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第34話 なんでそうなるの??
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仁王立ちの莉子の前に、5人のエルフが背中を丸めて座っている。
莉子の腕はしっかり組まれ、目は細く、じっとりと見据える。
「リコ、ほら、早く休んだ方が……」
「イウォールさん、生憎、明日は定休日です。ストックもあるので、完全休業日にできるので、ご心配なく」
再び身を縮めたイウォールだが、エリシャが恐る恐る声をあげる。
「あの、オーナー、」
「はいっ?」
「お、怒らないでよぅ……あ、あの、なんでここにケレヴたちがいるんです?」
「そ、それは、その……」
言葉を濁した莉子だが、ケレヴがきっぱり言い切った。
「ラハ製薬がカフェの土地を買い上げて、立退き勧告。それを止めるのに、俺たちが来てる」
「ラハが? なんでここを!?」
「俺に言うなよ」
「なら、トゥーマが上書きで買い上げればいいじゃないのよ」
「ラハは絶対オレに売らないってわかってんだろ」
「それでもよ! だって、あたし、嫌よ、ここがなくなるの! あたし、ここのカフェが大好きなの! もちろん、オーナーが好きだからなんだけど。絶対、立退きなんてさせないしっ! ね、ここの、モーニングコーヒーって飲み物が本当に美味しいの! みんな飲んだ?」
エリシャの笑顔に、つい莉子の顔が緩んでしまう。
心の底から『好きです』と告白されたようで、それこそ、イウォールの気持ちと同じに、真っ直ぐな気持ちだ。
肌で感じる莉子は、胸が熱くなる。
「……エルフさんは、みんな、なんでそんなに気持ちがストレートなんですか?」
莉子が隣のテーブルから椅子を引っ張り、腰をおろした。
それを見計らい、アキラはカウンターに入るとお茶の準備をし始める。
空気を読むのが本当に上手な子だと、横目で見ながら、莉子は思う。
「そうだな。私たちは嘘が苦手なんだ」
イウォールがぼそりと言う。
それは莉子にとっていいことに思うのだが、そういうわけではないようだ。
「そうね。あたしたちは、嘘がつけないの。魔力があるせいで」
「魔力のせい……?」
首をかしげる莉子に、エリシャは自身のイヤリングから米粒ほどの碧い涙型の石を外した。
「魔力があると、心で強く思ったことが、音になって届きやすくなるのよ。それこそ、さっき、オーナーが叫んだでしょ? そのときの心の声もね」
「……え。な、何が聞こえました!? え!?」
「心の断片が垣間見えちゃうのって、恥ずかしいし、見せたくないじゃない。だからあたしたちは石を身につけて、ぼやかすの」
エリシャは小声で呪文を唱えると、その石を莉子の髪飾りへはめ込んだ。
「これで、よっぽどのことがないかぎり、心の声は漏れないわ」
「……あ、ありがとうございます」
イウォールは莉子の髪留めの仕上がりをみて、満足そうにうなずいている。
「この、心を隠すのが巧妙なのが、ラハ、なんだなぁ……」
背伸びをしながら、トゥーマがぼやく。
「その石あんだろ? その魔術式、うちはね、イウォールが最近、ようやく完成させたんだ。だけど、ラハはとっくにその魔術式を完成させてて、近隣のエルフの集落はもちろん、他種族を騙し続けていたのよ。今、それもあって、ラハの立場はガタガタ。だからこそ、ここら一帯を手に入れて、なんかしようとしてるんだろうな、ってところまではオレも、わかってる」
「でも、それ以上が尻尾が掴めないんですよねぇ。はい、リコさん、お茶です。エリシャさんはご存知ないんですか? はい、お茶」
熱い湯飲みで指先を温めるように持つが、エリシャは小さく首を振った。
「……で、あんたたち4人が揃って、オーナーの店、どうしようとしているわけ」
「予定ではエルフを呼び込み、エルフに過ごしやすいカフェを作って、これから来る国王にアピールする」
イウォールが隠すことなく言ってしまうことに、莉子は驚いてしまった。
敵側の人に4人の目的をこれほどスラスラと話してしまっていいのだろうか……。
「リコ、心配か?」
ケレヴの声に、莉子はうなずいた。
「なぁに、ラハにバレるのは想定内ってことよ」
「……そう、なんですか!?」
「当たり前だろ。何をしたくて、ここの立退きをさせたいのかわからんからな。どこからか埃が立てば、また策も浮かぶしな」
「さすが、というべきなのか、なんなのか……私はノミの心臓なので、毎回ドキドキなんですけど……」
そう話している横で、エリシャが声を荒げた。
「なら、どちらがエルフを呼び込めるか、競争よ、イウォール! あんたには魔力でも勉学でも勝てなかったから、ここであんたよりオーナーの役に立って、あたしは勝つのっ!」
「何を言う、エリシャ。この私の座を、それこそリコの隣の座を誰が譲るものかっ! 絶対に負けない。いや、負けるわけがない。この私なのだからっ!」
莉子の知らぬ間に始まった、エリシャvsイウォール戦は、定休日明けの水曜日に開戦となる───
莉子の腕はしっかり組まれ、目は細く、じっとりと見据える。
「リコ、ほら、早く休んだ方が……」
「イウォールさん、生憎、明日は定休日です。ストックもあるので、完全休業日にできるので、ご心配なく」
再び身を縮めたイウォールだが、エリシャが恐る恐る声をあげる。
「あの、オーナー、」
「はいっ?」
「お、怒らないでよぅ……あ、あの、なんでここにケレヴたちがいるんです?」
「そ、それは、その……」
言葉を濁した莉子だが、ケレヴがきっぱり言い切った。
「ラハ製薬がカフェの土地を買い上げて、立退き勧告。それを止めるのに、俺たちが来てる」
「ラハが? なんでここを!?」
「俺に言うなよ」
「なら、トゥーマが上書きで買い上げればいいじゃないのよ」
「ラハは絶対オレに売らないってわかってんだろ」
「それでもよ! だって、あたし、嫌よ、ここがなくなるの! あたし、ここのカフェが大好きなの! もちろん、オーナーが好きだからなんだけど。絶対、立退きなんてさせないしっ! ね、ここの、モーニングコーヒーって飲み物が本当に美味しいの! みんな飲んだ?」
エリシャの笑顔に、つい莉子の顔が緩んでしまう。
心の底から『好きです』と告白されたようで、それこそ、イウォールの気持ちと同じに、真っ直ぐな気持ちだ。
肌で感じる莉子は、胸が熱くなる。
「……エルフさんは、みんな、なんでそんなに気持ちがストレートなんですか?」
莉子が隣のテーブルから椅子を引っ張り、腰をおろした。
それを見計らい、アキラはカウンターに入るとお茶の準備をし始める。
空気を読むのが本当に上手な子だと、横目で見ながら、莉子は思う。
「そうだな。私たちは嘘が苦手なんだ」
イウォールがぼそりと言う。
それは莉子にとっていいことに思うのだが、そういうわけではないようだ。
「そうね。あたしたちは、嘘がつけないの。魔力があるせいで」
「魔力のせい……?」
首をかしげる莉子に、エリシャは自身のイヤリングから米粒ほどの碧い涙型の石を外した。
「魔力があると、心で強く思ったことが、音になって届きやすくなるのよ。それこそ、さっき、オーナーが叫んだでしょ? そのときの心の声もね」
「……え。な、何が聞こえました!? え!?」
「心の断片が垣間見えちゃうのって、恥ずかしいし、見せたくないじゃない。だからあたしたちは石を身につけて、ぼやかすの」
エリシャは小声で呪文を唱えると、その石を莉子の髪飾りへはめ込んだ。
「これで、よっぽどのことがないかぎり、心の声は漏れないわ」
「……あ、ありがとうございます」
イウォールは莉子の髪留めの仕上がりをみて、満足そうにうなずいている。
「この、心を隠すのが巧妙なのが、ラハ、なんだなぁ……」
背伸びをしながら、トゥーマがぼやく。
「その石あんだろ? その魔術式、うちはね、イウォールが最近、ようやく完成させたんだ。だけど、ラハはとっくにその魔術式を完成させてて、近隣のエルフの集落はもちろん、他種族を騙し続けていたのよ。今、それもあって、ラハの立場はガタガタ。だからこそ、ここら一帯を手に入れて、なんかしようとしてるんだろうな、ってところまではオレも、わかってる」
「でも、それ以上が尻尾が掴めないんですよねぇ。はい、リコさん、お茶です。エリシャさんはご存知ないんですか? はい、お茶」
熱い湯飲みで指先を温めるように持つが、エリシャは小さく首を振った。
「……で、あんたたち4人が揃って、オーナーの店、どうしようとしているわけ」
「予定ではエルフを呼び込み、エルフに過ごしやすいカフェを作って、これから来る国王にアピールする」
イウォールが隠すことなく言ってしまうことに、莉子は驚いてしまった。
敵側の人に4人の目的をこれほどスラスラと話してしまっていいのだろうか……。
「リコ、心配か?」
ケレヴの声に、莉子はうなずいた。
「なぁに、ラハにバレるのは想定内ってことよ」
「……そう、なんですか!?」
「当たり前だろ。何をしたくて、ここの立退きをさせたいのかわからんからな。どこからか埃が立てば、また策も浮かぶしな」
「さすが、というべきなのか、なんなのか……私はノミの心臓なので、毎回ドキドキなんですけど……」
そう話している横で、エリシャが声を荒げた。
「なら、どちらがエルフを呼び込めるか、競争よ、イウォール! あんたには魔力でも勉学でも勝てなかったから、ここであんたよりオーナーの役に立って、あたしは勝つのっ!」
「何を言う、エリシャ。この私の座を、それこそリコの隣の座を誰が譲るものかっ! 絶対に負けない。いや、負けるわけがない。この私なのだからっ!」
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