8時間の生き直し

yolu

文字の大きさ
4 / 8

第4話 死神と陽キャ

しおりを挟む
 僕らは人混みを避けるため、繁華街を避け、裏道を使って移動をする事にした。

「つか、ファントムって至る所にいるわけか。ぜんぜん気付いてなかったかも」
『事故現場とかに多いから、意識しないと見えないと思うよ? 羨ましい気持ちとか、妬ましい気持ちの具現化だから、幽霊ともちょっと違うのかもね。それにさ、基本的には大人しいんだよ? ほとんど動かないし。だけど、死神が憑いた人間には大反応で寄ってきちゃうんだよねぇ』

 あちらこちらと視線を配りながら梶くんが言う。
 ヴィオは僕と梶くんの肩を掴んでふわふわとついていて、宇宙飛行士みたいだ。
 僕が眺めていると、ヴィオは僕に視線を投げて、愛らしく首を傾げてくれる。

「なるほどねー。あ、奥の路地にいるわー。なんかこっちに来たそうだけど、移動できんみたいね。よしよし!」

 人の背中でしか移動できないと知ったからか、少し心に余裕ができたようで、まじまじとファントムを眺めて、頷いている。

『ね、なんでお姉さんはタイガって呼んで、友達はトラって呼ぶの?』

 ヴィオの質問に、梶くんは小さく肩をすくめて見せた。

「んー、最初はさ、名前が大河だから、タイガーだったんだけど、オレ、猫派なのね。で、特にトラ猫が好きで、それでトラになった。あ、トラって呼んでよ」
『タイガーからの虎かと思ったら、トラ猫好きからトラになるなんて。かわいいね、トラちゃん』
「トラちゃん、はやめて。なんだろ、なんかムズってするっ」

 僕は二人の会話を聞きながら笑ってしまう。
 僕もこんな風に人と話すことができたら、少しはマシだったんだろうか。

「ゆきちゃんは、映画、どんなのがいい?」

 梶くんからの呼ばれた僕だけど、思わず立ち止まってしまった。

「お、なんか、好みとかある?」
「え、いや、今、ゆきちゃんって……」
「ヴィオちゃんがそう呼んでるし、オレのことトラちゃんだし、もう、おそろいにしよーぜ」

 これが、陽キャというヤツなのか……!

「えっとね、今の時間からやってるのは、タヌえモンの妖怪陣取り、と、青春系のやつと……」

 再び梶くんが歩きながらスマホを眺めていると、ヴィオはそれを覗き込みながら、画面に指をさした。

『あたし、タヌえモンがいい!』
「これ、過去のリメイクだけど、いいの、ヴィオちゃん?」
「僕も、ちょっとタヌえモンは……」
『タヌえモン、好きなの! それにしよ、ね?』

 なんでタヌえモン……と言いつつも、女の子のお願いは聞き逃せないようで、見る映画はそれに決まってしまった。
 僕は嫌いだ。
 ……と言えなかったのも悪いんだけど。

『あたし、タヌえモン、可愛くて大好き! ゆきちゃんは?』

 首に腕を回して背中に張り付いてくる。

「ちょ、重いよ」
『ありえないんですけどぉ。空気よりも存在感のない死神のあたしが、重いわけないじゃーん』

 言われてみたらそうだ。
 だけど、ヴィオがぶら下がる背中はほんのりと温かくて、少し重みがあって、何故かそこにいることを感じてしまう。
 くっついてくるヴィオを改めて見るけれど、彼女は迷惑そうな僕をそっちのけで、タヌえモンがどれだけ好きかを語ってくる。

『ヤバい。ちょー楽しみ! どんな感じになってるのかなぁ……』
「ヴィオちゃん、ウキウキだねぇ。フルCGらしいし、結構いい感じかも」

 二人の楽しげな声を聞きながら、僕は、10年と口の中で呟いた。


 ──10年。


 あの日から10年も経ったのか……。
 幼馴染が大好きだったタヌえモン。
 だから、僕は嫌いになった。

 よりによって、スミレと見た映画のリメイクなんて。
 今日が僕の最後の日だからだろうか……。
 皮肉が効きすぎてると、僕は思う。

「死にそうな顔してるけど……って、死にそうか!」
「え、いや、うん」
「わりぃ! ごめ……オレ、ちょっと調子に乗った……」
「ち、違うからっ。その、昔、幼馴染と一緒に、この映画、見ててさ」
「へぇ、幼馴染って、もしかして、女子的な?」
「そうだね、女子は女子、……だね」
「え? オレ、男だけど恋バナとかマジ好きなんだけど」
「いいからいいから! ほら、行こう」

 僕が足を早めると、梶くんが小走りについてくる。
 僕の雰囲気を察してか、梶くんはスマホをいじりだす。
 気の使い方が上手すぎて、僕は爪先を見ながら歩くので精一杯だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕《わたし》は誰でしょう

紫音みけ🐾新刊2月中旬発売!
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。 「自分はもともと男ではなかったか?」  事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。  見知らぬ思い出をめぐる青春SF。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜

葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在 一緒にいるのに 言えない言葉 すれ違い、通り過ぎる二人の想いは いつか重なるのだろうか… 心に秘めた想いを いつか伝えてもいいのだろうか… 遠回りする幼馴染二人の恋の行方は? 幼い頃からいつも一緒にいた 幼馴染の朱里と瑛。 瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、 朱里を遠ざけようとする。 そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて… ・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・ 栗田 朱里(21歳)… 大学生 桐生 瑛(21歳)… 大学生 桐生ホールディングス 御曹司

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

処理中です...