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034.暗号
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『その記憶は暗号化されており閲覧することができません』
無慈悲に録音音声が告げる。いくつかある定型文章の内の一つだろう。
非常に困ったことになった。死んで、埋葬シェルターに入ろうと思った矢先、パスワード紛失により入室できなくなってしまったのだ。再発行のための第二コードもロスト。設定当時の記憶を確認するために簡易記憶探索装置を試みた結果がこれだ。
暗号化するような記憶はない。いたって順風満帆。怪我も呪いにも縁のない人生だった。記憶に欠落がある自覚もなく、戸惑っている。
七十二時間以内に埋葬シェルターに入室しなければ永年供養権は失われてしまい、私は墓のない亡霊となってしまうだろう。戸惑っている暇はない。私は有名な記憶サルベージャーを尋ねた。
いくつかのチェックの後、サルベージには身体の一部が必要との事だった。身体に紐づいたわずかな記憶を引き延ばし、それを拡張した後に記憶の中から暗号化された部分をサルベージする。数年前に確立された記憶探索方法である。
身体はすでに焼却されていたため、骨と個人識別用のプレートを提示した。
得られた結果の開示に技師は難色を示した。
「記憶を確認した場合、魂の消失もあり得る話だと思われます」
詳しいことは説明できない、と話す。
埋葬シェルターに入室できる時間は迫っていた。私は、サルベージャーにとにかく結果を提出するように強く出た。
「念のため、魂維持装置に入ってから結果を確認してください……」
――暗号化された記憶の一部で、私は妻に殺されていた。私の記憶は妻によって改ざんされ、コピーされた記憶は外装に移されている。私の死は私自身には秘匿されたまま、その先の人生を生きてきたわけである。
妻によって、埋葬シェルターのパスワードも編越されていた。
今、ここにそのパスワードがある。目の前には埋葬シェルターの扉。
この先には、一体[[rb:誰>わたし]]が待ち受けているのだろうか。
無慈悲に録音音声が告げる。いくつかある定型文章の内の一つだろう。
非常に困ったことになった。死んで、埋葬シェルターに入ろうと思った矢先、パスワード紛失により入室できなくなってしまったのだ。再発行のための第二コードもロスト。設定当時の記憶を確認するために簡易記憶探索装置を試みた結果がこれだ。
暗号化するような記憶はない。いたって順風満帆。怪我も呪いにも縁のない人生だった。記憶に欠落がある自覚もなく、戸惑っている。
七十二時間以内に埋葬シェルターに入室しなければ永年供養権は失われてしまい、私は墓のない亡霊となってしまうだろう。戸惑っている暇はない。私は有名な記憶サルベージャーを尋ねた。
いくつかのチェックの後、サルベージには身体の一部が必要との事だった。身体に紐づいたわずかな記憶を引き延ばし、それを拡張した後に記憶の中から暗号化された部分をサルベージする。数年前に確立された記憶探索方法である。
身体はすでに焼却されていたため、骨と個人識別用のプレートを提示した。
得られた結果の開示に技師は難色を示した。
「記憶を確認した場合、魂の消失もあり得る話だと思われます」
詳しいことは説明できない、と話す。
埋葬シェルターに入室できる時間は迫っていた。私は、サルベージャーにとにかく結果を提出するように強く出た。
「念のため、魂維持装置に入ってから結果を確認してください……」
――暗号化された記憶の一部で、私は妻に殺されていた。私の記憶は妻によって改ざんされ、コピーされた記憶は外装に移されている。私の死は私自身には秘匿されたまま、その先の人生を生きてきたわけである。
妻によって、埋葬シェルターのパスワードも編越されていた。
今、ここにそのパスワードがある。目の前には埋葬シェルターの扉。
この先には、一体[[rb:誰>わたし]]が待ち受けているのだろうか。
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