27 / 65
第29話 エルフと過ごす朝
しおりを挟む
目が覚めたら、なんと、目の前にイウォールが!!!
……なんてことはなく。
彼らが家に帰る方法はたくさんあったのだが、酔っ払いが2メートルの人間を抱えてマンションに入るのは骨が折れる(物理的にも)。
ということで、莉子は客間を解放するとこにした。
莉子が過ごす部屋と、客間は分かれている。
それは過去二世帯住宅だったことが大きな理由だ。
客間は、過去に祖父母が暮らしていた場所でもあり、お風呂も簡単なキッチンも備えてある。
備え付けのシングルベッドが2つ、さらにソファベッド、折り畳みの簡易ベッドを駆使して、4人は宿泊となった。
莉子は少し早めに起きると、朝のルーチンをこなし、朝食の準備にとりかかる。
「野菜たくさんのスープとパンでいいかなぁ……しこたま飲んでたからなぁ……」
眠い目を擦りつつ、スープの準備をしていると、居住スペースから、カフェへ降りる階段を歩く音がする。
「懐かしいな」
昔はよく聞こえた音だ。
踏み締め方で誰の足音かわかったものだが、今日はエルフの足音なので、それが誰かはわからない。
ただ慎重に、丁寧に下りる感じから、イウォールではないかと、莉子は思う。
カフェの厨房にするりと入ってきたのは、
「リコ、おはよう。早起きなんだな」
イウォールだ。
「おはようございます、イウォールさん。調子はどうですか?」
「問題ない。私も手伝おう」
「いいですよ。今、コーヒーいれますね」
「だめだ、リコ。2人で用意するのがいい。新婚みたいでいいと思うんだ」
いつもなら言い切る前に殴られるか、なにかのアクション(物理)があるのだが、今日はそれはなかった。
莉子は黙ったまま、それでもニコニコとコーヒーを入れていく。
「はい、イウォールさん。……イウォールさんは、よくそんなにペラペラと妄想を垂れ流せますね」
「妄想は口に出すと、本当になるというだろう。私は本当にしたいからな」
「イウォールさんが思う人じゃないです、あたしは」
莉子から手渡されたコーヒーを受けとりながらも、イウォールは彼女の手をそっと掴む。
「それならば、リコの思う人になればいい。私はリコの全てが好きだ」
真剣な目の奥に、優しさがにじむ。
莉子はその目を見つめながら、怪しい壺とか買わされないだろうかと心配になる。
だが、思う人になればいい。だなんて、言ってくれる人が今までいただろうか。
莉子は頭のなかでその言葉を反芻する。
「思う人になればいいか……」
イウォールはシンクによりかかりながら、長い髪を耳にかけ、美味しそうにコーヒーを啜っている。
見慣れない現実のはずなのに、こういう現実もいいなと、莉子はちょっと思ってしまった。
「コーヒー飲み終わったら、手伝ってもらってもいいですか?」
莉子の申し出に、イウォールは微笑みながら頷いた。
1時間ごとに降りてくるエルフたち。
この厨房が集合場所になるのもあって、どんどん厨房が狭くなっていく───
というのも、二世帯の分岐点が、この厨房なのだ。
厨房左右にある階段が、二世帯を分け、繋げているのだ。
そのため、莉子が子供の頃は、朝食は厨房だったし、夕食もこの厨房だった。
莉子が独りになってからは、どこということもなく始まり、終わっていたが、エルフがきたことで、またこの厨房が始まりの場所になっている──
それに微笑ましく思えたのは、二人まで。
イウォールとアキラが厨房で談笑しながら手伝いを始めたところで、ケレヴの登場に、ぐっと厨房が縮んだ。
「……でかい人たちが並ぶと、狭いんですね、ここ。はい、ケレヴさん、コーヒーあげるんで、店内に移動してください」
「じゃ、僕はテーブルの準備しておきますね」
「じゃ、俺は新聞でも読んでるわ」
「ケレヴも動いてくださいよ。体、大きいんですから」
アキラにせっつかれながら出ていく姿が、兄弟のよう。
イウォールはスープ作りをしてくれており、火を止めたことから、準備は万端。
「最後はトゥーマか……」
呆れた声でイウォールが呟いたとき、リズミカルに階段を降りる音がする。
「まじダリィ……」
現れたトゥーマに莉子は悲鳴をあげた。
なぜなら……
「トゥーマさん、服着て、服っ!!」
シャワーを上がってすぐに降りてきたのか、濡れた頭に半裸、下はかろうじて履いているものの、綺麗な方の上半身は、莉子に刺激が強すぎる!
素早い動きでイウォールの後ろに隠れるが、莉子の心臓のドキドキはおさまらない。
「び、びっくりした……」
「リコ、あの程度で驚かれては困る。トゥーマは基本裸族だ」
「……ん?」
「裸族」
「ん?」
「リコは知らないのか? 私はこの世界で知ったのだが、部屋に入ると服を脱ぐ者のことを指すと聞いたが……」
「……やっぱり、その裸族なんだ……」
「この前のときはそれは凄かった。かは」
「やめて! なんか妄想が穢れる!」
「妄想が、穢れる……?」
改めて服を着たトゥーマにコーヒーを渡し、朝食の準備を整える。
眠たそうな顔のみんなを前に、イウォールが宣言をした。
「今日は、エルフに優しい店内に模様替えだ。よろしく頼む。では、いただこうか」
今日の1日も長そうだ。
……なんてことはなく。
彼らが家に帰る方法はたくさんあったのだが、酔っ払いが2メートルの人間を抱えてマンションに入るのは骨が折れる(物理的にも)。
ということで、莉子は客間を解放するとこにした。
莉子が過ごす部屋と、客間は分かれている。
それは過去二世帯住宅だったことが大きな理由だ。
客間は、過去に祖父母が暮らしていた場所でもあり、お風呂も簡単なキッチンも備えてある。
備え付けのシングルベッドが2つ、さらにソファベッド、折り畳みの簡易ベッドを駆使して、4人は宿泊となった。
莉子は少し早めに起きると、朝のルーチンをこなし、朝食の準備にとりかかる。
「野菜たくさんのスープとパンでいいかなぁ……しこたま飲んでたからなぁ……」
眠い目を擦りつつ、スープの準備をしていると、居住スペースから、カフェへ降りる階段を歩く音がする。
「懐かしいな」
昔はよく聞こえた音だ。
踏み締め方で誰の足音かわかったものだが、今日はエルフの足音なので、それが誰かはわからない。
ただ慎重に、丁寧に下りる感じから、イウォールではないかと、莉子は思う。
カフェの厨房にするりと入ってきたのは、
「リコ、おはよう。早起きなんだな」
イウォールだ。
「おはようございます、イウォールさん。調子はどうですか?」
「問題ない。私も手伝おう」
「いいですよ。今、コーヒーいれますね」
「だめだ、リコ。2人で用意するのがいい。新婚みたいでいいと思うんだ」
いつもなら言い切る前に殴られるか、なにかのアクション(物理)があるのだが、今日はそれはなかった。
莉子は黙ったまま、それでもニコニコとコーヒーを入れていく。
「はい、イウォールさん。……イウォールさんは、よくそんなにペラペラと妄想を垂れ流せますね」
「妄想は口に出すと、本当になるというだろう。私は本当にしたいからな」
「イウォールさんが思う人じゃないです、あたしは」
莉子から手渡されたコーヒーを受けとりながらも、イウォールは彼女の手をそっと掴む。
「それならば、リコの思う人になればいい。私はリコの全てが好きだ」
真剣な目の奥に、優しさがにじむ。
莉子はその目を見つめながら、怪しい壺とか買わされないだろうかと心配になる。
だが、思う人になればいい。だなんて、言ってくれる人が今までいただろうか。
莉子は頭のなかでその言葉を反芻する。
「思う人になればいいか……」
イウォールはシンクによりかかりながら、長い髪を耳にかけ、美味しそうにコーヒーを啜っている。
見慣れない現実のはずなのに、こういう現実もいいなと、莉子はちょっと思ってしまった。
「コーヒー飲み終わったら、手伝ってもらってもいいですか?」
莉子の申し出に、イウォールは微笑みながら頷いた。
1時間ごとに降りてくるエルフたち。
この厨房が集合場所になるのもあって、どんどん厨房が狭くなっていく───
というのも、二世帯の分岐点が、この厨房なのだ。
厨房左右にある階段が、二世帯を分け、繋げているのだ。
そのため、莉子が子供の頃は、朝食は厨房だったし、夕食もこの厨房だった。
莉子が独りになってからは、どこということもなく始まり、終わっていたが、エルフがきたことで、またこの厨房が始まりの場所になっている──
それに微笑ましく思えたのは、二人まで。
イウォールとアキラが厨房で談笑しながら手伝いを始めたところで、ケレヴの登場に、ぐっと厨房が縮んだ。
「……でかい人たちが並ぶと、狭いんですね、ここ。はい、ケレヴさん、コーヒーあげるんで、店内に移動してください」
「じゃ、僕はテーブルの準備しておきますね」
「じゃ、俺は新聞でも読んでるわ」
「ケレヴも動いてくださいよ。体、大きいんですから」
アキラにせっつかれながら出ていく姿が、兄弟のよう。
イウォールはスープ作りをしてくれており、火を止めたことから、準備は万端。
「最後はトゥーマか……」
呆れた声でイウォールが呟いたとき、リズミカルに階段を降りる音がする。
「まじダリィ……」
現れたトゥーマに莉子は悲鳴をあげた。
なぜなら……
「トゥーマさん、服着て、服っ!!」
シャワーを上がってすぐに降りてきたのか、濡れた頭に半裸、下はかろうじて履いているものの、綺麗な方の上半身は、莉子に刺激が強すぎる!
素早い動きでイウォールの後ろに隠れるが、莉子の心臓のドキドキはおさまらない。
「び、びっくりした……」
「リコ、あの程度で驚かれては困る。トゥーマは基本裸族だ」
「……ん?」
「裸族」
「ん?」
「リコは知らないのか? 私はこの世界で知ったのだが、部屋に入ると服を脱ぐ者のことを指すと聞いたが……」
「……やっぱり、その裸族なんだ……」
「この前のときはそれは凄かった。かは」
「やめて! なんか妄想が穢れる!」
「妄想が、穢れる……?」
改めて服を着たトゥーマにコーヒーを渡し、朝食の準備を整える。
眠たそうな顔のみんなを前に、イウォールが宣言をした。
「今日は、エルフに優しい店内に模様替えだ。よろしく頼む。では、いただこうか」
今日の1日も長そうだ。
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています
黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。
失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった!
この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。
一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。
「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」
底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜
k-ing /きんぐ★商業5作品
ファンタジー
2023/5/26 男性向けホトラン1位になりました!
読みやすくするために一話の文字数少なめです!
頭を空っぽにして読んで頂けると楽しめます笑
王族は英才教育によって才能を開花する。そんな王族に生まれたアドルは成人しても才能が開花しなかった。
そんなアドルには友達と言える人は誰もおらず、孤独な日々を送っていた。
ある日、王である父親に好きに生きるようにと、王族から追放される。
ただ、才能に気づいていないのは王のみだった。
地図で一番奥にある辺境の島から、王国に戻りながら旅をしたら才能に気づくだろう。
そんなつもりで旅をしたが、着いた島は地図上にない島だった。
そこには存在しないと思われるもふもふ達が住む島だった。
帰ることもできないアドルはもふもふ達と暮らすことを決意する。
あれ?
こいつらも少し頭がおかしいぞ?
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる