子作り雨宿り

田中くりまんじゅう(しゃち)

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雨宿り

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1 

  

 六月二十日。晴れ。いわゆる梅雨の晴れ間というやつ。こんな時期に海に行こうっていうんだから、小梅のやつは馬鹿だ。 

 だってまだ海に入るにしては気温が低い。海水も冷たいだろう。海を見れればいいんだ、とかなんとか言っていたけれど。そんなわけはない、絶対泳ぐ気だ。 

 それにしても遅い。約束の時間を三十分以上すぎてるぞ。 

 多少イライラしながら玄関の前で小梅を待っていると、遠くから必死な形相で愛用のMTBをこぐ、褐色の少女が近づいてきた。 

  

「わ~ん、遅れた、ごめんごめ~ん!」 

  

 小梅だ。長い黒髪を風になびかせながらMTBを漕いでいる。どうやらかなり急いで来たらしい。 

 その途端、さっきはあれだけ鋭い直射日光で俺を照らしていた太陽が、雲の後ろに隠れる。 

 忘れていた、あいつは雨女なのだっ。しかもものすごく強力な。影でアメフラシと呼ばれているのを俺は知っている。 

 水泳部員のくせに、いつもどうやって練習しているのだろう。 

 案の定、ポツリポツリと雨が降り出し、それは土砂降りへと変化した。 

  

「にゃああ~~! 降ってきた、降ってきた!」 

  

 びしょ濡れになりながらMTBを走らせ、やっとのことで待ち合わせ場所である、俺の目の前についた。 

  

「へい、おはよう、良樹! 急に土砂降りになっちゃったね」 

  

 へへっ、と鼻を擦って笑う小梅。そう言っている間も雨は降り続いて、俺たちはずぶ濡れになっていた。 

  

「とにかくうちにはいれ!」 

  

 小梅の細い腕をとって自分の家に駆け込む。 

 シーンと静まった家の中。今日は家族全員旅行に出かけていて誰もいない。 

  

「うわあ~、びしょびしょだあ~」 

  

 タオルを渡して、自分の部屋に通す。女の子を部屋に入れるのは初めてなので、緊張している。ガチガチだ。小梅は頭のてっぺんから爪先までずぶ濡れだった。濡れた服はいったん風呂場で脱いでもらって乾かすとして、とりあえず俺のTシャツを貸していおけばいいだろう。 

  

「ごめんね」 

  

「いいってことよ」 

  

 ザーザーと雨が降り続いている。 

 俺は雨が嫌いではない。雨音を聞いていると、なんだか心の汚れを洗い流してくれるような気がする。だからだろう。小梅がひどい雨女でもあまり気にならない。むしろ都合が良いとさえ思う。俺に雨を運んで来てくれるから。 

 少しぼーっとしていたようだ。ふと小梅の方を見やると、何故だかベッドの下を覗き込んでいる。おいおい、そこはやめてくれ。 

  

「小梅。小梅さん。何してるの」 

  

「んー。良樹のお宝を探しているのさっ」 

  

「はあ!? そんなものないよ、俺はお宝とは縁遠い貧民だよ!」 

  

「嘘つけー。……あった」 

  

 そう言って、ごそごそとベッドの下から俺のお宝(昼下がりの団地妻2)を探り出した! 

  

「ふむふむ……。こういうのが好きなのね」 

  

「冷静に分析するな! やめろよ。読むなよ。恥ずかしいだろっ」 

  

「良樹くん」 

  

 小梅は人差し指を俺に向けてビシッとつき立てて、高々と宣言する。 

  

「性教育してあげます」 

  

2 

  

「はあ? 性教育?」 

  

「そうです。こんな本ばかり読んでいてはあなたはダメになります。だから私が正しい性の知識を教えてあげます」 

  

 何言ってるんだコイツ。頭は大丈夫か。ついに脳味噌が蒸発してしまったのか。 

  

「正しい性の知識ってなんだよ。お前知ってるの? やっらしいー」 

  

「知ってます。やらしくないです。昨日ネット見てたら、早期の性教育は大事って書いてあったんだからねっ」 

  

 なんだ、ネットの記事に影響されてるだけか。影響受けやすいもんな、コイツ。大方、そのネットの胡散臭い記事を鵜呑みにしているんだろう。 

  

「性教育って、いわゆるセックスとか? そういうこと?」 

  

「セ、セ、セックス!?」 

  

 意外とうぶな子だった。 

  

「そんな単語ひとつで動揺してるんじゃねーよ。性教育してくれるんだろ?」 

  

「う、うむ。セックスね。うん。よく知ってる。私ほどセックスについて博学なものはいないっ」 

  

「へえ。じゃあ経験豊富なんだ」 

  

「も、もちろん!」 

  

 怪しい。怪しすぎる。経験豊富どころか処女なんじゃないか? 

  

「じゃあ、セックスについて実践的に教えてくれるんだ」 

  

「も、もちろんだとも!」 

  

「勢いで言ってないか?」 

  

「もちろん!」 

  

 勢いで言っているのか……。 

 小梅は身につけているダボダボの白いTシャツを勢いよく脱いだ。その下にはスクール水着のような紺色の水着を着ている。 

  

「さ、触って……いいよ」 

  

 頰を赤らめつつ消え入るような声でそんなことを言う。俺はだいぶ躊躇したが、据え膳くわぬは男の恥。やはり遠慮なく、大きく膨らんだ胸に触れる。 

  

「ひゃうっ……」 

  

 くすぐったいのか、変な声を漏らす小梅。 

 俺は調子にのって、大きく広げた手を両胸にかぶせてもみしだく。や、柔らかい……。プルンプルンしている。もはやプリンである。 

  

「あ、やっ、やめっ……」 

  

「やめてほしいのか? 性教育してくれるんじゃなかったの?」 

  

「あ、いや、初めてだったからちょっとびっくりしただけ……」 

  

 やっぱり初めてだったのか。嘘が下手すぎる。まあ、こちらとしては都合がいい。 

 俺だって経験豊富なわけではない。 

 調子に乗って水着をずらし、直接小梅のおっぱいに触る。 

  

「えっ……」 

  

 健康的な褐色の肌。弾力があってもちもちで、触ると手が吸い付くようだ。 

 ビンビンに立った乳首を優しく愛撫する。 

  

「やらしいやつ。乳首をこんなに硬くしやがって」 

  

「う……、や、やめ……、やめて。いや嘘。やめないで……」 

  

「もちろんやめないさ」 

  

 今度は乳首を口に含み、舌の上で転がす。 

  

「ひ、ひゃっ」 

  

 小梅は真っ赤になって、身をよじらせ、快感に酔いしれている。 

 俺は指を小梅の股間に持っていく……。 

  

「にゃあっ! ちょっと良樹、そこは汚いよ……」 

  

「大丈夫だよ」 

  

 俺は小梅のクリトリスを探し当て、小さな突起を優しく愛撫する。 

  

「ああっ! そ、そこダメえ……。私、馬鹿になっちゃうぅ……」 

  

「もともと馬鹿なんだから大して変わらないだろ」 

  

「ひ、ひどーい! 良樹に馬鹿とは言われたくない。あんたなん……って、う……、ひゃあっ……あああ……」 

  

「気持ちいいか? 我慢するなよ。快楽に身を委ねようぜ?」 

  

 そう言ってクリトリスを愛撫し続ける。しばらく小梅は気持ちよさそうに俺に体を任せていたが、急に焦ったように大きな声を出した。 

  

「うっ、うっ、でちゃう、でちゃう。あああーっ!」 

  

 次の瞬間、 

  

 シャアアアアーーーー。 

  

 おしっこを勢いよく漏らす。 

 ああ、俺の部屋に水溜りができちまった。 

  

「ごっ、ごめえええん! ふ、ふくから! タオル、タオルーー」 

  

「いいよ、ほっとけ」 

  

「で、でもっ」 

  

「ベッドに行けばいいだろ」 

  

「そっ、そうか! 良樹、頭いい!」 

  

 小梅はやっぱり馬鹿だ。ベッドの上で何をされるかも知らずに……。 

  

3 

  

「ガチャガチャ……。ガチャッ。バタン。バタバタ……」 

 ヒヤリ。 

 背中に冷や汗が流れた。 

 この物音は……、母親だ。帰ってきたのだ。旅行から。 

 トントントン……。階段を登ってくる音が聞こえる。 

 マズイ。実にマズイ。 

  

「小梅! ベッドの下に隠れろ!」 

「うん! この音、きっと良樹のお母さんだよね」 

  

 半裸の小梅を発見されてはならない……。しかもスク水姿なんて! 俺は変態だと思われてしまうかもしれない。それだけは絶対に避けなければ! 

  

「良樹ー。ベッドの下、狭いよー。入れるかな……」 

「しいっ!」 

  

 ガチャッ。 

 小梅の頭をベッドの下に押し込んだ、次の瞬間。 

 ドアが勢いよく開いた。 

  

「たっだいまー。よっちゃん。いい子にしてたー?」 

  

「おかえり、母さん……」 

  

「あはは。なんか汗かいてない? この前始めたっていう筋トレでもしてた? 母さんそんなの続かないと思うけどなー。ん? なんか変な臭いが……。それになんだか……。んん?」 

  

「そうそう、筋トレしてたんだ。もう三時間は腹筋してたかな! もう汗びしょびしょだよ!」 

  

「そう……。腹筋バッキバキになるといいわねっ。それじゃあお母さんは夕飯の買い物に行ってくるわ。確かマヨネーズ切らしてたのよねえ。それじゃあごゆっくり~(ニンマリ)」 

  

 ふう。 

 完璧に誤魔化せた。 

 小梅はベッドの下に隠したし、体の汗や臭いは筋トレのせいにしてやったぜ。 

 それにしても、母さんはニマニマ笑っていたけれどなぜだろう。 

 マヨネーズを買いに行くのが楽しみすぎるのか? 今日特売日だっけ? 

  

「もういいぞ、小梅……」 

  

 後ろを振り向く。 

 小梅は確かにベッドの下に隠れていた。 

 しかし大柄な彼女の体全部を隠すには、俺のベッドは小さかったようで。 

  

「頭隠して尻隠さず、か……」 

  

「え? え? 何のこと」 

  

「いや、なんでもない。もう大丈夫だ」 

  

「うん」 

  

 嵐は去った。 

 なんかもうバレバレだったけれど。 

  

「まあいいさ。むしろバレない方がどうかしてるって、この状況。ああ、母さんが旅行から早く帰ってくることを計算できなかった俺のミスだ」 

  

「え? え? バレちゃったの? どうしてだろう……。私、またドジな事しちゃったかな」 

  

「小梅。お前は完璧だった。それはもう忍者の如く気配を消し去っていた。本当だ。……だから泣くな。自信持てよ」 

  

 小梅はその大きな両目から涙を流していた。 

 こいつは失敗するとすぐ泣く。昔からそうだ。 

 自分に自信がなくて、何かあると悪いのは自分だと思ってしまう癖がある。 

 それを知っているから、俺はフォローに徹する。 

  

「うん。ありがとう良樹……」 

  

 そう言いながらも、大粒の涙をこぼしている。 

 カーペットに黒いしみができていた。 

  

「まったく。仕方のないやつだな。ほれ、落ち着けよ」 

  

 両腕で小梅を抱きしめ、頭を撫でてやる。 

 いつもこれで落ち着くのだ、この女は。 

 ふう。泣くのは空だけにしてほしいぜ。 
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