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002.月
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まだ青く明るい、宵の空を大きな烏賊が泳いでいる。白い手足を伸縮させながら身体を捩って、優雅に。ゆったりと左右に振れながら昇る。
いかんな、と男が言い、慌てて口をつぐんだ。
「大丈夫です。ギャグだとは思っていませんから」
「そういう発言が出てくるんじゃあ、一瞬でも思ったということだよ」
壮年の男が頭を掻きつつ、指さした先には満月。そのまん丸の明るい月に烏賊がふんわりと近づいている。
何がいかんのか。
触腕を伸ばす烏賊が空を駆けた。それまでのゆっくりとした動きとは比べ物にならないくらい、素早く近寄ったかと思えば、月はその力強い腕の中にある。
骨はなく柔らかい。しかし、がっしりと触手に抱かれた黄色の円は、まるでせんべいのように端からがりがりと削られていく。形の悪い半月。ついでに中身もじゅるじゅると吸われていた。
途端に夜が一段、暗くなる。
***
別の日。
今夜は三日月だった。本日は蛸が泳ぎ、空の一部をスミが汚していた。
蛸が素早い動きで月へと近づく。今日は月もおとなしく食べられるばかりではない。
鋭利な月が煌めいた。同時に、蛸の脚は綺麗な断面を呈してカットされている。
遠くで重たい水音がした。蛸の脚が落ちているに違いなかった。
いかんな、と男が言い、慌てて口をつぐんだ。
「大丈夫です。ギャグだとは思っていませんから」
「そういう発言が出てくるんじゃあ、一瞬でも思ったということだよ」
壮年の男が頭を掻きつつ、指さした先には満月。そのまん丸の明るい月に烏賊がふんわりと近づいている。
何がいかんのか。
触腕を伸ばす烏賊が空を駆けた。それまでのゆっくりとした動きとは比べ物にならないくらい、素早く近寄ったかと思えば、月はその力強い腕の中にある。
骨はなく柔らかい。しかし、がっしりと触手に抱かれた黄色の円は、まるでせんべいのように端からがりがりと削られていく。形の悪い半月。ついでに中身もじゅるじゅると吸われていた。
途端に夜が一段、暗くなる。
***
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今夜は三日月だった。本日は蛸が泳ぎ、空の一部をスミが汚していた。
蛸が素早い動きで月へと近づく。今日は月もおとなしく食べられるばかりではない。
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遠くで重たい水音がした。蛸の脚が落ちているに違いなかった。
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