悪役令嬢は呑んだくれ放浪の旅に出たい

はるみ

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1.まずは生っ!

さらば我が心の故郷、歌舞伎町

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今宵もこの街のネオンはギラギラ輝き、まるで昼のように眩しい。いや、昼の光を食卓の上で照らす60Wの裸電球だとすると、この夜の輝きは舞台を照らす500Wのパーライト。
ビルの向こうにはゴリラさんとゴジラさん。
今晩もこの愛するべき街、歌舞伎町と酔っ払いの私を見守ってくれて有難う!!
初めてこの街に訪れた時はワンダーランドかと思った。ネズミーランドとかUSJとかいったテーマパーク以上のテーマパークだと今日でも思っている。


私、青天 真澄、35歳。独身彼氏無し。
そこそこの家庭に生まれ、そこそこの大学、大学院を卒業し、そこそこの外資系企業の就職し、エンジニアとしてそこそこのキャリアを積んできた。彼氏もずっと居ないわけではなく、顔もスタイルもそこそこ良いので、そこそこモテて、何人かお付き合いをした異性もいた。

・・・。
そぅ、彼氏が居る時もあった。

ほぼ全てにおいて「そこそこ」自分だが、その「そこそこ」を台無しにし異性にどうしても敬遠されてしまう点が2点あった。

まずその1。
海外放浪癖があります。ファンタジー好きの自分は、ファンタジーの世界を求めちょっとの連休を見つけるとすぐに海外に飛び出してしまいます。旅行の為なら彼氏との時間とか本当にどうでもよくなってしまします。

そしてその2。本当にマズいのはこのその2。
大の、大大大の酒好きです。酒に意地汚く、有れば有るだけ呑む為、ほぼ毎晩泥酔です。もぅ、アル中一歩手前です。
そんな自分に歴代の彼氏は皆、愛想を尽かして離れていった。

そんな嫁入り前の娘(もう、娘という歳でもないか)としては絶望的な欠点を2点も持った私。。。。


だからといって、この欠点を直す気なんて、、、、、


全く無いっ!!!!


だってこんな自分が私は大好きなんだからっ!!


20代後半で早々に『呑んだくれ放浪者』の自分を受け入れ、周りにも周知され、35歳というそろそろ色々な意味で落ち着いてもいい歳になったが、毎週末呑み歩いて泥酔をし、まだ訪れていない世界の国々を攻略する、自由気ままなお独り様生活を満喫していた。


えっと今晩は何軒ハシゴしたっけ?
今日は常日頃面倒を見てきた後輩くんが初めて1から設計をした製品のリリース打ち上げ会だった。2軒目まではみんなと呑んでいたのだが、3軒目に行く途中にみんなとはぐれ、しょうがないので行きつけのバーに行った後、日高屋でラーメン啜りながら焼酎を呑んで・・・・。

いやぁ、今日も沢山呑んだ。満足満足。


終電に乗る為、千鳥足で駅に向かう。毎週末、多い時には週3日この駅にお世話になっている為、勝手知る駅構内。こんな泥酔の酔っ払いでもほら大丈夫!あっという間にホームです。電車もまだ来てない模様。
どんなに泥酔してもなんだかんだで今まで帰れてるんだよね。

っあ、電車来た!
私はここだよぉ~。呼んでいなくても電車は来るけどぉ~。

フラフラとホームに入ってくる電車に近づく。近づき過ぎて・・・・・


ガクン


ホームの縁で足が絡れ、ホームから足を踏み外す。
上半身が線路の方へ吸い寄せられていく。
それと同時に視界が電車の光で塗りつぶされる。


真っ白。


あ・・・これあかんやつだ・・・。

もっと、もっと色々なところに旅行に行きたかった。そして、、、もっともっーーっと沢山飲酒したかった!!

せめて明後日新発売する缶チューハイ、『氷結極強13%』を呑みたかった。



ッドンッツ!!!!!!



強い衝撃と共に、私、青天 真澄の人生は幕を引いた。

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