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最終章 すみれさんとのこれから
17「すみれさんのアパートへ」
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すみれは大きな窓の向こうを眺める。それに釣られて俺も外を眺めてみると、まだ雪が降り続いていた。このまま振り続けば、明日には結構積もるんじゃないか。
「積もるかもな」
「……」
「すみれ?」
すみれは両手をぎゅっと握ったまま、緊張した様子で話し出した。
「勇くん、私、最近少しおかしいのよ。うまく話せないの」
「どういうこと?」
「そうねえ……。説明が難しいんだけど、例えば自分が探している言葉が箱に入っているとするでしょう? 私はその箱を開けるんだけど、中は空っぽなの。よしんば探している言葉が箱に入っていたとしても、使い方がわからなかったりね。そういうことが、たまにあるの。私、どうかしちゃったのかしら」
きっと、和史さんのことが相当ショックだったんだ。今彼がどうなっているのかわからないし、すみれがどんな暮らしを送っているのかわからないが、好ましい状況ではないだろう。心が不安定になっているのかもしれない。
俺は彼女の肩に手をおいて、
「大丈夫だよ。すぐ良くなるさ」
と言った。そうとしか言えなかった。
そのあとはそれぞれ図書館で用事をすませることにした。一時間ほど図書館の中をさまよい、探していた本を見つけ、それを何冊か抱えて、カウンターに向かう。
司書さんがバーコードリーダーの様なもので俺の借りた本をチェックしているのを待っていると、隣のカウンターにすみれが大量の本を抱えて入ってきた。
あっちも俺に気づいたらしく、少し驚いた顔をしている。
俺は先にカウンターを出て、図書館の入り口ですみれを待っていた。ここで別れたら、もう会えないかもしれない。
五分ほど待つと、すみれが図書館の門から出てきた。
「そんな大量の本、読めるの?」
「読めないわよ。せいぜい二、三冊が限度ね。読めないけど、気になる本が多いのよ。借りれるだけ借りているの」
「気になる本、ねえ」
雪が降り続いている。この街を真っ白に染めてくれる、雪。
どんっ、と俺の腰のあたりに何かがぶつかる。数年前の記憶が蘇る。数秒間、俺は固まっていた。
「ごめんなさい~。ああ、ジュースこぼしちゃったのね。濡れましたよね。本当にすいません。どうしよう……」
ぶつかってきたのはジュースを持った子供で、その母親が子供を追いかけてきて俺に謝ってきた。
「いいんです。大丈夫ですよ。俺のことより、その子に怪我はありませんでしたか?」
「ええ、大丈夫です。本当にすいません……」
そんなやりとりをしばらくしたあと、俺たちは親子と別れて、雪の降る街を歩き出した。
「ねえ、その濡れた服、どうするの?」
「そりゃあ洗濯して乾かすさ」
「ふーん……」
「なんだよ?」
「ねえ、私のアパートに来ない? 乾かしてあげる」
「……行くよ」
「積もるかもな」
「……」
「すみれ?」
すみれは両手をぎゅっと握ったまま、緊張した様子で話し出した。
「勇くん、私、最近少しおかしいのよ。うまく話せないの」
「どういうこと?」
「そうねえ……。説明が難しいんだけど、例えば自分が探している言葉が箱に入っているとするでしょう? 私はその箱を開けるんだけど、中は空っぽなの。よしんば探している言葉が箱に入っていたとしても、使い方がわからなかったりね。そういうことが、たまにあるの。私、どうかしちゃったのかしら」
きっと、和史さんのことが相当ショックだったんだ。今彼がどうなっているのかわからないし、すみれがどんな暮らしを送っているのかわからないが、好ましい状況ではないだろう。心が不安定になっているのかもしれない。
俺は彼女の肩に手をおいて、
「大丈夫だよ。すぐ良くなるさ」
と言った。そうとしか言えなかった。
そのあとはそれぞれ図書館で用事をすませることにした。一時間ほど図書館の中をさまよい、探していた本を見つけ、それを何冊か抱えて、カウンターに向かう。
司書さんがバーコードリーダーの様なもので俺の借りた本をチェックしているのを待っていると、隣のカウンターにすみれが大量の本を抱えて入ってきた。
あっちも俺に気づいたらしく、少し驚いた顔をしている。
俺は先にカウンターを出て、図書館の入り口ですみれを待っていた。ここで別れたら、もう会えないかもしれない。
五分ほど待つと、すみれが図書館の門から出てきた。
「そんな大量の本、読めるの?」
「読めないわよ。せいぜい二、三冊が限度ね。読めないけど、気になる本が多いのよ。借りれるだけ借りているの」
「気になる本、ねえ」
雪が降り続いている。この街を真っ白に染めてくれる、雪。
どんっ、と俺の腰のあたりに何かがぶつかる。数年前の記憶が蘇る。数秒間、俺は固まっていた。
「ごめんなさい~。ああ、ジュースこぼしちゃったのね。濡れましたよね。本当にすいません。どうしよう……」
ぶつかってきたのはジュースを持った子供で、その母親が子供を追いかけてきて俺に謝ってきた。
「いいんです。大丈夫ですよ。俺のことより、その子に怪我はありませんでしたか?」
「ええ、大丈夫です。本当にすいません……」
そんなやりとりをしばらくしたあと、俺たちは親子と別れて、雪の降る街を歩き出した。
「ねえ、その濡れた服、どうするの?」
「そりゃあ洗濯して乾かすさ」
「ふーん……」
「なんだよ?」
「ねえ、私のアパートに来ない? 乾かしてあげる」
「……行くよ」
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