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3日目は釣り日和【釣り編3】
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アレッタの悲鳴があがる3分前────
いつまでも変わらない湖面の動きに苛立ったアレッタは、心のざわめきを落ち着かせるためにエンの背中を必死に撫でていた。への字に曲がったアレッタの口も、3回撫でればゆるんでしまう。目尻も下がり、にっこにこだ。
ふぇふぇふぇという不気味な笑い声に、エイビスは軽く引きながらアレッタを見やった。
「……アレッタ、そんなにブロディの手触りが好きなのかい?」
「もちろん! エンの手触りは最高なんだ……
ふかふかで、やわらかくて、匂いもなんていうんだろう…焦げたパンのような、そんな匂いがするんだ……」
抱え上げて額の香りを嗅ぐアレッタだが、これは今朝、お風呂に入れたことによる結果だろう。
だがあれは入れたというより、飛び込んだに近い。アレッタがお湯に飛び込んだのを見て、エンは楽しいところだと勘違いし、お湯の中へと落ちてきた。
結果、洗われることに……
エンにとっては災難だったはずだ。あの泡の上に乗れると思ったのだから。
初めての水、そしてお湯、さらにお風呂。
ごしごしとエンの毛皮は洗われ、お湯でしっかり流されたあとのエンは意外だった。
湯船に浮きながら、脱力し出したのだ。
ひどく緊張して、疲れたからではない。エンはお風呂の魅力を知ってしまったのである。
エンを筆頭に、アレッタ、ネージュはのんびりと湯に浸かり、薬草を揉み出したエキスを肌に毛に染み込ませ、ゆったりと朝風呂を満喫した。
おかげでエンの獣臭はフローラルな香りに。さらに日光を浴びてより猫らしい焦げたパンの香りに変化していた。
「僕にはイチゴみたいな甘酸っぱい香りしかしないからね。魔力のない君だとそんな香りなのかな……」
エイビズが白手袋のままエンに手を伸ばしてみる。
それに違和感があるのか、エンは伸ばされた彼の指にがぶりと食いついた。
「……ちょっ、あ、え、アレッタ、何これ、こんな子初めてっ…痛い、痛いってば!」
振り解こうとも噛みつき離れないエンに、エイビスは狼狽するばかりだ。
咥えたままぶら下がるエンをエイビスは動揺しながらアレッタに差し出すも、アレッタは彼を見ようとしない。
なぜなら、アレッタの竿の先が引っ張られたのだ……!
「ウキが揺れてるぞ、エイビスっ!!!!」
アレッタが必死に竿を掴むが、今はただの幼女。魚の力のほうが強い。
だがエイビスの左手はエンに噛まれたままだ。うまく身動きが取れない。
「ちょ、ちょっとまって……いた、痛いってば!」
「魚がかかってる。魚ってこんなに強いのかっ?」
「いた、ちょっと、アレッタ……」
「引きが強いなっ! エ、エイビス、どうしたらいいっ?」
「僕のコレも、どうしたらいいっ!?」
エイビスはエンを指に繋げたまま、引きずられる彼女の背後に回り、竿を掴んだ。アレッタの言う通り引きが強い。相当大きそうだ。
「アレッタ、魚の動きに合わせて竿を揺らして……魚が疲れてきたら、リールを回す。いい?」
「わかった……こう?」
「そうそう! 上手だね、アレッ」
「ぎゃぁぁぁぁ!!! 魚が跳ねたっ!!!! わあぁぁぁ、なにこれ、なにこれっ!!!!」
初めて見えた魚に怯え叫ぶアレッタをなだめ、竿を操るエイビス。
彼の左手にはまだエンが噛み付いたままだ。
だが、今日のランチのメイン食材を失うわけにはいかない……!
アレッタの補助をしていると、エイビスの釣竿に動きがあった。
ウキがちゃぽっと沈んだのを彼は見逃さない。
湖に向かって引きずられる竿を慌てて掴んだそのとき、黒い小さな影がふたりの前を飛んでいった。
「「エーーーーンっっ!!!!!」」
エイビスが勢いよく手を振り回したせいで遠心力がかかり、手袋ごとエンが飛んでいったのだ。
ふたりでエンの名を叫ぶが、魚も逃がせない。
「え、エイビス、竿、持てるか? 私はエンを助けに」
飛び込もうと踏み出すアレッタの服を掴み、エイビスは湖面に仮面をしゃくった。
「すごく上手に泳いでる」
エンは今朝お風呂に入った成果があったようだ。
エイビスの手袋をくわえたまま、必死に犬かきならぬ猫かきをしている。
器用に泳ぎきると、水切りをする。ぶるぶると振るとエンの小さな全身から水滴が飛び散り、毛が少しふくらんだ。そのまま少し歩き、大きめの平らな石を見つけ、その上で丸まり寝始める。
「よっぽどエイビスの手袋が気に入ったんだな」
「そうみたいだね」
エイビスはシャツをつまみ、袖を引っ張り整えた。
紳士は小さなところにも気を抜かないようだ。
「アレッタ、ほら、しっかりリール巻いて」
エイビスの声に、アレッタは引きが弱り始めた糸を巻き上げ始めた。
だがひと巻きする度に近づいてくあのる魚影に、アレッタは怯えてしまう。あのビチビチと揺れ動く様が異様に見えるのだ。
だが、これが今日のランチのメインっ!!!!
アレッタは想像できない魚の味をイメージし、口の中を涎でいっぱいにしながら、一生懸命リールを巻き出した。
いつまでも変わらない湖面の動きに苛立ったアレッタは、心のざわめきを落ち着かせるためにエンの背中を必死に撫でていた。への字に曲がったアレッタの口も、3回撫でればゆるんでしまう。目尻も下がり、にっこにこだ。
ふぇふぇふぇという不気味な笑い声に、エイビスは軽く引きながらアレッタを見やった。
「……アレッタ、そんなにブロディの手触りが好きなのかい?」
「もちろん! エンの手触りは最高なんだ……
ふかふかで、やわらかくて、匂いもなんていうんだろう…焦げたパンのような、そんな匂いがするんだ……」
抱え上げて額の香りを嗅ぐアレッタだが、これは今朝、お風呂に入れたことによる結果だろう。
だがあれは入れたというより、飛び込んだに近い。アレッタがお湯に飛び込んだのを見て、エンは楽しいところだと勘違いし、お湯の中へと落ちてきた。
結果、洗われることに……
エンにとっては災難だったはずだ。あの泡の上に乗れると思ったのだから。
初めての水、そしてお湯、さらにお風呂。
ごしごしとエンの毛皮は洗われ、お湯でしっかり流されたあとのエンは意外だった。
湯船に浮きながら、脱力し出したのだ。
ひどく緊張して、疲れたからではない。エンはお風呂の魅力を知ってしまったのである。
エンを筆頭に、アレッタ、ネージュはのんびりと湯に浸かり、薬草を揉み出したエキスを肌に毛に染み込ませ、ゆったりと朝風呂を満喫した。
おかげでエンの獣臭はフローラルな香りに。さらに日光を浴びてより猫らしい焦げたパンの香りに変化していた。
「僕にはイチゴみたいな甘酸っぱい香りしかしないからね。魔力のない君だとそんな香りなのかな……」
エイビズが白手袋のままエンに手を伸ばしてみる。
それに違和感があるのか、エンは伸ばされた彼の指にがぶりと食いついた。
「……ちょっ、あ、え、アレッタ、何これ、こんな子初めてっ…痛い、痛いってば!」
振り解こうとも噛みつき離れないエンに、エイビスは狼狽するばかりだ。
咥えたままぶら下がるエンをエイビスは動揺しながらアレッタに差し出すも、アレッタは彼を見ようとしない。
なぜなら、アレッタの竿の先が引っ張られたのだ……!
「ウキが揺れてるぞ、エイビスっ!!!!」
アレッタが必死に竿を掴むが、今はただの幼女。魚の力のほうが強い。
だがエイビスの左手はエンに噛まれたままだ。うまく身動きが取れない。
「ちょ、ちょっとまって……いた、痛いってば!」
「魚がかかってる。魚ってこんなに強いのかっ?」
「いた、ちょっと、アレッタ……」
「引きが強いなっ! エ、エイビス、どうしたらいいっ?」
「僕のコレも、どうしたらいいっ!?」
エイビスはエンを指に繋げたまま、引きずられる彼女の背後に回り、竿を掴んだ。アレッタの言う通り引きが強い。相当大きそうだ。
「アレッタ、魚の動きに合わせて竿を揺らして……魚が疲れてきたら、リールを回す。いい?」
「わかった……こう?」
「そうそう! 上手だね、アレッ」
「ぎゃぁぁぁぁ!!! 魚が跳ねたっ!!!! わあぁぁぁ、なにこれ、なにこれっ!!!!」
初めて見えた魚に怯え叫ぶアレッタをなだめ、竿を操るエイビス。
彼の左手にはまだエンが噛み付いたままだ。
だが、今日のランチのメイン食材を失うわけにはいかない……!
アレッタの補助をしていると、エイビスの釣竿に動きがあった。
ウキがちゃぽっと沈んだのを彼は見逃さない。
湖に向かって引きずられる竿を慌てて掴んだそのとき、黒い小さな影がふたりの前を飛んでいった。
「「エーーーーンっっ!!!!!」」
エイビスが勢いよく手を振り回したせいで遠心力がかかり、手袋ごとエンが飛んでいったのだ。
ふたりでエンの名を叫ぶが、魚も逃がせない。
「え、エイビス、竿、持てるか? 私はエンを助けに」
飛び込もうと踏み出すアレッタの服を掴み、エイビスは湖面に仮面をしゃくった。
「すごく上手に泳いでる」
エンは今朝お風呂に入った成果があったようだ。
エイビスの手袋をくわえたまま、必死に犬かきならぬ猫かきをしている。
器用に泳ぎきると、水切りをする。ぶるぶると振るとエンの小さな全身から水滴が飛び散り、毛が少しふくらんだ。そのまま少し歩き、大きめの平らな石を見つけ、その上で丸まり寝始める。
「よっぽどエイビスの手袋が気に入ったんだな」
「そうみたいだね」
エイビスはシャツをつまみ、袖を引っ張り整えた。
紳士は小さなところにも気を抜かないようだ。
「アレッタ、ほら、しっかりリール巻いて」
エイビスの声に、アレッタは引きが弱り始めた糸を巻き上げ始めた。
だがひと巻きする度に近づいてくあのる魚影に、アレッタは怯えてしまう。あのビチビチと揺れ動く様が異様に見えるのだ。
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