう

よしっ!まずはお昼ご飯からだっ!

ゆりかもめから出ると車内との温度差に
びっくりしたけどまずはご飯を食べる所だ

「和田さん、食べたいものある?」

「んーどこでもいいんだけどなるべく安い方がいいかな(笑)」

「うん、僕もその方が助かる!笑」

観覧車の下、ゲームセンターなどが
ある複合施設に入っていった
すると観覧車乗り場の前に
ファーストフード店がありそこで食べる事にした
値段も高くないし手軽に済ませる

昼食を済ませるとまずはゲームセンターへ
クレーンゲームをしたり
制限時間内にバスケットゴールへ
何回シュートを決めれるかのゲームをしたり
音ゲーをしたりゲームセンターを楽しんだ
その後、ショッピングモールへ行き
アイスを食べたり噴水を見たり
たくさんのものを見た

時計を見ると15時に。
少し休もうかな?と、思っていたら

「私、門限が18時なんだ。帰るのに時間かかまちゃうから後30分くらいしかいられないんだよね」

えっ‥そうなの?

「そ、そうなんだ‥じゃ後少し遊んで帰ろうか!」

「うん ごめんね?」

「全然!謝る事ないよ!」

まずい。後少しで終わってしまう。
終わって‥



あっ、観覧車。



いや、これはさすがに‥ね。
ゲームしよう!とか、アイス食べよう!
などの提案とは訳が違う
お昼に食べたファーストフード店で
何か飲みながら時間潰そうかな

‥うん。それが無難かな。





幸せな時間はまるで早送りをされているようだ
またこうやって遊びにこれる日は来るのかな
僕としては勿論行きたいけど
和田さんの家は厳しいらしい
僕が勉強しなさすぎなんだよな
みんなこれくらいやっているんだよ
もっと頑張らないとなー

中間テストも中の下、いや下の上か?
それほど悪い点数
和とどっちが低い点数が競ってるんだよね
競い方が違うだろって!(笑)




「神庭君?」




テストという物は高い点数を競う物だ
国語は好きな事だから覚えられる
問題は数学と英語だ。
日本語で精一杯なのに他所の国の言葉なんて
覚えることないってーの


「神庭君!」

「あぁっ!?!?」

しまった


「ごめんごめん、観覧車行かない?」

「え?」

え‥?

‥ええっ!?!?
そりゃびっくりするよね!?
だって言った本人がびっくりだもん!
観覧車「前のファーストフード」行こうだろ?

「‥いいよ?」

時間が止まった

自分の言葉にびっくりしたが
その返しにはさらにびっくりした

「‥え、いいの?」

「うん 乗ったらちょうど時間になるくらいだから」

そして観覧車乗り場へ
見上げるとあたらめて高いと感じる
反り返ってしまう所だった
それよりも本当に乗るのかい‥?
言ってしまったからには乗るしかない

重りがついたような足を動かし乗り場へ
券売機でチケットを買って係りの人に渡す
カンカンカンと階段を上る

「はい!こちらにどうぞー!ハイチーズ!はーい、こちらのお写真は搭乗後にお求めできますからねー!」

「あぁ、はい。あ、ありがとう‥ございます」

‥‥

胸の温度が高くなっているのがわかる

脈を打つ間隔が短い

目線はずっと自分の足元だけを見ている

2人で搭乗口へ
和田さんを先に乗せて僕は後から乗った

赤いゴンドラに乗り対面で座る

「‥」

「神庭君は高い所平気?」

「あ、う、うん。大丈夫だよ」

声が。

「そ、そうなんだ 凄いね」

「‥苦手なの?」

「高所恐怖症まではいかないけどちょっと苦手かな」

「あぁ、なのにごめん」

「ううん」

「‥」

ゴーッと観覧車の回る音か風の音かがなる
足元に振動が伝わる

僕は両ひじをももにつけて無機質な床を見つめる

一粒の塩水が首から背中をたどりお尻に。


「‥」


BGMでも流れててくれたら。

ゴンドラは時計でいう12の位置へ近づく

手は洗いたてのように湿っている

右手の人差し指の爪と親指の爪を食い込むめで合わせる

考え事している時の癖だ

爪の先端が白くなる。痛い。

「和田さん」

「ん?」

「僕」


この後言葉は決まっている

しかしこれがネガティブな方へ向かった場合

学校ではどうしたらいいのか?

相手は普通でも僕は普通ではいられなくなる

もしかしたら学校へ行かなくなるかもしれない

でも、そんな事をしたら確実に

和田さんは気にしてしまうだろう

そうだ、自分で起こす事なんだ

勝手に行動して勝手に沈んでいるだけ。

何も和田さんは悪くない

負わなくても良い重りを背負わせてしまう



僕はその場で立ち上がった
和田さんも立ち上がる

「和田さん 好きです 付き合ってください」













「私でよければお願いします」


両肩に手をおいて顔を近づけた




観覧車を降りてからゲームセンターに
向かい、プリクラを撮った

この日の記念。



正直、この日の帰りはよく覚えていない

銭湯に行った時、長湯をしてしまい
のぼせてしまった事がある
腰掛けに横になり頭の中が真っ白になった

唯一、覚えているのは
この様な気持ちになっていた。と、いう事だけ。


地元の駅で別れ気がついたら家に着いていた
どんな状態でも家には帰れる

明日は月曜日、学校だ。
今日はなんだかゆっくり寝れそう







肌寒い朝、布団をはいでいた

だから余計に寒かった
顔を洗い歯を磨いて着替える
鞄を持ち家を出る

いつも通りの朝だ。何も変わらない。


静かな朝の学校
一番乗りで教室に着く
学校に来たけど何をすればいいんだろう
あぁ、授業か。

竹村さんに会った

「おはよ!昨日どうだった?」

「あぁ、おはよう。それなんだけど‥」


説明した


「よかったじゃん!てか告れたんだね!?」

「うん、なんか流れで‥」

「凄い凄い!」

「ありがと、あ。前話してた今度竹村さん達と‥」

「あーごめん、別れちゃったんだよね(笑)」

「え!?!?なんでっ!?」

「付き合ってみたらさお互いなんか合わなくて」

「そうなんだ 残念」
「ごめんね、でも色々話は聞けるから!」

「うん、ありがとう」

「じゃ!またね!」


別れちゃったんだ
僕もこんなに早く‥。そうなっちゃったら嫌だな。

「神庭君!おはよう」

「‥っ!?」


「わ、和田さん。おはよっ」

「おはよ 昨日は楽しかったね」

「僕も楽しかったよ それと‥ありがとう」

「こちらこそ。ちょっとびっくりしちゃったけど」

「そうだよね、ごめん 和田さん」

「大丈夫!それと、名前で呼び合わない?」

「え?」

「苗字だとなんだか距離がある感じがしちゃって」

「そ、そうだね。じゃ、じゃあ‥舞香?」

「うん。きょうも学校頑張ろうね 晋也」

「うん、ま、舞香もね」

「ありがと。じゃまたあと‥」

「ねっ!」

「え?」

「わだっ‥あ、ま、舞香。きょう一緒に帰らない?」

「うん、わかった じゃあ校門出た所にいるね」

「わかった ありがと」



あぁ、一緒に帰れるんだ。楽しみだなぁ
帰るまでが待ち遠しい

教室に入ると同じ給食委員の松川さんが居た

「神庭君、おはよう」

「おはよ」

「今日、放課後に給食委員の集まりがあるみたいなんだかどう出てくれない?私、今日塾があって」

「えっ!?」

「なんか用事あった?でも約束は約束だよ」

「あっ、あぁうん。わかってるよ、大丈夫大丈夫」

「よろしくね!」

放課後に集まりがある

「あっ!ねぇ!この前の集まりって何分くらいで終わった?」

「んー1時間かからなかったくらいかな?多分」

「多分?ほんとに1時間くらい?」

「もう忘れちゃったよ ちゃんと覚えてないし」

「そっか‥」

「なんでそんなに確認するの?」

「あっ!いやいや、なんでもない」

「ふーん?」

1時間もかかるのか‥
後で先に帰っててって言わないと。

小「かんばぁー!おはよー!」

大「うぉはようっ!」

オタク仲間の小平と大木だ

「あぁ、おはよー」

小「なんかテンション低くね?」

「そんなことないよ」

小「そうか?いつもなら、うぉ!とか言ってケツ触ってくるのに なぁ?」

大「なぁ?」

「人を変態みたいにいうなよ」

小「だってそうだろ(笑)」

「お前らは変わんないなーだから好きだし楽しいんだよなー」

小平、大木 2人とも股間と胸に手を当てる

「なんだよ、それ」

小「いや人のあれをそのどーこーいうつもりはないがその、あれだ。俺は大丈夫だから」

「は?」

小「あ、でも。そのいや、どーしてもというなら考えやらんでもないぞ。大木、お前も友達だろ?」

大「そ、そうだな。俺も‥多少、覚悟はしてやるよ。多少は‥いや!やっぱり無理だ!最初は愛する異性とって決めてるんだからよ!」

小「わかる!わかるぞ大木!でも大切な友達が!」

「お前らさっきから何言ってんだよ?言わなくてもわかると思ってたけど好き、楽しいっつっても友達として遊びとしてだからな?」

小「お、お前‥俺たちの覚悟をどうしてくれるんだ!恥をかいたじゃないか!恥を!!!」

「いや勝手に勘違いしただけじゃ‥」

大「いやわかってるって。そんなマジで返されたらこっちもどうしていいかわかんないわ」

小「お前、わかってやってたのか?」

大「お前はマジだったのかよ」

人に恵まれてよかった
この先、このまま進んで欲しいな


昼休み まだまだひんやりとした廊下に出る
直接足に伝わる。おかげで足の裏は真っ黒
でも、これはこれで気持ちいい

「奴ら」に見つからないように
柱の後ろに隠れたり教室を出入りしたりして
和田さん‥舞香に話しかけに行くタイミングをはかっていた
今日は晴れている。恐らく校庭に遊びに行くだろう
10分くらいうろちょろしていると5組から
「奴ら」が排水口から逆流してきた水のようにわらわら出てきた
すぐに自分の教室に入る 扉から半分顔を出す
排水が落ち着いた所を見ると出切ったようだ
扉が開けっ放しの5組 中を覗くと柔らかい風が吹いた
舞香は背筋をぴっと伸ばして本を読んでいた
教室に入る訳にはいかないし‥と悩んでいたら
その負のオーラが伝わったのかこちらに気づいた
僕は自分の胸の前で小さく手招きをした
すると読みかけの本に白いしおりを挟むと
小走りで駆け寄ってきてくれた
目の前まで来た時、風にのって石鹸の匂いがした

「どうしたの?」

「あぁ、本読んでたのにごめんね えっと今日なんだけど放課後、給食委員の集まりがあるらしくて一緒に帰れなくなっちゃったんだ」

「あー‥そっか しょうがないね それを言いに来てくれたの?」

「うん!1時間も待たせちゃ悪いからさ」

「そんなに長くなるんだね わかった じゃ明日一緒に帰ろ?」

「ありがとっ!ごめんね!」

そう言って別れるとぽっかり穴の空いた気持ちに
なって教室へと戻った。


放課後、今日の集まりは3組の教室でやるらしい
帰りの挨拶が終わると3組に向かった
よその教室に入るのは初めてだ

「失礼しまーす 4組の給食委員の神庭でーす」

「はーい 4組はここに座ってください
えーっと初めまして‥ですよね?」

「ん?あぁ、そうですね。初めまして4組の神庭晋也です」

「初めまして。私、3組の給食委員 梅野百合(うめの ゆり)っていいます よろしくお願いします」

「よろしくお願い‥ん?します」

「どうかしましたか?」

「あぁっ、いえ。なんでも。よろしくお願いします」

「16時から開始なので少し待っててくださいね」

「わかりました」

ん?初めて聞く名前‥か?


いやーそれにしもせっかく一緒に帰れるチャンスが‥。
でも、よくOKしてくれたよな
もしかして僕の事好きだった?笑 んな訳‥
僕の‥事‥好き。あっ!!

集まりの内容はまたしても
各クラスの食器を戻すのが遅い問題だった
結局長引いてしまい終わったのは17時30分
お尻が痛い 肩を軽く回し教室から出ようとした時

「神庭君」

と、聞きなれない声が

「はい?」

「あのもしよかったら‥」

差し出された右手には人差し指と親指に
挟まれた紙切れがあった プリントの端を破いたのであろう

「えーっ‥と?」

「いきなりごめんなさい イヤじゃなかったら連絡くれますか?」

受け取り紙を開いてみるとそこにはメールアドレスが書かれていた
そしてメールアドレスの最後には
【梅野 百合】と。

「わ、わかりました 帰ったら連絡します」

「ありがとうございます」

連絡先をいきなり渡してくる
そして「ゆり」という名前‥
さすがの僕でもわかってしまった

「あの子が竹村さんの話していたゆりちゃん‥」

これは受け取らなかった方がよかったかもしれない
だけど連絡するって言っちゃったからな‥
一度、連絡するだけしたら後はほっておこう
連絡をする「だけ」でいいんだから。

自分の教室に戻り荷物もまとめて下駄箱に向かう
廊下の窓から外を見るとただただ暗かった
木に残っている数少ない葉っぱが枝にしがみついている
それを無慈悲にも落としにかかる風
はぁ寒そうだなー
電気の付いていない廊下は夕方とはいえ不気味だ
小走りで下駄箱へ向かう

すると

「あっ‥」

「こっ、こ、こんにちは」

なんと言っていいのかわからず先程まで一緒だった人に挨拶をしてしまった

「神庭君、これから帰り‥ですよね?」

「そ、そうですよ」


‥‥



「そ、それじゃまたあし」

「あのっ!!!」

「はひっ!?」

自分の声が廊下に響く
そして「ひっ」と言ってしまった

「な、なんでしょう?」

「も、もし、もし、よかったら途中まで一緒に帰りませんか?」

一緒に帰る‥僕が一緒に帰りたかったのはこの人ではない
だけど単なる友達だしオタク仲間達と帰ってると思えば。

「は、はい。いいですよ」

「ありがとうございます!」

すっかり汚れきった靴下のまま外履きを履いて
梅野さんと昇降口を出る

「寒いですね」

「そ、そっすね」

帰り道はまず校門を左に曲がる
曲がった死角に舞香がたっていた

「舞香!」

「お友達?」

「同じ給食委員で‥」

舞香には梅野さんの説明を
梅野さんには舞香の説明を
すると梅野さんは気まずそうに
「私、先に帰ったほうがいいですよね‥」
と。そりゃ気を遣わせてしまうよな
僕としては先に帰ってもらいたかったが

「そんな事ないよ、一緒に帰ってもいいよね?晋也」

「う、うん。モチロンダヨ、1人だと危ないし アハハハハ‥」

「ほらっ だから一緒に帰ろ?」

「‥ありがとうございます」

嫌だとは言えないだろ
結局3人で帰る事に。
右には梅野さん、左には舞香
何故こんなフォーメーションをとってしまったのか。

「梅野さんは3組なの?」

「はっ、はいそうです」

「タメでいいよ!同じ学年なんだから!」

「あ、ありがとうござ‥あ、ありがと」

「うんっ! こんなに長く大変だったねー」

「そうです‥あ、うん。結構話す事があって」

「そうなんだー 梅野さんってさ」

なんだなんだこの状況
右には恐らく自分の事を好いてくれてあろう人
左には僕がやっとの思いで付き合う事の出来た彼女
この状態なんていうんだっけ‥
じゃない 嬉しい‥あぁ、違くてこれはまずいだろ
いや、でも何がまずいかと言われたら
何もまずくはないんだけどもとにかくまずいというか‥
そう!まずいもんはまずいんだよ!

「そうだよね?晋也」

「えっ!?あっごめんごめん 聞いてなかった」

「ちょっとーちゃんと聞いててよ この人すぐにぼーっとしちゃってさー」

「2人とも仲良いんですね いいなぁ」

「そうだ!せっかく知り合えたんだし梅野さん友達になろうよ!ゆりちゃんって呼んでいい?」

「えっ‥!う、うん!」

「私の事も舞香って呼んでいいから」

「ま、舞香ちゃん」

「そうそう!晋也もねっ?」

「僕もっ!?」

「そうだよ!いつまでも苗字呼びじゃ硬いじゃん!同じ委員会なんだし」

「あっ、そ、そうだ‥ですよね」

「何それ(笑)」

「ゆ、ゆり‥さん、でいい?」

「はい 嬉しいです!」

「ほら!やっぱりそっちの方がいいんだよ!」

あ。えーっと多分梅野さんの場合の嬉しいは
自分で言うのもアレだけど多分違う嬉しいという
意味じゃないかなーと

「あの、私帰り道こっちなので」

「うん!じゃあまた明日ね!ゆりちゃん!」

「さようなら」

「ほらっ晋也も」

「あぁ、さようなら」

「うん バイバイ」

ゆりさんが僕らとは違う道を行く
はぁよかったよかった

「ちょっと晋也?」

「え?」

「ゆりちゃんに冷たくない?」

「そ、そうかな?あんまり話した事無くて緊張してるだけだよ」

「緊張?あっ、もしかして‥?」

「?」

僕の顔を覗き込むように
「好きになっちゃった?」
と。

「そ、そんな訳ないじゃん!!!!!!!お前が好きなんだから!!!!」










あっ‥

外なのに声が反響している
つい感情的になってしまって
それに舞香に向かってお前って‥
偉そうなことを言ってしまった



「あっ、えっとそのごめん つい‥」

「ありがとう」

「へぇ?」

「い、いきなり大きな声出されてびっくりしたけどちゃんと好きって言ってもらえたし。あの日から言ってもらえてなくて少し心配だったんだ」

「あ、ごめん」

「ううん それにこういう時のお前って呼び方。嫌いじゃないよ?」

「あっ、えっとそれはほんとに‥で、でも嫌じゃなかったらよかった」

「うん!あ、私こっちなんだけど」

「あー僕はあっち」

「そっか じゃあここでバイバイだね」

「うん それじゃまだ明日」

「あっ晋也」

「ん?」











「じゃあね!」





‥‥。






僕は驚いた拍子に右足を一歩後ろに下げたまま
しばらくその場に立ちすくしてしまった












次の日
傘をさして登校する まだ学校についていないのに
靴の中は歩くたびに水が不快な音をたてて出てくる
替えの靴下を持ってきておいて正解だった
こんなんで1日過ごすのはごめんだ
下駄箱につくと上履きを履き教室へ向かう

そう言えば最近は靴が揃ってる
飽きたのかな?
やるなら最後までやり続ければいいのに。

廊下の窓には水滴がしたたっており
床には誰かが外履きのままあがったのだろうか
泥の足跡がついている

いつもの朝は自分の足音が響くが
今日はかき消されてしまう
でも、これはこれで聴き心地が良い
今日は何もないだろうしまた一緒に帰ろうかな
と、いうか帰りたい

教室に着いてすぐ靴下を履き替えた
聴き慣れた声達が近づいてくる
あっ、しまった。昨日のしんぼくを(アニメの題名)
見忘れてしまった すると
小平と大木が登校してきた

「2人ともおはよ」

小「お前彼女できたの?」

「え?」

「なんで知ってるの?」

小「昨日俺の友達が帰ってる時に遠くから大きい声がして、そっちの方見てみたら、お前と女子が歩いてたって」

聞かれた!?

「な、なんて言ってたかとか話してた?」

小「いや聞き取れはしなかったみたいだけどとにかくでかい声がしたって」

「あ、あぁ」

よくないけどよかった
不幸中の幸いというやつか

「うん 実は今付き合ってる子がいて」

小「誰々!?!?」

「と、隣のクラスなんだけど‥」

小「後で見に行ってもいい!?!?」

「やめてよ 見せもんじゃないんだから」

小「そんな固いこと言わずにさっ!俺たちの中だろ?」

「えーっ‥んーまあ見るだけだよ?そしたらすぐに教室戻るからね」

小「わかってるっ!」

大「いいなー」

小「俺たちも頑張らないとな!」

大「いーやっ!俺にはゆきちゃんがいるから!」

小「あっ!お前!あ‥神庭は浮気になるからゆきちゃんは俺たちのでいいよな?」

「それは話が違うだるぉ!?」

小「昨日のゆきちゃんも可愛かったなー!なぁ?」

「あ、えとー」

小「あん?」

「昨日、アニメ見忘れちゃって」

小「お前!彼女ができた途端これか!!けっ!けしからんな!!これだから最近の若者はっ!」

大「同い年だろ!まーなんでもいいけど神庭、今までみたく遊んでくれよな?」

「勿論」


ふざけあえる友達も数少ない
小平、大木、和。みんな大切だ。
勿論、舞香の事も。

あ、そう言えば最近、竹村さんと会わない


昼休みに廊下を歩いていると
竹村さんとすれ違った

「あ!竹村さん!」

「神庭君!久しぶり!」

「最近見てなかったけどどうしたの?」

「ちゃんと学校来てたよ!たまたま会ってないだけ」

「そっか よかった」

「で‥どう?最近は?」

「最近?あぁまあ元気だけど」

「神庭君の体調なんてどうでもいいよ!舞香ちゃんと!」

「ああ。一緒に帰ったりメールしたりしてるよ」

「順調そうだね」

「うん」

「なんだか一緒に帰ってたとか噂になってるよ(笑)」

「えっ!?そっちまで広まってるの!」

「うん(笑)しかもゆりちゃんと3人で」

「あー‥あれは」

「二股?」

「んなわけないよ!」

「わかってるって!じゃ!頑張れ!」

「ありがとう」

そんな事する訳ないだろう
僕はちゃんと舞香が好きなんだから

また帰る約束をしに行こうかな
5組へ向かう だんだん「奴ら」の事は
どーでもよくなってきていた
開きっぱなしの扉 中を覗く
「奴ら」は居ない 舞香は居た
前と同じく胸の前で小さく手招きをする
いつも通り柔らかい風を吹かせてやってきた
相変わらずいい匂いだ

「どうしたの?」

「今日も一緒に帰らない?」

「あーごめん 今日先生のお手伝い頼まれてて。図書室の整理をするんだって」

そういえば舞香は図書委員だったっけ

「そうなんだ 残念」

「ごめんね あ。ねー!いつも一緒に帰る事にしない?ダメな時だけ言うとかにしてさ」

「えっ、いいの?」

「ダメだった?」

「ううん!嬉しい!」

「よかった」

「頑張ってね」

「ありがとう」

「あ、帰るときの待ち合わせ場所校門左に曲がったところにしない?」

「うん。いいよ」

「それじゃ」

「バイバイ」

「あっ!そうだ!」

「ん?」

「最近、僕達付き合ってるんじゃないかって噂になってるんだけど‥」

「そうなの?」

「友達に言われてさ」

「そうなんだ。でも私は平気だよ?」

「え?ほんと?」

「うん!悪い事してるわけじゃないんだから」

「そ、そうだよね。ありがと」

「じゃまたメールするね」

「うん、それじゃ」

「バイバイ」


学校にいるときには帰るか帰らないかの話し
お互いの話は一緒に帰っているときにする
それはもう時間が過ぎるのは早過ぎるほどに。

今日は雨。どこへも行かず大人しく帰ってメールを待とう
それまではゲームかな

学校が終わり下駄箱に向かう
あの靴を履かないといけないのか
少しでもいいから乾いておいてくれ!
昇降口を出る こりゃ傘をさして帰らないと
いけないほど降ってるなー

「あのー‥」

「神庭‥晋也くん!今から帰り?」

「そうだよ」

百合さんだ

「今日は舞香ちゃん一緒じゃないの?」

「うん、委員会があるみたいで」

「そうなんだ‥」

「‥どうしたの?」

「私の傘がないの‥」

「えっ!?盗まれちゃったの?」

「多分‥」

「まー昇降口にまとめて置いてあったらなくなってもおかしくないよね」

「‥」

「あっ‥貸そうか?」

「え?だって」

「折りたたみあるから平気だよ」

「あの‥」

「?」

「‥あ、よかったら一緒に入ってもいい?」

「え‥一緒に?」

「だめ‥かな」

「だめ‥じゃないけど‥」

「いいのっ!?」

「う、うん」

「ありがとっ!!!」

舞香と付き合ってる事が広まってきているのに
大丈夫かな、誰かに見られたりとか‥。


「んっ‥入りなよ」

「‥ありがと」

「雨、すごい降ってるね」

「うん。晋也君、肩濡れてない?」

「え?」

1人用の大きさの傘 ぼくの左肩は濡れていた

「あぁ、大丈夫だよ」

「だめだよ 風邪ひいちゃう」

僕の右腕に百合さんは両腕で抱きつくような形をとった

「ゆ、百合さん。さすがにこれは誰かに見られたら‥」

「大丈夫だよ。傘で見えないし」

「そう言う問題じゃ‥」

舞香とでさえまだこんなに近い距離で
歩いた事がないのに

「晋也くん」

「は、はい?」

「私、晋也くんの事が好きです」

「あっ‥でも僕には」

「わかってます!舞香ちゃんがいることがもどれだけ好きなのかも」

「う、うん‥」

「今日一緒に帰ってる事もちゃんと話してくださいね」

「そのつもりだったけど」

「でも、さっきの事は言わないでください」

「‥言えるわけないよ」

「‥そうですよね」

それから別れ道までお互い黙ったままだった

「じゃあ、私こっち‥なので‥」

「そ、そうだよね。あ、雨止んできたね」

「そうですね‥。これなら傘なくても大丈夫そう。ありがとう」

「ううん、それじゃ」

「あのっ!晋也くんっ!」

「ん?」


‥あれ、なんだろ。この別れ際の感じ
つい最近同じ状況になった事がある気がする
そしてそれはなんだかマズイような。





そう考えている最中。










右頬に暖かいものを感じた












これは誰にも話す事ができない

そして誰にも見られてはいけない

僕たちだけの秘密の時間となった




次の日の学校


別れ際、雨が止んでしまっていて
傘をさしていなかった これが‥。


幸い秘密の時間は見られていなかったが
2人帰る所を見られていた
噂が少し広まっている

学校が終わり校門で彼女を待っていた

どうしよう。
知られているかもしれない
なんて言おう‥

あっ。きた。

「舞香」

「晋也、帰りながらでいいんだけど聞きたい事がある」

「うん、いいよ」

「昨日、ゆりさんと一緒に帰ったんだ」

「そうみたいだね」

「知ってたんだ」

「うん」

「‥ごめん」

「え?どうして?」

「え?どうしてって‥どうして?」

「なんで謝るの?」

「一緒に帰っちゃったから‥」

「それくらいいいよ!全然!」

「‥え?

「せっかくお友達になれたんだから!相手が女の子でもお友達なら良くない?」

「そ、そうかもしれないけど‥」

「だから気にしないで!」

「ありがと。でも、話したい事ってこの事じゃなかったの?」

「うん、別に帰るのはいいんだけどね?教えてほしかったなーって思って」

「‥ごめん、今日帰る時に話そうと思って」

「メールでも言えたじゃん?」

「そうだけど直接言いたかったんだよ」

「そっか‥晋也君なりに考えてくれてたんだね」

「‥一応」

「私、それだけが嫌だったんだよね。なんか隠されてるみたいで」

「隠す‥(隠し事‥か)隠すなんてしないよ。隠し事は嫌だから」

「ありがとう そう言ってくれると嬉しい」

「うん。勿論」

「じゃ、私こっちだから」

「そうだね、じゃまた明日」

「バイバイ」


誤解されるようなことはダメだ
一緒に帰るのはやめよう
話すのもなるべく控えるようにして。






今日は金曜日

もう一回、しっかりと話して
舞香の事だけに集中しよう
オタク仲間との話、授業全て耳に入らない
給食も何を食べたか覚えていないし
食べたかな?というくらい

昼休み、5組に行く
しかし何故彼女の近くへ行くと
柔らかい風が吹くのだろうか

「今日、ちゃんと話したいことあるんだ」

「うん わかった」

今日はこれだけを話し放課後を待った
気温は生暖かくなってきた
廊下はまだひんやりとしたままだけど
半ズボンでも大丈夫かな

放課後。


伝える事は考えていたはずなのに
いざ時間が近づいてくると
だんだんとすっからかんになってくる
忘れていくという事は容量が空くはずなのに
頭は重くなってくる いたたたた

校門を出たすぐ左の所で待つ。

日が落ちるのが遅くなったんだな

背中を塩水が一滴、垂れていく。


「ごめん、待った?」

「ううん、大丈夫。じゃ帰ろっか」

「うん」

「ねぇ、舞香僕は本当に君が好き。だから‥」

「あのさ」

「な、何?」

「私達、一旦距離置かない?」

「‥え?」

「晋也にはもっといい人がいる気がする」

「そんなことっ‥!」

「聞いてっ!」

「‥」

「私も晋也が好きだけど一度、離れてちゃんと考えたい。だから、時間を頂戴?」

「‥その間、別れるってこと?」

「‥そう、なるかな」

「‥嫌だけど‥わかった。舞香を信じて待つ」

「ありがとう。だから、月曜日からは一緒に帰るのやめよ?」

「‥わかった」

「じゃ、私こっちだから。バイバイ」

「バイ‥バイ」

このバイバイが本当のバイバイになる気がした




この脱力感はなんだろう。
家に帰って、すぐベットに横になった

携帯を見ると緑色のランプが付いている
メールだ。


ーー
送信者 梅野さん

いきなりごめんね 明日空いてるかな?
よかったら買い物に付き合って欲しいの
お返事待ってます
ーー


ーー
宛先 梅野さん

うん。いいよ。何時にどこいけばいい?
ーー

今の僕には断る理由がない

ーー
送信者 梅野さん

本当に!?よかった(^_^*)
じゃ12時に駅の喫茶店で!
ーー

ーー
宛先 梅野さん

わかった
ーー

買い物か。何を買うんだろう




土曜、いつもよりもゆっくり起きる
睡眠時間は充分なはずだが眠たい
あー12時には駅に行かないと。
朝ごはんを食べて着替えて外に出る
ちょっと厚着をしすぎたかな?
まだまだ寒い日の感覚で服を選んでしまう

11時45分 少し早めに付いた

辺りを見渡すと‥居た


「百合さん おはよ!ってもうこんにちはかな」

「晋也くん!こんにちは‥だね。いきなりごめんね。迷惑じゃなかった?」

「大丈夫だよ、どこに買い物行くの?」

「まずは文房具屋さんに行きたいの!」

「いいよ」

最初は文具屋さんへ行きその後は本屋さん
流行りのクロワッサンを食べたり
ゲームセンターへ行って百合にぬいぐるみを
取ってあげたり‥

いつのまにか辺りの景色はオレンジ色になっていた

「そろそろ帰ろうか」

「こんな時間まで付き合ってもらってごめんね。でもすごく楽しかった!」

「僕もだよ。‥ねぇ百合」

「なに?」

「付き合おうか。僕達。」

「‥え?だって舞香ちゃんは‥」

「実は昨日別れたんだ」

「‥そっか。こんな事言ったら舞香ちゃんに悪いけど嬉しいな」

何故告白したのかわからない
好きなのかもわからない

「だけど付き合う事は出来ないよ」

「‥え?」

「付き合えるのは嬉しいよ、だけど別れたばっかりでしょ?そんなすぐに諦められないでしょ」

「‥」

「だからちゃんと諦められたら言ってほしいな」

「‥うん」

モヤモヤした気持ちをすっきりしたくて伝えてしまった

この日から毎日舞香にメールを送った
「考えはどうかな?」
「テスト結果悪かったよー」
「この前のしんぼく(アニメの題名)見た?」

内容はなんの変哲もないものばかり
そしてこれらには一度も返事は来なかった


ある日の学校
オタク仲間の小平と大木

小「うぉい!最近どうだ?ラブラブかぁ!?」

大「どうなんだぁ~?」

「だいぶ前に別れたよ」

小「お、そ、そうなんだ‥」

大「おぅ」

「なんだよ!湿っぽいな!うらぁ!」

小平の股間を思っ切り掴んでやった

「んぉぉぉぉおおぉぉ????????お前ぇ????子孫を残す活動が出来なくなったらどーすんだっ????」

「大丈夫だよ 一生使う事無いから」

小「なんだとっ!調子に乗るなぁ!」

これがやっぱり楽しいな




昼休み、よそのクラスの友達に

「お前さ、和田と別れたの?」

と聞かれた

「うん?そうだけど?」

「俺さ同じ部活なんだけど和田さんにお前の話しようとすると眉ひそめるんだよね、ちと怖い」

「おい僕の話すんなよ」

「わりぃわりぃ」

そうか‥話されるの嫌なんだろうな
待っている間、百合に付き合おうなんて
言っちゃったし‥


結局、卒業するまで舞香と話しをする事も
連絡する事もなかった

百合とは一度付き合ったが長くは続かなかった。
百合との付き合いは殆ど知られる事になり
恐らく、舞香にも知られていたと思う





中学を卒業して僕は私立の男子校に入った
公立受験に失敗して滑り止めで受けた学校
正直、まだ舞香の事を忘れられていないが
忘れる為に新しい恋愛をしようと思った
が、男子校。

ん?正直に‥?正直‥

『正直過ぎるのは損するよ』





あっ






僕は自分がスッキリしたくて
自分の都合で伝えてしまった。

「正直」は良い事かと思ってたけど‥

なんでも正直に伝えれば良いわけじゃない

嘘をつかなきゃいけない時もある

わざわざ嘘をつかなくても黙っていれば良いじゃ無い

黙っていれば‥

おしゃべり好きの僕には到底無理だった。

友達にも恋人にも正直に、思ったまま伝えていた。

気持ち、言葉、行動全て

思い返せば辛辣な態度をとっていたと思う

でも、それが『善』だと

気を使って優しい言葉に言い換える事が

いけない事だと思い「込んで」いた




高校生活を送りながら
声優の養成所に通っていた
高校ですら奨学金を使う程お金がないのに
養成所に行く事を許してくれた。
もし、高校で恋愛をしていたら
そっちに気をとられてしまって
本来やりたかった事に目を向けていなかったと思う
後付けの理由だけど男子校でよかったかもしれない


僕は相変わらずアニメや漫画が好きで
趣味の範囲は拡大していた




ある時、昔の漫画が欲しくなって
中野にある老舗に向かった
これくらいの場所に来ないと見つからない程古い漫画

「いやーやっぱたっくさんあるなー」

僕が生まれる前に出た作品に対しても
思わず懐かしーと言ってしまう
世代の人に聞かれたら怒られてしまうかな(笑)

あ、これは一週間前に出たばかりの漫画!
もう中古で販売されてるのか

あ、これはしんぼくじゃないか
中学の時にはアニメをよく見てたなー

あ、この漫画は人気のないやつだ
にしても目当ての漫画が見つからない
歩き疲れたなぁ、あそこの店を見たら
一旦コーヒーでも飲んで休憩しよう

「いらっしゃいませー」

うわぁ 地震が来たら大変そうなくらい
本が並んでいる 自分の家にもこれくらい並べたい
気持ちいいだろうなー
欲しい本の出版社を改めて携帯で調べた

「この辺かー えぇ~と‥」

色んな作品に目移りしてしまう
あぁ、探さないと。
足も痛くなってきたし早く買って座りたい
あ!この漫画はっ!

「同じ人が書いてるやつだ!じゃあこの辺に‥」

あ!と、思ったその瞬間
後ろから「あの」柔らかい風が吹いた







え!?もしかして‥!?








後ろを見ると目と鼻の先には本棚がある

「なんだ‥」

すると目の高さにある本棚に見覚えのある本が



「あ。あの時、漫画買うの忘れてたなぁ」

新刊だった本は古本になってしまっていた
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